仮面ライダーネビュラス -Cosmos of the Fighter-   作:地水

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中編:綻ぶ日常、忍び寄る侵略

 

 オネイロス、郊外にある廃棄場。

使われなくなった家電製品や自動車といった金属製品のゴミが積み上がった山がいくつもあるこの場所。

そこへ、空高くから眺めていた【ソレ】は舞い降りた。

 

『ふむ、ここら辺がちょうどよさそうだ。この惑星のごみ溜め場所の一つ、と言ったところか』

 

赤い光の放ちながら廃棄場の周辺を探っていた"人型の光"は最初に降り立った感想を呟いた。

目の前を覆い尽くす廃棄されたゴミの山……いわば文明の発展の影で産み落とされた産物を見て、【ソレ】は轟かせるように声を上げた。

 

『我が同胞(ハラカラ)よ。お前達の肉体となる糧は存分にある』

 

【ソレ】が空へ見上げると、そこには多くの……否、数十にも及ぶ"人型の光"が浮かんでいた。

地上に降り立っている赤い光の主とは異なり淡い光を放っているソレは、ゴミの山へと突っ込む。

人型の光は金属製品の廃棄物を取り込んでいき、その体を作り上げていく。

やがて、出来上がったのは鉄屑やガラスの体を持った異形の怪人達。

別宇宙からやってきたオーグマンが廃棄物の体を持った怪人『トラッシュオーグマン』へと成り代わると、【ソレ】の方へ顔を向けて話しかけてきた。

 

「エレキュール様、これで逃亡者の奴らを追えますね」

 

『ああそうだ。お前達はこの星に逃げ込んだであろう戦士ユースとティア様を追え。この近くにいるのは間違いないが……見つけ次第、あの二人を地の果てまでも追いかけよ』

 

「「「ハッ!!」」」

 

赤い光の【ソレ】――『エレキュール』と呼ばれたそのオーグマンは、トラッシュオーグマン達に指示を出すと彼らをその場から解き放った。

人々が集まるオネイロスへと向かっていく異形の怪人達。

 

街へと迫る悪魔のごとき力を持つ軍団……今、その街には彼らが狙う二人が滞在していた。

 

 

 

~~~~

 

 

 

オネイロス・Davies。

主要都市だけあって店を利用する人は多く、店内は多くの人で賑わっていた。

そこでユースとティアは店のエプロンを纏い、店員として忙しく働いているのであった。

 

「えっと、ご注文でございますか?」

 

やってきたお客たちに笑顔で迎え、愛嬌よく振る舞うティア。

カウンターの奥では果物ナイフを手にしたユースがテキパキとした動きで食材を切って整えていく。

皿に盛り付けられた料理をユーリは差し出すと、ティアへと声をかける。

 

「ティア、10番テーブルにコイツを運んでくれ」

 

「わかったよ、ユース!」

 

渡された料理の皿を掴み、運んでいくティア。

その様子を珈琲を入れながら見ていたデイビスは感心していた。

 

「ほほう、お二人ともここで働くのは初めてなのにしっかりとやっていますね」

 

「それは……仮にもアンタのご厚意でここに置いてもらっている身だからな」

 

「ふむ、そんな固い態度でなくてもいいですよ。笑顔と共にもう少し和らいでもらえるとこちらとしては助かりますよ」

 

「笑顔は……苦手なんだがな」

 

客へ珈琲を差し出しているデイビスに、笑顔と言われて渋い表情を浮かべるユース。

自分でも笑顔になることは少ないと認めているが、例え作ったものでも必要なのがこの接客業というと思い知らされた。

変化した愛らしい見た目と彼女由来の性格も相まってか、心から笑うことができるティアがウェイトレスとして適任している事と比べ、調理担当として選んだ自分は中々人のために笑うことはできそうにないと思う。

今の働く自分に欠けている物を痛感したユースはどうにかして克服出来ないかと悩んでいた。

そんな中であった、店内に入ってくる青年・シデンの姿を捉えたのは。

 

「どうも」

 

「いらっしゃいませ! って、あなたはシデンさん」

 

「ティアちゃんか。その姿似合ってるよ。向こうにいるユース君もね」

 

ティアに挨拶をかけられてシデンはへにゃりと笑みを浮かべる。

カウンターの向こうから様子を伺うユースのジトっとした睨み付けるような視線にも変わらない表情を向けたまま、シデンはカウンター席に座った。

立てかけてあったメニュー表も横目に振らず、シデンは口頭で注文した。

 

「ベーグルサンドとコーヒー」

 

「いつものやつですね、かしこまりました」

 

シデンの注文の品を聞いてデイビスは早速コーヒーメーカーへと向かい、その間にユースがベーグルサンドを用意する。

まもなくて程よく熱を帯びたベーグルサンドと淹れたてのコーヒーが目の前に差し出された。

 

「頂きます」

 

掴み上げたベーグルサンドを勢いよく被り付くシデン。

新鮮な野菜であるトマトとキャベツ、それに加えて挟みこまれたタレのついたチキンが絶妙な美味しさを引き出した。

シデンは口内で広がっているベーグルサンドの味を確かめると、カウンターの向こうにいるユースへと声をかける。

 

「美味しいよ、君の作ったベーグルサンド」

 

「教えられた通りにやっただけだ」

 

「デイビスお爺の教えも相まって美味しいって事さ」

 

「そうか」

 

シデンの誉め言葉にユースは素っ気なく返す。

その様子を見てティアは不安そうに見つめるが、デイビスがニコリと余裕そうな表情を向けている事に気づき、言葉を飲み込んで接客業へと戻っていく。

二人が店の手伝いをする様子を横目で見て、ベーグルサンドをあっという間に平らげてコーヒーを啜っているシデンはデイビスの方へ顔を向ける。

 

「ねぇ、デイビスお爺」

 

「なんでございましょうか」

 

「この二人を雇ったのって、何か理由でもあるの?」

 

「そうですなぁ……あの二人は孤独を宿した目をしていたのですよ。かつてのあなたのように」

 

デイビスはシデンへと顔を向けてそう告げると、シデンは顎に指を当てて思い出すような仕草をする。

暫く考え込むような仕草をした後、目についたのはカウンター越しにやりとりをしているユースとティアの姿だった。

 

「1番テーブルのお客さんに運んでくれ」

 

「ユース、もうちょっと笑ってもいいんじゃないかな?」

 

「……何故俺が笑うんだ?」

 

「一緒に笑ってくれるときっとお客さんも喜ぶと思うよ」

 

まるで日向のように笑うティアと、戸惑うユース。

二人のやり取りを見て目を細めたシデンは、ポツリと呟いた。

 

「孤独の瞳、かぁ」

 

「おや、ご自覚おありで?」

 

「どうだろうねぇ……」

 

デイビスの問いかけに誤魔化すと、シデンは握りしめた小銭を差し出した。

御代である代金を受け取ると、デイビスは新しいカップを渡す。

それを見たシデンは眉を顰めて訊ねた。

 

「これは?」

 

「サービスですよ。あなたがほかの方に興味を持った記念、ということです」

 

「ふーん、んじゃあありがたくもらっとくよ」

 

シデンは差し出されたカップを掴むと、中に入った出来立てのコンソメスープを飲み始めた。

自分自身の生まれ育った故郷になじみ深い旨味と味を味わいながら、すぐ傍で働く二人の姿を横目で見つめるのであった。

 

 

~~~~

 

 

オネイロス、繁華街地区。

とある高層ビルの電波受信物の先端に立っているのは赤い光の存在が佇んでいた。

赤い光……エレキュールは神経を巡らしながら、周囲の様子を探っていた。

手足として操るのは、自らの電気と電波。それらを地球に張り巡らせている電脳の世界へ隅々まで干渉してく。

図書館で目当ての本を探し当てるような感覚で、エレキュールは何がを探っている。

そして、一言呟いた。

 

『発見した。同胞よ、今すぐ向かえ』

 

目標を見つけたエレキュールの言葉と共に各地に染んでいたトラッシュオーグマン達は動き出す。

同胞が動き出したことを感じ取ると、エレキュール自身も目標がいる所へ目掛けて飛びながら移動しだした。

その目標の先にいるのは、ユースとティアの二人。

 

 

同じ頃、ユースとティアはデリバリー配達に出かけていた。

既に配達先の客へ料理を届け、帰っているところであった。

彼ら二人は店へと戻る途中で辿り着いた公園で、話しあっていた。

 

「あのお客さん、笑顔になっていたね」

 

「ああ……そうだな」

 

「ユースの料理で笑顔になってたね」

 

互いの肩が触れ合うか触れ合わないかという絶妙な距離を保ちながら、二人は歩いていた。

ユースが横目でティアを見ると、彼女は優しさと嬉しさを籠った笑顔を浮かべており、何処か上機嫌に見えた。

守るべき大切な人である彼女の様子に思わず笑顔になっていると、ティアが唐突に打ち明けた。

 

「ねぇユース」

 

「なんだティア?」

 

「私ね、この街に住みたい」

 

「なっ!?」

 

ティアの告げた言葉を聞いて、ユースは驚きの表情を露にした。

鬼気迫る顏で肩を掴むと、ティアに向かって怒鳴った。

 

「分かっているのかティア! ここに滞在していたらいずれアイツらが追いかけ気てくるんだぞ!」

 

「確かにそうだけど、せっかく仲良くなった人たちと別れるのが気が引けるよ。デイビスさんも、この街の人々も、せっかく仲良くなったんだから」

 

「それは……オレだって薄情じゃない。デイビスさんには恩がある。だからこそ近いうちにオネイロスから出るべきだ」

 

「でも……」

 

「争いに巻き込みたくないのはオレだって同じだ。もしこの街に留まったら、ここが戦火になりかねない」

 

ユースの投げかけた言葉にティアの表情が段々と曇っていく。

自分達はあくまで異星からの逃亡者で、母星からの追手は既に追ってきている。

このままこの街に留まれば、いずれやってきて争いごとになりかねない。

大切な人達が住むこのオネイロスを戦場にするわけにはいかない……そう思ったユースはティアを説得しようと試みた。

もしかしたら考えを改めてくれるかもしれないと、淡い期待と焦った気持ちを抱きながら。

――だが、ティアを説得する事、そして二人がこの街から何事もなく出る事を許してくれるほど時間は許してくれなかった。

 

「ティアッ!!」

 

「きゃあ!?」

 

突如二人へと降り注ぐ赤い落雷。

直撃する寸前にユースはティアを抱え、地面を蹴り上げてその場から脱した。

先程まで二人がいた場所が黒く焼き焦げている所を驚いた表情で見ていると、そこへ天から赤い稲光が迸り、地面へと着地をした。

ユースとティアの存在を確認した赤い雷を纏った存在・エレキュールは二人に声をかけた

 

 

『見つけましたぞ、ティア様。そして戦士ユースよ』

 

 

「「!!」」

 

二人の目の前に姿を現したのは、赤い光の集合体の姿をとっている【かつての同胞】。

向こうの景色が見えるほどの透けた体には眼球などないはずなのに、鋭い眼光が睨みつけていると感じている。

 

『まさか地球の現地生命体の姿形にに物質化して街へと紛れていたとは』

 

「お前、雷光のエレキュールか!?」

 

『ああそうだ、我が名はエレキュール……オーグマンズの誇りと名誉をかけて、お前達を追いかけてきた!』

 

こちらを睨みつけてくるユースに対し、エレキュールは質問に答えた後、真っ直ぐと見据えて赤い雷の砲撃を撃ちだした。

ユースは片腕を目の前に出すと、指先から光の刃を作り出す。

迫る雷の砲撃を前に、自ら作り出したその刃を勢いよく振り上げた。

 

「ハァァァァ!!」

 

斬。

振り上げられた光の刃はエレキュールの放った砲撃を文字通り真っ二つに裂かれた。

後方の方へ受け流されて派手な爆炎と共に着弾したその光景を見て、エレキュールは感心したような声を上げる。

 

『腕は衰えていないようだな、英雄(ユース)。このまま戦えば相打ちになりかねない』

 

「何を考えている?」

 

『お前ほどの英雄だ、どれだけ強い相手でも手こずって当然だ。だから、こうするまでだ!!』

 

警戒するユースの言葉を反応して、エレキュールは合図として上空へと雷を撃ちだした。

それと同時に、周囲に出現するのはトラッシュオーグマン達。

彼らは両腕の銃口を上げ、ユースとティアへと向けていた。

 

『殺しはしない、だが無傷ではいられないようには負傷してもらう』

 

「ッッ! 貴様……ティア!!」

 

エレキュールの狙いを悟ったユースはティアを庇うように抱き着いた。

その瞬間、トラッシュオーグマン達の光弾が飛び、ユースへと着弾した。

肉を焼き付くような高熱と体中を駆け巡る激痛が襲い、ユースは苦痛の表情を浮かべる。

 

「ぐぅあああああッ!!」

 

「ユース!!」

 

何発もの光弾がユースの体を襲い、ティアへと抱き留められる形で倒れてしまった。

攻撃が直撃した背中からは多大に流血しており、受け止めたティアの手には真っ赤な血がべっとりとついていた。

自分のために身代わりになってしまったユースに、ティアは目を見開き顏が青ざめていく。

 

「ユ、ユース……ユース!? ユースってばッ!」

 

「へッ、たとえ我が星の英雄といえど所詮は孤独の男。多勢に無勢になればこの程度よ」

 

「たった一人で我々から逃げられると思うなよ!ガキがァ!」

 

泣き叫ぶティアと倒れたユース、二人の姿を見てトラッシュオーグマンの罵声怒号が飛び交う。

大勢のトラッシュオーグマン達からの攻撃を一気に引き受けて倒れたユースは既に意識を朦朧としており、すぐ傍にいるであろうティアを守ろうと腕を振り上げる。

 

「てぃ、ティア……!」

 

「ユース! 無理しないで! 死なないで!」

 

満身創痍になりながらも自分を守ろうとするユースにボロボロと涙を流すティア。

互いに互いを思いやりながら庇いあう姿に、エレキュールは目を細めた。

 

『……』

 

「へっ、あっけないものだなァ! あれほど暴れていた英雄もこんな程度かァ!」

 

『無駄口を叩くな。彼らはもう無力化した、確保しろ』

 

鼻で笑っているトラッシュオーグマンの一体に、稲妻を迸りながら鋭い眼光で睨むエレキュール。

何処か苛立った口調の様子におびえながらも、トラッシュオーグマン達は命令通りに二人を捉えようと距離を縮めて近づいていく。

迫りくる魔の手に、ティアは血まみれとなったユースを抱きかかえながら己の無力さを憎むしかなかった。

 

 

(なんで、私はなにもできないの……)

 

 

(傷ついたユースを守ることも、戦う力もない……)

 

 

(このままどうなっちゃうの……ユースと、離れ離れになるの?)

 

 

(それは嫌だ、嫌だ……)

 

 

「誰か、助けて」

 

 

傷ついた愛しい人を抱き上げながら、弱弱しくつぶやいた言葉。

何人ものトラッシュオーグマンがすぐ目の前まで迫る中、せめて離れ離れにならないように必死にしがみ付いた。

そんな彼女の抵抗も虚しく、一体のトラッシュオーグマンの手が伸び、触れようとした……。

 

 

――その時だった、誰かがトラッシュオーグマンの腕を蹴り上げたのは。

 

 

「お邪魔するよ」

 

「なっ、ぐああ!?」

 

淡白な言葉と共にティアへ触れようとしていたトラッシュオーグマンは蹴り飛ばされた。

一体何事か、とエレキュールが見れば、そこに立っていたのは一人の地球人の青年。

 

シデン・エンジョウ、その人であった。

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