時空管理局員の実力至上主義教室潜入調査   作:ウィングゼロ

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4話『部活動説明会』

「……ん……んん……」

朦朧としている意識の中、微かに聞こえた音によって僕の意識は徐々に覚醒していく。

「朝……か……」

まだ眠気が完全にさめない中、音の発信源であるスマホを手に持ち、寝る前に設定しておいたアラームを止めると今の時刻を確認する。

「4時半……さて、と」

寝ていた体を起こし軽く体を伸ばしてほぐしたあと、僕は外に出かけた。

こんな朝早くにやることは1つ。週間となっている走り込みをするために…

寮から出た僕はそのまま一定の速度を維持しながら走り込みを始める。

目的の場所はなくてただ一定の速度を維持したまま走り続けること。これにより体力が自然に付くようになる。

魔導士にとって身体能力なら魔法である程度強化することはできるが、体力を魔法で増やすことはできない。それにあたって走り込みをして体力を付けるのが日課になってしまった。

そして当てもなくひたすらに走り30分が経過すると走る前に予め設定しておいたアラームがなり。来た道を引き返し寮へと戻っていく。

途中コンビニで今日の朝食用として無料食品を中心に買って寮へと帰り。備え付けられている浴場でシャワー浴びて汗を流す。

その後制服に着替え、コンビニで買ってきた食材で朝食を調理して直ぐに食べ……登校する時間までの残りの空き時間は読書などで時間を潰して時間になってから学校へと登校するのであった

 

その後無事に教室まで辿り着き、今日の授業が始まる。

というが入学してから次の日なので殆ど教材の配布や担当教師の自己紹介。それで残った時間に授業を軽く行うぐらいで本格的な授業と呼べるレベルではなかった。

 

そんな緩い授業が続き漸く昼休みが始まる。

授業が終わり先生が退出した後、みんな各々が昼食を食べるために行動を始める中、僕も鞄の中に朝の内にコンビニで買っておいたパンなどを取り出す。

 

「こうくん、お昼コンビニで買ってたんだ」

「うん、帆波は学食に行くの?」

「夢ちゃんと千尋ちゃんたちと一緒にね。うーん、できればこうくんも一緒にどうかなって聞こうと思ったんだけど無理そうだね」

 

残念と少し寂しそうな表情を浮かべる帆波。

そんな帆波を教室の扉前で呼ぶ声。そちらに顔を向けると女子生徒が数名。先ほど言った帆波が約束していた子たちだろう。

 

「そろそろ行かなきゃ、こうくん。またあとでね」

 

そう言って帆波は彼女らの元へ向かい教室を後にする。

 

その後パンを食べて昼食を終えた僕は教室から出て、図書室へと向かった。

中に入ると案の定高さのある本棚に本がずらっと並べられていて、どうやらジャンルごとにも区分けされて整理されているようだ。

 

「ここが図書室か思ってたより広いな。流石は国立か…さてとめぼしいものはないかな…」

 

そう思いつつ図書室内を散策し小説を借りようと本棚を物色していく。

 

「うーん…殆ど読んだことのあるものばかり…有名どころじゃなくてマイナーな小説でもあれば」

「高杉くん?」

 

探してみたが、有名な小説などは大抵読んだのでどうしたものかと考えていると声を掛けられそちらに振り返ると昨日の朝以来である椎名さんが本を抱えていた。

 

「椎名さん。こんにちは……椎名さんもお昼早いですね。お昼始まってそこまで経ってないのにここに来るなんて」

「はい、昼食は素早く済ませてきました。高杉くんは何を探してるんですか?」

「うん、実は…」

 

本棚の前で悩んでいた表情の僕を見て、首を傾げて訪ねてくる椎名さんに僕は事情を話すとそれならと迷いのない動きで本棚から一冊の本を手渡す。

 

「こちらの本などいかがですか?『おまえの罪を自白しろ』現代日本を舞台にしたサスペンス小説です。」

「面白そうですね。これを借りることにしましょうか、そうだ他に椎名さんのイチオシの本とかありますか?」

「他にですか?そうですね…」

 

そういって椎名さんは本棚から彼女イチオシの本を取り出したあと、近くの座れる席に座って話し合う。

 

「椎名さん。そういえばCクラスはどうでした?気が合う友達とか……」

「……実は、クラスの中には本が好きな人がいなくて…それにどちらかといえば荒っぽい人達が多いといった印象ですね」

 

つまり椎名さんは悪くも浮いてしまっているということか……そういうのがきっかけでクラスに行き場がなくならなければいいんだけど……

今の椎名さんの現状を聞いて、孤立しかけないか懸念する僕。そんな少し考え込む僕を見て椎名さんが口を開けた。

 

「高杉くんは優しいですね」

「優しい?僕が?」

「はい。昨日あっただけの人にここまで真剣に考えるなんてしませんから」

「うーん、そんなこと考えたこともなかったな……」

 

既に人助け……というより捜査官として人を守る役職に就いていることもあってそんなこと当たり前だと思っていたが……思い返せば捜査官になる前もそうだったかもしれない。

 

それから次の話題に移り変わり、入学式前の説明についてお互いに話すことになった。

それで聞いたCクラスの説明もこっちの説明と同じであることを確認できて、恐らく各クラスで同じ説明をなされていたのだろう。

 

「それと、最後の質問で来月のポイントの振り込みでいくら支給されるかを確認した人も居ましたよ。ただ先生は答えをはぐらかしましたが、恐らくポイントの増減は確実ではないでしょうか」

「増減に関してはこっちも確認してはぐらかされたけど同じ答えだよ。それにしてもCクラスにも頭が切れる人が居るみたいだね。その人の名前とか分かる?」

「えっと……ごめんなさい。私、興味のない人の顔や名前を覚えるのは苦手で」

 

Cクラスで質問した人のことをあまり覚えていないことにしゅんっと顔を俯け落ち込む椎名さんを僕は大丈夫。ありがとうと素早く宥めたあと暫くして校内放送のアナウンスが流れる。

 

《本日午後五時より第一体育館にて、部活動の説明会を致します。繰り返します。本日─》

「部活か……」

 

部活。久しく聞かなかった言葉に懐かしみを感じる中、隣の椎名さんに今のアナウンスについてどうするか聞いてみた。

 

「椎名さんは部活動に興味あるんですか?」

「部活……ですか、そうですね。今のところは入るつもりはありませんが説明会に出てから考えようと思います。高杉くんも良ければご一緒しませんか?」

「そうですね。別に部活動に入らなくても聞くだけならただなので、だったら椎名さんも一緒に行きますか?」

「いいんですか、それでは約束ですよ」

 

そういって放課後に一緒に行くことを約束し、連絡を取れるように連絡先を交換し終えると昼休みの予鈴がなるまで僕らは図書室で本のことで花を咲かせるのであった。

 

 

 

そして時間は過ぎて放課後。今日の授業を終えて教室から生徒達が各々の行動する中、荷物を纏める僕に後ろの帆波が肩を叩きながら呼んでくる。

 

「こうくん。ちょっといいかな?この後の部活説明会についてだけど……」

「え?行くつもりだけど……どうしたの?」

「そうなんだ。私も千尋ちゃんや夢ちゃん達一緒に行くつもりなんだ。こうくんも一緒にどうかな?」

「えっと、実は……「おっ!高杉も部活説明会行くのか!俺も一緒だから行こうぜ!」し、柴田くん?」

 

部活説明会を一緒に行かないかと誘ってくる帆波だが椎名さんとの先約があったことで言葉に詰まりながらも、そのことを伝えようとするもその話を聞いた柴田くんが割り込んできて、遮られてしまう。

 

「柴田くんもなんだ、いいよ」

「それじゃあ決まりだな。そうだ神崎も一緒に来るか?」

「部活動にあまり興味はないが……付き合うだけならいい」

 

僕を差し置いて話がトントン拍子で決まっていくなか、みんなには悪い気持ちになりながらも僕は話しに割って入る。

 

「えっと、話の腰を折るけど、実は友達と説明会に一緒に行く約束してて……」

「あ、そうなんだ……」

 

先約があるそうしっかりと答えると先程まで一緒に行けると期待していた帆波はしゅんっと落ち込み、勝手に話を進めていた柴田くんも少し気まずい表情を見せる。

この空気どうしたものかと頭の中で機転をきかせようと考える中、口を開けたのは僕ではなく神崎くんと帆波の友達である女子クラスメイトからだった。

 

「それじゃあ、高杉くんの友達も一緒に説明会に行くのはダメなのかな?」

「別に目的は同じなら高杉の友人が一人増えたところで変わりはしないだろう」

「それは……そうだけど」

 

2人の意見はどちらも利がかなってるしそれが適切だということもわかる。

僕も別にそれで良いのだが、椎名さんに聞いてみない限りは縦に頷くわけにはいかない。

 

「取りあえず。今からその件で連絡取るから……」

 

学校専用のスマホを取り出し新たに連絡先に入った椎名さんの番号に電話を掛ける。そして……

 

 

 

「初めまして、高杉くんの友達の椎名ひよりです」

 

午後5時前の体育館前、僕達Bクラスと椎名さんは顔合わせしていた。

結論をいうと話は思いのほかすんなりと進んだ。読書という共通の趣味があったからこそ僕と椎名さんは直ぐに意気投合できたが、椎名さんはお淑やかでどちらかといえば内気な性格だと思う。

だからこそ、他クラスの生徒といきなり一緒にどうだと言われて簡単に頷くはずがないと思っていたのだが、僕は椎名さんのことを少し見誤っていたようだ。

 

「よろしくね!椎名さん!私、一ノ瀬帆波っていいます」

 

椎名さんの挨拶に力強く返す帆波を皮切りに柴田くん達も自己紹介し始めてお互いの紹介を終えた後、僕らは体育館に入る。

 

体育館を見渡せば入学式のように1年生160人とはいかないが殆どの1年生は居るのだろう。中は話し声などの声音に包まれている。

 

「やっぱり結構いるな」

「そうですね。みんな部活に一応の興味はあるんでしょう」

 

中の状況に柴田くんはそう口を漏らす。僕らは座れる席を確保して、暫くして部活説明会が行われた。

そして5時になると予定通り部活説明会が執り行われ体育館の壇上に備え付けられたスクリーンに各部活動のPR動画が映し出されていく。

野球やサッカーといったメジャーな部活動や茶道、手芸などあまり聞き覚えのないマイナーな部活動。一通り真剣に見て思っていた以上のかなりの部活がこの学校にはあるということがわかった。

そして説明会は最後に差し掛かり、周りが緊張の糸が切れ騒々しくなり始める中、生徒会の説明について眼鏡をかけた男性。恐らくは生徒会長である上級生が体育館の教卓の前に立つ。

しかし、教壇にたったまま暫く経っても何一つ口を開かない。それにより騒々しかった喧騒は更に大きくなる。

 

「がんばってくださ~い」

「カンペ、持っていないんですか〜?」

 

「あはははははは!」

中には一言も喋らないことで小馬鹿にする声も言葉も聞こえてくる。しかし、それでも表情1つ変えずに無言を貫いている。

しばらくして喧騒を立てていた生徒も呆れ始めたが次第に喧騒が収まり始め、体育館が静寂に包まれる。

 

「凄いなあの人……」

一言も発さず。気を緩みきっていた生徒達を黙らせて、話せる状態まで作り上げた。

(これは並大抵の人では無理な芸当だ。ああいう人はきっと上に立てる人だ)

心の中で壇上に立つ生徒会長を感心する中、静寂になってしばらくしてようやく、生徒会長がその口を開いた。

 

「私は、生徒会会長を務めている、堀北学と言います。生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者がいるのなら、部活への所属は避けて頂くようにお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません。それから、私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」

演説を終えた後。生徒会長は真っ直ぐその場から去っていき、演説が終わってもなお、それを聞いていた1年生は動かない。いや動けないのだろう。

生徒会長の演説は圧巻というべきものだった。

生徒会長が居なくなった今でもその覇気に当てられた生徒達は微動だに動かない。

正直、生徒会長の演説に拍手でも送りたいくらいだが……静寂な今の場では目立ちすぎるため控えさせてもらおう。

(あれがこの学校の生徒会長。堀北学……か)

 

その後、司会進行役の生徒の言葉で漸く、動かなかった生徒達も動き始め、部活動説明会は終わりをむかえた。

 

 

 

 

 

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