ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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前回から時間が掛かりましたけど、今回と次回はコンテスト回です。今回はその前編です、どうぞ拝見して下さい。

後、話の最後の部分は今後のストーリーに関わりますので…。


#27 想いはいつも(ココ)にある

 ヤマブキシティのポケモンセンター。

 

 併設されたバトルコートにて、轟音が木霊している……轟音と言っても軽いものではあるが。

 

 ピカチュウのアイアンテールがジュカインのリーフブレードと激突、威力が相殺されて衝撃波が発生。

 

 他にはルチャブルの格闘技の特訓にキングラーが鋏で受け流す、特性・シェルアーマーが働いて決定打には至っていないのが不幸中の幸い。

 

 ガマガルの口から発射されるヘドロの塊をマグマラシは持ち前のスピードで躱し続け、残像を残すまでに走り回る。

 

 蒼穹に浮かぶ太陽がヤマブキシティの街並みを照らし、本日は快晴である。

 

 まるで一人の少年の快復を祝うかの如く、サンサンと街の景色を照らしている。

 

「皆元気みたいね」

 

「嗚呼……」

 

 彼等のトレーナーである少年──サトシは頷き、晴れやかな笑顔を見せる。

 同時に戦意を研ぎ澄ませており、いつでもバトル(戦場)に赴く事が可能である。

 だが今はその時ではない、今日は一日を有効に使う時なのだから。

 

「あれから三日──一向にイシオさんからメールが届かないな」

「ええ……やっぱり試験官だから、準備に時間を掛けているのかしら?」

 警察官を兼任している為か、カスミとタケシが疑問の声を紡いでいく。

 

「別にいいじゃないか」

「サトシ……」

「試験官とのバトルがどうなるのか分からない。今はバトルに備えて特訓のみ! だろ? 皆?」

 ピカチュウ達はサトシに問われて返事を返す。

 

 単純な考え方ではあるが、つい最近までこの笑顔が曇っていたのがまるで嘘みたいに思えてくる。

 

「そうだよなー、それがオメェじゃねーとな」

「……漸く調子が戻った様で何よりだ」

 

「………気になってたんだけど」

 

『何だ(よ)』

 

「お前等何でまだいるの? てっきり旅立ったとばかり思ってたんだけど?」

 

 冷めた目で未だに自分達と行動するタツキとトウマに指摘するサトシ、今更過ぎるが快復した以上、もう共に行動する理由はない筈。

 

「そう思ったんだけどよ、やっぱオメェとあのオッさんのバトルを見届けてからにするわ」

「右に同じだが、旅立ってからのお前の実力をこの目で見極めるのも大事だ」

 

 幼い頃からの縁からか、サトシの実力を拝見しようと言うのだ。

 

「じゃあ今日は皆でポケモンコンテストを観に行こう!」

 

 そんな本人は嬉々として笑みを浮かべ、カスミ達もそれに賛同するのだった。

 


 

 ポケモンセンターを出て、サトシ達はヤマブキの街並みを眺めながらコンテスト会場を目指す。

 

「あ、そうだ。サトシ、俺は食材や日用品を買う為にフレンドリィショップに行くから、先にコンテスト会場に行っててくれ」

「ああ、分かった」

 

 途中、ショッピングに向かうタケシと別れて一同はコンテスト会場へと足を運ぶ。

 

「わあああ……」

 

 会場前には既に多くの人がゾロゾロと集っていて、皆コンテストを観に来た観客達だろう。

 

「此処にいんのは皆、今日のコンテストで活躍する予定のコーディネーターを観に来たのかよ?」

 

「それ以外に無かろう。コンテストはポケモンの魅力を引き出す為の競技、コーディネーター達は彼等を勝利へと導く為に助力するのだからな」

 

「確かにな〜。んで、オメェがコンテストに出向いたの理由があるんだろ?」

 

 肝心な概要を聞いてなかった事を思い出して、改めて問い掛けるタツキ。

 

「嗚呼。一緒に旅した仲間が出るかも知れないって思ってな」

「……その様な不確定性のない情報で訪れたのか?」

「まだ参加してるか分からないけどさ、セレナって言うカロス地方で旅した子はコーディネーターであると同時にパフォーマーなんだ。ほら、覚えているか? 昔参加したポケモンキャンプの事」

 

 タツキとトウマは問われて思考を巡らす。

 

 二人も嘗てポケモンキャンプに参加した身、思い当たる所があるとすれば──

 

「そういやお前、あの時確か言ってなかったか? 女の子を助けたとかなんとか……」

「何でも迷子となって逸れたカロスから来た少女を助けたとも宣ったと聞いたが……まさかその少女こそが」

「嗚呼、それがセレナだよ」

 懐かしんだ様子で語るサトシ、すると…。

 

「…………へぇ〜〜〜、私と出会う前にそんなロマンチックな出会いがあったんだぁ?」

 妙に圧のある笑みを向けてくるカスミ。ひしひしと感じる怒気を怖気ながら、サトシはどうにか出来ないかと思考を巡らせる。

 相変わらずだな、と幼馴染二人が呆れていて取り付く島もない。

 

「──おい、あっちでルチアがロケやってるぞ!」

「マジかよ!? 生ルチアちゃ〜〜ん!」

 

 民衆の一部が黄色い声を上げる、若干鼻の下を伸ばしているのが滑稽に思えてくる。

 

「…………」

 

「…………」

 

『…………』

 

「………よし! あっちに行ってみようぜ!」

 

「誤魔化すなァ!!」

 

 逃げたなとタツキとトウマは心中を察し、追いかけっこを始めるサトシ達をピカチュウと共に追い掛ける。

 

 民衆達が進んだ先に行き着いたのはコンテスト会場のエントランス。

 参加するコーディネーターは勿論、観客もいて数で溢れている中でアイドル特有のドレス衣装を纏ったエメラルドを彷彿とさせる少女がおり、隣にはチルットの進化形──チルタリスが伴っている。

 

 

「皆さんこんにちは〜♪ ルチアで〜〜す♪」

 

『ルチアちゃ〜〜〜ん!!』

 

 民衆(特に男)は黄色い声を上げ、意気揚々といった様子だった。

 

「私は今、ポケモンコンテストの会場に来ています! ポケモンコーディネーターとポケモン達が美しく舞い、魅せる事で競い合う! 実は私もこの大会の参加者、チルルと一緒に優勝を目指しまーす!」

 

『うおおおおおおお!!』

 

 男達は一斉に色めき立ち、熱の籠った雄叫びを上げる。

 

「それじゃあ皆! 私と一緒に……キラキラ〜〜♪ クルクル〜〜♪」

 

『クルクルクルクル〜〜♪』

 

 民衆はそれに倣って一回転、サトシ達も釣られてそれを行う。

 

「ミラクル⭐︎ルチアの! サインターイム!!」

 

「うおおおおおお!!」

 

「ルチアー! サインくれー!」

 

「お願いしまーす!!」

 

「皆さん、押さないで下さい! 順番です、順番!」

 

 控えていたスタッフから注意を受けながら民衆は列を作って色紙サインを受け取っていく。

 

「やれやれ……アイドルと同時にポケモンコーディネーターなんでしょうあの娘?」

 

「……自らの顔を売り、魅力を引き立てる……か」

 

「アイドルってのは大変だね〜」

 

「そうだな……」

 

 人混みに覆われていながらもサインを執筆するルチアも肝が据わっているのか、次々と手慣れた様子でサインを書いていく。

 

「あ、其処にいるピカチュウを連れたお兄さん!」

 

 サインを書く中、サトシの存在に気付くと立ち上がって近付くルチア。

 

「え? お、俺?」

 

「ええ、貴方にもサインをと思ってね。名前は?」

 

「サトシだよ、マサラタウンのサトシ」

 

「サトシ君か〜。よろしくねサトシ……く……ん……?」

 

「あれ?」とルチアは首を傾げる、チルルもキョトンと目を丸くする。

 

「え?」

 

 ルチアとチルルはお互いに顔を見合わせて、徐々に……徐々に笑顔が驚愕の表情に一変した。

 

「マ、マ、マ……マサラタウンのサトシ選手!? ほ、本物の!?」

 

『えええええええええええええええっ!?』

 

 まさかの世界王者の来訪にルチアを含む民衆が盛大に驚く、寧ろ気付かなかったのが驚きだが。

 

「えっ、ええ!? ほ、本人!? まさか本当に会えるだなんて……!」

 

 ざわざわとどよめく民衆達の声を背に、ルチアは「そ、それじゃあ今日はこの辺りにしましょう! 皆、是非コンテストを見に来てね〜♪」と切り上げるのだった。

 


 

 同時刻、フレンドリーショップからタケシが買い物を終えて店内から出てくる。

 

「よし、必要な物は揃えたな」

 

 傷薬や毒消しなどのポケモンの回復に必要な物。食材や日用品、旅先で必要な物資は出来るだけ揃えた。

 後はポケモンコンテストの会場に行ってサトシ達と合流するだけ、今から向かえばギリギリで開始時間には間に合うだろう。

 

 いざ生でルチアを拝見、と主目的が変わっているのは否めないものの、気分が高揚状態で会場へと向かおうとする。

 

「きゃあああ!?」

 

 ガシャン! と言う音と共に女性の悲鳴が聞こえてきた。美しいお姉さんの声、と確信して振り返ると一台のベビーカーが階段からガタガタと一人でに急降下していく。

 

「誰か! 私の坊やを!!」

 

「──自分に任せて下さい!」

 

 ベビーカーから赤ん坊の泣き声が聞こえ、母親らしいその女性の悲痛な声にタケシが買い物袋をその場に置いて階段を降りていく。

 赤ん坊の泣き声が響く中、急いでタケシは階段を降りてベビーカーの手摺りに手を伸ばそうとする。

 しかしベビーカーはガタガタと揺れながら落ちていき、このままではベビーカーごと赤ん坊が転倒してしまう。

 

(間に合え!!)

 

 切実な思いが届いたのか、手摺りがタケシの手に届いた。

 

「間に合った…!」

「ああ、ギリギリセーフって所だな」

 

 一瞬、沈黙に包まれる。

 

『え(あァ)?』

 

 手摺りを掴んだタケシ、そしてベビーカーを止めた水色の髪を持つ着物姿の青年が呆けた声を漏らす。

 何処か粗暴な柄の悪い印象があるが、外見通りの人間ではない様だ。

 

「っと、大丈夫かよ坊主」

 泣きじゃくる赤ん坊を抱き上げ、優しくあやす青年。

「坊や! ありがとうございます…!!」

 母親も急いで階段を降りてきて、タケシと青年に礼を言って赤ん坊を抱き締める。

 

「いいえ、自分達は大した事はしてません」

「偶然通り掛かっただけだしな」

 

 その後母親は二人にお礼を述べ、ベビーカーを引いて歩き去った。

 

「いや〜〜……美しい人だったな、既婚者なのは残念だったけど」

「そうかァ? 俺ァ既婚者でも構わねえが」

 ガクッと肩を落とすタケシを慰めているかはいざ知らず、青年は既婚者でもありだと豪語する。

「……ひょっとして、貴方もそう言う人種ですか?」

「奇遇じゃねえか」

 

 互いに見つめ合って数秒後、二人はガシッと握手する。

 

 同志が出来た、と確信して二人は笑みを浮かべるのだった。

 

「貴方とは同じ趣味で語り合えそうですね」

「右に同じだぜ」

 

 お互い軽薄な性分な為か、両者は意気投合。

 

「自分はタケシ、ポケモンドクター兼ブリーダーです」

「俺ァゼクス、流浪の旅人だ。一応、な」

 

 一応、と言うのが引っ掛かるも青年──ゼクスが裏表のない人物だとタケシは心の中で判断する。

 

「ゼクスさんは」

「あァ〜〜……別に呼び捨てでいいぜ? 取り繕うのは苦手だし、タメ口で頼むわ」

「じゃあゼクス、貴方は幾つなんだ?」

「23」

 

 目上の人を呼び捨てにするのは少々抵抗がある礼儀正しいタケシだが、このゼクスの前では何故かそういうイメージがない為か躊躇なく言葉に出来た。

 

 一見すると素行の悪い不良の様な出立ちに腰に刀を携え、銃刀法違反と検挙される恐れもあるが──この時代錯誤の衣装の青年はそんな事に動じない……何故かそんな気がしてならない。

 

「そう言う其方も旅の途中かァ?」

「嗚呼、仲間達は少し用事でいないが……って、そうだ! こうしてはいられない! 早くコンテスト会場に行かねば!」

 

 呑気に会話している場合ではない事を思い出し、タケシは置いていた買い物袋を回収してゼクスに一礼する。

 

「ありがとう、すまないが俺は此処で失礼する! 何れまた何処かで!」

「おう、あばよ」

 

 互いに別れの挨拶を告げると、脱兎の如く走り出すタケシ。その後ろ姿をゼクスはふう、と息を吐いて見つめる。

 

「全く驚いたぜ、思わねえ形で世界王者の仲間──しかも元ジムリーダーのドクターに出会しちまうたあな」

 

 先程の赤ん坊も見捨てる気でいた。デザイアの一員として無闇に人と関わるつもりなど毛頭なく、無干渉を徹底する筈だった。

 だが幼い命を見捨てる事など出来ず、気が付けばその幼い命を救っていた。

 

 己が求めるのは魂を震わせる衝動──内に秘めたる意志(こころざし)のみ。

 そして──

 

「そういや彼奴、()()()()()()()()

 より深い獰猛な笑みでタケシの後ろ姿を見るゼクス。それはまるで、獲物を捉えた狩人(ハンター)を彷彿とさせていた。

 


 

 一方のポケモンコンテストの会場内。

 

 サイン会での騒動はルチアや会場のスタッフによって何とか収まり、サトシ達はルチアと共に会場内のコーディネーター控室に通ずる廊下を歩いていた。

 

「え? じゃあルチアも俺とダンデさんのバトルを観ていてくれたのか?」

「そうだよ。セレナは勿論、ハルカやマサト君と一緒にね」

 

 通路を歩きながらサトシとルチアは他愛ない会話をし、出会って間もないのにもう打ち解けている。

 

「そう言えば俺あの時、ミクリさんとバトルしていたからまともにコンテストライブを見てなかったっけ」

「私はサトシ君の噂は聞いていたよ。セレナやミクリ叔父様、アダン様から話を聞いて、一度でいいから会ってみたいって思っていたんだ」

 

 ルチアも噂の人物に会えて少し笑みを浮かべていて、少なからず愛嬌を振り撒く。

 

「それにサトシ君、セレナの活躍を見に来たんでしょ?」

「え…もしかして、本当に?」

「正解はこの控室の中よ」

 

 と、視線を一つの扉に向けるルチア。

 サトシの方も可能性が極めて低いと踏んでいた為か、望みは薄いと考えていた。

 もし本当にいたとしたら……そう思考を巡らせていると、ルチアが扉を軽くノックする。

 

「セレナ〜! ()()()()()()()()が来ているよ〜!」

『ル、ルチア!? え、熱烈なファンって……!?』

 

 扉の中から驚きと困惑の声が聞こえて、声の主はどうやら慌てふためいている様子。

 適当な口から出まかせを言い放つ彼女に一同は冷や汗を流すも、取り敢えず訪問する事に。

 

『えっと……どうぞ、入って下さい』

「じゃあ遠慮なく、失礼しまーす」

『………え?』

 声の主はサトシの声を聞いて呆けた声を上げるも、そんな暇もなく扉が開かれる。

 

 其処にいたのは一人の美少女。ブロンドのショートヘアーで、ステージ用の衣装かピンクが基調のドレスを纏っていた。

「ようセレナ、久し振り」

「………え?」

 少女は来訪してきた人物の顔を見るなり呆然、目の錯覚と思ってか目を擦る。

「………」

 再確認しても視界に映る光景は変わらず、満面の笑顔の見慣れた少年の姿。

 

「サ、トシ……? え? え…? ええええええええええええええええええ!!?

 

 嘗ての旅仲間且つ密かに想いを寄せる少年の来訪。サプライズ過ぎる来客に少女──セレナは驚き過ぎて飛び退き、下がり過ぎてロッカーに後頭部をぶつける。

「な、何で? どうしてサトシが此処に…!? 確かにカントー出身なのは分かるけど、何で…!?」

 突然の事で困惑してセレナは思考が追い付かず、何が何だか分からない状態だった。

「ちょっとセレナ! 少し落ち着いて!」

「ヒッ、ヒッ、フゥー……」

「確かに深呼吸だけど何か違う!?」

 何故か出産を控える妊婦を思わせる呼吸をする事にルチアが突っ込むが、兎に角セレナは呼吸を整えて平常心を取り戻す。

 

「取り敢えずサトシ、無事でよかったわ。私、マサラタウンの事を聞いてからずっと心配で…」

「ありがとう。昨日までちょっと大変だったんだけど、今はもう大丈夫さ」

 PTSDの事を()()()()で済ませていいのか如何なものかと思うが、一先ず健康的だと言う事を伝えるサトシ。

「って言うかルチア、サトシが来ているってちゃんと伝えてよ。大袈裟な嘘で人の気を引いて……」

「ごめんごめん。でも、少し緊張が解れたでしょ?」

「まあ、そうだけども」

 まともな言い分もあってもいいのに、と少し頬を膨らませてセレナは息を吐く。

 

「……と言うか、貴女達は?」

 そしてセレナはカスミ達の存在に気付く。

「初めましてね、セレナさん。(あたし)はカスミ、ハナダジムのジムリーダーで、サトシとは新人トレーナーだった頃からの付き合いよ」

「えっ……貴女がカスミさん!? サトシから話は聞いているわ、いつも口煩いお転婆娘の仲間だって」

「あんた、人にどんな話してんのよ!?」

 さりげない酷評にカスミは両耳を引っ張り、サトシは情けない悲鳴を上げる。

 

「えっ、ええ? ちょ──」

「あー……いつものじゃれ合いみたいなもんだからほっといていいぜ。オレはタツキ、この顰めっ面はトウマ、サトシとは昔からの友人(ダチ)だ」

 仲裁しようとするセレナをタツキが自己紹介がてら静止、ルチアは思わず微笑む。

「サトシ君って、こんなイケメンのお友達がいたんだね。もしかしたらセレナを巡るライバルになるかも!?」

「ライバル…? まあ確かにカルナヴァルでいつかはバトルするんだろうけど」

「えっ!? ル、ルチア! 何言って…!?」

 別のニュアンスに聞こえてもおかしくない発言、頬を赤く染めたセレナはそう言う意味に聞こえて否定しようとする。

 

「──此奴は女だ」

『…………えええええええっ!!?』

 カスミの時と同様の反応で驚く二人、まあ外見が男としか思えないので仕方ないが。

「おいコラトウマ、颯爽とネタバレすんなよな〜」

「余計な波紋を生じるのを未然に防いだまでだ」

「えっ、嘘? 本当に女の子!?」

「こんなにイケメンなのに!?」

「本当だよ……ややこしくてごめんな?」

 本人に代わって困惑する二人にサトシが謝罪する。

 

「俺、もうすぐ試験官とバトルするんだよ。その羽休めにコンテストを観に来たんだけど……ルチアが出るってのは聞いていたけど、セレナも来ているのは驚いた」

「そ、そうなんだ。じゃあサトシ、応援してくれるのね?」

「嗚呼。ハルカやヒカリの時もそうだったし、当然応援するぜ」

 他意はなくともその言葉はセレナにとっても嬉しく思い、彼女はゆっくり首を縦に振って「うん」と答えた。

「んじゃ、そろそろ邪魔者は客席に移動するかね〜」

「確かに」

「タケシも多分来るかも知れないし、また後でね。サトシ、行くわよ」

「おう。じゃあセレナ、頑張れよ!」

 そう言い残してサトシ達は控室を退室、足音が段々と遠のいていく。

 

「はあぁ……吃驚した。まさか本当にサトシが来るとは思わなかった」

「あれ? もしかして本当に来る事を期待していた?」

「もう、ルチア! 変な事言わないで!」

 揶揄ってくるエメラルドの髪の少女にセレナは赤面で注意する。

「でも……ハルカやマサト君から聞いてはいたけど、サトシとカスミさん……距離が近かった気がする」

 思わぬ恋敵(ライバル)の存在に複雑な感情を抱き、セレナは何とも言えない心境である。

 彼方はカントーからジョウトまで旅をしていて当然であり、カロス中を旅した自分とは場数や経験が違う。

 踏み込めない雰囲気を漂っていたし、どうにも入り込める空気ではなかった。

「セレナ、他の人と比べても仕方ないんじゃない?」

「え…?」

 自己嫌悪に軽く陥っていると、ルチアの言葉に振り向く。

「人にはそれぞれ、その人の魅力があるんだもの。人は人、セレナはセレナ。だからセレナが自分なりの魅力をポケモン達と一緒に引き立てれば、サトシ君もセレナの魅力に気付く筈よ」

 根拠のない言葉だが、今は自分のやるべき事を為す。

 想いが(ココ)にある限り、その想いが届くまで精一杯頑張っていけばいい。

「分かった。恋敵(ライバル)は多いかもしれないけど、頑張ってみる!」

「それでこそセレナだよ。 ──さあ、そろそろ行こう!」

 控室を出て会場へと向かう二人。其処でふと、ルチアは思った。

 

(あれ…? そう言えばハルカの事、サトシ君に伝えるの忘れていた……でもあの様子じゃ知らないみたいだし、後で言わないとだね)

 恐らく彼の仲間は把握しているだろうし、単に忘れているのだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その下手人が判明してない以上、一応は伝えておくべきだろう。

 だが今はコンテスト、ポケモン達の美しさを人々に魅せる時。

 

 To be continued

 

 

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