ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE 作:虎武士
遠い、遠い昔。
赤銅と青銅の鎧を纏い、魔獣達は相争う。戦火と断末魔の叫びが飛び交う戦場にて、杖と剣が相殺してその余波か地面が削れていく。
次々と失われ、天に召される数々の命。その命達の尊さに唇を噛み締め、青年は問う。
「もう止めるんだ■■■■! これ以上悪戯に戦火を広げ、多くの命を奪うのは……!」
「ふん」
青年の理論を鼻で笑い、壮年の男は剣で杖を払い退ける。
「甘い、全く愚かな事だ。対話など愚の骨頂に過ぎん、この世の覇権を手にするのは力のみ! 対話だの、優しさだの、下らん手段など全くもって不要!」
歪んだ笑みを浮かべて男は青年の考えを否定する。
「貴様達の甘い考えは世界の為にならんわ! 敬愛する主と共に滅ぶのだ!!」
杖で一方的に攻める男の攻撃を青年は躱し続ける、受け流しながら青年は男の手首を掴んで振り払う。
「そうはいかない…! お前が全てを滅ぼすと言うのなら、私は……俺は……!!」
青年は杖を掴む手の握力を強くする、今にも砕けんばかりに──
「──はっ!!」
パチリと目を開けてサトシは起き上がる、辺りを見渡すと見渡す限りの草原が広がっている。オーキド研究所の庭の中だ、知らない間に草原に横たわって眠っていたみたいだ。
ピカチュウが達は楽しそうに駆け回っていたり、特訓に興じていたりと、それぞれの時間を過ごしている。
(今の、夢…?)
夢にしては現実味があった、うたた寝していたとはいえ何故あんな夢を見ていたのかも分からない。
硝煙や様々な命が消えていく光景、数多くの争いが続く世界。
納得いかないその世界にサトシは困惑していき、悲しそうな表情を浮かべる。
(何だろう……? この胸騒ぎ…)
今まで見た夢と言ったらポケモン達に囲まれたりとか、夢の中でポケモンバトルと言った楽しい夢だ。
他にも悪夢を見せられたり、珍妙なものを見た事もあった。
だけど先程の夢は違う。ポケモンや人が死んでいき、残された者達は命尽きるまで殺生与奪を繰り返す事ばかりだった。
何て酷く悲しい夢なんだ、何故それを自分は見ていたのか見当も付かない。
しかも──
「あの夢で見た景色……オルドラン城だった、どう言う事なんだろう」
嘗てバトルフロンティア制覇の旅の最中に訪れた波導伝説が残された町、波導の勇者と呼ばれる男とその"相棒"の英雄譚が記された地。
見捨てられたと思い込んでいた勇者をその"相棒"──ルカリオは紆余曲折の果てに和解し、自らも元の時代へと還った。
あの時、ルカリオは自分の波導が勇者──アーロンに似ていると言った。
単なる偶然だと片付けていたが、思い返すとアーロンの杖に触れた時もルカリオの声が確かに聞こえた。
どうして自分の見た夢にオルドラン城が出て来たのか、もしかしたらあの夢は波導伝説と何か関係があるのではないのか。
「ああああああああ〜〜っ! 何なんだよ一体!」
考えるだけで頭が痛くなってくる、サトシは立ち上がると空を見上げてみた。
自分は頭を使うよりも身体で動くタイプ、頭を使うだなんて性に合わない。
今までもそうだったし、これからもそうあり続けるのが自らの意思だ。
今まで出会った仲間達だって自らの意思で自分達の道を進んでいる、それで充分だ。
「そうだよ。俺は俺だ。世界一のポケモンマスターを目指すんだ、色んなポケモンに出会って、色んなトレーナーとバトルして──」
自分にそう言い聞かせるサトシはぶつぶつと呟く、唯無心になれば余計な事を考えずに済むのだから。
一方研究所の応接室、オーキドはある人物からの取材を受けていた。
「オーキド博士、今日はお時間を頂いてありがとう御座います」
彼に向かって礼を述べるのは一人の女性だ。緑髪のショートヘアで目元に泣きぼくろがあり、片手にシャープペンを持っている。
印象的にクールビューティーであり、隣には二足歩行で歩く犬のような姿を持つ絵描きが得意とするポケモン──ドーブルが携わっている。
「いやいや、別に構いませんぞ。儂に答えられる範囲なら答えるとしよう、確か君は…」
「あ、申し遅れました。私、カントー・ポケモン新聞社のアンヌと言います」
ぺこりと彼女──アンヌは頭を下げる、オーキドに名刺を渡してコホンと軽く咳払いして語り始める。
「では博士、本題に入っても宜しいでしょうか」
彼女の属する新聞社はカントー地方の凡ゆる情報・政治・経済を伝える新聞会社だ、恐らくその一環として来たんだろうとオーキドは楽観的に思った。
「此処近年、各地方で起きている現象について博士はどう思われますか?」
スマホロトムを操作して机に置き、MAPを開示した。
「西にあるジョウト地方では地脈変動が発生して砂漠化が進み、南のホウエン地方では大地の腐敗や海が穢れていくと言う現象が起こり、北のシンオウ地方では地表が陥没すると言う現象が発生しています」
「うむ、話は聞いておる」
アンヌは画面をタッチしながら説明していく。
「イッシュ地方では各地でポケモンを道具同然に扱うトレーナーが倍増して捨てる事件が多発、カロス地方では禍々しい植物による傷害・火災事件、アローラ地方では数多くのウルトラビーストの出現、ガラル地方ではガラル粒子のパワースポット化が頻繁になっていると言う──今は何も起こっておりませんが、カントー地方も例外ではないかと私は思います」
これだけの事象を並べられたら流石に無視出来ない、オーキドは顎に手を触れて考える素振りを見せて顔を顰める。
「それだけではありません……この数年で殺人・殺傷事件が相次いでいて、国際警察も動いてエージェントを派遣し調査に動き出すと言う噂もあります。被害者の中には行方不明になった者もいるとか」
殺伐とした雰囲気が室内に流れる、オーキドも何も言えず頭を項垂れてしまう。
(こんな時、あの馬鹿タレであればどんな決断をするのかのう)
小さく息を吐く中、嵐の前の静けさからなのか──青い空は雲で埋め尽くされていった。
微風が吹く丘の下、マサラタウンの町並みを青年は見下ろす。
青年は静かにホルダーからモンスターボールを手にし、腕を突き出す。
「何か思う所があんのかよォ」
青年の後ろから野太い声が響く、歩いて来たのは厳つい顔に巨軀を持つ巨漢の大男だ。
大男は笑みを浮かべ、青年は煽るように言い放つ。
「……何もない、単にそう感じただけだ」
「ぐははは! 確かにこんなど田舎の町を見たらそう思うわな! だったら何故行かねえ!?」
大男の言葉は最もである、青年は目を逸らして明後日の方向に首を向ける。
「てめえがやらねえなら──俺様がぶっ壊すだけだ!」
大男は笑みを浮かべた後、そのまま丘から飛び降りていった。
「……其処まで言うからにはやってみせるがいい──"デザイア"の一員を名乗るのならばな」
青年は冷たい表情でそう吐き捨て、マサラの町並みを傍観する。
To be continued