ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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年はすっかり越してしまいましたが、今年最初の更新です。


#18 再び会う時まで

 炎が燃え盛る。

 

 植木を、街を、凡ゆるもの焼き尽くさんとばかりに。

 

「何なのよ、この惨状は!」

「分からない! 分からないが!!」

「嗚呼、分かっているのは──この街にこれだけの事を引き起こした奴が現れたって事だ!」

 

 サトシ一行は突然の火災消火や遮蔽物の撤去を行い、街中を駆け出す。

 

 ブイゼルにルンパッパ、クワッスやウデッポウといった水タイプのポケモンが消火活動を行い。

 

 遮蔽物の撤去はゴウカザルやホゲータ、ギャラドスが。

 

 逃げ遅れた人々の誘導をピカチュウやグライオンやムクホークが率先して動いている。

 

 建物に取り残された人々に関してはドダイトスの甲羅に根付く木がクッションの役割として活用され、どうにか受け止めている。

 

「そう言えばサトシ、今回の手持ちはシンオウの時のメンバーなんだな」

 意図に気付いたタケシの問いに「嗚呼」と頷き、一歩先に出る。

「本当ならホウエンの仲間も入れたかった。でも彼奴と付き合いが長い此奴等の方が良いと思ったんだ」

 申し訳ないと思ったが、ポケモン達の意思を尊重しての選択だと判断している。

 

「兎に角、急がなきゃ! 誰だか知らないけど、こんな災害を引き起こしてる犯人を止めるわよ!」

『おう!』

 走るペースを上げて街中を駆け出す三人、曲がり角を曲がった瞬間──ドカッという衝突音が響く。

「痛てて……!」

 思い切りぶつかって額を抑えるサトシ、同じくぶつかってしまった相手は立ち上がると「大丈夫かい!?」と手を差し伸べる。

「すいません、ぶつかってしまって……ってあ!」

「君はサトシ君!? タケシ君も!」

「オウさん!」

 その青年──オウもぶつかった相手を見て驚き、彼の後ろからダーテングが追い付く。

 

「オウさんって……え!? この人がポケモンピンポンの!?」

 話に聞いていたカスミもまさかの本人との遭遇に目を丸くする。

「あれ…? 君は確かハナダジム・ジムリーダーのカスミさん?」

「あれ、カスミの事を知っていたんですか?」

「カントーでは有名人だからね、TVやネットで何度か取り上げられている──って、それどころじゃない!」

 話が逸れる所だったとオウはハッと我に返り、サトシの肩を掴む。

 

「サトシ君! 何処かでエテボースを見かけていないかい!?」

「え…? ど、どう言う事ですか!?」

 突然の問いに驚いて思わず聞き返す。

「この騒動の直前に急に飛び出していってしまったんだ! 後を追っていたんだが、逸れてしまって…!」

 憔悴した様子のオウの言葉にサトシは首を横に振る。オウはその動作に会ってない事を察し、両手を離す。

 

「すまない! 君は勿論、ヒカリさんにも顔向けが出来ない…!」

「オウさんの所為じゃないですよ! それにもしかしたら彼奴は…!」

 頭を下げる彼にサトシは諭そうとした瞬間、何処からかドオォンッと爆音が響いた。

 周囲を見ればある方向から黒煙が上がっている、恐らく火の元が出ていると思われる。

「もしかして……! 行ってみよう!!」

『ええ(おう)!』

「僕も行こう! 何かの手助けが必要かも知れない!!」

 四人は地を蹴り、そのまま駆け出した。

 


 

 幾分の星──スピードスターが回転しながら二房の尾から撃たれ、その矛先は人の手によって造られた破壊兵器に向けられた。

 "NDT"は右手を突き出して星を全て弾く、星はその周囲に着弾して爆ぜる。

 エテボースは目を険しいものにし、"NDT"を威嚇する。

 先程からずっとこの調子で膠着状態が続いている。

 気合パンチを放てば障壁で防がれ、スピードスターを撃てば今の様に腕一本だけで弾かれてしまう。

 ダブルアタックで攻撃しても同様に受け流され、影分身で撹乱してもサーチされていとも簡単にバレてしまうと言う始末だ。

 

 ──勝てない。

 

 生物としての本能からか、此方の常識が通じない相手(ロボット兵器)を前に、エテボースは抑えようもない絶望感を覚えた。

 とてもじゃないが真面に太刀打ち出来る相手ではなく、はっきり言って敵う事など不可能だ。

 だがはいそうですかと諦める事など出来ない、何がなんでも最後まで頑張る──それが嘗ての自身のトレーナー達の信条なのだから。

 滅多打ちに身体に傷を刻まれ、絶望的な状況へと追い込まれていく。

 

《殲滅……人間トポケモンヲ殲滅》

 無機質にそれだけが音声で流れていく、左手で首を持ち上げる"NDT"。

 エテボースは既に満身創痍であり、これ以上に痛めつける必要が何処にあろうか。

 こんな理不尽な事で最期を迎えるのか? 否、あっていい筈がない!!

「HEY! 弱い者虐めはそこまでにしてもらおうか!?」

 英語混じりの叫びと共に雷が左腕を撃ち抜き、エテボースは倒れ込む。

 一体何事かと思い上体を起こす、その直後視界に入ったのはタンクトップを纏った金髪の偉丈夫、そしてその傍らにはピカチュウの進化形…ライチュウが立っていた。

 

「俺のHomeで許可なくTownをAttackするとはいい度胸だ! YouみたいなDestruction Robotは、このマチスとライチュウが逆にScrapにしてやるぜ!」

 偉丈夫──マチスの言葉にライチュウも吼え、"NDT"を威嚇する。

『クチバジムの、元軍人のジムリーダー…! 昔サトシとピカチュウが戦ったって言う…!』

 エテボースは目を開いて驚き、前々から聞いていた人間とその相棒の姿を見て立ち上がろうとする。

 しかしダメージが大きくて中々立ち上がれずにいる、すると一人の女性……マチスに酷似した容姿を持つ筋骨隆々の女性がエテボースを抱き上げる。

「大丈夫か?」

『あ、貴女達は…クチバジムの?』

「良く頑張ってくれたな、後はマチス隊長に任せろ」

 その女性──以前ジムリーダー代理を務めたビスケスの腕の中で、エテボースは“NDT“とマチスの戦いを見守る。

「此方からAttackさせてもらうとするぜ! ライチュウ、10万ボルト!」

 ライチュウの黄色の頬袋に電気が溜まり、それを一気に放出。

完璧防壁(パーフェクト・シェル)、展開》

 円形状の防壁が展開して電撃を防ぐ"NDT"、更に畳み掛けてライチュウは走り出す。

「瓦割りだ!」

 光の壁やリフレクターといった攻撃を軽減する防壁を破壊する技、ライチュウの手刀は勢いよく振り下ろされる。

 ガキンッと鈍器に当たった様な鈍い音が響き、ライチュウの表情が歪む。

「What!? なんてStrongなGuardだ!」

 瓦割りでも破れない高度な防壁など今まで存在しただろうか? 

 守るはフェイントで破る事も可能であるが、此処までの防壁など存在しない。

 

《ホーミングミサイル、射出》

 背部から幾つものミサイルが射出され、ライチュウ目掛けて飛んでいく。

 これはマズイと本能で察して距離を取って走り出すライチュウ、だがそのミサイルの雨は追尾式なのか勢いは止まらず追ってくる。

 恐らく命中するまで止まる事はないだろう、これも"NDT"の恐ろしい兵装の一端に過ぎない。

《ホーミングミサイル、射出》

「な…!?」

「エボッ…!?」

 ミサイルは続けて射出された、その標的は──エテボース達。

「ビスケス!」

「マルマイン──」

 否、間に合わない。

 例え繰り出したとしてもこの物量に耐えられるか? 

 ビスケスはエテボースを強く抱き締め、その場で身を屈める。

『サトシ……ヒカリ……アタイ、また皆に会いたかった…!』

 迫り来るミサイルの雨を前に無意識に目を瞑り、襲い掛かる激痛に耐えようとする。

 無慈悲なミサイルが直撃しようとした瞬間、その声は聞こえてきた。

「ブイゼル! ソニックブーム!!」

 風の刃がミサイルを切り裂き、その場で爆ぜた。

「ゴウカザル、火炎放射! グライオン、ストーンエッジ!」

 ライチュウ目掛け追尾していたミサイルは炎と石の杭による攻撃で破砕され、破片がその場に落ちる。

「What!?」

「今の声はまさか…!」

 エテボースはビスケスの腕から抜け出し、声がした方へと振り向いた。

『あ……』

 その方向から歩いてくる影を見て、エテボースは歓喜の表情を露わにした。

「エテボース……大丈夫か?」

 心配そうな声で彼は──サトシは声を掛ける。

『サトシ!!』

「うわっ!」

 自然に涙が出てエテボースは彼に飛び付く、同時に尻尾を伸ばして彼から帽子を取り自身の頭に被せる。

「おいおいエテボース! 帽子返せよ!」

 サトシは帽子を取ろうとするも、エテボースは尻尾を巧みに使って帽子を手玉の様に扱う。

「サトシ! 大丈夫!?」

 背後からカスミとタケシ、オウが走って来る。

「嗚呼、大丈夫。エテボースもちゃんと無事さ」

 へへっと微笑み、サトシは顔を向ける。

「エテボースも嬉しそうだ。元気そうで良かった」

『タケシも久しぶり!』

「そう言えば私は初対面だったわね。カスミよ、サトシから聞いてるかもしれないけど」

 するとそこへマチスとビスケス、ライチュウが近付いてくる。

 

「サトシ、久しぶりだな」

「ッ! ビスケスさん! それに…マチスさん!」

「HEY! 俺の方も久しぶりだな、ルーキー! 否、チャンピオン!!」

 ライチュウと共に爽やかな挨拶を交わすマチス、その内心ではサトシの成長を肌で感じ取った。

 あの時の無謀な挑戦者(チャレンジャー)は今や数々の修羅場を潜り抜け、世界王者にまで至った。

 今挑んだら恐らく、勝てるかどうかも怪しい。

(最早ルーキーとは言えないな)

 未熟なトレーナーだった彼の成長した姿に笑みを綻ばす。

「それにしても……あのロボット、何者なんだ?」

「ロケット団も偶にメカを作るけど、あんな感じなのは作れないと思う」

「それに……科学の力ってすげー! シトロイドよりも高性能じゃないか!?」

『違うでしょ(だろ)!?』

 目を輝かせるサトシにカスミとタケシはツッコミを入れる。

 

 一方、"NDT"は突然現れた乱入者に向けてアイカメラで確認。

 機械音を発してその少年を認識した。

《データ解析完了……データ解析完了……要殲滅対象……マサラタウンノサトシ……認識完了》

 片腕をサトシに向けるとその腕は機銃へと展開。

《ガトリングランチャー、発射》

「! 皆、避けろ!」

 タケシが叫ぶと全員がその場から離れる、その場は銃弾の雨が降り注がれる。

「あ……危なかった」

「あのロボット……私達を殺す気で…!」

「HEY、You達……あのGenocide Machineに何か心当たりがあるのか?」

 マチスは怪訝な眼差しをサトシ達に向ける。

「………多分あれはデザイアの人間が差し向けたんだと思う」

 質問されたサトシは確信して答える。

「Oh my God…! マサラタウンを襲撃した連中が」

「だからと言って、簡単に殺されるわけにいかない!」

 生存本能に従い、今は出来る事をやるだけだ。

「ピカチュウ! 10万ボルト!!」

「ストップだチャンピオン! 彼奴には攻撃は通らない!」

「ピ〜カチュウ〜〜!!」

 制止を振り切って放たれた10万ボルトは一直線に“NDT“に向かう、"NDT"は躊躇いなく《完璧防壁(パーフェクト・シェル)、展開》と言う音声と共にまたしても防壁を張り巡らす。

 10万ボルトは直撃して防壁は依然として無傷のまま、やはり攻撃は通らないのか…と言う絶望感が過ってくる。

 完璧防壁(パーフェクト・シェル)を解除して"NDT"は背部のブースターに火を吹かせ、ピカチュウに向かって突出。

「10万ボルトだ!」

 サトシは指示を変えず、ピカチュウに攻撃を指示。

 放たれた電撃は──"NDT"に直撃した。

「What!?」

《……え?》

 真面に受けた"NDT"は電撃を浴びていき、その場から後退(あとずさ)る。

 

「どう言う事だ……さっきまでライチュウやエテボースの攻撃を防いでいたのに、何故ピカチュウの攻撃で…?」

 ビスケスは突然ピカチュウの攻撃が通った事に驚く、それは腕の中のエテボースも同様である。

(いや待てよ…?)

 思い返してみればあの障壁を解除して、すぐさま攻撃態勢に移っていた。

 なのに直ぐに防御に徹してしまった為、すっかり見落としていた。

(つまりあの障壁の持続時間は……!)

 もしもそうだとすれば、あのロボットの攻略のヒントになるかも知れない。

《ジジジ……ダメージ率、30%……損傷軽微。任務支障ナシ》

「効いていない…!」

「マチスさんを苦戦させる程だ、そう簡単にはいかないんだろう」

 無機質に駆動する"NDT"の装甲はこれまで相対したロケット団のメカとは異なり、生半可な攻撃など通らない。

「いや……効いている筈なんだ」

「え?」

「ビスケス…それはどう言う事だ?」

「マチス隊長は直ぐ防御に徹していて気付かなかったかも知れませんが、奴は此方が攻撃する際あの障壁を張った。なのにピカチュウの攻撃には障壁を張らず、真面に攻撃を受けた」

 サトシ達はそれを聞いて目を見開く、だからビスケスは確信した。

「奴の障壁を展開する時間はほんの僅か、障壁を解いた瞬間が攻撃が通る瞬間だったんだ…!」

 静かに佇む"NDT"を見て言うビスケス。

 

「じゃあその障壁にタイムラグがあるなら、それが攻撃のチャンスって事か…!」

 それならば攻撃の目処がある確信を得て、サトシは改めて"NDT"に向き直る。

 激闘のクチバシティに、少し勝利の光が見えてきた。

 だが、この街に迫る脅威は──"NDT"だけではない事を……彼等はまだ知らない。

 

 To be continued

 

 

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