先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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言語もリリックもタイプ相性も分からねぇ!
フェアリータイプわざがほのおタイプに効かないの未だにわかりません!!




相性は好きでとくせいは苦手

 

 

 映像を見せた途端、賑やかではあれど、大人しくしていたゾロアが突然暴れだした。

 ハッサクさんの手から身を捻じるようにして抜け出すと、クラベル校長のスマホロトムへと飛びかかる。

 間一髪、ネモさんが指で引っ掛け天井へ弾いたお陰でスマホロトムが床に叩きつけられるのは防がれたが、天井近くで慌てるスマホロトムを床で跳ねながら見つめるゾロアの様子は、どこか必死だ。

 なるほど、これがジニア先生の言っていた、スマホロトムへの執着。

 

「ゾロア」

「きゅっ……」

 

 声をかけると、はたと止まって辺りを見回し、状況を理解したのかただでさえ下がった眉と目尻をいっそう下げて、すごすごと、姿勢も低くこちらの椅子の下まで戻ってきた。反省していると目に見える形で示してくる。

 

「……あの映像の彼らは、ゾロアさんの仲間ですか?」

「きゅぬ……」

 

 クラベル校長の声に返された小さな返事。肯定の時の鳴き方だが、首は横に振られている。

 

「同じゾロアではあれど、面識はない個体だった。ということですか?」

「きゅぬ……」

 

 今度は頷く。なるほど。

 

「…………あー、と。良いですか?」

「ああ、すいませんネモさん。ええ、大丈夫ですよ」

 

 確認の為、彼女に見せた映像が、何やらゾロアの琴線に触れたようではあるが、それはさておき。怖々と降りて来たスマホロトムを回収し、ポケットへと逃げ込んだロトムをポケットの外側から宥めながら、クラベル校長が話の続きを促す。

 

「さっきの……そのゾロアの仲間、ですか?

 あの嵐の中では見ていないです。でも風と土埃が凄くって目もほとんど開けてられないくらい、だったので、確認出来なかっただけかもしれません。ちらちら、何か居るのや落ちてるのとかは光って見えましたし」

「そうですか……ありがとうございます」

「……あの、どこかの地方のリージョンフォームみたいなゾロアの目撃情報が出てきたんですか?」

「いえ。あれはかつてのシンオウ地方に生息していた、ゾロアの生態調査記録です。今もそこにいるかはわかりません」

「そうですか……いったい、きみはどこから来たんだろうねー」

 

 椅子の下で縮こまるゾロアに、目線を合わせる様に屈みこみ話しかけているが、その上にいる人間の存在を忘れているのか、気にしてないのかどっちだろうか。

 

「他に、何か見つけたものや、気付いたことはありますか?」

「あ、そうそう……近いところにあった、その光ってたもの! こんなものなんですけど……拾いました!」

 

 バックを漁り、出てきたのは彼女の手のひらにぱらぱらと乗った赤、黄色の小さな何かの欠片。石のようにも、タイルのようにも、はたまた何かの甲羅のようにも見える。

 

「あかいかけらと、きいろいかけらです!」

「……ええ。見たまんまだとそうですよね」

「あと……何かのケーブル?も落ちてました。誰かの落し物かなあ?」

「!」

 

 続いて取り出されたのは、左右に端子のような金属の付いた黒いビニールで包まれたコード。かけらと違って、どう見ても人工物の、謎のケーブル。

 何者かが残したとして……何者かの痕跡には違いなく。

「失礼、そちらを良く見せていただけますか?」

「はい!どうぞ!」

 

 ネモさんから受け取ったケーブルを、クラベル校長がしげしげと眺める。

 

「やはり……これはつうしんケーブルですね」

「つうしんケーブル?」

「昔、私がまだ……それこそ、ノートに手書きで図鑑を作っていた頃に使われていた道具です。今でこそ、無線でいつでも気軽に遠くの人とやり取りができますが、当時は様々な道具を用意して、時には出向いて、あるいはわざわざ来てもらって、と……

 まぁとにかく、今でこそ使われなくなって久しい古い道具で」

 

「話は聞かせてもらった!!!!!!」

 

「……お聞かせしたつもりはないのですがね……レホール先生」

 

 話の途中、校長室の扉がだいばくはつでも受けたかのような勢いで開き、開けた本人であろうレホール先生が、腕を伸ばして立っていた。椅子の下で何かの衝撃があったが、どうやら勢いに驚いて飛び上がったゾロアが頭を打ったらしい。頭にたんこぶを作ってうずくまっている。

 

「古い道具と言ったが、それらはジョウトやシンオウ地方の方でかつて使われていたものではないか?校長」

「ええ、型はそうですが……レホール先生、授業はどうされたんですか?」

「やはりそうか……!ますます信憑性が増すばかりだ、ジニア先生!」

「……ジニア先生まで」

「はあい。えーっと……お邪魔しますねえ」

 

 すっかり話し込んでいたが、窓の外は薄暗く、西日が差していた。

 仁王立ちするレホール先生の後ろから、白衣とボサボサの頭と特徴的なメガネが顔を出す。悪びれもしない彼女と対照的に、申し訳なさそうにぺこりと頭を下げられるとこちらとしても会釈を返さざるをえない。

 

 ジニア先生は端末を、レホール先生は古そうな書物を手に、我々の元まで来た。他には聞いていた者は居ないらしい。

 

「急ぎ、クラベル校長とリーグ委員会に伝えたいことがありまして、テスト前ですし、ちょっとだけ自習時間にしてもらってきましたあ。

 大嵐が再度発生した、というお話、間違いありませんか?」

「ええ。ネモさんが遭遇したそうです」

「ネモさん……危なそうな所には近寄らない、って、宝探しの前にクラスでお話したと思うんですがー……」

「えへ」

「危ない所だった人を、助けたんですってねえ。受け持つ生徒が心優しい子で、ボクも嬉しいですが、……無理は禁物ですよ?」

「はーい!」

「お返事はいい子なんですけどねえ……」

 

 端末を操作しながら、生徒を心配する担任の教師と、奔放なその生徒の会話。クラベル校長が目を丸くして、次いで目を細めうんうんと、頷いている。

 

「とりあえずこちらを見て頂けますか?」

 

 校長室のモニターに、映像が繋げられる。ザワザワと、風に揺れて鳴る独特の葉と乾いた音。赤茶けた地面と、遠くに滝の流れる景色の中、ほっかむりに秋用のアカデミー制服を着た、ややふくよかな妙齢の女性が黙々と、竹の根元を掘っていた。これは……

 

「襲われた学生が撮っていた、配信動画だ。ちょいと拝借してきた」

「当時の視聴者はほとんど居なかったんですが、突然一部の生徒がアーカイブを見始めて、閲覧数が跳ね上がってましたあ。一応、現在は公開を一時止めて貰ってます。中々ショッキングですからねえ」

「まさか、まさに今襲われる……そんな光景が写っているのですか?」

 

 ジニア先生の言い方から、皆ハッサクさんの言うような光景を思い浮かべる。しかし、レホール先生はニヤリと笑い、ジニア先生は困った顔で頭を搔く。

 

「幸い、それはスマホロトムがカットしたようです。この動画には全編入ってますが、配信にはありませんよ」

「それよりはもっとずっと、……興味深いものだ」

 

 まぁ見ていろ、とレホール先生が画面を見るよう促してくる。採れたおおきなタケノコを誇らしげにオンバーンに見せ、カメラにも笑顔でそれを向けて、どういったところに生えやすいか、いかに自分の狙い通りだったかを説明している女性。

 

「この後襲われたんだよね……」

「きゅ、きゅぬ……」

 

 ネモさんが不穏な事を呟く。それはそうなんだが、編集されたホラー映像でもあるまいし。

 

――――――――――――

 

『テラスタルの結晶がありますね!リーグに報告して、LP貰っておきましょう!』

 

 動画の中で、女性が移動し、指差した先。結晶洞くつの入口があった。定期的に場所を変え、中に潜むポケモンも変わる結晶洞くつは、調査や管理のために見つけ次第報告してもらうと、リーグ委員会から報奨が支払われる。

 挑むとなると人を集めた方がいいのだが、こうして確認してLPを稼ぐだけなら一人でも問題は無い。結晶洞くつのポケモンは、基本的に中からは出てこないためだ。

 

『黒い結晶……あくかゴーストかな?中は……ひッ』

 

 黒く輝く結晶を女性が覗き込もうとした時、小さく息を飲む声の後、その体勢のまま動かない女性の襟を、オンバーンが足の爪で引っ掛け、結晶から引き離した。半ば引き摺るように女性を離すが、何やら映像の女性の様子がおかしい。靴が脱げてもお構いなく、身をすくませて真っ青な顔で……ただ目を見開いて洞窟の穴の奥を見つめている。

 ……何か、恐ろしいものを見てしまった、かのような。

 

「生配信での映像はここまでです。彼女のスマホロトムが記録は続けていてくれて、助かりましたあ」

「この後だ。よく、結晶を見ているといい」

 

 スマホロトムは主人の様子に困惑しつつも、明らかに主人がそうなった原因であろう、黒い結晶への警戒をわすれてはいないらしい。カメラはしきりに女性と、黒い結晶とを交互に映す。

 

 レホール先生に言われていた通り、ブレがひどいが画面を見つめる。

 パチリと、ノイズのような、光が走り。

 ゴウと、突如として。音を立てて猛烈な風が、スマホロトムとオンバーン達を襲った。

 枯葉や土を巻き上げて吹き付ける、その出処は……件の黒い結晶。渦を巻くたつまきのような勢いで、風の範囲が広がっていく。

 

 吹き飛ばされかけたスマホロトムをオンバーンが尾で抑え、鋭い警戒の鳴き声を上げる。黒い結晶の奥からは暴風が吹き荒れ、みるみるうちに太陽は暗雲で隠され空は暗く、まるで…………

 

「テラレイドバトルの時の、結晶洞くつの中みたい」

 

 ネモさんがぽつりと呟いた。それだ。

 

 バチバチと鳴る紫電に、ぐらつくオンバーンだが、それでも懸命に主人を黒い結晶から離そうと、固まって動かない主人に気付いて貰おうと鳴き声を上げている。

 

『……っあ、おん、ばーん?……えっ、エッ?!何この嵐!オンバーン、ポケモンセンターへ!逃げましょ!』

 

 ようやく気付いた主人が、周りの状況を知るや否や、慌てて立ち上がろうともがくが、あのエリアの地面は竹の枯葉とその根が所々絡み合っているため、場所によっては足場が悪い。もたついてる間に、オンバーンが一際甲高い、もはや悲鳴のような鳴き声。スマホロトムが自身の視界でもあるカメラを向ける。

 

 オンバーンより大きな翼と、あかい光が迫っていた。

 

 

「映像は、ここまでです。ここでゴルバットに襲われたのだと思われます。スマホロトムが弾き飛ばされて、衝撃でロトムが気絶したのか、スマホの電源が切れたようで。

 大嵐の原因は、どうも……あの黒い結晶にあるのではないか、というお話です」

 

 黒い結晶。あくタイプや、ゴーストタイプのテラスタルタイプを持つポケモンが中に居ると、よくそんな色に染まるが……映像の黒い結晶は、黒は黒でも、ゆらゆらと色とりどりに輝いていた。

 

「アオキ」

「……はい。現在報告されて、また攻略されている結晶どうくつのテラレイドポケモンの、指標として設定されている等級は星5までで充分表せます……が、これは。外まで影響を与える、テラレイド結晶となると」

「現在の等級では足りませんね。それどころか、6、7……それですらこの現象を表せるかは、いやはや」

 リーグに報告された事例に、この映像のようなものはない。

 

「……近年、地表に現れるテラレイド結晶からの放出エネルギーが徐々に強まっている見解もありまして、計測装置を準備、試験稼働中だったんですよねえ。

 それで、北エリアからの東……丁度、今回の大嵐のあった場所ですが、エネルギー数値が異常値を出していたので、そちらにフィールドワークに出ていたレホール先生についでに調査も頼んでいたんですよー」

「ああ。先日の地図の件で、興味深い情報提供があったからな。そういうわけだ」

「…………フィールドワークに出ると、私は聞いていないのですが?」

「出てきたぞ!」

「事後報告は受理しかねます」

 

 校長と歴史学教諭の争いは置いておいて。

 テラレイドエネルギーの件はリーグ委員会に報告が上がっている。マップアプリとの連動で、結晶の位置が常に更新される形になれば、テラレイドの調査も進むだろう。

 

「それで、アオキさん。ゾロアを見つけた時の大嵐と、オージャの湖で見られたもの、そして今回の映像だけではありますが、黒い結晶が原因と思われる大嵐……そのどれも、実際に目にしているのはあなただけなんです。何か、共通点や違いはわかりますか?」

「共通点……ですか…………

 まず、前提としてオージャの湖の嵐はカイリューの群れとギャラドスの群れの縄張り争いに、ヌメルゴンの群れが巻き込まれてそれぞれが天候変化わざの撃ち合いになった結果だったのでこれは除外します」

「ああ、なるほどー……了解です」

 

 ゾロアの時と、映像のもの。その違い。

 ジニア先生を見つけてから、足元から出てきてすました顔で座っているゾロアを見る。頭のたんこぶはあるが、すっかり毛並みも揃った元気な姿。

 風の強さも、体の軽いイキリンコやスマホロトムは飛ばされかけ、オンバーンやムクホーク、ついでに噂のゴルバットなどの大きな翼でならば何とか飛べるか、の程度は変わらないだろう。

 あの時、テラレイド結晶は見当たらなかったが……

 

「……この映像の嵐、中心にこの結晶があったのですか?」

「そこは……まだ未確認ですがー……何かわかりそうですか?」

「…………その前に、こちらからもひとつ。ゾロアの見つかったあの日も、そのテラレイドの……エネルギーの測定は行われていましたか?」

 

 クラベル校長たちも、ハッサクさんも口を閉じる。ジニア先生はメガネをかけ直し……頷いた。

 

「……流石です。はい、計測していましたあ。ただ、この時も試験運転でしたが、不具合かエラー吐きまくりで大変だったんですよねえ」

 

「………………なら、自分が見逃したわけではなく……

 あの大嵐の中に、そのようなテラレイド結晶は無かったのでは?」

 

 彼は当時の報告で、そのようなエネルギーの異常値などについて言及していない。だからこそ、オーリム博士も関係は無いと断言したのだし、今日のような事例が起きるまでわからなかったのでは?

 

「はあい。後ほど、そらとぶタクシーのドライバーさんにも確認してほしいんですが、こちらの計器の不具合でなかったのであれば……そんな結論になりまあす。…………ここら辺、詳しいところは後でまとめておきますねえ。

 つまり、あの大嵐と、今回の大嵐、別のもの……なのかも知れません」

 

 二例しか起きていない。計測装置も完成したものではない。しかし、彼が計測に使った機器に妥協があったとは思わない。

 すべては今回の大嵐について、これからの調査がどのような結果だったか、そのデータの差を比べてみないことには、推測の域はでないだろう。

 

 ただ一つだけ、懸念があるとすれば。

 

 あの大嵐のあと、後には暴風の痕跡以外何も残らなかった。ただ怪我したゾロアだけは、残っている。

 黒い結晶の大嵐のあとも、現在のところ、何か残っていた話はない。その黒い結晶も現場には残っていない。

 しかし、ネモさんの拾ったという、謎のかけらとケーブルは、今ここにある。

 

 あの大嵐は何も残さない。

 しかし、持ち出したものは、残ってしまうのでは?

 

 

 そういえば、その件の彼女。何の話か詳しいことはなにも伝えていないのではなかったか。顔を見ると、やけに輝かしい表情でそわそわしていた。クラベル校長とハッサクさんも気付いた。先程のレホール先生とどこか似た雰囲気の漂う彼女。

 まさか。

 

「……あ、全然!私にはお構いなく!!お話して下さって大丈夫ですよ!!聞いてるだけなので!!」

「は、ネモさん……お構いなくではなくて……まさかとは思いますが、黒い結晶を探して、挑んでこようなどとは……」

「アハハ!」

 

 あははで笑って済む話ではない。

 

 

 

 





星型ゴーグルの人達の間で密かに武勇伝のパーツとして再生されてたとかいないとか

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