先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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パルデア文字わかんないのですわ〜

ぽっと出のオリキャラが出ますがそんなに関係ない人です

あとハッサク先生がコレジャナイ感



待つのは好きで放置は嫌い

 

 

 

 アカデミーの小さな新たな仲間。

 

 怪我でボロボロだった姿は、すっかり治ってこまめにブラシがけされ、美しい白とグレーに青が輝く、手触りの良い毛並みに。

 うずくまったまま動かなかった体は、今や元気にひょいひょいと駆け回っている。

 クラベル校長先生や、先生職員方と一緒に行動するうちに、最初は珍しげにしていた学生たちも、普通のちょっと珍しいポケモンであるという認識に落ち着いてきました。

 振り撒く愛嬌とかしこい行動の数々で、アカデミー内でのマスコット的地位を確立しつつある、アオキの保護した白いゾロア。

 

 病院以来の久しぶりに見た姿は、以前にも増して元気いっぱい。人の歩幅に合わせて軽快に跳ねる脚も、物怖じせず大きなポケモンに近付いていく度胸もある。見ているこちらがハラハラしてしまうぐらいに。

 

「今日は小生が担当なのですよ! よろしくお願いしますね、ゾロアさん」

「きゅぬ」

 

 色々な人と会わせてあげてくださいというジニア先生の希望で、当日の授業の少ない教員や、移動の少ない事務員からローテーションで組まれたお世話担当。決してその日一日担当になった者だけが相手をするのではなく、担当の目の届く範囲でゾロアが行動するという程度の決まりごと。

 ちゃんとゾロアも分かっているのか、朝に担当を伝えると、一日ついてきてくれると聞きます。

 体格の大きな私にも、目を合わせて大きく頷いてくれる。初対面の時には驚いていた様子だったのに、もうとっくに慣れたのでしょう。

 

「本日はゾロアさんとまだ会っていなかった先生方も勢揃いしたのです。これで、アカデミーの職員は皆さんゾロアさんとお会いできたはずで……ゾロアさん?」

 

 先日はリーグ業務や学生の見守りに出ていて居なかった教師、職員とも顔を合わせることができました。しかし、本人は何やら首を傾げています。

 

「きゅあ、きゅんぬ?」

 

 地質学担当のデンファ先生のそばまでいくと、彼女と小生とを交互に見て、また首を傾げました。頭のてっぺんに伸びていた毛が、しょんぼりと垂れているのは残念がっているからでしょうか。

 何か悲しませてしまったかと、困惑している彼女に気付いたゾロアが励ますように、元気に鳴いて前足で彼女の足をトントンと触れています。

 

「ウッ」

 

 デンファ先生は胸を抑えて辛そうな、しかしどこか幸せそうな顔。

 そうですね、上目遣いが大変かわいらしいですね。

 

 『優しくしてあげるのは大事ですが、あまり甘やかさないように』、とクラベル校長から告げられていても、小さな姿で愛嬌たっぷり振り撒く姿についつい甘やかしてしまいます。無理もありません、我々は人を教え導く仕事。教員一同、いけないことは叱るべきですが、良い行いには誉めて伸ばすのが癖のようなもので。

 

「ハッサク先生、ほらほら、見て下さいな」

 

 デンファ先生の声に呼ばれて行くと、彼女の膝の上に乗って、机に足をかけたゾロアが熱心に何かを見ていました。

 歪なドーナツのようなものが、小さなメモ紙に描かれており、端に書かれた文字に成る程と思う。

 この地に住むものならお馴染み、パルデア地方のごく簡単な地図です。

 

「地図に凄く興味があったみたいで、汚してもいいように紙に描き出してみたの。そしたら、この通りで」

「地図。なるほど、パルデア地方に興味が?」

「きゅぬ」

 

 返事をするように頷いたゾロア。

 

「でしたら、もう少し大きな紙に描いてあげましょうか。この大きさでは、街も、道か川かもわかりませんよ」

「そうね。手伝ってくださる?」

「へえ、なら俺も手伝うよ。どうせ待機だし」

「ほう、面白そうだな。ワタシも混ぜろ」

 

 提案に続々と、今日の授業もない教員が集まってくる……レホール先生は午後に授業があるはずですが。

 元より凝り性なきらいのある面々。紙は何に、縮尺は、等と話す内に、どうせなら色まで塗ろう、という話になり、であれば美術室にと、ぞろぞろと連れ立って行く。

 

 今日の授業がないから暇なのかと言われれば、小生は四天王としてリーグの方の仕事もあり、他の職員も各地との連絡や宝探し中の生徒が困っていないか、見回り等することはあるのです。

 あるの、ですが。

 如何せん、前期に大勢受け持つことのない、専門的な学科の……新任かつ元々研究者気質な、専門的な学科の教員ばかりが残っていたのもあり。

 そして小生も、皆さんも、ゾロアが嬉しそうに意気揚揚とついてくるのに少しばかり、舞い上がってしまい。

 

 気付いたときには、A2方眼紙に緻密、かつ精密に描かれた、パルデア全土マップが完成していました。

 

「イイ……素晴らしいわ!」

「色がつくと、途端に見映えが変わりますね」

「フム……やはり物見塔跡はこうして見ると……フ、興味深いな」

「ただ、まぁ…………

 

 詰め込みすぎましたね」

 

「うん」「まぁ……」「西……西か……」

「きゅう……」

 

 皆さんがやりきった顔で出来上がった地図を見る中、ゾロアだけは困った顔で地図を見ていました。カンペキな縮尺で区分けされたエリア、道、川、湖や草原、山や砂漠を色分けされ、高低差も色の濃さを使って表現。

 

 ここまでは、ゾロアも楽しそうに目を輝かせていました。

 

 地名を入れようと誰かが言い始め、各々持ち寄ったメモ帳や付箋で好き勝手始めたら最後、皆さん歯止めが効かなくなり。

 地名、までならゾロアも首を傾げるくらいだったのでしょう。

 地盤の強度からなる危険箇所、植物学の観点から分けられた植生、文化的遺産の配置に、パルデア十景と、それに準ずる景色の良いオススメスポット、良い釣り場、町ごとの料理提供店舗と、コスパの良い店……などなど。

 

 各々自分の分野と趣味を好き勝手に詰め込みすぎて、重なった付箋はまるで歪な虹色の鱗のよう。

 

「なんでしょう……なんですかね、これ」

「楽しくなっちゃったので、つい……」「あの」「誰だよ、“星の綺麗な丘”とか書いたの」「テラスタルポケモンの目撃情報なんて、不確定じゃないのか?」「おい、この“謎の祠”は誰が書いた?」「こんな所にパルデア十景あったんですね」「南エリアに危険地帯が?」

「コレクレーって何?」「写真だせ写真!」

 

「なんか……人、増えてませんか?」

 

 顔をあげると、教員が集まっていました。時刻も正午を過ぎており、午前中に授業があった先生方も参加していたようです。

 

「面白そうなことしてるって聞いたので……」

「ゾロアちゃんがパルデアについて知りたいって聞いたから……」

「怪しい杭の目撃情報があるだと?!」

「自分の知識出せるの、ちょっと楽しくて……」

「これこの間の騒動の時に出せば良かったのに」

 

「これはいったいなんの騒ぎですか?!」

 

 クラベル校長とタイム先生が飛び込んで来るほどまでに、収拾が付かなくなっていました

 

 クラベル校長とタイム先生にみっちり説教され、それぞれの業務に戻される。

 レホール先生は『フィールドワークは授業の裏付けに必要な調査である』と強く主張し、そのまま授業へとタイム先生が連行して行き……

 

「はい。」

「アオキ……?いつからアカデミーに?!ついに貴方、教師業まで……?!」

「やりません。先程からです」

 

 教師の中に紛れていた、アオキと小生だけが残りました。説教の最中に既に紛れ込んでいたとのこと。

 

「……トップがあなたのスマホロトムにご連絡差し上げていたのですが、お出にならなかったので私が派遣されました。ハッサクさん……定例会、三時からでしたが、お願いしてあった資料はご用意頂けてますでしょうか」

「定例会の資料……アッ!!」

 

 凶暴なポケモンについて、特に危険なドラゴンタイプの強力な個体が散見される地点。そのピックアップを頼まれていたのでした。

 

「チリさん、ポピーさんからは既に頂いています。まとめた資料を製作する必要があるので……出来れば早めにお願いします」

「い、急ぎご用意致しますので!! 時間は掛けません、座ってお待ちください!」

「後でデータで頂ければ………………わかりました」

 

 大雑把に書き出したデータは既に用意してましたが、職員室に置きっぱなしでした。取りに少し離れますが、ゾロアは大丈夫でしょう。

 アオキに構って貰えてご満悦な様子です。そういえば、描いている間、本人を放ったらかしてしまっていました……重ねて申し訳ない。

 

――――――――――

 

 あの時、病院でボールを断られて以来の久しぶりの再会。覚えていた様子のゾロアは、気づいて直ぐに駆け寄って来た。

 

「きゅあん」

「……どうぞ」

「きゅ!」

 

 ガヤガヤと、いい大人がひとつのテーブルに集まって、紙に書き殴っている。巻き込まれないよう、離れたテーブルの椅子を借りて座ると、ゾロアが律儀に隣の椅子を示して訊くように鳴くので、頷いた。礼……のようなひと鳴きの後、椅子に跳んで大人しくしりを降ろす。

 こういうところが、あまり普通ではない。

 

 ゾロアとふたりで集団を遠巻きに眺める。

 とんでもない代物を、勢いだけで作ってしまっている自覚は、今の彼らにはないのだろう。後から冷静になって気付くんだろうが。

 

「きゅぬ?」

「……ハッサクさんへの用事で来ました。ご連絡差し上げても、返事が無かったので。普段はアカデミーにまで立ち入りませんよ」

「きゅっきゅ……きゅぬ?」

「……そうですね、声を掛ければ良いのでしょうが……

 あの、ハッサクさん」

 

 呼びかける。返事は無い。わかっていたが、声を張り上げてまで呼ぶ気力も……それほど無い。

 腕時計を確認する。まだ昼前だ。

 

「……まぁ、今は邪魔しなくても良いでしょう。まだ慌てる時間でもありません」

「きゅー……」

 

 ひとりごとにも、さも返事でもするかのように返してくる。

 このゾロアも、少し離れて見ているのは騒がしいからではなく……あの教師陣を邪魔したくないから、ではないかと思える。断片的な情報で聴く限り、どうやら教員たちで、地図に興味を持ったゾロアのために、汚しても良い、見やすい地図を描き出そう……というのが事の発端のようながら……どう見ても暴走している。

 何より、発端のゾロアが放置されている。そして当のゾロアは、自分のためにと始まったコレに口出ししにくいらしい。

 きちんと背筋を伸ばして、椅子に大人しく座る姿はまるでトリミング台の上のトリミアンのよう。サイズはまるで違うが。

 

 救いは、年度初めの今の時期、リーグ業務で忙しいハッサクが美術の受講募集を始めていないため美術室に学生が近寄らない事だろうか。

 それとも、見られていたなら逆にこの茶目っ気に親しみを感じて、人気が出るのかもしれない。

 生憎と、最近の流行りは、よくわからないが。

 

 隣の大人しいゾロアの静かさが気になる。

 

「……アカデミーは楽しいですか?」

「きゅ? きゅぬ!」

「学生は怖くありませんでしたか」

「きゅぬ。きゅあん……きゅあんぬ」

 

 喋るように鳴いて教えてくれるが、それを理解できる頭ではない。悪い意味の鳴き声ではないので良しとする。

 

「ジニア先生とあまり最近遊べていないのを寂しがっている、と聞きました」

「きゅ?!」

「ナンジャモさんに師事して……アカデミーのアカウントを作成してSNSで情報発信を始めているようです。あなたの仲間の情報を集める為に」

 

 スマホロトムに、ジニア先生のアカウントを表示してもらう。早くも公式に認定されているこのアカウントは、アカデミーの行事予定、パルデアに生息するポケモンの新たな情報や、パルデア地方で見られた大量発生中のポケモンの場所等を毎日アップしている。

 その中にある、白いゾロアの目撃情報を求める記事をゾロアに見せる。

 

「全国へ向けた研究発表や、研究者の集まりにも積極的に顔を出しているようです。が、私の見たところ、彼ははりきり過ぎると失敗してしまいやすい方だと思います」

「……きゅぬ」

 

 頷く。短い付き合いのポケモンにそう思われるだけの何かを既にしたのだろうか。

 

「ええ。彼は自分自身のペースで進めるのが、最も効率が良いのでしょう。今の彼は焦っているように見える。…………クラベル校長に伝えておきましょうか」

「きゅぬ!」

 

 今度は力強く頷いた。そして何度も小さく頷く、を繰り返す。話の内容を咀嚼する、人のような。

 

「…………私も、あなたを任せてしまった身ですから、何を言う資格なぞありませんが」

「きゅ、きゅう……」

 

 慌てたように首を振る。そんなことはない、とでも言いたげな目。なるほど、確かに表情豊かだ。

 

「保護した責任を放棄したつもりはありません。あなたが望めば、いつでも……とはいきませんが、可能な限り、私も対応します」

 

 律儀に相槌をうつゾロアの、柔らかな毛の温かい……芯に少しばかりの冷さの残る背中を撫でる。

 

「だから、あなたがそう寂しそうにしなくてもいい。管理できていない人間のせいにしなさい」

 

「……きゅぬ?」

 

 あれとか?とでも言いたげな、手で指し示された教員集団。あれは……

 

「誓って言いますが、彼らを責めるつもりではありませんからね。あれはひとに物を教えられる程の知識を蓄えた、並外れた知識欲と探究心の溢れた人間たちです。

 人に物を教える、なんて、よほど奇特な物好き……いえ、自分の好きな物事を、誰かに知ってもらえるのが嬉しいのでしょうが、……人を導けるというのは、大変に貴い事です。

 好んでやろうとは、私には思えませんが」

 

「きゅぬ」

 

 ひと声鳴いて頷く姿に、チリさんの「せやな」が聞こえた気がした。

 

 

「しかし……待てど暮らせど、中々気付きませんね。……完成まで気付かないかもしれません。なら、もうじきかかりそうですね。ゾロア、腹は減っていませんか? よろしければ、ご一緒にいかがでしょうか」

「きゅぬ」

「では行きましょうか」

 

 両手を差し出すと、ゾロアは黄色い目をぱちりと瞬き。……ああ、もう怪我は治ったのだったか。すっかり動けるのだと、聞いていた筈なのに記憶の中ではまだベッドで大人しくしていた姿につられてしまった。椅子の上で大人しかったからでもある。

 

「……失礼しました。もう動けるのでしたね、「きゅ」っ」

 

 手を下ろそうとした矢先、思いっきり跳び出してきた小さな姿。慌てて抱えたが、居心地が悪いのかもだもだと腕の中でもがいている。ああ、もう。

 

「私が抱えずとも、あなたもう動けるのでしょう?」

「きゅっ」

「……」

 

 わざととしか思えないが、ぷいと顔を背けてまで、人間のような聞こえないフリをしてみせる。

 聞こえるようにため息をつくと、小さくぴくりと大きな耳が動いた。聞こえてるじゃないか。

 あれだけ派手に跳び上がる元気があって、怪我も治っているなら多少雑でもいいのだろう。小脇に抱え、鞄を持ち直し、学生食堂へと歩き出した。人の歩くタイミングに合わせて機嫌良く鳴き声を上げている。

 

 ああ、しかし。

 

「腹が 、減りましたね」

「きゅあんぬっ」

 

 元気になったようで、何よりだ。

 そういうことにしておこう。

 

 

 

 





5000文字くらいを目安にしてるのに6000文字くらいになっちゃうのは無駄な言葉が多いんだよなぁって

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