ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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#17 "NDT"

 空が晴れ渡るカントー地方の港町、クチバシティへ向けて一つの物体が空を飛行していた。

 背中と足裏から発するバーニアが火を吹き、凄まじいスピードで飛行する。

 その"存在"の真横を、一機の飛行機が横切る。

「え、え!?」

「な、何あれ?」

 飛行機の乗客達は騒然として窓に釘付けとなり、操縦士達も窓に映る()()は──彼等の脳裏に焼き付いた。

 

 それはポケモンと思えない容姿だった。

 

 全長200cmはある銀色の機械的な身体、両腕には鉤爪のアーム、頭部はドラゴンポケモンを模しており、背中は機械的な翼、そして臀部には細長い尻尾が長く揺れている。

 

 所々黒いラインが入っているが、問題は何故、あのような存在が飛空しているという事だ。

 

《ジジジ……ガガガガ……指令……抹殺……》

 

 機械的な音声が流れる、その“存在“にあるのは──明確な指令のみだった。

 

《……指令……人間トポケモン共ヲ抹殺……》

 

 無機質な音声を復唱し、その“存在“はクチバシティへ向けて飛行する。

 

 


 

 

「ギヒャハハハハ! どうじゃ、我が最高傑作は!」

 Dr.キリングの狂気じみた笑い声が研究室に木霊する。

 何処かにあるデザイアの研究施設にて、キリングは映された二つの画面に向けて言う。

 一つはカントーの上空を飛行する最高傑作のロボット、そしてもう一つにはデザイアのリーダーたる仮面の男が映っている。

《Dr.…あれが前々から示唆していた"作品"か?》

「左様。実際見せてやろうとお前さんに連絡しておいてよかったわい」

 キリングは計器を操作して“作品“の映る画面を拡大、その詳細のあるデータを表示する。

「ポケモンの凡ゆるタイプ・特性・能力を解析・分析・調査を行い続け、様々なデータを戦闘兵器として転用して完成に至った! 様々なポケモンを実験台に活用・破棄を繰り返してきたが、遂に日の目を迎えた!」

《………》

「それがこの完成形! Nemesis(ネメシス) Disaster(ディザスター) Tempest(テンペスト)……通称"NDT"というわけじゃ!」

《…破滅と災厄と騒乱…ありがちな名称だな》

 だがこれから起きる事を考えれば、その名は当てはまるだろう。

 

《しかし破壊と殺戮を楽しむのはいいとして……あの"NDT"とやらが戦闘データを得る為にも、護衛兼戦闘要員が必要じゃないかな?》

「ふん! 儂の頭脳を疑っておるのか!?」

《いや……もしも不確定要素──イレギュラーな事態、つまり失敗を招く様な事例が起きたとしたら…?》

 穏やかであるものの何処か圧を掛けるような指摘にキリングは言葉を詰まらせる。

「ギ、ギヒャヒャ……儂の頭脳は世界一じゃぞ? そんな事になるわけがあるまいて」

 冷や汗を流して頑なに否定するキリング、うっすらとその脳裏にそんな想像が思い浮かぶ。

《だったら私がそのガラクタの護衛についてもいいわよ》

 凛とした声がモニターから聞こえてきた。画面にピンクの長髪に右目が隠れた妖美な美女が映される。

《リリス……今何処にいる?》

「というかガラクタとは何じゃ、ガラクタとは! 儂の作品をバカにしとるのか!」

 さりげなく己の作品を愚弄されたキリングは怒鳴るも、その美女──リリスは澄ました顔で笑みを浮かべる。

 

《ガラクタはガラクタでしょ、お爺さん。今私はクチバ沖にいるの、丁度近くだから手伝って上げるわ》

《……いいだろう。だがやり過ぎないようにしてくれ》

《了解したわ》

 軽くウィンクしてモニターからリリスの映像が途切れる。

「ええい、あの小娘め! まあいいわい、精々"NDT"の戦闘力をその目で見るがいいわ」

 キリングは醜悪な笑みを浮かべる、計器を操作してモニターにクチバシティの街並みを映す。

 

 


 

 

『ええええええっ!!?』

 

 サクラギ研究所の玄関前でサトシ達三人の絶叫が轟く。

 朝食を済ませて突然の責任者から「朝食が済んだら研究室に来てくれるかい? 伝えたい事があるんだ」と告げられ、足を運んだ。

 そしてサクラギから告げられた言葉に三人は思わず驚きの声を上げる。

「ニャオハ達を……連れて行って欲しい!?」

「そ、そんな…パルデアに送り返す予定だったんじゃ?」

 カスミはどうしてなのか、と言った様子でサクラギに問う。

 

「本当はその筈だったんだけどね。だがニャオハやクワッス、ホゲータは寂しそうな様子だったんだ。このまま返してしまったら後味が悪くてね、向こうの知り合いとそれを話し合った結果、君達と一緒にいた方が良いと思ったんだ」

 研究者としての性か、実力のあるトレーナー……最も信頼の厚い(サトシ)とその仲間ならば良い方向へと育ててくれる、サクラギは確信を持って託したいと考えに至った。

 

 ホゲータは楽しげにタケシに。

 クワッスは優雅な足取りでカスミに。

 そしてニャオハはフンッと鼻を鳴らしてサトシに。

 

 それぞれがそれぞれの人間に近付き、じっと見上げて視線を合わせてくる。

「……これはもう一つしかないみたいだ」

「このまま別れても、後から着いて来ちゃいそうだものね」

「そうだよな」

 三人はモンスターボールを手にし、腹を括ってボールを握る力を強く込める。

「ニャオハ、クワッス、ホゲータ! これからもよろしくな!」

 三人は一斉にモンスターボールを投擲。ニャオハ達は自分から触れるとボールへと吸い込まれ、カタカタとボールが微動する。

 やがてボールの微動は収まっていき、赤いランプが消える。

『ニャオハ(クワッス・ホゲータ)、GETだぜ(GETよ)!』

「ピッピカチュウ!」

 ピカチュウも倣って決め台詞を言う。サクラギやキクナ、レンジはその光景を見守る。

「ありがとう三人共……所で、これからどうするんだい?」

「ああ、うん。最後にポケモンピンポンのジムに立ち寄って行こうと思うんです。あるポケモンに会う為に」

『ポケモンピンポン…?』

「ええ。そのあるポケモンは、一時期サトシのポケモンだったんです」

 

 

 

 クチバシティの一角に一際大きな建物があった。

 建物内にはピンポンのコートが設けられており、二匹のポケモンが己の腕や一部をラケット代わりにしてリードを繰り返していた。

 片方はホウエン地方の草ポケモン、タネボーの最終進化形──ダーテング。

 腕の葉っぱでボールを打ち返していた。

 もう片方はジョウト地方のノーマルポケモン・エイパムの進化形──シンオウ地方に於いてその存在を確立されたエテボース。

 エテボースは二房の尾を巧みに使ってボールを打ち返していく、負けじとダーテングも葉っぱで打ち返す。

「エェェェ……ボッ!」

 力の籠ったスマッシュが打たれ、取ろうとしたダーテングの反応速度が遅れ、ボールは壁に激突する。

 

「はいそこまで! エテボースにダーテング、良い反応速度だったぞ。次のピンポン大会もこの調子で頼むよ」

 審判を務めていた優男──オウはストップを掛ける、二匹は休憩がてら壁に寄りかかる。

(それにしてもエテボース……随分と上達してきたね)

 元々エテボースはあるコーディネーターの少女の、それ以前は今や世界王者の少年のポケモンだった。

 熱心にポケモンピンポンに打ち込む姿は感慨深いものがあり、これまで幾つかの大会に参加して好成績を出している。

(そう言えば……少し前にあったマサラタウンの一件を聞いた時は心配そうな表情をしていた、サトシ君の事が心配だったんだろうな)

 加えてポケモン・ワールド・カルナヴァル、少し張り切り過ぎている彼女は何方の下に戻るかも分からない。

 バトルか、コンテストか…暫しの間ならば元々の環境に戻すのも手である。

「……エボ? エボッ!」

 何かを感じ取ったのか、エテボースは突然走り出してジムを飛び出して行った。

「エテボース!?」

 オウとダーテングもその後を追ってジムを飛び出し、街中を駆けていく。

 


 

 クチバ港は作業員達による搬入作業が行われていた。

 時にはポケモン達の力を借り、手早く作業を終わらせようと皆順調に進めていった。

「……ん?」

 これから起きる事を知らずに。

「おい……何だあれ!?」

 作業員の一人が空を指差す、それに釣られて他の作業員もその方向へと振り向いてみた。

 その直後、目視出来ぬ程のスピードと飛翔音と共に()()は降り立った。

「な、何だコイツ…」

「ロボット…!?」

「す、凄え完成度だなァ……」

 作業員達は()()の姿に作業そっちのけで見惚れてしまい、思わず近付いていく。

 

《ピピピピ……抹殺》

「え?」

《指令……人間トポケモン共ヲ抹殺》

 ()()がどの様な存在とも知らず、不意に彼等は近付いてしまった。

 両腕を上げて手先を作業員達に向ける。

《フィンガーミサイル……射出》

 ドドドドドッと発射された指がミサイルとなり、作業員達を吹っ飛ばした。

『うわあああああっ!?』

 爆風で吹っ飛ばされた作業員達は大型コンテナに激突、その衝撃音で横たわり、頭部から血を流している。

 爆音を聞いた作業員や船乗り達は慌てて駆けつけ、その異形の存在を目の当たりにする。

「な、何だあれは!?」

「ロボット!? あのロボット、何なんだ!?」

《……戦闘タイプ変更(チェンジ)。モード・(フレイム)

 胸部が展開されるとその穴から炎が放たれる、灼熱の業火によって人々は飲み込まれ、港のあちこちで爆発音が次々に発生する。

 無慈悲にその存在──“NDT“は瞬く間に次々と多くの命を屠る。唯命じられるままに。

 

「うわああああっ!」

「きゃああああっ!」

「た、助けてええええ!!」

「ママーッ!!」

 

 街中で次々と響く悲痛な悲鳴と炎を背に"NDT"はゆっくりと歩く。

 街の人々は恐怖の象徴と言えるその存在から逃れようと走る。

 ドドドドドドッ!

『うわ(きゃ)ああああああ!!』

 そうはさせまいとばかりに片手に展開された機関銃の弾が発射され、銃弾の雨を浴びせる。

 血飛沫を上げて次々と人々は倒れ伏す。

 大人は勿論、女子供も関係なく蹂躙していく。

 血も涙もない、無機質な破壊と殺戮の兵器はゆっくりとした足取りで行進を行う。

《戦闘タイプ変更(チェンジ)。モード・(メタル)

 両手のアームから仕込刃が展開される。

「待ちなさい! これ以上の破壊行為は許しません!!」

 白いバイクを走らせ、ジュンサーが姿を現す。

「ガーディ、火炎放射!」

 白い体毛と赤い毛並みを持つ子犬ポケモン、ガーディは“NDT“に向けて炎を放つ。

 しかしその反抗も虚しく防がれる。

完璧防壁(パーフェクト・シェル)、展開》

 半径1mの膜に覆われていき、炎は瞬く間に防がれてしまう。

「そ、そんな…!」

 "NDT"は一気に距離を詰め、両手の仕込刃でガーディを切り付ける。

「ガーディ!」

 更に切り傷だらけのガーディをゴミだと言わんばかりに蹴飛ばす、宙を舞うガーディは円を描いて近くにある建物にぶつかろうとしていた。

「エボッ!」

 だが寸での所で尻尾がガーディを掴み、事なきを得る。

 突然の乱入者──エテボースの登場で"NDT"が見下ろす中、エテボースはガーディを抱えたままジュンサーに近付く。

 

「あ、貴女は確かポケモンピンポンの…」

「エボッ!」

「ガーディを助けてくれてありがとう……、悔しいけれど私は市民の避難誘導をするわ。くれぐれも無茶しないで!」

 エテボースの思惑を察したジュンサーはその意思を汲み、ガーディを白バイに乗せてその場を走り去る。

標的(ターゲット)変更。殲滅モードニ入ル》

 無機質な音声が流れ、エテボースに"NDT"は狙いを定めた。

 

 To be continued

 

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