ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE 作:虎武士
〜ホゲータ〜
『ララララ〜なんて素敵な〜♪』
赤い体躯を持つ小さな鰐の炎ポケモン──ホゲータは歌う。
ステップしながら跳び回り、テンポ良く跳んで口ずさむ。
『ララララ〜僕のパラダ〜イス♪ ララララ〜、ララララ〜それは〜♪ お・ね・え・さ・ん♪』
何だあれ、と訝しんだ眼差しをタケシのポケモン達は向けている。
『……何してんだ彼奴』
中座りの体勢でグレッグルが訝しむ。
『アレ……完全にタケシお兄ちゃんの真似だよね…?』
ハピナスも目を丸くして言う。
『嗚呼、タケシだな』
ハガネールも呆れている。
『おーい坊主、何で俺らのトレーナーの持ち歌歌ってんだ〜?』
クロバットが翼を広げてホゲータの近くまで移動する。
『え? だってタケシさんって、凄い人なんでしょ? 色んなポケモンの怪我や病気を治すお医者さんだって聞いたよ?』
『確かにそうであります、確かにそうでありますけど』
『何でそんな歌を歌ってるのかなって思うんだけど……』
ウソッキーとハピナスが怪訝な眼差しを向ける。
『後、人間の♀にプロポーズするけどその度に振られているけど、それでもめげないよね?』
『まあそれがタケシ(さん・お兄ちゃん)だから』
どうか変な影響がないように、と心に念じてウッキウキに踊りながら歌うホゲータから距離を取る面々。
『ったく、あのヤローの弟子が増えたらろくな事にならねーな』
『そう言いながらグレッグルお兄ちゃんは制裁しているよね』
グレッグルは外方を向いて『めんどくせーだけだ』と言う。
『しかしタケシさんの良い相手は一向に見つからないでありますなぁ、自分が思い当たる人間と言えば……フロンティアブレーンのアザミさんぐらいであります』
糸目がチャームポイントだっただけで、それ以外は興味なかった事を思い出してウソッキーは苦笑いする。
『ハガネールお兄ちゃんとクロバットお兄ちゃんの方はどうですか?』
『二人程いたぜ、一人はオレンジ諸島のウチキド博士だぜ』
『あー、そういやイシツブテの旦那から聞いたことあったっけ』
『カントー地方から離れた島々のポケモン研究者…ですよね? そう言えばタケシお兄ちゃん、その人の話題に触れると「聞かないでくれ」と落ち込む事があるって』
『要するに振られたって事かよ』
揶揄うように笑うグレッグル、ハピナスはキョトンとしている。
『もう一人はポケモンブリーダーのユキさん、タケシにとって憧れの存在だ』
ハガネールが懐かしそうに語る。
『あー、ロコンちゃんか……懐かしいな』
『あ、その方々の事は聞いてます』
『彼奴が尊敬する程の人間の♀に、俺らの先輩に当たるポケモンだったか?』
『そうそう、カントーからジョウトまで一時期預かる形で旅した仲間だぜ。あの頃は色々あったな〜』
クロバットがニヤけた表情で飛び回る。
『……実を言うとクロバットにも浮いた話がある』
『ファッ!?』
不意打ちとばかりに言い出すハガネール。
『確かジョウトのポケモンの医者を務めるアンヌ…だったか? 彼女の♀のズバットと共同作業した事があってな──』
『わあああ! わあー! 何でそんな事知ってんだ! アンタあの時ボールの中にいただろ!?』
『ピカチュウから聞いた』
『あの電気ネズミィィィ!!』
先輩達の話にハピナスは頬を赤くして目を輝かせ、グレッグルは外方を向いて頬袋を膨らませるのだった。
その片隅でホゲータは歌いながら踊っていた。
〜クワッス〜
サクラギパークの湖にて、一匹の軽鴨ポケモンが前髪を整える。
『ふっ、湖に水面に映る僕……今日はより一層美しいな』
酔いしれた様子でクワッスは前髪を撫でる、不敵な笑みを零して歩き出す。
『ルックスも良くて顔も良い、人間やポケモンの♀達は皆僕にときめいてハートも釘付け。我ながら完璧なプランだ』
ドヤ顔で笑みを浮かべているクワッス、不純な動機を語って歩き去る。
『……あのさ、凄く濃いね。クワッス君って』
その様子を見ていたのはカスミのポケモン達、代表してコダックがボソリと呟く。
お前が言うなと言うツッコミを心に仕舞い込み、彼等は語る。
『あれほど酷いレベルのナルシスト初めて見たわ』
『うん……カスミが大分マシに思えてきた』
サニーゴとニョロトノが哀れむように、深く溜息を吐く。
『ハッハッハッ! だが私に及ばないがね!』
自身満々に豪語するポケモンが一体、星形ポケモンのヒトデマンだ。
一応カスミのポケモンの中でもトサキント、スターミーと並ぶ古株だが…ハッキリ言って残念な性格をしている。
『ヒーローたる者、外見だけでその者の力量を測るものではない! 私のように常に優雅に美しく、そして正義を貫いて──』
『いやオッサンの自慢話普通に飽きるわ』
『オッ…!? 君ぃ、年長者の話は最後まで聞き賜えよ!? そもそもヒーローと言うものはだね』
ウデッポウの毒舌にヒトデマンはグチグチと蘊蓄を始める、その傍らでギャラドスが湖を泳いでいる。
『そう言えばこのパークってスイクンもいるのよね』
『そうみたいだけど、サトシ曰く滅多に姿を見せないとか…流石は伝説』
カスミが見たらきっと正気でいられないだろう、と思わず想像する。
『そういえばさぁ、サトシ君ってカスミちゃんを意識し始めてるよね〜』
『分かる分かる! あの鈍感男、とうとう恋を自覚し始めたみたいね』
『出会って幾年、あの少年も漸く思春期に入ったのだな。我々の姫の魅力に気付かぬ人間の♂など、ポニータに蹴られるのが定石だ!』
『世界王者なんて持て囃されているけど、カスミちゃんにはサトシさんがお似合いかもね』
『俺様はそんなに付き合いはねえけど、元鞘に収まったっつーことだな』
ギャラドスを加えたカスミのポケモン達は肯定し、影ながら本人達の恋を応援する。
『問題はカスミだよね。本人は全然気付いていないけど、何れは…ね』
ひそひそと話し合うカスミのポケモン達、草影からクワッスがその様子を聞き耳を立てていた事に気付かずに…。
『ほほう……彼女は水ポケモンを愛する人種だと聞いていたが、同時に一人の♂に愛されている人間のようだな』
クワッスはカスミの事を評価し、罪作りな♀だとクワッスは溜息を吐く。
〜ニャオハ〜
ニャオハはポケモンセンターの敷地内にあるベンチにて、同敷地内のバトルコートにてポケモンバトルを観ていた。
バトルコートではサトシが一人のトレーナーにバトルを申し込まれ、その挑戦を受けている途中である。
相手の繰り出したエスパーポケモン──スリーパーに対し、サトシはノーマル・飛行タイプのヨルノズクで対抗。
バトルの流れはサトシが優勢に進んでおり、相手のトレーナーはスリーパーに指示を出しているも、ヨルノズクは頭をフル回転させてスリーパーを翻弄している。
「ヨルノズク、エアスラッシュだ!」
『任されよ』
翼から放たれた風の刃がスリーパーをふっ飛ばし、そのまま倒れ伏す。
『スリーパー、バトルOFF! よってこのバトルのWINNERは、マサラタウンのサトシ!』
カルナヴァルの公式バトルに勝利したサトシはヨルノズクを褒め称える。
『サトシの勝利だね!』
『サトシもそうだけど、ヨルノズクのじっちゃんもナイスプレー! ってことで勝利のダンスを披露するね!』
『ニッシッシッシ……後で揶揄ってやろっかな〜』
『揶揄うと言う名のイタズラだろ、アンタの場合……』
ピカチュウは勿論の事、ワニノコとオニゴーリ、ワルビアルもその勝利に笑みを零している。
『やるじゃん、人間のくせに』
ニャオハは飄々とした態度でサトシをそう評価する、ピカチュウ達はやれやれと言った様子で苦笑いする。
『素直じゃないねえ』
『人間なんて狡賢いじゃないか。自分の事しか考えてないしセコいし、何より自分達の都合が悪くなれば僕らを道具として見てなければ平然と切り捨てる。どーせあのサトシってのもその部類でしょ』
スレている所為か淡々とニャオハは言う。ピカチュウは『それは違うよ』と隣に座り込む。
『サトシは優しくて僕らポケモンの為に自分の身を厭わない、そして生粋のポケモンバカだよ』
『……褒めてるのか貶してるのか、意味不明な言い分だね』
『儂等は皆誰もがあの小童に絆され、そして信頼を寄せておる』
バトルを終えたヨルノズクも加わり、全員が笑みを浮かべる。
『人間の身勝手な都合で捨てられた奴もいれば、サトシに惚れ込んで着いてくる奴もいるよ〜』
『俺様みてえに住処を飛び出してきた奴もいりゃあ、訳アリの奴もいる』
『サトシのポケモンになった奴はみんなクセが強くて、そして熱い心を持った連中ばっかりだもんね』
ワニノコにオニゴーリ、ワルビアルもうんうんと頷いていく。
『取り分けクセが強いと言えば、我等がリーダーかも知れんがな』
『否定出来ないから言い返せない……まあ兎に角、人間はみんな君が思っているみたいな存在じゃないってこと。これから君が見極めていけばいいんじゃないかな』
『……まあ、気分が向いたらね』
ニャオハから見ればサトシは無邪気な煩わしい人間かも知れない、だが彼のポケモン達から聞いた印象的にはそこまで悪意など存在しないだろう。
『……悪くもない、面白い奴かもね』
そう言うニャオハはぶっきらぼうでありながらも、何処か晴れやかな笑みだった。
〜後日談〜
《そうでしたかぁ、まさか世界チャンピオンがニャオハ君達のお世話をしてくれるとは感慨深いですねぇ》
「嗚呼。私もサトシは勿論、その友人達に彼等と触れ合う機会を与えて良かったと思っているよ」
研究所の大型スクリーンにてサクラギはスクリーンに映る男性に報告と結果を伝える。
黒の縁が入った眼鏡を掛け、白と黒の二房の短髪に白衣を羽織った優男は緩やかな口調でサクラギからの報告に満足している。
『あ、ジニア先生だ〜』
『ふっ、相変わらず掴みどころが分からない御仁だ』
『単に平和ボケしてるだけでしょ』
自分達をこのカントーに送った男性──ジニアの姿にニャオハ達は若干笑みを浮かべる、ニャオハだけは皮肉で言っているが。
「さてそろそろ期間限定だったが、パルデアに送り返さないといけない。ジニア、すまないが──」
《サクラギ博士…どうやら彼等、寂しそうですよぉ?》
ジニアの指摘にサクラギは振り返る。
『え〜!? もっとタケシさんといたいよー!』
『まだカスミ嬢と有意義な時を過ごすのもいいが、致し方なし…か』
『別にあの人間といるのも悪くないけど、なんかスッキリしない』
ホゲータも、クワッスも、そしてニャオハも。
寂しくも、何処か名残り惜しい雰囲気を醸し出していた。
《サクラギ博士…前々から考えていたんですけどぉ、世界チャンピオン達に…》
「嗚呼……どうやら私達は彼等から“居場所“を奪おうとしていたみたいだ」
気付かぬ内に親心を身に着けていた事にサクラギは後味が悪そうに苦笑する、こうなると分かっていたのかジニアも《えへへ〜…》と笑みを浮かべていた。
《どうやら決まっちゃいましたねぇ〜》
サクラギも無言で静かに頷き、最早何も言うまい。
「後はサトシ達がどのように選択するかだね」
To be continued
次回からは第一章の大詰めで急展開、そしてポケモンピンポンで熱中のあの娘も再登場します。