ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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#10 また一緒に

「うぅ……ぐすっ……」

 それは遠い昔、今から10年近く前の出来事。

 橙色の髪の幼い少女は溢れ出る涙を拭き、茜色の空の下にある森の中を彷徨っていた。

「ぱぱぁ……ままぁ……! さくらおねーちゃん、あやめおねーちゃん、ぼたんおねーちゃん、どこー……?」

 家族を探しながら呼び続けるが、返答が聞こえて来ない。あまりの寂しさからかぐずり始める少女。

 がさがさと草叢から何か音が聞こえる、ひっ! と小さく悲鳴を上げた少女はその草叢を見つめる。

 ずっと見つめていると“それ”は──毒鉢ポケモンのスピアーは姿を見せる、少女は恐怖のあまりに尻餅をついてしまう。

 そんな少女の様子にお構いなくスピアーは合図を出す、同時に自らの初期形態──芋虫ポケモンのビードルの大群が押し寄せてくる。

「い……いや……!」

 何とか立ち上がろうとする少女、しかし足腰が竦んで動けない。

「いやあああああっ!」

 泣き叫びながら目を瞑り、どうすればいいのか分からなくなった少女。ビードル達は徐々に彼女に近付いていく。

 誰でもいい、誰か助けて……身勝手ながらも彼女はそう祈った。

「──おまえたち、なにしてるんだ?」

 そんな時だった、天の助けであるかのように一人の少年が現れたのは。

 少女と同い年くらいの黒髪の少年はキョトンと此方を見た後、不快な表情でそのままスピアー達に近寄った。

「だめじゃないか、こんなことしちゃ。この娘が怖がってるから、一度住処に戻ってくれないか? この娘はちゃんとおくっていくから」

 少年の言葉に応じたのかスピアーは去っていく、ビードル達もその後を追って森の奥へと消えていく。

「きみ……だいじょぶ?」

 少年は少女の手を取り彼女を立たせようとするが、腰が抜けたのか立とうとしない。

「このむらの娘じゃないよね、何処からきたの?」

「……ハナダシティ」

 うわぁ! と少年は両目をキラキラと輝きだし、興味深々に彼女を見ている。

「都会の人かぁ、初めて見たなぁ! でもどうしてこんな所に?」

「あたしも興味があったからよ……」

 顔を俯きながら彼女は答える。

「ぱぱ達はジムで忙しいし、おねーちゃん達は自分の事で頭いっぱいだし。ちょうどぱぱ達の休みが取れたからマサラタウンって言うこの田舎町を探検しようとおもって……ってなんであたし、見ず知らずの人にこんなぺらぺらと喋ってるのかしら」

 其処からは探検している内に迷子になり、現在に至るのだった。

「そーなんだ……よっこいしょ」

 突然少年は少女を背負っておんぶをした、彼女は突然の事で戸惑って赤面する。

「な、な、な? あんた、なにしてるのよ!?」

「きみの家族のところに連れていくんだけど」

 需要に応じてない事をされた少女はふざけないで! と思わず叫んでしまう。

「べつにそんな事頼んでもないのに勝手な真似しないでよ! お子ちゃまの言う事なんて信じられるわけないでしょ!?」

「おれが勝手にやってるんだよ、それに──女の子一人をこんな森の中に置き去りにするなんておれにはできないよ」

 渋々と納得しながら少女は彼の背中に身を預けながら森を進む、しかし彼の温もりを肌で感じた少女は頬を赤らめてそれどころではなかった。

「──カスミー!」

 森の入口から焦ったような声が聞こえる、その方向を見ると10代前半程の金髪の少女が此方に気付いて叫んでいる。

「もしかしてきみのおねーさん?」

「うん……いちばん上のね……ありがとう、ここまで連れてきてくれて」

 俯きながら少女は礼を述べた、それに対して少年は彼女に微笑んだ。

「だいじょうぶ、おれはいつでもきみのことを待ってるよ」

 それはたった一つの、小さな約束だった。

 

 


 

 

「うう……?」

 瞼を小さく開けるとまだ明るい青空が太陽光と共に差し込む、その隣にはピカチュウが座っている。

「ピカピ!」

「ピカチュウ…? それに──」

「サトシ、やっと起きたのね」

 自分の左隣には一人の少女がいた。オレンジ色のボブヘアーにラッシュガードを羽織った美少女──最後に会った時と印象が変わったが、それが誰なのかサトシは知っている。

「カ、カスミ…!?」

「久し振りね、あんたとピカチュウを一緒に釣り上げた時は吃驚したんだから!」

 心配そうな顔で言われてこれまでの経緯を思い出し、ゆっくりと身体を起こし周囲を見渡す。

「こ、此処って…!」

「懐かしいでしょ? 私達が初めて会った釣り場よ」

 運命なのか、それとも偶然なのか。奇しくもあの日と同じ場所、そして同じ様に助けられてしまった様だ。

「大体何で川から流れてきたのよ」

「ロケット団とオニスズメ達に襲われたんだよ、そう言うカスミこそどうして此処に?」

 その瞬間、彼女の表情が曇った。

「……この間のポケモン・ワールド・カルナヴァルの開催宣言、マサラタウンが襲われたって聞いて向かっていた所だったのよ。あんたが心配でジムの仕事を放り出して、安否が気になって仕方なかったんだから!」

 泣きそうな表情で叫ぶカスミにサトシは目を見開く、彼女の目が一滴の雫が岩に落ちる。

「……ごめんなカスミ。それに俺の為にわざわざ駆け付けてくれて、ありがとう」

「御礼を言われる事じゃないわ。あんたがこうして無事でいるって事は、マサラタウンは無事って事でいいんでしょ?」

 問い掛けられた言葉にサトシは頷く、その返答を聞いてカスミも肩の荷が下りたのか深く息を吐く。

「ベーイ!」

 甲高い嘶きが耳に響く。振り返ってみるとその先には土煙を上げてベイリーフが走って来た。

「ベイリーフ、んごっ!?」

 走ってきたベイリーフはそのままサトシを押し倒して仰向けになった彼に馬乗りになる、その後方からフカマル、オニゴーリ、チャオブーがやって来た。

「皆、心配掛けてごめんな」

「ベイベイ! …ベイ!?」

「ベイリーフ、皆も久し振りね」

 フカマル達が喜びの声を上げ、ベイリーフだけ劇画みたいなリアクションで驚いていた。

 

 


 

 

「は?」

 釣り場から離れ、事の経緯を説明されたカスミは唖然として口を開ける。

 マサラタウンで起こったありのままを話したが、一番無視出来ない話題に目を丸くなってしまう。

「は?」

 目の前の彼は嘘をついている様子がなく、これが紛うことなき事実だとカスミは唯々受け止める他なかった。

 

 

「ポ、ポ……ポケモンマスターは実在していたの?」

「嗚呼」

「しかも…初代世界チャンピオンでママさんの幼馴染、そのママさんも元はベテランのトレーナー…?」

「うん」

「ちょ、ちょっと待って、情報が凄過ぎて頭がついていけないんだけど!」

 それだけで情報処理が追い付かず軽くショートしそうで、カスミは軽い混乱状態に陥っている。

 取り敢えず深呼吸して落ち着かせ、ふう…と息を吐くのだった。

「…それにしてもデザイア…だったわね、何を目的に動いているのかしら? それと同時期にポケモン・ワールド・カルナヴァルの開催、ポケモンリーグ委員会は何を考えているの…?」

 明らかに常軌を逸脱しているとしか思えない世界情勢、何か裏があると思うがそれは誰にも分からない。

「そう言えばカスミ、カスミはカルナヴァルに参加登録してるの?」

「あったり前でしょ? ジムリーダーも参加出来ると聞いた以上、私も自分の腕がどれだけ通じるか知りたいもの」

 得意気にドヤ顔で紡ぐ彼女は上機嫌だ。

「それにあんたが無茶な真似をしない為、手綱を引く必要があるじゃない」

「もしかして……一緒に旅してくれるのか!?」

 理由がどうであれ、自らの旅路に同行する事を察した。

「宜しくね、サトシ」

「嗚呼、また宜しくな!」

 二人の少年少女は互いに握手を交わす、ピカチュウも嬉しそうに嘶いた。

 この無限な空の下、彼の果てしない旅に一人加った。

 旅は道連れ…世は情け、秘めたる想いを胸にサトシ達は新たな一歩を踏み出した。

 

 


 

 

「グエェェ…!」

 許さん、絶対に許さん。

 群れの仲間から自ら離れ、一体のオニスズメは激しき怒りを燃やして飛び舞う。

 あの人間共の諍いのとばっちりを受け、その報復をするべく奇襲を掛けた。だがあの人間の小僧が自ら川に飛び込み、仕返ししようとしたが、小僧の仲間であるポケモン共に妨害された。

 オニスズメは自らの意思で群れを去り、あの小僧へと報復するべく飛び続ける。

 仲間の下を去った事に後悔はない、この激情は収まる事は出来ないのだから。

 

 

 そんな時だ、地上から一個のモンスターボールが飛んで来たのは──

「グエッ!?」

 既に満身創痍だったオニスズメは避けることなくボールをぶつけられる、そして開かれたモンスターボールはオニスズメを吸い込んでいった。

 モンスターボールは地上に落下してカタカタと微動、やがてボールは微動が弱まって収まり、赤いランプが消える。

「……どう言うわけか知らないけれど、オニスズメGET完了ね」

 モンスターボールを手にした一人の少女は、氷の様に冷たい眼差しを向けて呟く。

「激しい怒りを燃やしたいなら、私と共に来なさい」

 微風は静かに彼女の茶色の髪を揺らし、木葉は空へと舞っていく。

 

 

 To be continued

 

 

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