ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE 作:虎武士
此処はカントー地方より西、ジョウト地方・ヒワダタウン。
ジョウト地方は古い伝承が趣のある地方で、地方全体が古い歴史が残っている。
そしてこのヒワダタウンで有名なモンスターボール職人、ガンテツの家を来訪者が現在訪れている。
「へえ……じゃあサトシ、わざわざ遠く離れたオレンジ諸島って所から此処まで届け物をしたんですか?」
来訪者たるその少年は浅黒い肌にグレーのパーカーを着ており、純真無垢な眼差しを向けている。
彼──ゴウは件の少年──サトシと共にサクラギ研究所の
更に彼は研究所所長のサクラギ博士とは親しく、彼の娘……コハルとは幼馴染の関係である。
「せや、このGSボールをな」
そう語る老人の名はガンテツ、この家の家主で名のあるモンスターボール職人その人。
彼の手には金と銀の配色のモンスターボールが収まっており、ゴウはそれを純真な眼差しで見つめている。
「話には聞いていたんですけど、これって元々ウチキド博士って言うオレンジ諸島のポケモン博士が研究してたんすよね」
「しかしお前さん、物好きやな。わざわざ此処に来て、モンスターボールの作成の過程を見ておきたいなんてな」
「俺、ミュウをパートナーにするのが夢なんです! 子供の頃、その姿を見てまた会いたいって思って、ずっとミュウの事を考えていたんです」
あの頃はまともに人とコミュニケーションなど取らず、ミュウの事しか考えてなかった幼少期。
信頼など不要と考えていたが、サトシや数多くのポケモンとの出会いと交流を経てそれは大分改善された。
単純かつ非効率だったあの頃の自分を恥じていたが、それを含んで現在の自分があると納得しているゴウ。
「はは……それにしてもあの時GSボールを儂の下へ預けた少年が、今や世界チャンピオンか。世の中、どうなるか全く分からんものやな」
ガンテツもマスターズエイトの
当時の思い出に浸るガンテツの様子に彼奴らしいな、と心中を察して笑みを浮かべるゴウ。
「──爺ちゃん、爺ちゃん!」
現在彼等がいるのは居間、其処へ玄関から慌てて走ってきた少女が駆け込んできた。
「チエ、どないしたんや」
自身の孫娘たる少女──チエの慌しい様子にガンテツは眉を顰める、彼女は息を切らして祖父(とついでにゴウ)にある物を見せつける。
「これ! 大変なんよ!」
慌てるあまり語彙力が極端だが、ガンテツは彼女から一枚の紙を手渡される。ゴウも気になり、その紙を覗き込む。
その紙に記載されているのは、今し方話題になっていた人物とその相方。
「サトシにピカチュウ、相変わらず元気そうだ……な……?」
いつ撮られたかは分からずとも、彼等の写真を見てゴウは笑みを浮かべていたが、その笑みは写真の下に記載された文章を見て硬直する。
「……は?」
同時に文章──というかその紙──手配書を見て絶句、劇画が変わる程に驚き呆けた声を零した。
彼の肩に乗る小さな猿みたいな緑の体色のポケモン──サルノリはよく理解せず、首を傾げるだけだった。
ホウエン地方・ラルースシティ。
ホウエン随一の近代都市で、ハイテク技術が発展されている街。
この街は嘗て宇宙から飛来したポケモン──現在では幻のポケモンとして学会に発表されているデオキシスの襲撃を受けている。
だがこのラルースに運び込まれた同族を見つける為、街の人々をタワーへ隔離していて人為的な被害を出していないのだが、そのデオキシスを敵と誤解した伝説のドラゴンポケモン──レックウザの介入により大事件へと発展した。
「イッツ、サイエンスターイム!」
ウエイターの衣装を身に纏い、野菜を彷彿とさせる特徴的な髪型を持つ緑髪の青年が声を上げる。
傍にはブロッコリーを模した髪型の緑色の体毛を持つ小さな猿の様なポケモン──彼のパートナーであるヤナップがいて、ヤナップ自身も新しく訪れた街並みに見惚れる。
「ラルースシティ……噂は聞いてはいたけれど、このサイエンスソムリエ・デントの目を見ても実物はやはり壮大なものだ!」
青年──デントはイッシュ地方のサンヨウシティにあるサンヨウジムのジムリーダーの一人にして、Aランクのポケモンソムリエである。
ポケモンソムリエとはポケモンとトレーナーの相性を診断、友好を深める助言を行うアドバイザー。
イッシュ地方にのみ存在する職業で、それ以外の地方ではあまり存在を知られていない。
デント自身もソムリエとしての見聞を広げる為、ある少年少女と共に旅をし、現在は独立して各地を転々して巡っている。
因みに男性はソムリエ、女性はソムリエールとそれぞれ呼称されている。
ホウエン地方は暖かい気候があり、稀に温風が吹いてくる。
それ故に風に煽られて一枚の紙が飛んできて、デントの顔を覆った。
「むごっ!?」
突然自身の顔を覆う紙に驚き、デントは慌てて紙を引き剥がす。
なんだと思いその紙を見ると、それには見知った少年とピカチュウの写真が記載されていた。
「サトシにピカチュウ、久し振りに写真越しとはいえ顔を見れて何よりだ、よ…?」
その紙──手配書を見て目を丸くする、そして手を振るわせてデントは叫んだ。
「──イッツ、ビックリターイム!?」
若きポケモンソムリエの叫びはラルースの空に木霊した。
「は!?」
豪華なクルーザーに乗る白いワンピースを身に纏う金髪の少女。
「ひ!?」
何処かの宇宙センターにいる小太りのオレンジ髪の少年。
「ふ?」
漁船に乗るそばかすの青髪の少女。
「へ!?」
リザードンに乗った炎を模した赤髪の海パンの黒い肌の少年。
「ほ!?」
アローラ地方の草ポケモンであるアマカジの最終進化形──アマージョを伴い、何処かの食堂で働く小麦色の肌の緑髪の少女。
それぞれの場所でそれぞれが驚き、見知った顔とその相棒の載った手配書を見つめるのだった。
カロス地方・ミアレシティ。
嘗てこの地方を襲った大災厄から三年の月日が流れ、街は既に災厄の爪痕はなく、現在は大規模な都市開発が進んでいる。
市街の北西エリア・オトンヌアベニュー沿いに新たに進出した国外の大企業──クエーサー社がポケモンと人間の共存を提唱、その働きにより街中に自然が溢れていった。
ポケモンと人間の共存を実現するべく、クエーサー社はワイルドゾーンと言うポケモンの居住空間を設立し、人とポケモンの暮らしをそれぞれ隔離。
そして近々ポケモンバトル方面に於いて、バトルロワイヤル方式のバトル空間──バトルゾーンの設立も予定されている。
それは血気盛んなトレーナーとポケモン達によるバトルの祭典、言わば
あくまで"予定"の為に確実とは明言されていないものの、噂を聞きつけて観光客が増加したのもまた事実。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
ミアレのシンボルとも言えるプリズムタワー内部にあるミアレジム、8歳位の黄色い髪の少女がピカチュウよりも小柄な小さな電気・フェアリータイプのポケモン──デデンネと共に駆け込む。
「大変! 大変だよ〜!!」
一体のロボットを整備する少女と同じ髪色の作業服の少年は突然の来訪に驚く。
「ユリーカ、どうしたんだい?」
《ユリーカ様、慌てて走ると危ないですよ?》
少女──ユリーカの様子に彼女の兄でミアレジムのジムリーダーの少年──シトロン、彼等の家族の一員で審判兼ジムリーダー代理を務めるロボット──シトロイドは揃って首を傾げる。
「それどころじゃないよ! これ見て!」
握り締めていた紙を兄達に押し付けるユリーカ、シトロンはクシャクシャになったその紙──手配書を広げ……その写真を見て驚く。
「サトシにピカチュウ……え!? ど、どう言う事ですか、これ…!?」
《理解不能! 理解不能!》
見知った顔触れが何故か指名手配されている事にシトロンは困惑、シトロイドに関しては目の前の事に同様の反応しつつ軽くバグを起こす始末。
「家に届いた新聞紙に挟まっていたの! パパも見た時は驚いてひっくり返るくらいで、それでお兄ちゃんにも知らせようと!」
「分かった! 充分に伝わったから!」
それ以上はいいと急かしてくる妹を宥め、シトロン改めて手配書を見る。
「サトシ……一体何をしたらこんな事に…?」
自身もまたマサラタウンの状況を知り、今すぐにでも現地に飛び出したい衝動に駆られた。
だが現状を見極めようと自制し、変わらずジムリーダーとしての責務を続けている。
「どうしようどうしよう! こんな時はそう、お兄ちゃんのお嫁さん候補を募集しなきゃ!!」
「ユリーカ、サラッと余計な事を考えないでくれるかい?」
シンオウ地方・トバリシティ。
カントー地方より北に位置し、一部の土地は寒い気候がある。
自転車に跨ってペダルを漕ぎ、町中を走る少女が一人。
紺色の髪を持つ頭部に白いニット帽を被り、首にピンク色のマフラーを巻き、自転車の籠にシンオウの最初の三体の内の一体──ペンギンポケモンのポッチャマが収まっている。
「ええええええええええ!?」
「ポチャアアアアア!?」
だが……少女とポッチャマは絶叫、サトシの写真の載った手配書を見て驚きの表情を浮かべている。
少女──ヒカリは彼と共にシンオウ地方を旅し、数々の苦難と冒険を乗り越えてきた。
「サ……サトシが指名手配!? 何で!? 全然ダイジョばないんだけど!?」
困惑するヒカリの傍らでポッチャマは納得いかない!とばかりに喚く、周囲の人々はそんな彼女達を見ているが本人達は気付いてない。
と言うより目の前の事に意識を向けている為、他の事に意識を向いてないのだ。
「おい、口喧しいぞ。騒ぐなら他所でやれ」
「誰が口喧しいですって!?」
飛んできた罵詈雑言に振り返るヒカリ、それを放った声の主の顔に思わず驚く。
「って……シンジ!?」
濃い紫色の髪に黒いシャツに青いジャケットを纏い、鋭い眼光を持つ少年は深い息を吐く。
「お前は……」
少年──シンジはヒカリを見つめ、その姿を視線から逸らさず。
「──誰だ?」
「ヒカリよ、ヒ・カ・リ! サトシと一緒に旅していた! クロガネジムやスズラン島でも会っているでしょ!?」
火山噴火の如く怒りを剥き出しにヒカリは彼に喰らい付く。
「覚えていないな」
「ムカーッ!!」
明らかに旅のお供扱い、食らいついてもシンジは澄まし顔で流している。
「って言うか、何で此処に!?」
「この町は俺の故郷だ、里帰りしていたらおかしいか?」
「あ、いや、全然おかしくないけど」
キッパリと正論を述べられ、何とも言えない表情で言い淀むヒカリ。
その手には買い物袋をぶら下げている、恐らく買い出しの最中だろう。
「で? お前は何故この町に来ている? この町でポケモンコンテストが開催される予定はないが?」
「私が此処に来ているのはポケモン達とのトレーニングの為、次のコンテストに備えてよ! それにこれ!」
ヒカリは彼に手配書を押し付け、シンジは眉を顰めつつも手配書を見る。
「……何故こうなった?」
「分からないわよ! 貴方もどうせカルナヴァルに参加しているんだから、マサラタウンの状況も知ったんでしょ!?」
語ってもいないのに初見殺しとばかりに察するヒカリ、彼女を無視してシンジはサトシの手配書を眺める……若干握力が入って紙に皺が入る。
だがそれよりも、何故
世界王者とはいえ、人間一人……10代の少年にこんな多額の賞金を掛けるとは、幾らなんでも大仰過ぎる。
一体誰が、何が目的でこんな物を手配したのか?
それはまだ誰も知らない。
イッシュ地方・ソウリュウシティ。
「どう言う事なのこれ!」
ソウリュウジムの一室にアイリスの怒号が響く。
今朝届いた新聞を受け取ったはいいが、共に挟まれていた手配書に対して憤慨するしかなかった。
「誰がこんな手の込んだ嫌がらせしたのよ! サトシの事を良く思ってないのを分かるにしても、
明らかにサトシを辱めようと言う魂胆があるにしても、これはどう考えても常軌を逸脱した所業。
何処の誰かは依然と不明、しかし証拠もなしに警察も下手に動く事も出来ないだろう。
採れたての果物を怒り混じりに齧り付き、アイリスは口の中で咀嚼を繰り返す。
「おやおや〜? 御立腹だねぃ」
緩そうな声音が響き、振り返るアイリス。
白髪で緩んだ顔付きの青年が壁に佇み、やれやれと言った様子で彼女を見ている。
「カ、カキツバタさん!?」
「よう、久し振りだねぃ。ソウリュウ学園の元中退者ちゃん」
アイリスは過去の所業を掘り返され、引き攣った表情を浮かべる。
彼──カキツバタの事は昔から苦手だ。ソウリュウ学園学長兼ジムリーダーであるシャガの孫であるのもそうだが、彼のスタンスと性格には学園在学時に色々と振り回されてきた。
「どうしてイッシュ本土に!? ブルーベリー学園は!?」
「たまーに里帰りってのも悪くないからねぃ。ちゃんと校長から許可取ってるし、と言うか本当に驚かれるとツバっさん傷つくねぃ」
よよよ…と分かりきった嘘泣きをするカキツバタの身も蓋もない発言、アイリスは相変わらずだと深く息を吐いて、怒りなどとっくに忘却に追いやる。
こんな漫然としたスタンスを取っているが、トレーナーとしての腕は超一流。
他人を揶揄ったり、時には煽って彼に挑んでくるトレーナーは後を絶たないが、カキツバタは全て返り討ちにしている。
嘗てのアイリスもその内の一人、結果は言うまでもないだろう。
「にしても世界王者、モテモテだね〜。まだ会った事ないけど、オイラ嫉妬しちゃうぜぃ」
「悪い意味でですけどね!」
皮肉とも取れる言葉に再び憤慨するアイリス、上げ下げの温度差が激しい。
「まあそうプンスカ怒ってもいい事ないぜぃ? オイラみたいにゆる〜くいこうや」
「人間誰もがカキツバタさんみたいだったら困るんですけど!?」
こんな気怠なキャラは一人で充分、またしても息を吐くアイリス。
「兎に角、リラックスしていこうぜぃ。
「そうですね、カルナヴァルじゃみんなライバル。何がどうなるか分か……ら……?」
バッと振り返るアイリスだが、カキツバタは即座に逃げ出して退室。
サラッととんでもない発言を取って逃げていった彼に彼女は眉間に青筋を浮かべる。
すぐさまスマホロトムで彼の祖父──シャガに連絡、本当に帰省してきたかどうかを確認を取る為だ。
確かに留学先のブルーベリー学園に帰省届は申請しているが、本日帰省しているとは把握してなかった……と言うのがシャガからの連絡。
カキツバタ本人の自由奔放ぶりに頭を抱えるアイリスだが、シャガからは「好きにさせてやって欲しい」と宥められる。
唯でさえカルナヴァル、デザイアと悩みの種があると言うのに、更に知人の存在と追加されて彼女は深く息を吐くばかりだ。
某地方にある砂漠地帯。
「カハハハハハハッ!」
砂嵐が吹き荒れる中、30〜40代程の男性が高らかに笑う。
赤い鈍色の髪に赤いローブの下には黒いタンクトップを身に纏い、下半身は迷彩柄のズボンと長靴を履いている。
その身に宿す雰囲気はアウトローそのもの、獰猛で狂気的で──そして傲慢な気質だ。
「此奴ァ面白え! 餓鬼一人の首に五千万ポケドルかよ!」
サトシの手配書を手に、男──ポケモンハンターは快楽的な目で手配書の写真をなぞる。
PiPiPiとスマホロトムに着信が入り、スマホロトムを通話モードにする男。
「おう、此方はポケモンハンター・スティンガーだ!」
《下準備は済ませた》
「おう、お前さんか。ゼ──」
《──
「おおっと、そうだったな」
ポケモンハンター──スティンガーは獰猛な笑みで訂正する。
通話の相手──Zの声はボイスチェンジャーを使用しているのか、加工した音声がスマホロトムに流れてくる。
「この餓鬼の手配書……兄さんの仕業かい?」
《当たらずとも遠からず……俺一人の手腕では不可能、ある
「兄さん……いい性格してんじゃねえか」
《其方程ではない》
Zは淡々と述べ、彼の行った所業にスティンガーは同じ穴の狢だと確信を得る。
《後は其方の判断に任せる。朗報は期待しないでおこう、何れまた連絡する》
それだけ告げてZとの通話が切れる。
「ケッ…! 相変わらず読めねえ
顔も見た事のない依頼人に悪態を吐き、スティンガーは愚痴る。
だが悪くない条件ではある。表の世界では名の知れた世界王者の少年、それの命を狩れば極上のスパイスとなろう。
「カハハハハハッ! いいじゃねえか、世界王者と言う獲物を狩れば俺様は満たされる! 今からでも待ち遠しいぜェ!」
狂気的な高笑いが砂漠の空に木霊する。
困惑、驚愕、そして狂気。
たった一人の少年の首に掛けられた多額の賞金。
世界が混乱に包まれる中、金に飢えた
To be continued
最後の部分、まだほんの一部しか明らかにしていません。
Zは言うまでもなく本作でサトシに明確な敵意を持つあの人物です。
頭文字のイニシャルで分かると思いますが…。
第二章はまだ続きます。