学校全体に本鈴のチャイムが鳴り響き、クラス内で話し合っていた声も鳴りを潜め始めた頃、教壇近くの入り口が開き外から担当の教師が入ってくる。
「はーい。みんな、席についてね~今から始業式前にこの学校についての説明をします」
ほんわかな物腰で話す教師に促され、まだ話し合っていたり、自分の席から離れていた生徒が自分たちの席に座るとそれを確認した教師が話し始める。
「先ずは自己紹介しないとね。これから3年間このクラスの担当教師を務めさせていただく星ノ宮知恵っていいます。よろしくね、それじゃあ今からプリントを配るから自分の分を取ったら後ろに渡してね」
そういって星ノ宮先生は先頭の席の生徒達にプリントを渡し自分の分のプリントを机に置くと後ろの生徒にあまりのプリントを渡していく。
「はい。帆波」
「ありがとうね。こうくん」
僕も前から来たプリントを自分の分だけ机に置き、残りのプリントを帆波に渡す。
渡した後直ぐにプリントに目を通すと学校案内でも記載されていた内容が書かれていた。
①寮での学生生活の義務化
②外部との連絡は一切を禁ずる(身内の緊急時以外、例外は認められない)
③この学園の外へ出ることは禁止。
大まかにプリントに記載されているのはこの三つ。①に関しては全寮制で光熱費や水道代。その上家賃所か入学金も一切かからないとは流石、国が力を入れていると言うべきか……。
続いて②は……外部との連絡を取るなということ……そもそも通信端末はここに持ち込めないし、この敷地内で使える端末もきっと学院からは使用履歴とかがわかるのだろう。
とはいえ外部との連絡を絶たれるとこちらとしては報告できないし足が着かない端末については事前に打ち合わせの通り
最後に③は②でもそうだが徹底的な外部との一切が取れないのを物語っている。これについてもさっきのと同じで
「じゃあ最後に、今から配る学生証カードについて説明するね~。これを使えば、施設内にある全ての施設の利用、売店での商品購入が出来るよ。ただ、使うたびに所持ポイントを使うから使い過ぎに注意してね。簡単に言えばクレジットカードのようなものかな?『学校内ではこのポイントを使って買えないものはなくて、学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だよ』」
「……え?」
星ノ宮先生の発言に首を傾げる。学生証カードが自身の証明書になっているのは勿論。この学校に併設している商業施設などで限定的にだがクレジットカードととして利用できるのは理解できる。だがその後の『学校内ではこのポイントを使って買えないものはなくて、学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能』この部分だけがどうも引っかかる。学校内、つまりこの人工島全体のあらゆるものを購入できると仮定して範囲は物は始め……この学園内での結果ですら購入することが出来るのか?
(こればかりは聞いてみないと始まらないかな)
「施設では機械にこの学生証を通すか提示するかで使用できるよ。それから
「「「!!?」」」
先生の最後に言った10万という高校生に取っては破格ともいえる金額にクラス全体が騒然とする。
僕は管理局で働いている身だから既にそれ以上の給料はもらっている立場だが、なりたての高校生にいきなり渡す金額ではないのは確かだ。
(これが他クラス……いいや全体のクラスで一律10万を払っているとすれば……月に支払われる金額は480万……1年になれば5760万……)
幾らなんでもありえないなと軽い暗算で計算して導き出した答えにそう断言し先生の話に再び耳を傾ける。
「
実力……価値……異様に多い監視カメラ……そしてクラスという階級の意味を持つ四つの学級……
(見えてきたかもしれない。この学校の
「じゃあ説明はここまで!何か質問がある人は手を上げてね」
今までのキーワードを頭の中で繋げて仮説を立てた後。先生が最後に気になることの質問はないかと訪ねてくる。
そう思い手を上げると、気付いた先生に声を掛けられ、僕は口を開ける。
「先生。
「「!!?」」
「こうくん!?」
購入できる範囲が明確にされていないことから例え話でこの教室というより学校の備品を買えるのかと訪ねたところ、予想外な質問にクラスを響めき、後ろにいる帆波も僕の名前を叫ぶ。
そして質問を訪ねた先生は言うと少し頬緩めて、僕の質問に答えた。
「うーん、教卓やホワイトボードは適正価格で購入できるよ~」
「そうですか……それじゃあ……『この校舎自体を購入することは可能ですか?』」
「……………………」
備品であってもその気になれば購入可能。という答えを先生は口にしてくれた。それに続いて更に馬鹿馬鹿しい質問を投げかけると……あまりにあり得ない……というより考えも着かなかった質問に先生すら黙りし、クラスに静粛が流れる。
そして少ししてその空間に小さく声が先生の笑い声が響く。
「ふ、ふふ……あはははっ!」
先生の笑いをあまりなことに誰も口を挟まずに眺めるなか、僕は先生の心境を察する。
あれは嘲笑っているわけではない。どちらかといえば初日でこんな人物を見つけて歓喜している。そんな感じだ。
「はぁ……君、すっごく面白い子だね。先生、こんなに笑わされたの初めて」
「それはどうも……それで質問の答えは……」
「うん、それについては『答えられません。』ごめんね」
そうきたか……肯定でもない。しかし、否定でもない。
答えはあやふやだが僕が質問したときの最初の黙り間に頭の中で考えていたのだろう。
校舎自体を購入するは一応先程のルールに当てはまるため購入は出来る。しかし購入するにも、その金額は人一人で買えるわけのない膨大な金額となっているため不可能。
「……そうですか、ありがとうございます」
こちらとしては充分すぎるほど情報を得た。これ以上長引かせるつもりのないので答えてくれた先生にお礼を言い僕の質問は終わった。
「他に質問がある人はいるかな?…………いないね?それじゃあ、入学式まで少し時間があるけど、遅れないように来てね」
そういって星ノ宮先生は教室から出て行くと少しして周りの生徒達が話し始める。聞く限りもらった
(さて……入学式まで時間はある。どうしたものかな……)
「……こうくん」
待ち時間をどう過ごすか考えていると後ろから帆波に肩を叩かれ、振り返る。
「ちょっと付き合ってくれる?」
「……別に構わないけど」
そういって帆波は席から立ち上がり、僕も続けて立ち上がり帆波の後ろを付いていくとクラスの教壇に向かい。帆波は教壇に上がり教卓の前に立ち。僕はその横で帆波の行動を見守る。
「はい。ちゅうもく!」
そうハキハキとした帆波の声がクラスに響き渡りクラスで話し合っていたクラスメイトがこちらに視線を向ける。
「皆、初めまして!私、一之瀬帆波って言います!皆と三年間仲良く出来たら嬉しいです!それでさっそくなんだけど、仲を深める意味も込めて、今から皆で自己紹介なんてどうかな?」
「僕も帆波の提案に賛成。僕の名前は高杉浩介。幼い頃は日本にいたんだけど、家庭の事情で少し前までは海外で過ごしていました。これからみんなとやっていけると嬉しいです」
帆波らしい提案に僕も同調して自己紹介を済ませた後、クラスの全員が帆波の提案に賛成して、順番に自己紹介を行っていく。
そして全員の自己紹介が済んだ後、これからどうするかクラス全体を見渡すと男子生徒の一人が少しいいか?と声を掛けて席を立ち上がった。
「たしか、神崎くんだったよね?」
「ああ、高杉少し質問があるのだが……どうしてあんな質問をしたんだ?もしかして高杉はこの学校についてなにか知っているのか?」
神崎くんの言葉はこのクラス全体の疑問だった先程の僕の質問についてだった。その上、神崎くんも説明の時に違和感を抱いたのかそれについてもわかっているのかと訪ねてくる。
「こうくん。それは私も聞きたいかな」
「……最初の質問については購入可能な範囲があやふやだったのでどこまでなのかを確かめたかったから、そして次のこの学校については……知っているわけではないですよ?ただこれまで短い時間で掴んでいる情報で立てた仮説くらいなら説明しますけど」
「仮説?詳しく話してくれないか?」
神崎くんの追求に僕は頷きクラスの全員が視線を向ける中、僕の仮説について話し始める。
「まずここに来てから感じた疑問はクラスの意味です」
「え?クラスの意味?」
いきなりわけのわからないことを言っているから、クラス全体に戸惑いが起こる中神崎くんは間を開けて続けてくれと促してくると僕は話を再開する。
「クラス……日本語の意味は階級という意味を持ちます。……ところで柴田くん。以前いた中学校は教室の呼称はどうよばれてましたか?」
「え!?それは、組だけど」
「はい。組……皆さんの学校もそうだと思いますが……クラスか組……しっくりくるか皆さんはどちらですか?」
そう、みんなに訪ねるとクラスメイトは近くの生徒達と顔を合わせ、話し始めその答えは組の方がしっくりくるという結論だった。
「クラスについては一度置いておきますが……次は支給される
クラスのことは一度置き、次に
「ちょ、ちょっと待てよ!高杉!先生もいってたじゃないか!10万
「いや、それについては明確に答えていなかった。来月に幾らもらえるかはわからないということになる」
慌てて柴田くんが僕に聞き返してきたがそこに神崎くんが冷静にそのことについて補足を入れると何人かは先生の言葉を思い出して納得した表情を浮かべていた。
「先生は『この学校は実力をはかる』そして『今の僕達にはその可能性と価値がある』と言っていました。なのでこの10万はあくまで僕らに対しての先行投資。ここから学校側は僕達の行動や態度を観察し正確な価値をだして支給される
「それはそうかもされないけど……幾らなんでも無理がありすぎるんじゃないのかな?先生だって四六時中私達を見ているわけじゃないんだし」
「それについて……可能とする方法があります。皆さん。この教室の天井の角をよく見てください」
「天井の角だと?」
「あれって……監視カメラ」
僕の声に促されてクラスのみんなは各々教室の天井の角を目をこらし見てみると僕らのことを監視している監視カメラの存在に気付き声を上げた。
「はい。この教室で全部で4機この教室に死角はありません。ここに来るまでにもかなりの監視カメラを見つけてきました。恐らく敷地内全体に監視カメラは張り巡らされていると思われます」
「なるほど……これで俺達の授業態度や生活を監視されて査定されるわけか」
「話をクラスについて戻します。先生の説明の時に学校は実力を測ると言っていました。つまりA~D、4つのクラスは実力において優劣が決まっており。ここからそのクラス間でクラスの入れ替わりが発生する……かもしれません。以上が僕の仮説です。あくまで仮説なので間違っている可能性もあるので気にとめておいてくれるだけで構いません。」
そういって僕は長い仮説を終え、みんなにたいして一礼した後、呆然としていたクラスを帆波が纏め、入学式の時間も迫っていたことから僕らは入学式のある講堂へと向かった。