ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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#8.5 無限なる欲望

 欲望は尽きる事はない。

 

『力』を求める。

 

『知識』を求める。

 

『探究』を求める。

 

『破滅』を求める。

 

『食欲』を求める。

 

『闘志』を求める。

 

『美しさ』を求める。

 

『光』を求める。

 

『闇』を求める。

 

 数多の欲望や欲求は生きる者全てに影響し合い、希望を与え、そして──狂わせる。

 

 


 

 

 閉鎖された暗い洞窟の中、黒髪の青年──ゼノンは無言を貫きポケットの中に手を入れて歩いている。

 洞窟内にある鉱石が美しく輝き、それを頼りに彼は洞窟内を進む。

 その道中で思い出されるのは、天真爛漫を象ったような一人の少年の顔。

 あの年齢で数多くの犯罪組織を壊滅し、更に各地で起こった事件を解決、挙げ句の果てには伝説・幻と呼ばれるポケモン達と心を交わしたと記録されている。

 その上、ガラルのチャンピオンであるダンデを下して世界王者にまで成り上がった。

 そんな神業が出来る人間が存在するのか。

 否、あり得ない。

 例えそうだとして、あの得体の知れない豹変はなんであろうか。

 現実にはあり得ない、頭の中で認めたくない為か彼はそれを振り祓おうとする。

 そうしている内に彼はその場で立ち止まり、頭上を見上げる。

「良く戻った、ゼノン」

 不敵に笑みを零し、この組織のリーダーである男は彼に労いの言葉を送る。

 この男は常に仮面で顔を隠していて誰しもその素顔を知らない、出会ったあの時もこうやって仮面で顔を隠しているのだ。

「ディアスはいない様だが……何か不具合があったのかな?」

「……奴は世界王者、マサラタウンのサトシに敗れた」

 周りにいる者は一斉に響めき、小声で何やら話す様にヒソヒソと声が聞こえてくる。

「おいおい、ド下手な嘘つくなよ。大方テメェが殺したんだろが」

「せやせや、弱え奴に生きる価値がないんやしなァ」

 下卑た笑い声が響く、一部の中にはこう言う他人を侮る愚かな輩が混ざっている。

 何とも卑しく、そして哀れなのだろうか。黙らせようと口を開こうとすると、別の声が聞こえてきた。

「愚か者」

 背後から叱責する様な声が飛ぶ、ゼノンを嘲笑っていた二人は振り返ってみると短い金髪の偉丈夫が佇んでいた。

 顔に痛々しい古傷が刻まれ、腕を組んでその二人を一睨する。

「相手は世界王者と謳われる程のトレーナーだ、生半可な腕前では太刀打ち出来んとは分かっている筈だろう」

「ハッ! 世界王者つっても唯のガキだろ、夢見がちのな」

「どうせゼノンにズタボロにされたんならその程度のガキやろなぁ」

 ニヤニヤしながら未だ見ぬ少年を嘲笑う二人、その心中でゼノンは哀れだと感じ取った。

 

 

「其処までだよ」

 男がそう言うと諍いは収まる、不服ながらもその言葉に皆が従順になる。

「我々はデザイア。如何なる欲望に、欲求に忠実に従って世界に試練を課す者達だ。だが私的な理由で諍いを起こすのは私個人としては悲しい事だ」

 礼儀正しく仮面の下でそう諭す男は息を吐く。

「確かにゼノンの言った様にマサラタウンのサトシ──彼は我々にとって障害となるだろう。そして彼と縁のある者達も皆、一筋縄でいかない実力者達だ」

 仮面の下で楽しげに笑う男、金髪の偉丈夫が険しい表情で問い掛ける。

「ならばどうするつもりだ」

「それは最もな質問だ……一つ助言しよう。人やポケモンの根本的な"根元"を断てば、彼等も同様に立ち直れなくなるかもしれないな」

 どう言う意味なのか皆が首を傾げる、だが自分達にとって彼等が邪魔なのは確かだ。

「……せやな、わざわざ世界最強を相手取る必要あらへん」

「だな。要するにその辺にいる雑魚をぶっ殺しゃあいいって事だ、二度と立ち直れねえくらいにな」

 余計な知恵を得ると調子に乗る輩が増え、他の者達も下衆な笑みを浮かべて賛同する姿勢を見せている。

 

「それぞれ思う事があるかも知れないが、我々の目的は唯一つ──世界に試練を課す事。それを忘れないように」

 仮面の下でそんな姿の彼等を観察しているのか、或いは蔑みを含んでいるのかどうか分からないが、男は静かに伝えた。

「緩いな」

 幾ばくかの気配が闇に紛れ、そして数々の気配が"アジト"から離れていくのをゼノンは感じる。

 愚かで哀れだと心の中で毒吐き、自分もまた男に背を向けて去っていく。

「そうだ…諸君。思う存分にこの世界にデザイアの存在を知らしめ、そして試練を与えていくがいい」

 誰もいなくなった暗闇の中、男は片腕に設置している機器を操作すると立体映像が映される。

 その映像には──ピカチュウと共に歩くサトシの姿が映し出されていた。

 天真爛漫を表す様なその姿に男は懐かしむように、そして愛おしいような眼差しを見せていた。

「……大きくなったな」

 その呟きは誰も知らずに闇に紛れて消え、再び機器を操作して映像は消える。

 あれから十数年、男は空を仰いでいく。

 そして暫くした後、男もまたその場を離れるように去るのだった。

 

 

 運命の歯車は廻り出す。

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと。

 

 

 その歯車は止まる事を知らず、災禍を撒き散らす混迷の戦場へと誘っていく。

 

 

 To be continued

 

 

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