2022~2023年 年越し、笑ってはいけないトレセン24時   作:流神

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 今回の作者より一言。

※「鼠径部っていいよね!」


1話 五人組の受難、はじまり

 午前9:45。

 始まりの朝。

 霜焼けができそうな空気の中、ウマ娘の挑戦が今始まろうとしていた。

 

 94年生まれの同期組ウマ娘五人組。

 サイレンススズカ、タイキシャトル、マチカネフクキタル、メジロドーベル、メジロブライト。

 

「寒いわね……少し走ってきてもいいかしら?」

「OH......それはいいかもしれまセーン」

「いやいや、集合時間ももう少しですので、ここは我慢ですよ!」

「そうよスズカ……取り敢えずは待ちましょう」

「ですわね~」

 

【ここで待て】と書かれた看板が校門の前に置かれており、五人は立っていた。

 

 年末某日、休校となっているトレセン学園に呼び出された五人は、寒空のもと校門に呼び出されていたのだ。

 なんとなく嫌な予感がしていたスズカたちは身体を震わせながら待っていると、遠くから「ぉ~い」と呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「お~い、お~い……お~い」

 

 息を切らせながら走ってきたのは緑の帽子に緑のジャケット、緑のタイトスカートを着て、緑の靴を履いた……駿川 たづなだった。

 

「いや、お~いとかいうキャラじゃないでしょたづなさんって」と冷たいドーベル。

「声を大きく出すことはこの季節ではよいことです……体が暖まりますので!」と前向きなフクキタル。

 

 そうしてやってきたターフにも負けない緑の女(たづな)。

 テロップに悪意があるが構わず進行する番組、慈悲がない。

 

「おはようございます、皆さん……朝から元気いっぱいなようでなによりです」

 

「Fu......グッモーニング、たづなサァン」

「元気かどうかって言われると……私としては……」

「寒くて眠くて……日差しも強くて……冬とはいえ陽気な空気に、やられておりますわ~」

 

 三者三葉なタイキ、スズカ、ブライト。

 お構いなしに続けるたづな。

 

「タイキシャトルさんは大変いい返事ですね!

 それに比べて、他の方は弛んでいますよ……正月だからとお腹以外も弛ませてはいけません!」

 

「誰がうまいこと云えとおっしゃいましたか!?」

「弛んでなんかないわよ!」

 

 二人がそう返すも、やはり取り合わないたづな。

 

「何故ここに集められたかは……わかってるとは思いますが」

 

「わかってませんわ~」

 

「(無視して)貴方たち五人は適性をさらに伸ばすために、ある試験的な企画に選ばれました」

 

「ワ~オ、企画ですかぁ?」

「あら……もしかしてあの年末の特番ではないのかしら」

 

 パーティーなど楽しみに取り組めるタイキと、安堵したかのようなスズカ。

 ほんわか見守るブライト。

 怪訝そうなフクキタルとドーベル。

 

「その名も、トレーナー体験です」

 

 ツラツラと内容を告げていくたづな。

 内容としては、ウマ娘の成長過程に於いて、トレーニング内容をトレーナー目線で指示したり体験したりすることで、トレーナーとの親和性を深めるだけでなく、練習する側ではないさせる側の視点も取り入れることで更なる走法や思考を促すという企画らしい。

 

「……意外にちゃんとしてるわね」

「私たち、疑い過ぎてたのかもしれないわ」

 

「ただし!」

 

 理事長が書いたと思われる『閑話休題!』と書かれたボードを出して、二人の安堵を氷砕機のように打ち壊すたづな。

 

「普通にやっても面白みn……試験にならないので。

 これからバスに乗ってもらうが、乗ってからは笑ってはいけないということになります」

 

「ほらぁああああああああ!」

「いやあ~っ! ご無体なぁ~!」

 

 頽れるドーベル&フクキタル組。

 スズカも顔を青くしている。

 逆に他の二人は知らないのか、頭に疑問符を浮かべていた。

 

「ただ笑ってはいけないでは、教訓性がないですからね……もし笑ってしまったら、罰として黒いプラスチック棒で叩かれてしまうことになっています」

 

「まぁまぁ~」

「なんですっテ~!」

 

 それでもほんわかなブライトに、露骨にびっくりするタイキ。

 

「それにしても何ですか、貴方たちの格好は!

 毛皮のコートやら半纏やら……トレーナーに、仮にもなるという自覚があるんですか!」

 

「そんなこといわれても……今、知らされたばかりだわ」

「ほんとよ! 横暴だわ……それに参加するなんて私たち、云ってないわよ!」

 

「参加しないで……いいんですか?」

 

 声のトーンを急に抑え、急に能面になるたづな。

 そのことに差し詰めドーベルも唾を呑む。

 

「云い忘れていましたが、この試験で罰を最も受けなかったウマ娘は将来有望な存在として…………貴方たちの担当しているトレーナーの、聖杯(使用済みパンツ)が授与されることになっています」

 

「ウソでしょ……」

「ええええええええっ!」

「……はああああああっ!?」

 

 中でもドーベルは正気かという眼でたづなを見ていた。

 

「ば、バカなんじゃないの? なんでそんな景品で吊られると思ったわワケ?

 早く、バス来ないの?」両耳超速ピコピコ。

「Oh......ドーベル、正気を保ってください。

 支離滅裂デース!」

 

 安心してください、とたづなは付け加える。

 

「別に参加動機は問いません。

 聖杯(と云う名のトレーナーの使用済みパンツ)が欲しくて参加でも、もとより試験的な実験に付き合ってくれるでも、更なる高みへ至るために試験に興味があるでも……なんでも構いません」

 

 しかも、宣言する必要もなく。そもそも景品を受け取らないという選択肢もあるのだという。

 

「タイキ、勘違いしているわ……私はもとより、景品じゃなく試験的な実験に興味があるだけよ」

「そうなんですね~ではドーベルが一番罰を受けていなくても、景品授与は危険と云うことで2番目に少ない人が授与でいいですわね~そうd――――」

それは、話が違うわ

 

 突然、遮るドーベル。

 その視線はめっちゃ怖い。

 

「ほわぁ」

「野犬のようデース……むしろ、猟犬デスかね?」

 

「全員参加ということで宜しいですね?」

 

 たづなが促す。

 

「まって、それじゃあスズカは釣れないと思うけど?」と小さく告げるドーベル。

「いえ、参加するわ」

 

 意外にも、スズカは参加表明をした。

 これには他の面々も驚いた顔をする。

 

「え、だってこれ、走りに関係ないw――――」

「ドーベル。お互い触れない方が得策だと思わない?

「あ、はい」

 

 そんなこんなで、全員が納得したようなしてないような状況下、たづなが更に促す。

 

「あっちに更衣室を用意しましたので、着替えてきてください」

 

 たづなが指差す方には、確かに五人の個室があり、入り口にはカーテンが降ろされている。

 サイレンススズカ、タイキシャトル、マチカネフクキタル、メジロドーベル、メジロブライトの順で鎮座しているようだが……単なる名前順らしい。

 五人は渋々という感じで入り、カーテンの奥で着替えているようだ。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 数分後。

 

「みんな着替え終わったみたいですね。

 では、メジロブライトさんからどうぞ」

 

「は~い」

 

 控えめに返事をしたかと思うと、カーテンが自動的に巻き上がり、ブライトが前進して現れる。

 白と薄緑を基調としたブラウスに紺色のコート。コートと同色のロングスカートが風に靡き、黒いブーツが覗けた。

 

「深窓の令嬢に仕えるトレーナーみたいですね、やはり気品が隠せないようです」

 

「お褒め頂き光栄ですわ~」

 

「続いてメジロドーベルさん、どうぞ」

 

「はいはい」

 

 淡々と答えるドーベルに応えて、カーテンが自動的に捲くり上がる。

 ブライトと同じくメジロの色を模したブラウスに紺色コート。コートと同色のロングスカートには“何故か”右腰から裾までスリットが入っていた。

 

「いや、寒いわ!

 なんでこんな事になってんのよ!」

 

「今回のセクシー担当はメジロドーベルさんということになりました」

 

「浜●枠ってことっ!?」

 

「まあまあ、では続いてマチカネフクキタルさん。どうぞ」

 

「はいっ! マチカネフクキタルです!」

 

 勢いよく返事をし、カーテンから現れる占い娘。

 同じブラウスにコート。ブーツには開運のだるまが彫られていた。

 なにより目に引くのがロングスカートだろう。フクキタルはあまり女性らしいロングスカートを着ている姿を見ないので、新鮮味がある。

 フルアーマーフクキタル? 女性らしくないです……。

 

「あら、これは可愛らしいですね……トレーナーさんも見惚れてしまうかもしれませんね」

 

「えへへ、そうですかぁ?」テレテレ

 

「ということでお次はタイキシャトルさん」

 

「OK!」

 

 アメリカンな返事と共にカーテンが捲られる。

 服装こそあまり変わらないが、カウボーイハットとウエスタンブーツという特徴が活かされている。

 トレーナーらしさはどこにあるというんだ、魔改造フィギュアみたいである。

 

「元気いっぱいなトレーナーさんになりそうな格好ですね、期待できます」

 

「頑張りマース!」

 

「では最後に……サイレンススズカさん、どうぞ」

 

「…………」

 

 返事がない。

 いるのは間違いないのだが、どうしたんだろうかと四人とたづなが不思議そうにしていると……。

 

「はい」

 

 物静かに答え、カーテンが捲くり上がる。

 歩いてきたスズカの格好は“一点”以外はブライトたちと同じ風采である。

 然し、その一点は余りにも脅威的――――否、胸囲的だった。

 

「…………ウソでしょ」←胸元だけ物凄い緩やかなにたるむブラウス。

 

「ちょっ!」

「Oh......」

「ま、まあ~」

「えぇ……」

 

 スズカは皆のもとに辿り着くと、くるりと後ろを向く。

 首筋にあるタグを見てほしいとのことだ。

 

〈Gカップ以上の対象〉

 

「「「「ぶっ!!!」」」」

 

 全員が思わず吹き出してしまう。

 

「ウソでしょ」

 

 大事な事なので二回言いました。

 

 そんな一同のもとにクラクションの音をさせてバスがやってくる。

 とても装飾に拘っており、莫大なお金が掛けられてそうだ。

 

「はい、では皆にこれからトレーナー研修並びにトレーナーとして働いてもらうため、バスで移動となります。

 研修過程が済みますと、ここトレセン学園に戻ってきて試験スタートとなります」

 

 やだなあ、という幾つかの声。

 どんなものなのか、という好奇心の目をする数名。

 

 行先にはこう書かれている。

 

【ヒトヅマトレーナー研修所行き】

(※創設者のメジロラモーヌの顔が車体にでっかく描かれている)

 

「ウソでしょ……」

「オオー」

「ちょ、いや、あの……」肩震え

「っく、い、いや、笑うな私!」肩震え

「……」肩震え

 

 そんなドーベルを見て、スズカが呟く。

 

「それってあれかしら?

 笑うな……まだこらえるんだ、ってやつかしら?」

 

「ぷっ、くく……それは別でしょ!

 もう、仲間、うちで……やめてよ」

 

「はいはい、もう始めますよ。

 時間は有限なんですからね。

 バスに乗ったら、24時間笑ってはいけません。笑えば罰執行です」

 

「はあい」

 

 重たい声を洩らし、重たい腰を上げながらバスに乗車する五人とたづな。

 一行がこれより待ち受ける笑いの数々とは!




 なんとか三が日までには書き終わりたいけど……無理だろうなぁ。
 末永く……ならないように頑張りますが、宜しくお願いします。
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