先行実装転生ゾロアニキ 作:あまも
さっさと事件は終わらせてほのぼのさせてやりたかったんですが、詰め込んだ結果ほぼほぼ二話分の長さです。
ゾロアを主役にする以上、しなきゃならない話ではあったんですが、ポケスペ参考にしてたら人間にダイレクトアタックも許される気がしてきました。
タグに追加した方が良いのかな…基本ゲーム基準のつもりだったんですが
めんどくさいところは読み飛ばした方がサクサク読めるかもしれません。なお2話前辺りから今話までがめんどくさいところに該当します。
文字装飾初めてだァ
おれのきょうだいは、さみしがりで、イタズラ好きで、そんで、言葉もよくわからないおれの言いたい事を、うんうん唸り頭を捻りながらも、理解してくれたひとりだ。
パパさんは野生の勘?年の功?のようなもので、たまに違ってても、ポケモンとしてあの厳しい自然で生活してくのには、パパさんのやること言うことに従っていれば間違いはなかった。
意思の疎通は出来なくても、どうにかこうにか上手いこと、仲間としてやれていたと思う。
寒いさむい吹雪の中も身を寄せ合えば、温かくてどこか冷たい体温も、芯から暖かくなるような心地になったもんだ。
普通のポケモンや人の体温は、おれには温かくて、けれどじっとしてると熱いくらいで…………
いや暑いな?
とんでもない音と、衝撃と、ぐぇと鳴ったおれの内臓のビックリコンボで目が覚めた。
目が覚めたんだが、真っ暗で何にも見えない。まだあの夢の続きかぁ?
いや、いや。目は先程覚ました。全身を押し潰すかのような圧迫感が継続してある。体が痛い。
こりゃ夢じゃない!
頭も動かせない。辛うじて呼吸は出来るけど、息苦しい。満足いくもんじゃないぞ!
「バクーダ、戻れ……よう頑張った」
誰かの声と共に、明るくなって、圧迫感がなくなった。呼吸が楽!足が伸ばせる!
でも眩し過ぎて目がしぱしぱする。
でもでも、なんかとんでもねぇ寒気だな!
寒気というか……産毛がぶわわって立つみたいな、鳥肌モンのヤバいの見ちゃったときみたいな……
あれ?何があったんだ?おれ、何してたんだ?
「無事ですか、ゾロア」
あまりの眩しさに目を開けてられなかったが、少しばかり慣れてきた。この覇気のない薄らボンヤリくたびれ声、聞き覚えがあるぞ。我らがアオキのおじちゃんだ。
ぼやけて霞んだ視界に、黒背景に色の違う黒いスーツのでっかい人。やはりこれはメイビーアオキさん。おれは無事だぜ!元気かと言われると、ちと節々が痛いけど。
いったい、何があったんだ?
顔を上げる。
シルエットでわかるバケモンが居た。
?!?!?!?!?!?
目を擦る。目を見張る。かすれてるけど、やっぱり霧の向こうに輝く背景背負った、ポケモンじゃないバケモンがいる。
えっ、影絵か何か?
……あ、え?あ、あぁ、ああ!思い出した!
そうじゃん、ピンチだったんじゃん!
バケモンの翼からでてきたなんか黒い禍々しい炎を、ミミッキュがこのゆびとまれで呼んでは、いつぞやぶりのドオーさんと……白いキレイな……蛾?とで交互にこっちへ飛んでくる余波ごと、まもるやワイドガードで防いでいる。
きらきらとした光が、薄いモヤと一緒に拡がって、バケモンがちょっとでも隠れたおかげか震えるほどの寒気と怖気とが、いくらか和らいだ。
出処はチルタリス。しんぴのまもりと、先程からかかってるのはしろいきりか。……ってか指示出してるトレーナー、あの青髪厚着美人やんけ。
救助隊(人間)到着したんですね!
あのバケモンが現れて、その瞬間、強そうな見た目してた周りのポケモンの皆がガタガタ震えだしたんだ。恐ろしいもの見たみたいに。おれも、同じく恐ろしいもの見ちゃって発狂ロールのごとく……何してたっけ?健忘引いとる場合か!
……頭でも打ったかな?なんかクラクラする気がする。何回打ったかも覚えてねぇや。
ええと……そう、記憶と知識を必死に漁って、あのポケットにゃ収まりそうもないモンスターの正体を思い出そうとしてた気がする。
翼の形は見たことがあるんだ。触手みたいな、ずるりと長く伸びた、奇妙な太さ。ありゃ、ギラティナのオリジンフォルムのそれと似てる。トゲまで真っ黒だけど。
牙の並んだ大口も、ゴルバットみたいに縦長だけどギザギザのフチと体に対しての比率はアクジキングのそれっぽい。口の中は燃えてるみたいに揺らめいて、中も外も全面真っ黒だけど。
角はダイケンキやエンペルトみたいで、爪も、一本一本がガブリアスの腕のよう。足はクレベースの如くがっしりと。でも身体はギャラドスのように長い。
どれもこれもがことごとく真っ黒で、頭と思しき場所にある目だけが二つ、爛々と真っ赤に燃えていて。
「だ〜れだ?」なんて複数人の子供たちの声が聞こえてくるような……
シルエットクイズにしても難易度高過ぎんだろ、なんだあのキメラ。
おれの思いつく、でかくてかっちょよくてちょっと怖くて……そして好きなポケモン達の寄せ集めみたいな姿。
わかるわけねぇだろ!
デザインセンスが来い。もっとかっこよくてかわいいの寄越せ!
セグレイブやキラフロル達が頑張ってたけど、見る限り彼らの攻撃はバケモンに効果がないようだった。すりぬけてる……みたいな?
でも……そうだ、あいつが力を貯めていて、よくわからない波動みたいななんかのエネルギーでみんな吹っ飛ばされて、もみくちゃになった末におれの上に人間さんが吹っ飛んで……きた?
いや、違うな。腕と全身で覆うようにして、こっち向いてた。衝撃に踏ん張れなかっただけで……
人間さん、おれとカヌチャンのこと庇ったの?
その人間さんは今……黒いジャケットと独特な髪型の、全体的にゴージャスな黒!って印象の、タイム先生っぽい女性が患部を包帯ぐるぐる巻いている。ちゃんと手当してもらったらしい。
ほなカヌチャンは? ……グルグルされてる人間さんの周りを棍棒振り回しながらグルグル駆け回っている。心配……ではない……うん。何してんのかわかんねぇや。
アオキさんが残りのピンク……カラミンゴとデカヌチャンの怪我をくすりで手当て中。あの時居たメンバー、みんな火傷が酷いらしく、しかもその火傷ってのがくすりの効きが悪いとかで……火傷治さないと、この二匹弱体化しちゃうもんなぁ。
…………よくわからん衝撃で、何が起きたか、よくわかんねぇなぁ……あの衝撃またされたらヤバくない?おれもだけど、人間が。
「…………自分達の到着後にあったことでしたら、手短に説明しますが」
アオキさんの提案。お、マジ?治療しながらの片手間でもありがたい。
かくかくしかじか、簡単に説明されたが、おれが意識飛ばしてからそれほど時間は経ってないようだ。
とりあえずセグレイブやキラフロル、あと先程までいたバクーダちゃんは、ひと足お先にボールで休んでるらしい。
なんかあのバケモン相手にすると、ポケモン達みんなヒェッて怖がっちゃうとかで……チルタリスのしんぴのまもりでいくらか和らいだのは気の所為ではなく、確かにちょっと効果あり。しろいきりは、えんまくがてら、このおれを筆頭に戦えない連中の保護のめくらましに。さっきからゆきげしきなどを混じえて、視界不良で注意を逸らし続けてくれてるらしい。絶対ここから出ないようにと念押しされた。これフリ……じゃないですね、流石にわかります。
つまり直視したらSAN値チェック入るって解釈でいい?いつからゲーム変わった?
あのバケモンからの攻撃は、真っ黒な燃えてるように揺らめいてるでっかい翼の薙ぎ払いとか、とにかくあの禍々しい炎を飛ばしてくる。
それが当たると、このピンク二匹や、先程ボールに戻されたバクーダちゃんみたいに、治りにくい火傷を負ってしまう。
……治りにくい、黒い炎?フーン、万華鏡写r……いやなんでもないです。
でもオレオとは別に、なんか覚えがあるな。やっぱ冒涜的な神の話してる?
「アオキさん、やっぱアカンわ。攻撃が全然効いとらん!」
「このままじゃジリ貧なんだけど……モスノウ、ミラーコート!……っ、ダメか」
前で耐えてくれているポケモン達に指示を出していた、チリちゃんと青髪厚着美人ことグルーシャちゃんの焦った怒声。ハスキーボイスでかわいいじゃん……言うとる場合か。
「もう少々かかります」
他のポケモンはボールに戻しているが、この二匹は治療してでも戦ってもらう必要があるそうで。予想が確かならこのピンク達ならいけるはずとか、なんとか。
あのバケモンとこちらの間に、なんか張られているバリア……あれが、どうやら割らなきゃいけないのに攻撃が通じないから割れないとかどうだとか。
「……終わりました、行けますね?カラミンゴ、デカヌチャン」
ヤル気満々のダブルピンクが、首と槌とをブルンと回す。アオキさんの口から『チャン』とか出るのなんか……違和感あんなぁ。
絶対に出ないように、と再度念押しされた。タイム先生似の女性、ライムさんに預けられ、霧から出ていくアオキさんとピンク達を見送る。が、がんばえー?
「デカヌチャンはひかりのかべ、カラミンゴ、つるぎのまい」
「今から?!時間大丈夫?!」
「わかりません。……現状、通常のテラレイドバトルではありませんので。こうして複数のポケモンを使えますし……。第一、アレがエネルギーを溜めている様子も無い……どころか、
そもそも、
…………ミミッキュや、……ゾロアのような特性であれば、あるいは」
「本体が、どこかにおるかも……ってコトなん?!」
テラスタルとかレイドとか、きっとこの地方特有の話なんだろうが……とにかく普通ではないらしい。チリちゃんのちいかわ構文だ……
おれのような特性?
イリュージョン……ばけのかわ…………なんか、ティンと来そうな……
…………………………あーーー、あー、
あー!!!!
「チルタリス、もう一度しんぴのまもり。モスノウはオーロラベール」
「手始めに……やってみましょう。デカヌチャン、はいよるいちげき」
「ミミッキュ、デカヌチャンをてだすけ!」
まてまてまて、あの炎っぽいの、見覚えあるって、そりゃあるよ!
あのキメラみたいな化け物、
いつかのどこか、恐ろしい夢を見て怯えるきょうだいに、世界にはもっとずっと恐ろしい姿のポケモン達が居るって……喩えて伝える時に身振り手振りと下っ手くそな絵と、実物を示したのを見て、それをきっと覚えてたんだ。伝説以外は、あの土地にいたポケモンばかりだもの。
ライムさんの腕の中を大変申し訳なく思いつつ、じたばたしながら抜け出し、しろいきりを抜ける。
大袈裟に、ばけのかわからまっくろな爪を出してバケモノの意識を誘うミミッキュの横を、でっかいハンマーごと、姿勢を引くして素早く駆けていったデカヌチャンにはとても追いつけないけど、でも。
だけど。
「きゅあんぬ!!」
腹の底から、声を出す。おれの、おれだけの鳴き声だ。
ミミッキュに向けて振りかぶっていた、翼の動きが止まる。
知ってるはずだ。覚えてるはずだ。
おれは、さっきまで忘れてたけど。
ごめん。悪いと思ってる。
おれの大きな耳が、小さく、確かめるみたいに鳴く、懐かしい声を拾った。ああやっぱり。
なんかこれタイミング的にだましうちみたいになっちゃってるな。それもあわせて、本当に、申し訳ない。
巨体の
うわ殺意たっか……
――――――――
現れた時、地割れの中からバケモンは這い出てきた。ならば本体はその根元に居る。
ま、そりゃそうだ。
かつてパパさんも、たてがみの先の赤い毛をくゆらせて、恐ろしいものを作って見せては身を守ったりするのに使っていた。
おれはやり方わからなくて出来ないけど。
きょうだいは、おれと違ってポケモンらしいポケモンだったから、きっとその不思議な力を使う感覚はわかってるだろうし、使えるはずだ。
ゾロアの固有の能力……いわゆる、イリュージョンってやつ。
「このゾロア、なんで出てきて……まさか」
「コラ、近寄ったらアカンて!」
崩れた結晶の向こうで、砕けた結晶の中に一際輝くものがある。ゆらゆらと揺れながら出てきた紫色に輝くもの。一歩一歩、ゆっくりと出てきたそのポケモンは、おれと同じ姿をして……
ぱきり、ぱきりと音がする。
………………いや、あの。
……………………同じ姿……の、おれのきょうだいが出てくると思ってたんですけどぉ……
なんか、全身ガチガチのビッカビカの紫水晶のごとく結晶化したクリスタルゾロアくんが出てきたんだけど!?回答に自信ある?!
頭重そうなのなんやつけてるし……ぱきぱききらきら、キレイだなぁって?おれはこんなに陰キャなのに、都会デビューか?!
「ゾロアか……!テラスタル! あれが本体?!」
テラスタル……あのキラキラが?クリスタルと語感が似てるけど、結晶化してるって意味だったの?
「だが……あれは、様子がおかしい」
「なんでテラスタルジュエルが……
テラスタルジュエル?ジュエル……わからんけど、ビカビカゾロアの頭の上と、その後ろに宙に浮いてる……あのドット絵でも一際怖い、シオンタウンのゆうれいそっくりのでっけぇ結晶のことか?キシキシ軋んでぱきぱきと……もろもろ重そうで見てらんないよ。
てか後ろのゆうれい浮いてる……浮いてるって!ギラギラゾロアのまわりをキラキラと輝く欠片と、黒い炎と一緒に飛び回っている。ゆうれい二匹で倍怖い!
――ミ…………!
なんか聞こえるし……
――ミツケタ……ミツケタ……!
あれか、これきょうだいの思念的な?人にも聞こえてるっぽいけど……え、
おれそんなの使えないのに!ずるい!
――カエセ……!
宙に浮いてる方のゆうれいクリスタルが一際輝いた。黒い炎が、一瞬、何かを形作る。
「まずい、全員防御しな!」
ライムさんの掛け声で、防御系のわざを使えるポケモン達が各々、人をまもるようにわざを使う。
おれのことも、カラミンゴくんがくちばしで引っ掛けて……え、お前まもる使えるの?
――カエセ!!!!
あの時の、よくわからん衝撃のやつ!!
あいつ光りっぱなしだな!おれの目がそろそろやられそう!
あの時と違って、何匹かはまもるが間に合ったのか吹き飛ばされてない。でもグルーシャちゃんとライムさんは間に合わなかったのか、ポケモンたちと壁際に弾かれてしまった。
……今まもる張ってなかったのに、カラミンゴくんはどうやって避けたんだい?みきり?みきりなの?
チリちゃんやアオキさんが助けに行こうにも、しんぴのまもりも消えてしまって、みんなして青ざめた顔で震え出している。視線の先を見れば、宙に浮いてるゆうれいが、黒い炎の中に真っ赤な光を二つ灯して睨みつけて来ていた。
凄まじい殺気……ってやつ?
おれには向けられてない。
うん、これあれだ、パパさんの使ってたイリュージョン。化かすのがキツネだけど、騙すというか、相手を怖がらせることに特化してる……そういうことか。
ありゃ宙に浮いてるんじゃねえ、あそこにパパさんがおるんや!
そしてふたりして、おれが人間に捕まってると思っちゃってるんだよ、たぶんきっと!
カラミンゴくんに離してもらおうにも、あんな恐ろしい奴のとこに行かせるかと言わんばかりながっちり噛み合ったくちばしに掴まれてる首毛。アオキさんからの「まもれ」って指示をちゃんと守ろうとしてるんだろう。
り、律儀〜!
でも今はマズイよ〜!
はわわ、見えないけど恐らくパパさんっぽい視線が、どんどん怒りのボルテージ上がってく……!
きょうだいよ、パパさん止めて!おれは無事だから!ああん全然解ってくんないってか聞いてくれない!!
まずいですってえ!
「パーモット、ねこだまし!」
怒り心頭のふたりの前に、線香花火みたいなちいさな火花が、ばちりとひときわ大きな音を立てて弾けた。
投げられたボールから飛び出して、そのまま眼前に出たオレンジ色のポケモンが手を叩いてたのか。
「パーモット、戻って!」
「っ、デカヌチャン、は、限界ですか。……ご苦労さまです。……ノココッチ、お願いします。へびにらみ」
「ナマズン、交代や!そんで、……ドわすれ」
赤い光がひるんで閉じて、動けるようになった人達。ミミッキュが倒れたから、チリちゃんがナマズンを、アオキさんがデカヌチャンをボールに戻して、ノコッチ……いや、でっかくて長いノコ、コ、ッチ……?を出している。
「ネモちゃん!? なんで来てもうたかなぁ!!」
「すいません!なんか強……危なそうだったので!来ちゃいました!」
「〜〜〜ッ!助かったけども!!ありがとうなぁ!!」
そう。出口の近くに立つのは……あれはネモちゃん!
待ってろって言われたのに!
でもおれも待てなかった奴なので、何も言えねぇ!
「すっごそうな相手!…………あれ、でも、……私、救助に回った方が良いですか?」
「おおきに!頼むで!」
「わかりました!サーナイト、いのちのしずく!パーモットも手伝って!」
バッグから回復アイテムやら人間用の救急セットを取り出し、あちらの手助けに入ったネモちゃん。……あのゾロアに興味無いの?
「ゾロア」
アオキさんに呼ばれ、カラミンゴごと振り返る。さっきからバッサバッサと羽ばたいたり小刻みに揺れたり、ソワソワしっぱなしなカラミンゴくん。おれを離せば戦いに参加できるのに……そうだそうだ。離して貰わなきゃならんのだ。これ以上戦う必要ないのである。トレーナーに直談判だ。ほら、おれたち通じ合ってるし?ね?
「彼らは、貴方の仲間ですね?」
「きゅぬ」
せやで。弁解してくるからさ、離してクレメンス。
なんだ?その……いつも以上の無表情は。
「…………良く、見てください。彼らはもう……限界です」
限界?何がさ。
カラミンゴが顔をきょうだいたちに向ける。よく見ろって、眩しいくらい輝いてるきょうだいと、パパさんだろ?
チリちゃんのドオーのまもるのうしろで、なんか準備してるナマズンとかいるし、ノココッチはいやなおと出してるし……
うん。いや、……まぁね。
割れ目から上がって来てから、あのクリスタルゾロアは一歩も動いていない。
攻撃してきてるのも、警戒してるのも、全部あの、イリュージョンパパさんだ。
こちらからも、牽制はすれども攻撃している人はいない。あのネモちゃんのオレンジ色のポケモン……パーモットのねこだましで、みんなうっすら気付いたのかもしれない。
だって、眩しいんだよあのクリスタルゾロア。あのゆうれい型の結晶。
中で光が滅茶苦茶に乱反射してるんだ。少しづつ音が大きくなってる。
ぱきぱきと、きしきし、きんきんと。どんどん、どんどん……
あの結晶たちは、ひび割れて砕けてきている。
もう、人が何もせずとも自壊しそうなほどに。
ネモちゃんが残念そうにしている。そりゃそうだ。強そうなポケモンがいると思ったら、ただの耐久戦の、その消化試合だったのだから。
――――カエセ……!カエセ……!
ずっと声は響いている。けれどゾロアークの鳴き声は聞こえない。
クリスタルゾロアが、ずっともの悲しげな、はぐれたおれを呼ぶ鳴き声は聞こえる。でもきょうだいから近寄ってきてはくれない。おすわりの体勢なのは、もう後ろ足が無いからだ。
宙を飛ぶ結晶のゆうれいは、腕も台座も、顔の半分程まで砕けてしまって粉々の破片が炎に巻かれている。
きゅう、きゅうと、悲しい声よりもっとずっと大きな音を立てて、きょうだいの頭の上の結晶は砕けた。炎と紫の欠片が黒い洞窟の壁を照らして、それがあんまりにも眩しい。
ようやくカラミンゴに降ろされたおれが、目の前に駆け寄っても、もう鼻も寄せてくれない。
おれと同じおおきな耳が割れて、おれと同じ立派なしっぽが砕けて、カラミンゴに降ろされたおれを、おれと同じ黄色の目に写して。
きゅうと、おれを呼ぶ時と同じ鳴き声で、さいごにきょうだいは鳴いて。
ばきと、呆気ない音を立てて、結晶のきょうだいは縦に一文字、大きな罅を入れて、それきり動かなくなった。
なんでこんなことに。
――――――――――――
少し触れても割れてしまいそうで、触るに触れない。哀しそうな顔のまま、きょうだいの形の結晶はそこにあった。
怪我の治療しながらの人間達の緊急会議が行われているなう。フロム黒い結晶洞窟。
本来なら、結晶洞窟は中のテラスタルしたポケモン――今回はおれのきょうだいとたぶんパパさん――がレイドバトルで負けると、エネルギーの維持が出来なくなり、自然と無くなるらしい。
でも今、目の前にクリスタルゾロアと、舞い続けている紫の破片は粉々でも残っている。だからこの結晶洞窟は壊れてないんだろうと。
ただ、この結晶洞窟、あったらあったでポケモンを無差別に強化、暴走させる危険があるため、放置も出来ない。前回に引き続き、大嵐の原因とも目されてるってのもある。
現状、この核となってるきょうだいとメイビーパパさんが、敗北を認めてない状態だからじゃないかって話。
今も時折、黒い炎がチリチリとうらみの籠った念でも出してるのか、人間がみんな腕を摩ったり身震いしたりしている。
そうかあ、放置は、できないよなぁ。
「ゾロア」
「きゅぬ」
アオキさんに呼ばれた。振り返れば、人間達とポケモン達の、申し訳なさそうな、可哀想なものを見るような目。怪我してた頃にもしてたねぇそれ!
アオキさんの無表情も、こころなしか眉根がより寄ってるような、しかめっつらのような。
「……」
言いづらそうだね!
つまりはあれだろう?このパパさんもどきと、クリスタルゾロアくんを砕きたいって事だろう?
なぁに、簡単なことだ。悪いことじゃなくて良いように考えればすぐ答えはでる。
このパパさんは、パパさんの生霊みたいなもんなんだろう。
だってパパさん、なんか湖のエラいのを護る役目についてるほど大きくて賢くて長生きで、滅茶苦茶強いカッコイイ特別なゾロアークなのだ。
こんなところで、こんなよくわからんふわっふわした光と火の粉なんかになってるわけがない。
逆に、こんな所まであんなこと起こせる程の生霊飛ばして来たかもってほうが、まだ有り得そう。
……あとこんなお荷物いっぱい抱えた人間達に負けるパパさんではないだろう。
そしてきょうだいだが、アオキさん曰く、「これぬけがらでは?」とな。
本来、テラスタル状態ってのはテラスタル状態のポケモンの体力が少なくなると、維持できなくなり自然と……つまり結晶洞窟と同じ仕組みらしい。
だから残ってるってのがおかしい。で、取り出してきたのはテラピースなるなんかの欠片。
何らかの理由で、テラスタルエネルギーが固まったもの。強力なテラスタルエネルギーが多く集まると、これも出来やすいとか、どうとか。
つまり?
これ、テラピースで出来たクリスタルゾロアくん(ガチ)……ってコト?
……まぁ、なんでもいいのさ、理由とかは。
人間はここを閉じたい。あの大嵐が、また起きないように可能性は潰したい。
ここに、今、おれの仲間は似てる姿の……本体じゃないモノしかない。
倒してしまっても、砕いてしまっても……断る理由は無いよ、うん。
おれってば、仲間の似姿見るまで何にも気付けない、わるいキツネだからね!
でも直視はしたくないので、ネモちゃんとライムさん、グルーシャちゃんと一緒に外に出てるね……
今作、わざを思い出させるの随分手軽になって、色々な場面でこの技に変えよう!とか気楽にやれて、確かに普通は使えてきたわざ忘れないよねって思い出しました。
どうしてもアクジキングを挟みたかった病が、余計な事をした気がしてなんだかとっても苦い心持ちです。
ありがとうございます。