ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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#12 敵視してくるあの娘は新たなライバル

 蒼穹の下、風の向くままにサトシ達はタケシを迎え入れて、クチバシティを目指して旅を続ける。

 トキワの森近郊にあるディグダ達が掘ったされる大きな穴、それは奇しくも偶然か──クチバシティに通ずる道だと言う情報を掴んだ。

 その真偽を確かめるべく、彼等は現地へと足を運んだ。

「ピッカ!」

 サトシの肩に乗るピカチュウが指を差す、その指差す場所には人が入れそうな空洞の入り口が確かに存在している。

「あれが話に聞いた穴…?」

「ポケモンセンターで聞いた話と一致している。ディグダの掘った穴だから別名、ディグダの穴だな」

「あの空洞を通ればクチバシティまで近道ね」

 此処を通ればクチバシティまで目先のルート、ニビ・ハナダを迂回するルートを進めるのも旅の醍醐味だが近道するのも悪くない。

 サトシにとっても嘗てリサーチフェローとして過ごした町である為か、本人も久し振りに訪れるのか笑顔を綻ばせていた。

 

 

「ちょっと待ちなよ」

『?』

 不意に声を掛けられて一同は振り返る、其処には如何にも高級感を醸し出したスーツを着た少年が立っていた。

「君は?」

「やれやれ…この僕を知らないとは、君達イモ臭い下々に特別に紹介して上げるよ」

 少年はサトシ達を鼻で笑い、片手で前髪を掻き上げる。

「僕の名前はオウガ、この周辺は僕の家の所有地なんだ。此処を通りたければ僕がパパに口添えを──」

「ねえサトシ、クチバシティにはお友達がいるのよね?」

「嗚呼。ゴウって言う相棒さ、世界中のポケモンをGETしてミュウに会うのが夢なんだ」

「ゴウ……もしかしてその子って、インテレオンを連れた子?」

「何だカスミ、ゴウを知っていたのか?」

「ハナダジムに来た事があってね、インテレオンを触るのを許してくれたわ」

「確かサクラギ研究所には彼のポケモン達が預けられているんだったな。ポケモンドクターとしてポケモン達の健康を──」

「っておい! 無視するなよ!」

 少年──オウガの話に耳を傾けずに歩き出すサトシ達、オウガは慌てて叫んだ。

「何なんだよ」

「だから無断で通るなって言ってんだよ! 土地の持ち主である僕のパパの許可なしで通るなんて出来ないのさ!」

「そんな事、誰が決めたのよ」

「この道はポケモン達の暮らす場所であると同時に移動手段……君の我儘で道を塞ぐなんて許されない」

 オウガは青筋を浮かべる。こんなイモ臭い貧乏人共を簡単に通してしまったとあっては、己の面子が立たない。

「だったら金をやるよ! 僕の家は金持ちだからね、幾らでもくれてやる」

 懐から札束を取り出すとそれを彼等の足下に放り込むオウガ、しかしサトシ達は哀れみの目線を向けるだけで拾おうと思わなかった。

「な…何だよ、何で拾わないんだよ? 一体何が欲しい? 金塊か? 財宝か? それとも地位と権力か!?」

『………』

「……おい、いい加減にしろよ! この僕が此処までやったんだぞ、無視するんだったらパパに言いつけて──」

 何とも言えない醜い一面をオウガは隠そうとしない。あくまで沈黙を貫き通すサトシ達はもう我慢の限界が近い、目の前のドラ息子に対して口を開こうとする。

「下らないわね」

 そんな時だった。その人物が現れたのは──

 

 

「…何?」

 オウガは青筋を浮かべて振り返る、其処には一人の美少女が立っていた。

 セミロングの茶色の髪にサファイア色の瞳、緑色のシャツと黒のスカートを身に着けている。

 眼光は恐ろしい程に鋭く、今にも獲物を射殺さんとばかりにギラついていた。

「……っ! 何が言いたいんだよ、君」

 自分好みの女と見て軽く唾を飲み、オウガは少女に問い掛ける。

「彼等の代わりに言って上げるわ。貴方みたいな金に溺れた奴から得る物はないと、親の七光りで人前に恥を晒す貴方など見るに耐えないと──彼等の目はそう言っているけれど」

「何だと!? お前等、この僕に逆らうのか!? 僕に逆らうと言う事はつまり、カントーポケモンリーグの役員である僕のパパに楯突くって事だぞ!」

「そんなの知らねえよ?」

 流石のサトシも不快感を露わにする。

「偉いのは貴方じゃないでしょ」

「それを履き違えるとは……恥知らずもいい所だな」

「う……うるさいうるさい! お前等なんか、お前等なんか、パパのポケモンにやられてしまえば良いんだ!」

「ポケモンさえも人任せか……少しお灸を据えて上げようか」

「行け!」

 オウガがモンスターボールを投げ、コブラポケモンのアーボックが姿を現す。

「野良バトルか…貴方にはこのポケモンで充分よ」

 少女はモンスターボールを投げる、中から磁石ポケモンのコイルが姿を見せる。

「アーボック、毒々の牙だ!」

『え』

 オウガの指示にサトシ達は真顔になる。ブラフなのか、はたまた素でやっているのか。

 困惑しながらもアーボックは口を大きく開け、コイルに噛み付いた。

「アーボック! それ噛み砕くだろ、毒々の牙だって!」

「ポケモンの方が理解があるわね…貴方、バカでしょ?」

「何!?」

「毒タイプの技は鋼タイプのコイルに効果は無効、教科書にも載っている位の常識よ」

「っ! わ、忘れてただけだ!」

 アーボックは口を開けてコイルを離す、そして更なる攻撃を仕掛ける。

「穴を掘る!」

 言われるがままにアーボックは地面を掘って穴の中へと入る、少女は唯々そのまま沈黙に徹している。

「どうだ! 電気・鋼タイプは地面タイプの技に弱い! このバトル、僕とパパのポケモンの勝ちだ!」

 オウガはあくまで他力本願を貫いている。自分の力と勘違いしているのか、厚かましくも高笑いしている。

 そして次の瞬間、コイルの背後の地面が割れて紫色の影──アーボックが飛び出した。

 だがこの瞬間を少女は待っていた。

「雷」

「……え?」

 告げられた指示にコイルの両手の磁石に電気が集まり、そのエネルギーが発射されてアーボックの身体を射抜く。

 突然の攻撃にアーボックはまともに浴びていき、その巨体は地に伏せる。

「ノ……Nooooo! アーボックが、パパのアーボックがぁ!!」

「い、一撃で…!? トレーナーの腕は兎も角、あのアーボック…かなりのレベルだったのに」

「そんなポケモンを簡単に……一体あの娘は何者なんだ?」

 彼女の腕は明らかにベテラントレーナーの域だ。下手するとジムリーダー、もしくは四天王に届くかも知れない。

「ま、まぐれだ! まぐれに決まってる!」

 オウガは目の前の彼女の実力を見抜けず、次に投げたモンスターボールからジグザグマを繰り出す。

 しかもそのジグザグマは黒と白の体色をしている、ガラル地方に生息するリージョンフォームのジグザグマだ。

「ジグザグマか…コイル戻りなさい、イーブイ…相手してやりなさい」

 対して少女はコイルを戻し、8タイプの進化形を持つイーブイを繰り出す。

「ジグザグマ! スピードスターだ!」

「此方もスピードスターよ」

 瞬く間に無数の星が相殺していく。だがイーブイのスピードスターが上回っており、全てジグザグマに命中していきダメージを与える。

「ジグザグマ!!」

「所詮借り物のポケモンだとこの程度ね……イーブイ、アイアンテール」

「ブイ」と返事すると銀色に帯びた尻尾でジグザグマを吹っ飛ばす、転がっていったジグザグマはそのまま気絶する。

「ま、まだだ! 僕は負けてない!」

「いえ、負けてんのよ。彼等に関わった時点で」

「うるさいうるさい! さっきから意味の分からない事言いやがって、どうして其奴等に近付いただけで決め付けてんだよ!」

 ジグザグマを戻し、今度はイッシュ地方の岩タイプ・高圧ポケモンのギガイアスを繰り出すオウガ。

(あ〜〜……もしかして)

(サトシの事に気付いてないのか)

(……?)

 だからあんな厚顔無恥な態度を取れたのか、カスミとタケシはやっと納得する。

 少女はイーブイを戻す、次に繰り出したのは水・フェアリータイプのマリルリ。

「ギガイアス! そんな奴、踏み付けちゃえ!」

 最早余裕もないオウガは無謀にも特攻を指示、ギガイアスは足を大きく上げてマリルリを踏み潰そうとする。

「マリルリ、馬鹿力」

 しかしマリルリは鉱石で出来ているギガイアスを掴む、更に持ち上げて大きく振り回す。

「な、な、なああああっ!?」

 回転は増していき、マリルリはギガイアスを空高く投げ飛ばす。

「ハイドロポンプ」

 可愛らしい口から巨大な水流を放ってギガイアスを飲み込む、直撃を受けた上に効果抜群のダメージを受けたギガイアスは力なく墜落。

「う…嘘だ、こんな……こんな事って」

 認めたくないと自分に言い聞かせようとするオウガ、だが目の前の現状が事実を物語っていて覆せない。

 父親のポケモンが悉く倒されてしまい、先程までの傲慢なまでの自信が砕かれて言葉にならない恐怖が彼の心を染める。

「ヒッ、ヒイイイイイッ! もうしません、もう二度と悪い事しませんんんんっ!!」

 目の前の美少女に恐れをなし、厚顔無恥な坊ちゃん育ちの少年は絶叫しながら走り去った。

 

 

「あはは……何か可哀想だけど、自業自得ね」

 ミミロルの如く逃げ去ったオウガを憐れみ、サトシ達は同情の念を送った。

「ありがとうな助けてくれて」

「……私の行く道にあの小物が邪魔だっただけよ」

「それでもありがとう。俺は──」

「マサラタウンのサトシ……世界チャンピオンでしょう」

「! 君は…?」

「セリカ…タマムシシティから来た。本物を見るまでは胡座をかいてる唯のガキだと思っていたけど、少々見縊っていたわ」

 サトシの横を通り過ぎ、彼女──セリカは歩き出す。

「精々期待しないでおくわ。何れはポケモン・ワールド・カルナヴァルでね」

 それだけ告げてセリカは空洞の中へと入っていき、その姿は闇に消えていった。

「何よあの態度! 幾ら強いからって」

「まあまあカスミ、通れるようになったんだからいいじゃないか」

 腹を立てるカスミをタケシが宥める中、サトシは彼女が見えなくなった空洞の入口を見つめる。

「セリカ、か」

 思わぬ妨害を退け、嵐のように去った新たなライバルの少女・セリカ。

 彼女との出会いはサトシに何を齎すのか、それはまだ何も分からない。

 攻撃的な態度を取る彼女が気になるも、サトシ達はクチバシティを目指す。

 

 

 To be continued

 

 

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