ポケットモンスター 〜THE LEGEND OF SAGA〜 REMAKE   作:虎武士

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最新話投稿&タマムシ編の開幕です。


#31 海の底から(みんな)の為に!?来たぞ、我等のメガスターミー!!

 ヤマブキシティと並ぶカントー地方の大都市、タマムシシティ。

 

 幾つかのビルやマンションが建ち並び、ネオン街が大きく目立つ。中にはポケモンジムやゲームセンター、デパートやカジノがあって──夜の街を照らす夜景が観光スポットとして挙げられる事が多い。

 

 だがこの街とて昔から大きかったわけではない、大都市の片隅には都市開発から取り残された廃棄区画は必ずや存在する。

 

 タマムシシティの廃棄区画は野生ポケモン達の巣窟になっており、ある意味でポケモン達の暮らしとして成り立っている。

 

 下町(アンダータウン)の役割を担っていて、夜空の下で今宵もポケモン達は賑わう。

 

『オラ、退けや!』

 

『ここら辺は俺らの縄張りだ! 痛い目に遭いたくなけりゃさっさと消えろ!』

 

 不良(ヤンキー)の如くのさばり、まだ小さなポケモン達を脅かす不良ポケモン達が数体。

 

 蜂の様な身体の虫・毒タイプのスピアー、アリクイを彷彿とさせる炎・岩タイプのクイタラン、鴉の様な外見の悪・飛行タイプのドンカラス、パンダの様な外見の格闘・悪タイプのゴロンダ、ザリガニを彷彿とさせる水・悪タイプのシザリガー。

 

 五匹共全員が悪どい面構えをしており、ププリンやピチュー、ピィと言った小さなポケモン達が酷く怯えている。

 

『うわぁぁぁん…!』

 

『こ、こわいよぉ〜!』

 

『誰か助けて〜…!』

 

 まだ幼いのかお互い抱き合わせ、円らな瞳から雫が溢れる。

 

 対して悪どいポケモン達はニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべており、ジリジリと距離を詰めていく。

 

『待てい!』

 

『?』

 

 もうダメかとピチュー達が絶望視していると、何処からか勇んだ声が聞こえてきた。

 

 不良ポケモン達も何事かと思い辺りを見渡す、近くのコンテナブロックの上にその声の主は威風堂々と佇む。

 

『弱い者虐めをするとは……同じポケモンの風上にも置けないぞ!』

 

『何だ、てめェ!?』

 

『だれ?』

 

 その影は赤い水晶体を宿し、紫色の五芒星が折り重なる様な風貌。その正体はヒトデマンの進化形にして、水・エスパータイプを持つ謎のポケモン──スターミーであった。

 

『名乗ると共に、一曲披露しようではないか!』

 

『『『は?』』』

 

 何言ってんだ此奴?とばかりに目線を浴びて注目される中、スターミーは身に着けているマントを揺らしながら歌い出した。

 

『まん〜なかに〜ついてる〜宝石は生命線〜♪』

 

『…………』

 

『…………』

 

『自慢の〜水技で〜♪ 悪をくじく〜♪』

 

 何とも言えない三流の歌唱力、しかも歌詞もセンスが無に等しい。

 

 不良達は白い目を向けており、子供達も溢れていた涙が引っ込んで無言である。

 

『海の底から(みんな)の為に〜♪ き〜たぞ〜我らの〜スーパースターミ〜♪』

 

 センスもなければ歌詞もイマイチ、その場にいるポケモン全員がスターミーを見て微妙な表情だった。

 

『さあ、弱い者虐めをする愚か者達! 私が相手だ──トゥ!!』

 

 潔く跳躍し、スターミーは華麗に着地──

 

『あべし!?』

 

 ──することなくバランスを崩し、アスファルトの床にうつ伏せに減り込む。

 

『ふっ……我ながら勢いつき過ぎたか……しかーし! このスーパースターマン、一度で挫けはしない!』

 

 意味不明な発言をするスターミーに不良達は少々困惑気味で、スターミー自身気付いていない。

 

『いくぞ、必殺! サイコニウムビーム!』

 

 サイコパワーで凝縮したサイコキネシスである。赤い鉱石からそれを発射するが、いかんせんそれが命中したのはシザリガー。

 

『ほあっ!? な、何故だ! ヒーローらしい必殺技を決めたのに──』

 

『いやアホかヒトデ野郎! タイプ相性考えろや!』

 

『どべェ!』

 

 ツッコミと言わんばかりの辻斬りが決まり、まともに食らったスターミーは金網に激突。

 

 おまけに効果抜群な為、呆気なく気絶。

 

『なんなんだこのスターミー? スーパーなんちゃらって自称か?』

 

『よく分からんが……何だか気が滅入っちまった』

 

『帰ろ帰ろ』

 

 よく分からんテンションとヒーローショー紛いな事に巻き込まれたが、不良達は気が削がれて去っていく。

 

『あのお兄さん、格好悪いね』

 

『うん……それにダサい』

 

『何がしたかったんだろ』

 

 子供達も敢えなく幻滅し、それぞれ帰路についていった。

 

 そして暫く時間が過ぎ、スターミーは起き上がると哀愁感のある雰囲気を放つ。

 

『はああ……どうしたら立派なヒーローになれるのだろうか』

 

 敗北よりも絶望感が大きく、兎に角スターミーは黄昏る。

 

 人間の世界で言えばポケモンリーグの四天王、四天王の頂点に立つリーグチャンピオン。

 

 だが近年話題性があるのは、最年少で世界チャンピオンとなった何処ぞの少年。

 

 彼等は正しくスターミーからすればヒーロー、最も憧れる存在。

 

 それに引き換え自身は格好悪い、締まらないオチはあるわ、子供には呆れられるわ、おまけにレベルが自身の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『はあ……帰るか』

 

 自身のトレーナーが心配するだろうと思い、スターミーは一路タマムシシティのポケモンセンターへと帰るのだった。

 


 

 晴れやかな蒼穹の下、タマムシシティの街中で人々が行き交う。

 

「相変わらずこの街は人で溢れているなァ」

 

「そりゃそうよ、カントー一の大都市なんだから」

 

 街中を歩いているサトシ一行は賑やかな街並みを眺め、その平和な光景にしみじみに語る。

 

 デパートにマンション、ゲームコーナー、観光に訪れた他の地方の者は大抵この街で洒落込むだろう。

 

 他にもポケモンドクター養成学校やタマムシ大学があり、学者や医学を目指す者が多い。

 

「ああ……エリカさん、今から貴女のタケシが参りまーす!」

 

「あんたは養成学校に向かうんでしょうが!」

 

 目的を忘れてあらぬ方向へ向かおうとするタケシをカスミが止め、耳を引っ張って引き摺る。

 

「コラ、スターミー! 何やっているの!」

 

『?』

 

 叱責する声が響く。方向からすると──正面からだ、何事かと思い一同は駆け出す。

 

 向かってみると商人らしい男性がヒトデマンの進化形であるスターミーにズボンの裾を引っ張られており、スターミーのトレーナーと思しき女性はスターミーを引き剥がそうとしている。

 

「お願いだから離れて! その人の迷惑でしょう!?」

 

「ちょ、ま、待ってくれ! 一先ず離れて!」

 

 この混沌とした状況に困惑するサトシ達だが、この状況で真っ先に動く者がいた。

 

「自分はタケシと言います」

 

 真っ先にその女性に一目惚れし、彼女の手を取って自己紹介するタケシ。

 

 サトシ達は呆れるが、女性と商人は唯々困惑して言葉を失う。

 

「その優雅な青いショートヘア、澄んだ紫色の瞳、全て自分は惹かれてしまいました。是非、自分とお茶でも──」

 

 モンスターボールからグレッグルが飛び出し、いつもの制裁と毒突きを放とうとする。

 

「どべばっ!?」

 

 するとスターミーの水晶のコアが光り、サイコパワーでタケシの身体を操り床に叩き付ける。

 

「えっと……どうしたんですか?」

 

「私達、此奴の連れです。此奴に代わって話を聞きますので」

 

 スターミーによって黙らせられたタケシに代わり、サトシとカスミが事情を聞く事に。

 

「私の名前はマナ。映画界を目指していて、カロス地方から遥々このカントー地方に来たの」

 

 左手首に独特な腕輪を彼女──マナは見せる、しかもそれは唯の腕輪ではない。

 

「メガリング……」

 

「と言ってもキーストーンが嵌っているだけで、メガストーンはないんだけどね」

 

 お飾りとはいえメガリングに変わりなく、それにサトシ達は目を惹かれる。

 

「それでパートナーのスターミー達と一緒にこの街で数日間滞在していて、どういう映画にしようかと考えていた所……この人が売っているメガストーンにスターミーが食い付いて」

 

「これがそのメガストーンさ」

 

 男性は一つの小箱を取り出し、その中身を見せる。小箱の中には輝かしい鉱石が収まっていて、再びスターミーが飛び出そうとするがマナが慌てて止めている。

 

「まさか……スターミーもメガシンカの可能性があるの!?」

 

「カスミ、知らなかったのか?」

 

「ええ、でも水ポケモンを極める者としては是非手に入れたいわ!」

 

 復活したタケシが口を挟むが華麗にスルー、カスミはメガストーンを手に入れようと意気込む。

 

「……って言うか、何でメガストーンを持っていたんですか?」

 

「えっ!? あ、ああ……ふ、双子島で拾ったんだよ。これだけ高価そうな石だったから、もしかしたら売ったら凄い大金が入るんじゃないかなーって」

 

 カスミに問われた男性は冷汗を流し、焦った様子で言い淀む。

 

「え? でもさっき、浜辺で拾ったって言いませんでした?」

 

『…………』

 

「す、すいません、嘘吐きましたァ!!」

 

 マナの言葉に三人は疑惑の目線を向け、更に無言の重圧を掛けられて男性は耐えられず白状した。

 

 本当に売るつもりだったのかと思う中、男性はメガストーンをマナに渡してさっさと逃げ去った。

 

「あ! まだお金が」

 

「いやあの人嘘言っていたんですって」

 

 お金を騙し取ろうとしていた可能性にも気付かず、マナは純真無垢であった。

 


 

「えっ? 貴方がサトシ君? 世界チャンピオンの?」

 

「あ、はい。一応そうです」

 

「此奴に反応しているのは様式美だからいいとして、このスターミー、凄く素敵ね〜」

 

 一旦落ち着いて近くにあるベンチに移動し、カスミはスターミーに頬擦りする。

 

 同じスターミーを所持する者として、水ポケモンを愛する者として積極的に愛でる。

 

「ありがとうね、カスミちゃん。この子とは子供の頃から一緒で、ヒトデマンの時からの付き合いなんだ」

 

 マナは少し照れくさそうに微笑む。

 

「私が映画作りをするのはスターミーや他のポケモン達の為なんだ」

 

「ポケモン達の為?」

 

「そう! 全てはこの子達をスターにする為だよ!」

 

 ベンチから立ち上がるなり、独特なポージングを取るマナ。

 

「芸能界には様々な有名人がいる! イッシュ地方ではライモンジムリーダー兼モデルのカミツレさん、カロス地方ではトライポカロンのパフォーマーのエルさん、ホウエン地方ではコンテストマスターのミクリさん、ここカントー地方では映画女優兼ジムリーダーのナツメさんなど、様々な人達が名を馳せていて、ひよっこの私達と比べると雲泥の差がある」

 

 人差し指を空高く指し、彼女の口は止まる事を知らない。

 

「しかし、栄光に輝くのは人間だけじゃない! ポケモンも同じ事! シンオウ地方には三日月を司る伝説ポケモン・クレセリア、見窄らしいヒンバスも進化すればミロカロスという美の化身へと昇華、他にも輝かしいポケモンが存在する! 美しく強く、そして逞しいポケモン達をスターへと育てるのが私の夢だから!」

 

 強烈な人だなとサトシ達は密かに思い、熱烈に語る彼女に拍手を送る。

 

「つまり私が言いたいのは、ポケモンが主役として輝ける場所はバトルやコンテストだけでなく、映画だと言う事!」

 

 片腕を天高く掲げ、空に向けて指を示す。

 

「目指すは映画スター! 時代劇や恋愛、バトル物、ヒーロー物に至るまで撮影意欲が高まってくるよぉ〜!」

 

 自身ではなくポケモンがあくまで主役のスタンス、スターミーもそれに共感してか嬉しそうに鳴く。

 

「分かります、その気持ち! 私が務めるハナダジムも時々水中ショーをやっていて、ポケモンが主役に据え置くその在り方──私、とても好きです!」

 

「あ、そう?」

 

「なのでマナさん、そのスターミーナイト……存分に使って下さい」

 

「いいの?」

 

「私もスターミーを持っていますけど、自分でメガストーンを手に入れたいので」

 

 年下が気を遣うなと言いたい所ではあるが、マナは首を縦に振って肯定する。

 

 すると突然、カスミの腰に着いているモンスターボールが自発的に開く。またコダックかと思うだろうが、出て来たのは意外にもヒトデマンだった。

 

「ヘアッ!」

 

「ヒトデマン?」

 

 ヒトデマンはスターミーの前に立ち、何やら決めポーズを取っている。スターミーはそれに羨望する様な雰囲気であり、二体はポージングを取り続ける。

 

「どうしたんだ、此奴等?」

 

「ヒトデマンは多分同族と会えて嬉しいんじゃない? それでスターミーに演技指導しているのかも」

 

「そうかもね。それじゃあ、皆出て来て!」

 

 マナは自身のモンスターボールを三個投げ、己のポケモン達の姿が露見される。

 

「スタッフを紹介するよ、カメラマン・サイドン!」

 

「サァイ!」

 

「脚本家・フラージェス!」

 

「フラ〜」

 

「監督兼プロデューサー・私。小道具担当・ブビィ!」

 

 ポケモン達はマナの下に集まり、ポージングを取る。

 

「それじゃあ皆、スターミーを主演に撮影していくよ」

 

 マナの号令にポケモン達はそれぞれ準備を始める。

 

「最初のシーンは謎のスーパーヒーロー・スーパースターマンの登場から! 町の人々が泣き、町は悲しみに暮れる時──彼は現れる!」

 

 エキストラとしてサトシとピカチュウ、タケシとグレッグル、更に町を破壊する怪物役にカスミのギャラドスが抜擢。

 

 素人芸ではあるが、映画制作に参加してくれる彼等にマナは感謝するのだった。

 


 

 ※ 此処からポケモン同士の会話になります

 

 

 

『やあ、我が同族よ! ポージングは上手くいっているかな!?』

 

『まあ……ぼちぼちだな』

 

 スターミーは溜息を吐く。

 

『どうした? もしよければ私が悩みを聞こうではないか!』

 

 ヒトデマンは意気揚々とポージングを取り、スターミーはふつふつと語り出す。

 

『君は幸せ者だな……カスミ嬢の様な優秀なトレーナーに恵まれて』

 

『?』

 

『私には自信がないんだ。君や君のトレーナーみたいに強くなければ、ヒーローでも何でもない。君達に比べたら私はモブ程度の小さな存在、マナのポケモンの中ではレベルも低い』

 

 実力ではなく演技力的な意味であり、己を卑下してスターミーは黄昏れる。

 

『演技を失敗してもマナは決して怒る事はなく、優しく何度もチャレンジしようと元気付けてくる。彼女は全く気にしていないが、私にはどうしても痼りとして残ってしまう。私はマナのヒーローでありたい、だが肝心な所で失敗る私は相応しくないとこの頃感じてしまう』

 

 実力はあるがどうしてもネガティブな思考に陥り、己を卑下してしまう。

 

『……我が同族よ、大体の事はピカチュウ達から聞き及んだ。その様な後ろ向きな考えでは、彼女達から失望されかねんぞ』

 

『……!』

 

『トレーナーの期待に応えると言うその心意気は分からなくもないが、そんな考えである以上はとてもではないが成功する確率は限りなく低い! もっと自信を持て、そして決死の覚悟を以て己の為すべき事を成せ!』

 

『君は……』

 

 後ろ向きな己と前向きな同族、見事に対比しているがヒトデマンの言い分は正しい。

 

 己は自身を過小評価しているのであって、決して弱いわけではない。

 

 自らが足りないのは即ち、前へと踏み出す勇気。

 

 スターミーは立ち上がり、勢いよく駆け出した。

 

 そしてマナのバッグを漁り、仕舞い込んでいたメガストーンを手にする。

 

 その瞬間、淡い光がメガストーンから発せられた。

 

『おお…! 何と輝かしい…!』

 

 ヒトデマンはその光を目の当たりにし、輝かしい光景に見惚れる。

 

 ※ 以上、ポケモン同士の会話翻訳は終了

 


 

 舞台準備中、マナのメガリングが淡く発光し始める。

 

「え…? えっ、ええええええええ!!?」

 

 メガリングに嵌められたキーストーンから光の帯が放たれ、突然の事態に困惑しつつ絶叫するマナ。

 

 その事態にサトシ達も気付き、仕事を放り出して彼女の下へ駆け寄る。

 

「マナさん!」

 

「これは一体!?」

 

「わ、分からない! 急に光ったと思ったら…!」

 

 光の帯はスターミーの持つメガストーン──スターミーナイトと共鳴、メガストーンの放つ光の帯と結び付く。

 

「さ、さっきのメガストーン!? スターミーと共鳴して…! 何々!? どうなっちゃうの!?」

 

「もしかして……スターミーはメガシンカしたいんじゃ!?」

 

「うええっ!?」

 

 カスミの語った推測につい素っ頓狂な声を上げるマナ。

 

 確かにメガストーンとキーストーンが揃った上、スターミーと自分は充分に絆を育み、メガシンカを行うのに最適な条件も揃っている。

 

 だがマナは緊張している。予想外の時とはいえいざ本番となれば、理解が追いつかない上に困惑するばかり。

 

 だがスターミーは望んでいる、新たな一歩を踏み出す事を。子供の頃からずっと一緒で、変わる事を恐れてしまえばその信頼を裏切るに値する。

 

「マナさん! スターミーをメガシンカさせないと、この事態は収まらないかと思います…だから──」

 

 タケシの助言通り、放っておけば街中で騒ぎが起きるだろう。

 

 事態を終息する意味合いでも、それを敢行する。

 

「マナさん! 信じて下さい、自分を──そして相棒(パートナー)を!!」

 

「分かった! ──煌めけ、目指すはMovie is Star!! スターミー、メガシンカ!!」

 

 結びついた光は更に輝きを増し、スターミーの身体が光に包まれていく。

 

「えっ」

 

『えっ』

 

「フォゥッ!」

 

 スターミーの身体は人間の如く身長が高くなっていき、その身長は2m超。

 

 これまで見てきたメガシンカポケモンの様な外見上の変化はないが、その身長の高さはある意味に於いてマナは勿論、サトシ達をも驚かせるもの。

 

 メガシンカを果たしたスターミー──所謂メガスターミーは左手を天に突き出し、右手を折り曲げると言う独特なポージングを取った。

 

「これが……メガシンカしたスターミー?」

 

「凄いな……色々と」

 

 サトシとタケシはメガスターミーの存在感に圧倒され、思わず引き攣った笑みを浮かべた。

 

 ピカチュウまでも絶句しており、ある意味に於いてメガスターミーは野生ポケモン達にとって脅威そのものだろう。

 

『………』

 

 マナとカスミは言葉を失って呆然としている。こんな衝撃的な姿に頭がついていけていない可能性が否めないだろうが、兎に角思考が停止している。

 

 暫くすると『……か』と言葉を漏らす。

 

『か?』

 

「可愛い!」

「格好いい!」

 

 前者はカスミ、後者はマナ。

 

 それぞれがメガスターミーのビジュアルに対して感想を述べ、カスミに関しては抱きつく始末。

 

「メガシンカするとモデルみたいに人間みたいに身長が高くなっていて、何よりこの両脚! 凄くセクシーだわ!」

 

「そうだね! もしかしたらヒーロー物を撮ってみたら凄い売れるかも…!」

 

 女性陣二人はメガスターミーに大興奮して感想を述べ、マナはメモ帳に書いていく。

 

「……よし決めた! 映画の構想、ストーリーが大分纏まった! インスピレーションが止まらない! 題して──」

 

 するとその時、空からマジックハンドが飛んできてピカチュウを捕らえようとする。

 

「フッ!」

 

 だがメガスターミーがピカチュウの背後に回り込み、マジックハンドを手刀で粉砕した。

 

『!?』

 

「えっ、ええええええ!?」

「何よ、あのスターミー!? なんか身長高っ!?」

「折角ピカチュウGETのチャンスだったのにニャ!」

 

 浮かび上がるニャース気球の中で毎度お馴染みの二人と一匹が驚き、メガスターミーに目線を向ける。

 

「あっ、ロケット団」

 

「お前達、またピカチュウを狙って…!」

 

「な、何なのあの人達…?」

 

 マナが困惑していると、彼等は即座に反応して口上を始める。

 

「何なのあの人達と聞かれたら」

 

「答えて上げるが世の情け」

 

 サトシ達は呆れた様子で息を吐き、マナ達が首を傾げているとメガスターミーが行動に出た。

 

 メガスターミーは両手をL字に組み、サイコパワーを一点に集中する。

 

「世界の破壊を防ぐ為」

 

「世界の平和を守る為」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

 サイコパワーのエネルギーが集中していき、凝縮したエネルギーが発射される。

 

「ムサシ!』

 

「コジロウ!」

 

 そのエネルギーはビームとなり、一直線にロケット団に向かっていく。

 

『え?』

 

 エネルギーは着弾すると凄まじい爆音と共に爆ぜ、ロケット団は空高く飛ばされる。

 

「ちょっと! 私達まだ何も悪い事してないじゃない!」

 

 何がなんだか分からず空を舞い、ムサシは困惑を口走る。

 

「あ〜〜……俺達、今回これだけみたいだ」

 

「兎に角、一先ずニャー達はおさらばだニャ〜」

 

 コジロウとニャースも諦観した様子であり、あっさりと敗北を認める。

 

『せーの……やな感じ〜〜〜』

 

「ソーナンスッ!」

 

 敗北を受け入れると同時に、彼等は空の彼方へと消えていった。

 


 

『スーパースターミー?』

 

 騒動から数時間後、サトシ達は夕暮れの下でマナの映画の題名を聞いて目を丸くする。

 

「そう、スターミー……と言うかメガシンカしたスターミーを主役にしたヒーロー短編映画。舞台は現代社会で強盗やポケモンハンターが跋扈する街中で一体のスターミーが立ち向かう、悪者のポケモン達に圧倒されてピンチになったその時──スターミーはメガシンカして悪者達を成敗する……と言う内容だよ」

 

 淡々と説明してマナはふふんと鼻を鳴らす、スターミーも嬉しいのか彼女の周囲で踊っている。

 

「まだ制作段階だから直ぐには作れない。もっと映画道を極める為、ポケウッドへ向けて出発するの」

 

「ポケウッド……イッシュ地方ですね」

 

「マナさん、映画制作応援してます! 向こうでも元気で!」

 

「自分も応援してます。貴女が悩んでしまった時、必ず自分の事を思い出して──はうっ!?」

 

 往生際が悪いとばかりに再びグレッグルが毒突きを放ち、その場でうつ伏せに倒れるタケシ。

 

「それじゃあスターミー、行こうか。目指すはIt's Movie Star!」

 

「フォッ!」

 

『さようなら〜』

 

 聞けば一ヶ月もこの街に滞在していたそうだが、彼女はスターミーと共にタマムシシティから離れていった。

 

「それじゃあ俺達もさっさとポケモンセンターに行こうか、お腹減ったし」

 

「ピカ!」

 

 タマムシシティでの一日目はこうして始まり、サトシ達はポケモンセンターへと向かう。

 

 この街でこれから起きる出来事を彼等はまだ何も知らない。

 

 そう思う中、タマムシの街並みを夕陽が照らすのだった。

 

 To be continued

 

 

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