ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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時間が掛かってしまいましたが、漸く最新話投稿します!

次回は試験官戦を執筆します。


#28 美しきポケモンコンテスト!想いが届くその時まで…!!

 コンテスト会場の客席は既に多くの観客で溢れ返っている。

 

 誰もが今か今かと待ち侘びており、期待に満ちた眼差しを孕んでいる。

 

 サトシ達も観客の数に驚いたが、今は空席があるかどうかを確認する為に空席を探す。

 

「う〜〜ん………中々見つからないや」

 

「まあセレナ&ルチアと言う、アイドルのポケモンコーディネーター二人が今大会の大目玉だもの。満席になっていてもおかしくないわ……あ、セレナは正確にはポケモンパフォーマーだったっけ?」

 

「そうだよ」とサトシがカスミの問いに答える。

 

 カロス地方のパフォーマー達が出場するトライポカロンの話は聞き及んでいたが、そんな彼女もポケモンコーディネーターとして日々活躍している。

 

「にしても見つかんねえなァ、やっぱ人気あり過ぎて満席かも知んねえぞ」

 

「その可能性は大いにある」

 

「参ったな、何処か空いていたらいいな」

 

 ツンツン。

 

「ピカチュウ、今空いている席を探しているから我慢してくれるか?」

 

 ツンツン。

 

「いやだから、少しの辛抱だから我慢──」

 

「ピカ?」

 

 何の事?とピカチュウが首を傾げる。サトシは相棒が足下にいる事に目を丸くする、では先程から自分を突ついているのは誰だろうか?

 

 同時に既視感(デジャヴ)を覚えた、このやり取りは三年前──新人時代にもあった事だ。恐る恐るゆっくり首を動かし、勢いよく背後に振り向いた。

 

「ンバアアアアアアァァァァァァッ!!!」

 

「うわああああああああ!!?」

 

 至近距離でガス状の変顔がいた為、驚いたサトシは悲鳴を上げて後退った。

 

 何事かとカスミ達を含めて観客一同が悲鳴に反応して振り向く。

 

「ちょっとサトシ! 大声を上げたら迷惑……って、あっ!?」

 

 注意を促そうとしたカスミだったが、驚かした存在を見て吃驚した声を濁す。

 

「ゴースゴス!」

 

「お前……ゴースト!?」

 

 其処にいたのはゴースの進化形である、ゴースト・毒タイプのゴースト。

 

「久し振りじゃない! 元気だった?」

「ゴースト!」

 当然!とばかりにゴーストは返事を返す。

 

「そのゴーストは……お前達の知己か?」

「やけに親しいみたいじゃねえか」

 

「嗚呼。ヤマブキジムの制覇に協力してくれた野生のポケモンだ!」

()()……GETしたのではないのか」

「ええ……シオンタウンのポケモンタワーから何故か着いてきてね」

「意味分からん」

 

 ある人を驚かす、基、笑わせる為に協力(?)したのは強ち間違いではないのだが、久し振りの邂逅にゴーストは満面の笑みを浮かべている。

 

「そもそもお前、どうして此処に…?」

「──私が連れてきたの」

 そんな彼等に声が掛かる。振り返ると緑がかった黒いセミロングヘアで、カジュアルなヘソ出しスタイルの女性が座っていた。

「久し振りね、相変わらずで何よりだわ」

『……??』

 サトシとカスミは声を掛けられても尚、相手が何故自分達を存じているかも疑問視している。

 初めて会った気がしないのは自分達はこの女性と過去に会っている、という事を裏付けているのだ。

 そしてゴーストがその女性に触れ合う様子を見て、二人は確信を得た。

 

「も……もしかして、ナツメさん!?」

「ええ。と言うか気付いてなかったのね」

 

 苦笑いして彼女──ヤマブキジムのジムリーダー……ナツメは呆れた様子で吐息を吐く。

 

「ナ、ナツメさん!? ず、随分印象が変わった様な……」

「其方はカスミちゃんね、ジムリーダーとして精進しているそうね。同業者として感心するわ」

 

 これにはカスミも驚き、露出の高い彼女の衣装にほんのり頬を赤く染める。

 

「はははは、久し振りだねサトシ君」

 

 隣の席に座っているテンガロンハットを被った西部劇のガンマン風の年配の男も彼等に声を掛ける。

 

「あ、貴方は──」

 

 サトシが彼を指差して…。

 

「──ナツメさんの隣に住んでいたおじさん!?」

 

 ズルッと席から落ちる様に男がずっこける。

 

 男は立ち上がって「君は相変わらずだな!?」と見当違いのボケにツッコミを入れる。

 

(いやいやいやいや……ジムリーダーの親父さんだろ、どう考えても)

 

(相変わらずバトル以外の知識は疎いな)

 

 タツキとトウマは男の正体を察し、()()()()知識は疎かだと呆れる。

 

「それで、ナツメさん達はどうして此処に?」

 

「ジムリーダーにも休息が必要なの。今私はジムリーダーと映画女優、二つの仕事を両立させてもらっているわ」

 

「映画……もしかしてイッシュ地方のポケウッドの事?」

 

「その通りよ」

 

 ナツメは微笑んで頷く。

 

 ジムリーダーと女優業の両立など、並大抵の人では熟せないであろう。

 

「まあハードスケジュールでもあるからな。久々の休息を兼ねてポケモンコンテストを観に来たわけさ」

 

 年配の男性──ナツメの父がそう言葉を足し、サトシ達は納得する。サトシ達もこれまでの経緯を説明して、ナツメ達も同様に納得した様子である。

 

「ほほう、それで君達はこの会場に。サトシ君も今では世界チャンピオン……これまでの旅中で過ごした仲間の近状を知る為、ポケモンコンテストを拝見するか」

 

「はい、セレナの成長を見ておきたいんです」

 

 これも縁だと思い、サトシ達は椅子に座る事に。暫くしてブザーが鳴り響き、そのタイミングでタケシがやって来た。

 

「サトシ! 何とか間に合った……ってナツメ、さん!?」

「タケシ、もう経緯を教えているから大丈夫」

 

 人形にされた時の事を思い出してナツメと顔を合わせ、微妙な表情のカスミとタケシ。

 

 そうこうしている内に彼等を含めた観客一同の目線は、会場のステージへと移される。

 

「レディース&ジェントルメェ〜〜ン! 御来場の皆様、本日はポケモンコンテストヤマブキ大会にお越し頂きありがとう御座います!」

 

 スポットライトの照明がステージに照らされる、其処にいたのは青緑色のドレスを纏ったオレンジ髪の女性。

 

「あれ…? カントーのポケモンコンテストの司会のリリアンさんじゃない…」

 

「ホウエンのコンテストの司会のビビアンさんでも、シンオウのコンテストの司会のモモアンさんでもないぞ。しかし美しい人だ〜〜…!」

 

 平常運転のタケシは置いておいて、サトシ達の目線はその女性に注目する。

 

(わたくし)、今大会の司会を務めさせて頂きますララアンと申します。本来ならば別の人物が司会を務めるのですが、諸事情により、急遽ジョウト地方から遥々代理として馳せ参じ務めさせて頂きます♪」

 

 その女性──ララアンはお淑やかに微笑む。

 

「えーと、あの人はビビアンさんやリリアンさんの姉妹なのかな…?」

 

「多分そうだろう。ララアンさん……素敵だなァ」

 

「ジョーイさんやジュンサーさんと言い、他にも似た様な大家族の人がいるのかしら?」

 

 彼女達の血縁関係には謎が多いが、今は置いておくとしよう。

 

「ポケモン達の美しさ、可愛さ、様々な魅力を引き出すのがポケモンコーディネーター。それぞれの長所や特徴を活かし、数々のコーディネーターがこの大会に集い、ポケモン達の魅力を引き出すのか?それを引き出すのは彼等次第、今大会も美しく、そして熱い美と愛の競演を御照覧あれ!」

 

 歓声が一気に上がり、サトシ達は釣られて拍手を贈る。

 

「さて、今大会の審査員の方々を御紹介させて頂きます」

 

 三つのスポットライトが照らされ、三人の審査員の姿が明かされる。

 

「先ずはポケモンコンテスト実行委員会会長、コンテスタさん!」

 

「皆さん。本日は御来場いただきありがとうございます」

 

 壮年の男性──コンテスタは一礼する。

 

「続きましてポケモン大好きクラブ会長、スキゾーさん!」

 

「ポケモンとコーディネーターが引き出す技、好きですね〜」

 

 小柄の男性──スキゾーも一礼する。

 

「そして、ポケモンセンターのジョーイさん!」

 

「ポケモンとコーディネーターの絆、それを見れるだけでも素敵な事です」

 

 ジョーイも倣って一礼する。

 

「以上の審査の御三方と私で今大会の進行を務めさせていただきます! 先ずは第一次審査、アピールタイムです!」

 

 数多くのコーディネーターがポケモン達の魅力を引き出し、審査員達の判定によってより多くの点数を得ていけば第二次審査──コンテストバトルへと駒を進められる。

 

「エントリーNo.1! 遥か彼方カロス地方から遥々来訪! ポケモンパフォーマーからコーディネーターへと転向、アイドル・ルチアと共に各地を転々! しかしその可憐な美しさは変わらない、セレナさん!」

 

 先程の衣装を纏い、セレナはお辞儀してモンスターボールを構える。

 

「出て来て、ヤンチャム!」

 

 投擲されたモンスターボールは宙を舞い、煌びやかな星の演出と共に開かれる。

 

 黒いサングラスを頭に乗せ、カロス地方を代表的なポケモンの一体──格闘タイプのヤンチャムが姿を見せる。

 

「お! ヤンチャム、久し振りだな!」

 

 客席にいるサトシは久々に見る彼女の仲間の姿に歓喜。

 

「ヤンチャム、ストーンエッジ!」

 

 セレナの指示で自らのパフォーマンスを始めるヤンチャム。

 

 両手で床に触れ、三つの隆起した刺々しい石の杭が顕現する。

 

「ジャンプ! そして冷凍パンチ!!」

 

 勢いよく跳んでヤンチャムは拳に冷気を纏い、石の杭を殴り付ける。

 しかも砕かない様に力をセーブして石の杭は段々と凍てついていき、まるで氷柱の様に凍っていった。

 

「ストーンエッジが氷柱の様に凍っていきます! 一体何をするつもりなのでしょう!?」

 

 実況のララアンがヤンチャムが冷凍パンチで杭を凍らせる(さま)を見つめ、セレナは更に指示を飛ばす。

 

「杭に跳び移って!」

 

 凍り付いた石の杭に跳び移り、そのままヤンチャムは滑り出す。

 落ちそうになれば再び跳び移り、別の杭で滑っていく。

 

「氷柱の如く凍り付いたストーンエッジをスケートリンクの様に滑り、そして別の杭に跳び移るとまた滑っていく! ヤンチャム、華麗に滑っていきます!」

 

 観客席からも絶賛する声が上がり、その繰り返しに歓声が聞こえてくる。

 

 見事な演出に観客一同が見惚れていき、反応も上々と感じてセレナは締めに取り掛かる。

 

「いくわよヤンチャム! 跳んで!」

 

 言われるがままに跳び、杭に向けて淡い光を纏いし拳を放った。

 

「──ドレインパンチ!」

 

 光を纏う拳は杭の中心を見事に突き破り、ヤンチャムは華麗に着地する。

 

 ピシッ! ピシピシピシピシピシピシッ!!

 

 バリィィィィィン!!

 

 着地と同時に杭に亀裂が入り、やがて杭は氷の如く割れていった。

 

「フィニッシュ! ヤンチャムのドレインパンチの一撃、砕けたストーンエッジに付いた氷が水として溶けていき、その光沢がヤンチャムの周囲に落ちて輝いております!」

 

 ララアンは見事に実況し、セレナとヤンチャムのパフォーマンスを賞賛する。

 

 彼女達は抱き合って和気藹々となり、サトシ達を含めた観客一同は拍手喝采を送る。

 

「氷を冷凍パンチで補うなんて凄いわね!」

 

「嗚呼、セレナも日々成長していっているんだな」

 

「ピカピカ〜」

 

 拍手喝采する中、セレナとヤンチャムは舞台裏に下り、ララアンは熱気が入った様子で「続けていきましょう!」と熱烈に実況していく。

 


 

 その後も一次審査のパフォーマンスは続き、コーディネーター達はポケモン達と息の合った演技を披露する。

 

 誰しもがポケモンの特徴を活かしてパフォーマンスを繰り広げ、見事に観客の注目を浴びていく。

 

 それはルチアも同じ事。彼女もチルルと息の合ったコンビネーションを魅せていて、最上のパフォーマンスを披露した。

 

「これで第一次審査は終了です! さて……第二次審査へと通過したのはどのコーディネーターでしょうか、それでは発表します!」

 

 嬉々とした様子でララアンの視線がモニターへと向けられ、結果発表を客席から期待を寄せる声が上がる。

 

 やがて映されるのは第二次審査に進出した8名のコーディネーター達。その中にはセレナは勿論ルチアもいて、観客席から歓声が聞こえてくる。

 

「おお!? セレナが通過したぞ!」

 

「ルチアも同じく通過しているわ!」

 

 サトシ達もこれには観客の声を上げ、二人の応援に一貫する。

 

「キイイイイィィィィ!! カロスのジャリガールめぇ! ()()(あたし)を差し置いて、目立ち過ぎでしょ!?」

 

「ム、ムサシがいつになく荒れている」

 

「女の心は良く分からないニャ」

 

 別の客席でラフな衣装で観客を装う見た事がありそうな三人組もそれを見ていて、その内の一人たる女が妬んで怒りを吐露する。

 

「こうなったら……」

 

『こうなったら?』

 

「彼処にいるチルタリスをGETしてやるわ!」

 

 女──と言うか、ムサシがモンスターボールを構えてルチアと共にいるチルルに狙いを定める。

 

 他のコーディネーターも捨てがたいが、ドラゴン・飛行のチルタリスが一際存在感を放っている。

 

「ハブネーク、黒い霧」

 

 モンスターボールから飛び出したハブネークは口から黒い霧を放ち、会場全体が霧に覆われた。

 

 突然の霧に人々が咽せていき、その隙にニャースがバズーカを構える。

 

「チルタリス、GETだニャ!」

 

 バズーカの砲身から電磁式のネットが放たれ、チルルの身体がネットに覆われる。

 

「ああ!? チルル…!」

 

「さあそれではバイニャラ〜!」

 

 ルチアの悲痛な声を気にすることなく、ロケット団はチルルを連れて会場を飛び出す。

 

「おい! お前等、何をしているんだ!?」

 

 サトシ達がそれを追い掛け、ルチアもセレナを伴って後を追う。

 

「ふふん! 何をしているんだ、と聞かれたら!」

 

「答えて上げるが世の情け!」

 

「世界の破壊を防ぐ為!」

 

「世界の平和を守る為!」

 

「愛と真実の悪を貫く!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

 逃走劇を繰り広げながら口上を口遊み、変装を解いていく。

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には!」

 

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」

 

「ニャ〜んてニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

 コンテスト会場を飛び出し、彼等は遠隔操作していたニャース型気球に乗り込む。

 

「待てぇ! ロケット団!」

 

「ピカピカチュウ!」

 

「ロケット団って、セレナがいつも話していたって言う…!?」

 

「うん! 人のポケモンを奪う悪い連中で、いつもサトシのピカチュウを狙っているの!」

 

「そう言えばそんな人達、ルネシティにも現れたってミクリ叔父様がアダン様から聞いた事がある様な気が」

 

 セレナとルチアの会話にタツキは「あーー……そう言う感じなわけか」と呟き、トウマ共々事情を大体把握した。

 

「と言うか貴方達、ちっとも変わってないじゃない! 相変わらずピカチュウを狙って!」

 

「うっさいわね! 悔しかったらここまで来てみなさい!」

 

 ムサシが煽っていき、ピカチュウが両方の頬袋に電気を溜める。

 

「ピカチュウ、ダメだ! 今攻撃したらチルルまで巻き込まれる…!」

 

「ピカ…!」

 

 迂闊に攻撃を行えばチルルに危険が及ぶ、サトシ達はどうする事も出来ない状況にあった。

 

「ほらほら、さっさと攻撃しないとこのチルタリス、サカキ様に献上しちゃうわよ?」

 

「序でにピカチュウもGETするのもいいかもな! 続けてGETだぜ!」

 

「了解だニャ!」

 

「ソーナンス!」

 

 欲望に忠実とはこの事か、バズーカの砲身をピカチュウに向けて狙いを絞るニャース。

 

「覚悟するのニャ──」

 

ヴァアアアアアアアアアアアッ!!

 

ッ!? ギニャアアアアアアアアアアッ!?

 

 当然背後から大声が聞こえてきて吃驚するニャース、ムサシ達も釣られて吃驚する。

 

 突然の事だった為に振り返ると、ゴーストがいて彼等の反応がツボに入ったのかゲラゲラと爆笑している。

 

「な、何なんだこのゴースト!?」

 

「驚かすんじゃないわよ!」

 

 いつの間に近付いたのか疑問に思うが、一同の視線はゴーストに注がれている。

 

「フーディン、金縛り!」

 

 ピシッとニャース達の身体が突然、その名の通り金縛りに遭った様に動かなくなる。

 

「あががっ!?」

 

「な、何よこれ…!?」

 

「か、身体が、動かニャいのニャ…!?」

 

 本来であれば相手のポケモンの使用した技を封じる為の技であるが、この様にバトル外ならば対象の動きを封じる事も可能だ。

 

 ゴーストがどさくさに紛れて気球に忍び込み、ロケット団を笑いで気を逸らす。

 

 そしてナツメが繰り出したカントーを始めとした地方で生息を確認されるケーシィの最終進化形──フーディンの金縛りで動きを一時的に封じる。

 

「あ、貴女は……ヤマブキジムのジムリーダー、ナツメさん…?」

 

「そのフーディン、もしかしてあの時のユンゲラーが進化して…!?」

 

 ナツメの参戦でロケット団が動きを封じられ、絶好のチャンスである。

 

「行ってきな! 相棒!」

 

 タツキがモンスターボールを投擲、ボールから飛び出したリザードンが咆哮と共に気球に急接近、両手の爪で電磁ネットが切り裂かれる。

 

 ネット諸共機器も破壊された為、自由となったチルルは慌ててリザードンによる先導の下、ルチアの下へと戻った。

 

「チルル! 良かったぁ…!」

 

「何処にも怪我がなくて何よりだな」

 

 サトシがその心温まる光景を見届け、同時にナツメの指示でフーディンがロケット団に対する金縛りを解除する。

 

「た、助かった…!」

 

「ええい! 折角のチルタリスをよくも!」

 

 ムサシが憤って地上にいるサトシ達を睨むが、この場で最も憤る者がいた。

 

「巫山戯ないで! 折角のコンテストに割り込んだ相応の罰、きっちり受けてみなさい!」

 

 セレナはモンスターボールを構える。

 

「出て来て、マフォクシー!!」

 

 投擲されたモンスターボールが開かれ、魔法使いの様な容姿を持つカロス御三家の炎タイプ、フォッコの最終進化形──マフォクシーが顕現された。

 

「マフォクシー……! ホウエンのコンテストライブの事、コハルから聞いていたけど、本当にテールナーが進化したんだな」

 

 カロスの旅の後、コーディネーターとしても、パフォーマーとしても一人前として研鑽を積んだ事がセレナとマフォクシーの勇姿を見て察したサトシ。

 

「マジカルフレイム!!」

 

 所持する枝に炎が収束され、増幅された炎は一点集中してニャース気球に命中し、共に爆発する。

 

『ぎゃあああああああ!!』

 

 吹っ飛びはせずにロケット団はそのまま墜落。

 

「痛た……あのジャリガールめぇ」

 

「酷い目に遭ったのニャ」

 

「ひいぃ……」

 

 激痛が全身に走るも、どうにか立ち上がろうとするが──非情な一声が掛かる。

 

「だったらもっと酷い目に遭っていきましょうか?」

 

『え…?』

 

 ゆっくり顔を上げてロケット団は前方を見る。その先には既にマフォクシーとフーディン、そしてチルルが大技の準備を整っている。

 

 これから起きる末路を察してムサシ達は抱き合うが、容赦なく技が放たれる。

 

『サイコキネシス!』

 

「チルル、龍の波動!!」

 

 凄まじい念波と龍を象ったエネルギーが放たれ、ロケット団は直撃を受けて空に舞った。

 

「あーんもう! 折角チルタリスGETするまでは上手くいっていたのに!」

 

「とほほ……いつもの様に空を飛ぶのか」

 

「結局いつもの」

 

『やな感じ〜〜!!』

 

「ソ〜〜〜ナンス!!」

 

 そして例の如く空の彼方になっていく。

 


 

「マフォクシー、サイコキネシス!」

 

「チルル、躱して!」

 

 あの後、延期する可能性が考慮されたが──無事コンテストバトルは行われた。

 

 セレナとルチアは決勝戦まで駒を進め、互いに汗と血潮を流すかの様なバトルを繰り広げている。

 

 ゲージも大半以上は減っていて、残り僅かにまで差し掛かっている所である。

 

 勝利の女神は何方に微笑むのか、サトシ達を含めた観客一同はその行方を巡って声援を送る。

 

「セレナ、頑張れー! ルチアも!」

 

「何方も頑張って!」

 

「さあ、そろそろ時間制限も残り10秒!カウントダウンを全員で数えていきましょう!!」

 

 ララアンは観客にそう伝え、カウントを数えていく。

 

 10。

 

 9。

 

 8。

 

 7。

 

 6。

 

「マジカルフレイム!」

 

「龍の波動!」

 

 炎と龍を象ったエネルギーが激突し、凄まじい衝撃が起きる。

 

 5。

 

 4。

 

 3。

 

 2。

 

 1。

 

 0。

 

「タイムアーップ!」

 

 ララアンの声と同時に両者は動きを止め、トレーナーを含めて画面内のゲージを確認する。

 

 殆どゲージが残っておらず、ほぼ同時に見えるゲージ……僅かな差では──

 

「WINNERは……ルチアさん!」

 

「!!……やったー!」

 

 ほぼ諦め掛けていたが、判定を聞いてルチアは舞い上がった。

 

 そしてチルルと抱き合い、勝利──つまり今大会の優勝を分かち合う。

 

「ルチア、優勝おめでとう」

 

「うん! ありがとうセレナ!」

 

 セレナとマフォクシーもその勝利を讃え、握手を交わす。

 

 観客一同は両者の奮闘を讃え、拍手喝采していった。

 

 その後ルチアにヤマブキリボンが進呈され、ポケモンコンテストは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

「コーディネーター襲撃事件!? ホウエンの町で!?」

 

 ヤマブキシティの公園、夕日の下でサトシの驚きの声が上がる。

 

 公園にて互いの健闘を労って軽いパーティを開いて(タケシとセレナは既に自己紹介を済んでいる)いる中、ルチアから出た言葉に驚きを禁じ得ない。

 

 ルチアもルチアで「やっぱり知らなかったんだ……」と意外そうで納得した。

 

「って言うか、ハルカが行方不明って」

 

「半年前ネットに急に挙がった事件なの」

 

 ルチアはスマホを操作して一同に見せる、記事と共に挙がった画像には地面が凍て付き、建物や木には火災の痕跡が残されている。

 

「デザイアの仕業かな…?」

 

「しかし奴等が活動し出したのは数週間前、関連性は薄いのか、或いは一部の人間による独断なのか」

 

 ともあれこんな事件が起きていたなど知り得なかった、サトシは驚きで唖然とするばかりで開口。

 

「しかし"ホウエンの舞姫"がその町に来ていて、その上姿を消したってか」

 

「お前達の知己であるならば当然心配ではあるか」

 

 タツキとトウマが呟き、サトシはその記事を見通す。

 

「マサトは知っているのかしら……いや、よく思い出してみたら敢えて事件の話題を出さなかったのかも」

 

「俺達に心配掛けたくなかったから、態と避けていたんだろうな」

 

 何らかのきっかけで姉が行方不明になったと知り、彼の心境は恐らく穏やかではなかっただろう。

 

 そんなマサトの思惑に気付けなかった事を恥じ、カスミとタケシは何とも言えない心境になった。

 

「サトシ……」

 

 記事を見通す彼の身をセレナは案じる。

 

 マサトとその姉──ハルカから彼と過ごした日々は聞いていた。

 

 ハルカ自身はサトシに己と同じ感情を向けていない事は安堵しているが、彼の仲間は己の仲間である事は変わりない。

 

「……確かにハルカの事は心配だけど、多分無事だと思う」

 

『え?』

 

 一同は目を丸くする、何故根拠なくそう断言出来るのかと。

 

「一緒にホウエン地方とバトルフロンティアを巡って旅をして、他にはファウンス、ラルース、ロータの町、アクーシャ、マグマ団とアクア団の抗争に巻き込まれたりしたけど、彼奴やマサトと過ごした日々は俺に達にとって大切な思い出。要するに、仲間の事を信じないでどうするんだって事」

 

 確かにそうだ。目先の事に囚われ、疎かにしていた。

 

「……その通りだ。きっとマサトも自分の姉の無事を信じている筈」

 

「センリさんやミツコさんもな。それとシュウとハーリーさん、サオリさんといったコーディネーターの皆も」

 

 二人と付き合いがあるサトシやタケシだからこそ断言出来る信頼関係。

 

 カスミ達はその光景に微笑み、今の言葉は信じるに値するだろう。

 

「それに彼奴だったら、何処かのグルメ店で料理を大食いしているかもしれないけどな」

 

 本人が聞けば激昂せざるを得ない発言だが、こうも言い退けると本当に無事を信じているのが逆に信憑性を高められる。

 

「信じているんだね、一緒に旅をしたお仲間の事」

 

「それがサトシだもの」

 

 セレナはほんのり頬を赤く染め、ルチアは彼と言う人間を再認識した。

 

「そう言えば二人はどうするんだ?」

 

 サトシはセレナとルチアに問い掛ける、コンテストが終わった以上ポケモンとパフォーマンスの特訓などが主な目的になるが…。

 

「私はサトシのバトルを見届けてからにするわ、ルチアは?」

 

「悪いけど私は遠慮するかな? バトルを見てみたいけど、スケジュールの関係で町を出なくちゃいけないの。セレナ、また今度ね」

 

「バイバーイ!」と手を振り、さりげなくファンサを送りながらルチアは去っていく。

 

「あら…? サトシ、スマホロトムが!」

 

「…!! もしかして!」

 

 独特なメール受信音が響き、スマホロトムをタップしてサトシは受信されたメールの内容を確認する。

 

挑戦者(チャレンジャー)に告げる。試験官バトルの準備(スタンバイ)が完了した。明日の正午、ヤマブキシティ東端の7番道路に来たるべし》

 

 独特なメールの文脈に送り主が誰かを察し、サトシは不敵に笑みを零した。

 

「遂に来たわね、サトシ」

 

「嗚呼! イシオさんとの全力のバトル、望む所だぜ…!」

 

「相手はカルナヴァルのルールで選ばれた岩タイプのエキスパート、油断は禁物だ」

 

 声援を送るのはカスミとタケシだけではない。

 

「サトシ、頑張ってね…!」

 

「お(めえ)の成長ぶり、篤と見せてもらうぜ」

 

「右に同じくだ」

 

「嗚呼……絶対勝ってみせる!」

 

 セレナ、トウマ、そしてタツキも同じである。

 

 休息(インターバル)は終わり、いよいよ試験官イシオとのバトルが確定した。

 

 相手は警察官であると同時に岩の試験官、サトシはそんな強敵をどう攻略するのか。

 

 

 To be continued

 

 

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