ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE 作:虎武士
晴れやかな青空の下、カントー地方の西部──セキエイ高原。又はセキエイタウンと呼ばれる、一つの都市。
カントー地方のポケモンリーグ委員会総本部兼ポケモンリーグ・セキエイ大会の開催地として知られ、ポケモントレーナー達が各地のジムバッジを揃えて行き着く終着点でもある。
近年にはポケモントレーナー達の教育機関として私立セキエイ学園が創立され、年若き者達が様々な勉学を励んでいると言われる。
リーグスタジアムを下から見下ろす事が出来る巨大な金字塔。全長15メートル、半径3メートルと言うピラミッドを彷彿とさせる建造物。
ポケモンリーグ実行委員会の総本部ビルだ。
無理矢理侵入しようとする者がいるならばその者は忽ち警備の人間に捕まり、問答無用で警察又は国際警察に引き渡されるだろう。
そして今──ある者達が集まろうとしていた。
「そろそろ刻限でしょうかねぇ」
ビル4Fに位置する会議室。
円形状のテーブルにある椅子に腰掛け、リーグ実行委員会会長・タマモが鎮座する。
青色の和装を普段通り纏い、これから訪れるであろう来客達の到着を待つ。
「会長……カントーリーグチャンピオン様、イッシュリーグチャンピオン様が御到着されました」
控えていたSPの一人が告げる。同時に扉が開かれ、二人の人物が入ってくる。
「ようこそ、ポケモンGメンのワタルさん。それと竜の里のアイリスさん」
蠱惑的な笑みを浮かべ、真紅の髪を持つ青年・カントーリーグチャンピオン──ワタルと濃紫色の髪の少女・イッシュリーグチャンピオン──アイリスを見据える。
ワタルとアイリスは鎮座する美女の迫力に唾を飲み込む。
「続けてシンオウリーグチャンピオン様、カロスリーグチャンピオン様、ホウエンリーグチャンピオン様が同様に御到着されました」
次に入って来たのは礼服を纏った銀髪の青年──ホウエンリーグチャンピオン・ダイゴ。
白を基調色とした衣装を纏う女優──カロスリーグチャンピオン・カルネ。
黒を基調色とする衣装を纏う考古学を担う才女──シンオウリーグチャンピオン・シロナ。
次々と各地方のリーグチャンピオンが集ってくる、そして当然この男も。
「最後に……ガラルリーグチャンピオン──ダンデ様がお越しになりました」
紫色の長髪の男──前世界チャンピオンにしてガラルリーグチャンピオン・ダンデが足を踏み入れ、各地方のチャンピオンが席に着く。
「改めて御挨拶を。この度ポケモンリーグ実行委員会会長に任命されました、タマモと申します」
以後お見知り置きを、と深々と丁寧に挨拶するタマモ。
「此方こそ…ジンさんから話は伺っています」
「そうですか。あ、別に自然な態度で構いませんよ? 私はまだまだ若輩者ですので、話し方も砕けた方で結構です」
「あらそう? なら宜しくね、タマモさん」
飄々とした彼女の振る舞いにチャンピオン達は納得する。
あの宣言とは打って変わり、自然体に接してくるタマモは満面の笑みを見せてくる。
「チャンピオンの皆さんもご存知かと思いますが、数日前にマサラタウンがデザイアなる組織に襲撃されました」
「ええ。オーキド博士の研究所が建てられている場所で知られているわね」
「それに我々が良く知る彼──サトシ君の出身地でもある」
チャンピオンの面々は痛ましい表情となる。
「私が皆さんに召集を掛けたのは他でもない……デザイアの調査或いは対処についてです」
タマモはスマホを指でスライドする、全員の頭上に立体モニターが映し出される。
「知っての通りここ近年、各地方で起こっている現象と事件。チャンピオンの方々は一連の出来事に対処に当たっていると重々承知しているでしょう」
タマモはスマホをタップしていき、数々のマークがモニターに表示される。
「砂漠化が進行するジョウト、大地の腐敗や海の汚染が続くホウエン、大地の陥没が続くシンオウ、非常識な連中が続出するイッシュ、植物による攻撃に見舞われるカロス、ウルトラビーストの出現が相次ぐアローラ、ダイマックスポケモンの出現が相次ぐガラル…」
読み上げるだけでもキリがない現象に頭を抱えたくなる案件ばかりだ。
「恐らく近い未来、カントーも例外ではないかも知れません。現にデザイアはカントーは勿論、各地方に於いて数々のトレーナーやポケモンを闇に葬っています。だからこそ我々は対策を講じる必要があります」
可及的迅速に、そしてなるべく一般トレーナーに勘付かれないように事態収束を心がける必要がある。
だが…懸念する材料が一つ。
「サトシ君の存在か」
何かがあればポケモンの為に身を呈する事をあの少年は厭わない、そしてポケモンと心を通わせる才覚を彼は無自覚に持ち合わせているのも事実。
「今回ばかりはサトシ君を巻き込むわけにはいかないね」
「はい…確かに彼奴に今まで助けられて来ましたけど、今回は無茶で勝てるような相手じゃありませんものね」
「同時に危うい一面もあるわね。世界チャンピオンに君臨するとはいえ、彼は一人の少年。裏社会の勢力を相手取るなんて自殺行為にも程がある」
何も信用がないわけではない。チャンピオン達は彼の事を良く知るからこそ、危険から遠ざけたいと言う慈悲深い配慮だ。
「だがサトシの存在は大きなものとなっている。数多の裏組織を壊滅させ、数多くのポケモンと心を通わせる力。彼の存在を疎ましく思う者もいれば、兵器として利用する者もいるかも知れない」
ダンデの言葉も理に適っている。彼のあの影響力は世界にどれだけ及ばすのか、考え方次第では幸運と不幸を巻き起こすだろう。
「其処で私は考えました。サトシ君に監視を付けようかと」
「監視って……サトシを見張るって事ですか!?」
聞き捨てならない提案にアイリスは両手でテーブルを叩き、憤怒の形相でタマモを睨み付ける。
「だって仕方ないじゃないですか〜、手の打ちようがないんですから。人選は何処から選出するかですけれど」
この場で怒りを露わにしても無駄と判断し、アイリスは不貞腐れつつも席に着いた。
「ならばポケモンGメンから一人、腕の良い人物を選出しよう」
「良いんですか? 其方から人員を割く事になりますが」
ワタルは「心配いらない」と首を左右に振って肯定する。
「幸いにもその人物はカルナヴァルにエントリーしている為、一人有能な人物が割いても何の影響もない筈。……唯、問題なのはその人物の悪い癖なんだが」
意味深な台詞と共に息を吐くワタル、その人物はそれ程までに問題児なのだろうか。
チャンピオン達が首を傾げる中、SPの一人がタマモに耳打ちする。
「会長……そろそろ」
「そうですね。……では皆さん、そろそろお開きにするとしましょう」
妖艶に微笑んでタマモは言う。
「デザイアの事、各地方の異常現象、思う所はありますでしょうが、今はこのポケモン・ワールド・カルナヴァルを盛り上げる事に尽力するとしましょう」
嘘も方便、何か思惑があるかもだろうが今はそれぞれが出来る事を続けるしかあるまい。
「では皆さん……次の会議にてお会いしましょう」
「会長……宜しかったのですか」
タマモは書類業務を会長室にて続ける中、待機するSPが口を開く。
「何がですか?」
「チャンピオンの皆様にお伝えするべきではなかったのですか、ある二つの懸念について」
タマモは敢えて口にしなかった。だからこそ留める事に意味があるのだ。
「一つは……オレンジ諸島にある裏マフィア──セントラルクロス、彼等は義理と人情を心掛けていますが、時には逆らう者には徹底的な制裁を下すのが彼等のルール。ロケット団は勿論の事、アクア団やマグマ団、ギンガ団と言った組織に資金を流していたと聞きます」
「そうですね」
「もう一つは……例のサトシと言う少年についてです。ジン殿曰く人外を越えた力でポケモンを使役し、デザイアの人間を怯ませた事」
タマモも師から聞いた時はあり得ないと失笑した。だが本人と対面した際、波導を通して眉唾物ではない事を悟った。
そしてサトシの波導の巡り方は並の人間とは決定的な違いがある。
並の人間は全身の血流を活性化させたエネルギーから来ているが、サトシのは──魂から木の根が根付いたように波導を流している。
(あれはどう言う事でしょうね)
現時点では情報が少な過ぎる。
一先ず今は、傍観する必要がある為に何とも言えない。
小さな疑問を浮かべつつも、タマモは書類業務を続けるのだった。
To be continued