ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE 作:虎武士
ゲーム本編や外伝的作品のキャラも出しております。
次から第二章へと入ります。
ブロロロッと言う音がジョウト地方の荒野に響き渡る。
「イヤッホー!」
「大量、大量!」
「これだけいれば楽な生活が送れるぜ!」
迷彩柄の服を纏う三人の男達──彼等はポケモンハンターであり、雇用している
下卑た笑みを浮かべる彼等は荒野を特注のジープで走り、荒野にジープの駆動音が響き、背後には砂煙が巻き上がる。
ジープに積んでいる檻にはメタモンやミニリュウ、ガルーラにロトムやミルタンクなど、野生では滅多に発見されないポケモンが閉じ込められている。
彼等は「此処から出せ!」と訴えているのか鳴き喚くも、ハンター達にとっては馬の耳に念仏である。
「おいおい、
「聞こえねえなあ、エンジン音吹かせてるからな」
「ポケモンの言葉なんか分からねえし、さっさと
アクセルを強く踏んでジープのスピードが増す、高らかに笑いながら彼等は荒野を走る。
バリッ! バリバリバリッ!!
これから待ち受ける運命を知らずに。
ゴゴゴゴゴゴッ! ズドォォォォン!!
『ギャアアアアアアアッ!?』
満天の青空だと言うのに空から赤黒い雷が落ち、その衝撃でハンター達の操縦するジープが転倒。
ハンター達とポケモン達を閉じ込めた檻が荒野に投げ出され、彼等は何が起こったのかと思い起き上がる。
「な、何だぁ!?」
「空から落雷…?」
「馬鹿言え! こんな晴れた空だぞ! 雷が落ちるとか有り得ねえぞ!」
空を見上げても雷雲が発生している様子もなく、あまりに不可解な現象に首を傾げるばかりだ。
「おい……空に穴が開いてんだけど」
空に開いた穴を除けば。
雷が落ちた場所に恐る恐る近付いてみる。するとその場所から凄まじい砂煙が発生、やがて砂煙は巨大な竜巻へと昇華する。
「なっ、何だあの砂嵐は!?」
「デカ過ぎんだろ!」
最早災害レベルと言っても過言ではない。砂嵐は段々と大きくなっていき、今にもハンター達に迫らんばかりの勢いだ。
『クハハハハハハハ……! クハハハハハハハ……!!』
その砂嵐の中心点から声が響く。人間であるハンター達には聞こえないが、確かに中心点に何かが潜んでいる。
砂嵐が段々と薄れ、その何かの輪郭が露わになっていく。
「お、おい……此奴は」
「嘘だろ…? どうしてこんな奴が」
「………!?」
全貌が明らかになっていなくともハンターはその姿に絶句、同時に恐怖心を漂わす声を漏らす。
従来の体色ではないが、この姿を見間違う筈があるまい。
『おーおー……雑魚人間共が見せ物みたいに見やがって。さっさと死ね』
巨大な腕を大きく振り上げ、地面に叩き付けると凄まじい砂嵐がハンター達を襲った。
砂は段々と彼等から水分を奪い去り、収まった頃には────干からびたミイラそのものとなりて力尽きた。
自分達を捕らえた者達の成れの果てにポケモン達は戦慄、もしも自分達も巻き込まれていたらと思うと背筋が凍る。
『生き残ったお前等には選択肢がある』
砂は完全に晴れていき、"その存在"は不敵に彼等に笑みを向ける。
『このまま故郷に戻らず途方に暮れるか……それとも俺と共に人間社会を潰すか』
大層な野心が節々と匂わせる言動、だが自由を得るには最適な選択だ。
『……さあどうする?』
黄色に輝く眼光は静かに彼等を捉えていた。
同時刻、イッシュ地方。
此処はリュウラセンの塔…セッカシティの北に位置する古代より建造された最古の塔。
誰もいない筈の無人の塔である此処に、バチバチッ! と音を立てて巨大な穴が開く。
得体の知れないその穴を通り、それらは姿を現す。
『此処は……人間共の気配があるな』
飄々とした様子で語るのは虫・鋼タイプを持つカブルモの進化形、シュバルゴ──シュバルゴは周囲を見渡して苦言を吐く。
『ああ……人間共の存在など我らにとって不要なもの。我等が"神"の前に平伏すべきだ』
『ほっほーう! ……脆弱な連中には裁きを──この世界を治める他の"神"はいらぬ』
ウォーグルとムシャーナが冷徹に述べ、その背後からダストダスが現れる。
『んんんんん! ん〜んんん!!』
そのダストダスは口を閉ざしながら唸っていく、シュバルゴ達は「またか」とばかりに呆れるだけであった。
『おい、口に出さんと言葉にならんぞ?』
『はっ! うっかり……』
このうっかり屋のダストダスは勿論、シュバルゴもムシャーナもウォーグルも、穴を通って現れたポケモン達であろう。
そして彼等の言う"神"なる存在もまた然り、恐怖を象徴とさせる存在なのだろう。
同時刻、ホウエン地方。
神秘的な森の中に、不釣り合いな機械の塊があった。
ロケットの様なそれは苔がこびり付いており、まるで何年も前から存在しているかの様だ。
自然の中にそんな似合わない物がある事に違和感があるが、今はどうしてこんな大自然の中にあるかだ。
ガサガサッと草を掻き分け、二匹のポケモンが姿を見せる。
一方は白い体毛に刃を思わせる触角に四足歩行のポケモン、災いポケモンと称されるアブソル。
もう一方は赤い色眼鏡に緑を基調色とするドラゴン、精霊ポケモンと称されるフライゴンだ。
『何だ…これは?』
『人間達の発明品だね、確かロケットだったっけ?』
フライゴンが興味を示す一方、アブソルは訝しげに眉間に皺を寄せる。
またしても人間によってこの地を──ファウンスを穢されるのではないのか、アブソルは一抹の不安と怒りを覚える。
『吃驚したよ〜、急に空から振ってくるんだもん。しかもぽっかりと空いた穴から! 見た所ボロボロになってる上、中身は空っぽ』
『落ちてきた時に中身は何処に落ちたのか、或いは此処とは別の場所に別々に落ちたか、だろうな』
『何処に落ちたんだろ?』
《知らん》
ハッチを強引に壊せば内部はもぬけの殻、真新しい雰囲気があるが、それでも廃れている事は間違いあるまい。
『それにしても……
『我々の子孫が我々の代わりに
『は〜い』
アブソルの示唆する通り、本当にロケットとその中身は別々に転移してきたのだろうか。
抜け殻らしきロケットはホウエン地方のファウンス近郊に落ちて来て、中身は何処か……それは誰も知らない。
本当に杞憂に終わればそれでいいのかも知れない。
シンオウ地方・中部にある大都市ヨスガシティ。
この地に置けるポケモンコンテストの発端とも言えるこの街には、大きな教会が建っている。
これは遠い昔、まだ
レリーフには世界を創造したとされる神と呼ばれしポケモンの姿を象っており、その姿は神聖な雰囲気を醸し出していて、この地に生きる人間にとっては信仰対象。
この教会に入信した者達は神を崇め祭り、そして
『主神アルセウス様、教祖様共々我等をお導き下さいませ』
信者達は口々に神を崇め祭るが、部外者からすればそれは異様な光景でしかなかった。
虚ろな目で口を開けばまるで人形の様にそう言葉にするだけ、不気味な怖気を抱かずにいられない。
「……そうです皆様、神に祈りましょう。何れ降臨して下さるその日まで」
教会の地下深く、その深淵にて全身が純白のローブに包まれた仮面の人物。
ズドオオオォン!!
シンオウ地方が霊峰テンガン山、その内部にある遺跡──槍の柱に赤黒い稲妻が落ちる。
黒煙が舞い上がり、それが晴れると二人の男女とイーブイの進化形の二体──氷タイプのグレイシアと草タイプのリーフィアが倒れ伏している。
「いつつ……何が起きたんだ?」
「確か私達、コンゴウ団・シンジュ団合同で天冠の山麓を探索していた筈だけど……」
何処か歌舞伎じみた和装を纏う青髪にメッシュの入った青年と、金髪のショートヘアーで南国風の衣装を纏う少女がふらふらとしながら身体を起こす。
周囲を見渡していきながら歩き、やがて少女が口を開く。
「ねえ……此処って天冠の山麓よね?」
「嗚呼……だがそれにしちゃあ雰囲気が違わねえか? 野生のポケモンも、俺らが知る生態系じゃねーし」
所々生息する野生のポケモン達も自分達が知る限りのとは相違点があり、二人は妙な違和感を感じる。
「もしかしたら此処ってヒスイであってヒスイじゃなかったりしてね」
「おいおい、んなわけねえだろ」
歩き続ける中、外の光が見えてくる。彼等は一目散に駆け出して洞窟を抜ける。
「は…!?」
「何、これ?」
目の前に広がるのは緑溢れる草木と大地、その崖から見える都会。
彼等にとって皆目見当の付かない、近代的な世界である。
カロス地方・ミアレシティ。
カロス最大の大都市にしてこの地の中心部にある都市、プリズムタワーと言うシンボルマークが聳え立つ事で有名である。
そんな大都市の片隅にある一つのカフェ、多くの客は其処で賑わっている。
「大男を見たぁ?」
その中の一角のテーブルにて、あるポケモントレーナー達は一人の友人から出た話題に首を傾げる。
「あ、ああ、俺…見たんだ。3mぐらいの身長のある大男を──」
本人曰く、ある日…カロスのとある森を通っていた時だった。
野生のポケモンが滅多に出ない安全な道を通り、目的の町までの最短の道を通って目指していた。
森の出口まで差し掛かった所で、彼はその男に遭遇した。
先述した様に本当に3mぐらいはある大柄の男で、その巨体だけで気圧されそうな雰囲気を醸し出していた。
大男は彼に見向きもせずに通り過ぎて去ったが、彼にとっては恐怖の象徴でしかなく失禁しそうになったとか。
『ぎゃははははははっ!』
荒唐無稽な体験談にトレーナー達は高らかに笑い出し、笑いのツボに入ったのか足をバタバタと動かしたり、テーブルに手を叩いたりしている。
「笑い事じゃないっつーの、マジでちびりそうだったんだからな」
「いやそこは別にいい、だけど3mの大男とかウケるんだけど!」
「そうそう! どーせ野生ポケモンの嫌がらせでしょ!?」
誰も信じていない様子で爆笑するトレーナー達、彼等の友人は「本当なのにな……」と一人呟きを零す。
カロスのとある荒野、野生ポケモン達は一斉に逃げていた。
『た、助けてええええ!!』
『く、来るなあああ!!』
彼等の後方には巨大な樹木が迫っていた。
草木一つ生い茂っていないこの荒野に不釣り合いな光景であるが、それはまるで生き物の様に畝っており、次々と地面から隆起してポケモン達に襲い掛かる。
赤黒く禍々しいその植物は彼等を薙ぎ払っていき、一体のエリキテルが仰向けに転倒する。
『う、うわあああっ!』
尻餅をついているエリキテルは後ずさって後退、だが容赦なく植物は多くの木の根に覆われていき、巨大な槍を形取った。
植物で覆われた槍はエリキテルに向けて、勢いよく振り下ろそうとする。
エリキテルは恐怖に怯えて目を瞑った。次の瞬間、植物は縦斜めに斬られた。
『え?』
一体何が起こったのか困惑していると、一つの存在が姿を現す。
その存在──忍びポケモンと称されるゲッコウガは水で形成された苦無を構え、ポケモン達を守らんと植物の大群の前に立つ。
ゲッコウガが野生で発見される事など極めて希少なだけあって、誰もが思わぬ助太刀に驚く。
目の前の彼は本当に野生なのか──或いはトレーナーの手持ちなのか、その答えは分からない。
『無事で御座るか?』
『あ……貴方は?』
『名乗る程の者では御座らぬ。さあ、迅速に避難を』
『は、はい!』
ゲッコウガに後押しされてエリキテルは起き上がる、近くにいたゴーゴートに乗せられてそのまま走り去る。
植物の群勢はゲッコウガ目掛けてその根を剣の様に伸ばし、目の前の獲物を始末せんと襲い掛かる。
『遅い…!』
片手を突き出すと水で形成された手裏剣──水手裏剣を放ち、投擲された手裏剣は植物を切り裂く。
ゲッコウガ自身も疾走して水で形成された忍刀で植物を切り裂き、優雅に舞ってゲッコウガは禍々しき植物を根絶していった。
『これにて……一件落着に御座る』
最後の根を縦に一刀両断し、植物は腐敗していく様に消えていった。
『見事じゃ、ゲッコウガ』
その勇姿をいつから見ていたのか、ノコッチよりも小柄な奇妙な生命体が石の上で佇んでいた。
『プニちゃん殿……趣味が悪いで御座るよ?』
見物していたプニちゃんと呼ばれし存在にゲッコウガは冷ややかな目を送る。
『助力があっても良かったで御座ろうに』
『御主の成長の為だ。水を差すのは些か腑に落ちんであろう』
この三年であの植物──“負のエネルギー“を大分浄化してきた。
「……君が噂のゲッコウガだな?」
『!!』
いつからいたのか、声の方角へと振り返ると一人の偉丈夫が佇んでいた。
『……何奴!』
その人間から発するただならぬ雰囲気を感知し、ゲッコウガは忍刀を構えて臨戦体制に入る。
しかしプニちゃんから制止の声が掛かる。
『止めよゲッコウガ! 此奴は──余の嘗ての友だ』
『…!?』
驚いて体制を解き、ゲッコウガは男を一瞥する。
だが何か縁があったのだと察し、そのまま後方に下がる。
男はプニちゃんに近付き、視線に合わせて身を屈める。
「久しいな、ジガルデよ。随分と変わり果てたな……嘗ての君の姿は威厳のあるものだと記憶しているのだが」
『これは余の仮の姿。我が半身とは別々に行動を取っておる』
プニちゃん──否、秩序を守る伝説のポケモン──ジガルデの答えに「そうだったな」と男は言う。
『3000年振りじゃな。風の噂で聞いておったが、まさかその様な事になっておったとはな』
「これは私自身の罪だ。自身の招いた罪は贖っていく──
『あの小さき命の為か……』
3000年、常人からすれば果てしない旅路。そんな大昔に何があったのかは分からないが、男の様子を見てそれだけ大きな罪を背負っているのだとゲッコウガは察した。
また良くない事が起きるのかも知れない。カロスだけでなく、世界全体的に──そう思わずにいられない。
春夏秋冬……四つの気候と四つの島で形成されたアローラ地方。
カントーやジョウトなどから遠く離れたこの地方は人とポケモンが手と手を取り合うかの様に平穏を享受し、生息するポケモンもアローラ特有の生態系が存在する。
嘗てこの地方は未曾有の危機が幾度も迫っていたが、今ではすっかりと形を潜めてその爪痕は癒えている。
何より三年前──数年前にウルトラホールの実験中に行方不明となっていたモーン博士が帰還した事は記憶に新しく、当時は誰もがその生還を祝った。
そして此処はエーテルパラダイス。ポケモンの保護とケアを目的とする機関、エーテル財団の本拠地である人工島である。
その人工島に多くのルポライターやカメラマンが集まっており、その内の一つのカメラの前でリポーターの女性がマイク越しに語る。
《現在我々はエーテル財団代表、ルザミーネ氏に突撃取材をしようと思っております! ポケモン・ワールド・カルナヴァル開催前日に起こったカントーのマサラタウン襲撃事件、各地方における不可解な事件について聞いてみようと思います!》
熱心な思いでリポーターは金髪の女性──ルザミーネにマイクを近付ける。
《ルザミーネさん、此度の数々の事件についてどう思っていますか!? コメントをお願いします!》
「え、ええ……各地方で発生している奇妙な事件……私個人としては、連動しているのではないかと考えています」
《連動?》
その場のマスコミは誰もが首を傾げ、ルザミーネは淡々と語り出す。
「はい。これは憶測の段階なのですが、此度の事件の数々──全く無関係に思えて実は関係性が高いのではないかと思っています。カントー地方やジョウト地方など、様々な場所で起こっている異なる事件。それらは全て人間やポケモンに身の危険を及ばす事象を起こし、同時に世界の終わりを予感をさせると踏んでいます」
多くの記者は彼女の話に息を飲む。ゴクリと喉を鳴らして、ルザミーネの次の言葉を待つ。
過去にこのアローラも光を奪われた上、大人達が生気を失う事件が発生した事例がある。
また光が奪われると言う事があれば、アローラは再び笑顔を失うのであろうか。
「そして先日のカントーのクチバシティの事件の最中、膨大で異質なエネルギーが観測されました。そのエネルギーは上空へと放たれ、各地の空にそのエネルギー量が異常な数値を出しており──ウルトラホール出現に似た質量を感知しているかと」
思い出すのは嘗ての愚かだった自身、娘や息子、そのクラスメイト達が諭さなければ今の自身はなかっただろう。
その時だった、上空に
「え?」
「遅かったか…!」
双眼鏡を構えて一人の男性が小舟の上で舌打ちする。
その男性の容姿は異質なもので、青と白の基調とした衣装を纏い、肌色も青白いものであった。
明らかに人間のようで人間離れの様な雰囲気があるも、そんな彼に呼び掛ける声が掛かる。
「ダルス、どうだった?」
「手遅れだ……我々とは別の、ウルトラホールからやってきた者達によって既に」
「えっ!?」
男性──ダルスの言葉に似たような雰囲気の少女──アマモは驚く、双眼鏡の先に映るエーテルパラダイスから黒煙が上がっており、既に目的の場所は陥落していた事を認識する。
「参ったな〜〜……折角ルナアーラの力を借りて
アマモは落胆して溜息を吐く。
つい最近発生した異次元に影響を及ばすエネルギーを感知し、上司からその原因を探る為
どうしたものかと考えていると、ダルスは言葉を紡ぐ。
「一先ず……我々は身を隠す」
「りょうかーい」
ダルスは船の操縦桿を握り、小舟はエーテルパラダイスから距離を取っていく。
小舟はやがて、人工島から見えない海路を進んでいく。
遠く離れたガラル地方。
「おおーっ! おおーっ! 此処が英雄達の武器が供えられた聖域か!」
「おおーっ! おおーっ! 何とも小汚い場所であろうか!」
その名所の一つ、微睡の森の最奥……不思議な雰囲気を保つこの場所に不釣り合いな者達が訪れていた。
気品のある赤と青のスーツ姿で、ブロンドヘアーの独特な髪型をしていた。
青いスーツの男は剣、赤いスーツの男は盾を模した何とも奇抜な髪型だった。
「弟よ、遂に見つけたであるな。朽ちた剣と朽ちた盾を!」
「そうでありますな兄上。早速回収致しましょう!」
赤いスーツの男は朽ちた二つの武具を手に触れて回収、その内の一つ──朽ちた剣を青いスーツの男に手渡す。
「嗚呼……何とも小汚い、手に触れる事が少々憚れるな」
「ですが暫しの辛抱です兄上。真なる歴史を正す為に必要な事でありますから」
「そうであったな」
驕りある不遜な言動の目立つ男達、彼等はニヤリと歪んだ笑みを浮かべる。
「かのムゲンダイナを鎮め、それを従わせた者達がいるようですな」
「そうとも。何処のポニータの骨とも分からぬ輩に
三年前に捕獲され、その後マスターズエイトの決勝にも現れたと風の噂で聞いた時は不快感を表してしまった。
だが現在はこの地方の研究家──マグノリアを始めとした者達によって厳重な監視下にあるそうだが、彼等にとっては解せない事でもある。
かの存在はこの地に災厄を齎した脅威、速やかに排除しなければならない。
「全ては真なる歴史の為にあるのだ」
「その通り! 先ず手始めに……」
彼等は歪んだ笑みを再度浮かべる、己が目的の為に。
そしてガラル本土から離れた鎧島と冠雪原、あるポケモン達も脅威に気付きつつあるのを彼等はまだ知らない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
研究室にDr.キリングの狂った様な怒号が上がる。
「あの糞ガキィ!! 儂の作品を木っ端微塵にしおって!! バックアップからまだ再現出来るから別にいいが、何とも忌々しい!!」
先日の戦闘を思い出してキリングは捲し立てる様に地団駄を踏み、脳裏に"NDT"が爆破される瞬間が過ぎる。
一体あの力は何だったのか、件の世界チャンピオン──サトシが人が変わったかの様に暴れ回り、その上クチバの町を攻撃した。
キリングを始めデザイアに属する者達からすれば何とも滑稽な光景であり、皮肉とも取れる姿だった。
「まあいいわい、興味深いデータだったから記録出来て良しとしよう」
自然に怒りが収まり、改めてデスクのノートパソコンを操作する。
「ヒャヒャヒャ……バックアップから再び急ピッチで仕上げ、ちょこっと工夫しておくかのう。今から愚民共の驚きと恐怖に染め上がる顔が楽しみじゃわい」
不気味な笑みを浮かべて操作するキリング。
(……そう言えば彼奴、あのガキの力を知っておる様子だったが……ま、別にどうでもいいか)
仮面の男の様子をふと思い出して見るも、別に重要ではないと思考から捨て去った。
世界は大きく動こうとしている。
別次元の来訪者、裏で蠢めく者、そして時を越えてきた者を交えて。
これが何を意味しているのか、人々はまだ何一つ知らないでいた…。
To be continued