先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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せめてまいど・さんどのメニューが店ごとにサンドイッチ一種類別なのあるとかあったりしたら嬉しかったなと思いながらテーブルシティの飲食店めぐりしてたら東の高台のまいど・さんどに客一人も居ないのにテーブルにはセットだけが置いてあってゾワゾワしちゃいました。
なんであそこサンドイッチおじさんすら居ないんだ

外にはいるけども

こちらはよくわからない話です!



幕間:米が好き

 

 

 校長室の寝床まで来て安心したのか、ゾロアはすぐに丸くなって寝息を立て始めた。

 小さいながらに、あんな目にあっても気丈に振舞っていた様子だったが、やはり疲れてはいたのだろう。

 仲間……と思しき気配の、何とも難しい存在との出会いが、彼にとってどう働くか。現状ではわからない。

 

 そのうち腹でも空けば目覚めて出てくるだろうから、今は詰められるところを詰めてしまいたい。

 

「監視カメラの、手引きしたと見られる男は見つかりましたか?」

 

 クラベル校長の固い声。

 誘拐犯は、学生服まで用意してアカデミーに侵入していた。仮発行のIDは、発行した受付嬢曰く「確かに自分が発行したが、忘れ物を取りに来たのだと言っていたので、詳しく調べずに渡してしまった」とのこと。

 彼女は、自分のせいでこんな騒ぎになってしまったと、とても後悔していた。

 校内へ潜入した人物は二人。片方が誘拐犯で、もう一人はその手引きした者だと見られていた。

 

「ええ。ボウルタウンにて確保されました。『自分は元・アカデミー学生で、忘れ物を取りに行っただけだ』と、一貫して巻き込まれただけの無実を主張していますが」

 

 ハッサクさんが確保に向かい、現在コルサさんとリーグ委員とを交えて取り調べ中のはず。

 あの二人に詰め寄られるのは、自分は御免こうむる。本心から無実かはさておき、利用されたのは確かなのだろう。

 

「……確認しましたが……彼が在校していたという記録が無いんですよねえ……本当に、去年までアカデミーにいたんでしょうか?

 むしろ、去年の退学者人数が異様に多いのが気になりましたあ」

「それは恐らく……例の不良グループの彼らの」

「ああー……なるほどー……」

 

 退学者が多い、という発言。疑問に思ったが、アカデミーの運営関連の詳しい事まで首を突っ込みたくはない。不良集団……カラフ近くの星の意匠のテント群が頭に浮かんだが、そこは場所も含めて自分の管轄外だ。

 

「……取り調べ中ですが、どうやら犯人は他地方の人物で、依頼されてゾロアを攫いに来たようです」

 

 治療を受けながらでも話は出来るでしょう、とトップが背後にキラフロルを浮かべながら取り調べをしている姿を先程チリさんから送られている。自分を弱らせた相手が、そのトレーナーと一緒になってまた構えて来ているのだ。正直な答えであると思いたい。

 

「あのカヌチャンも、依頼されてたんですかあ?」

「ああ、そちらは……」

 

 これは正直な話。パルデアのルールに則った場合、今回の件で彼が犯した罪の中で最も重いとされるのは、無許可でのカヌチャンの他地方への持ち出しだ。

 カヌチャンはまだそれほど強くはないため、それこそかわいいものだが、ひとたびナカヌチャン以上に進化してしまえば管理方法や対処の仕方を知らないと、下手すれば生態系が一瞬で崩壊してしまう恐れがある。

 そんなカヌチャンの持ち出し。

 本人曰く。

 

「『休憩にと降り立った場所で、ゾロアを入れた檻に張り付いて剥がれなかったから、もう一つ用意したら自分で入ってきた』そうです。見た目も可愛らしいので、引き取り手は居るだろうからと、おまけで」

「…………ああ」

 

 ポケモンの習性に詳しい二人だ。これだけで分かってしまったのだろう。どこか遠い目をして頷いた。

 

「それは……知らなかったのでしょうね……」

「アーマーガアで空を飛んでいたと聞きますし、本当にパルデアは初めて来たんですねえ」

「問い合わせていますが、どうやら他の地方での犯罪歴も無いようです。様子を見ていた限りではどうも……何か事情がありそうでした」

 

 発見した時、意識の無いバクーダの下で潰されかけていたゾロアとカヌチャンは、カラミンゴとデカヌチャンと、死にかけの例の犯人の下で、辛うじて出来た空間にいた。

 病院に搬送され、目覚めた時には、ポケモン達や手持ちのアーマーガアの様子を真っ先に訊ねたと聞いている。

 ポケモンの事を、商売の為のモノや道具程度にしか思っていない人間では、なさそうである、と。

 トップが何やら愉快そうにしていたのが気掛かりだが、これ以上悪いようにはならないだろう。

 

 少なくとも、あの男のせいでひと騒動起きてしまったことは間違いない。まったく、無駄な労働ばかりが増える。

 

「犯人の方はこのまま委員会の方で調査を進めてまいります。……それで、アカデミーの方に調べて頂きたいことが幾つかございまして」

「ええ、ええ。あの黒い結晶や、あのポケモンたちについてですね」

「先程、タイム先生にお渡ししたものは」

「解析完了してますー。こちらはお返ししますねえ」

 

 校長室の機器の中から、ジニア先生が持ってきたのはテラスタルオーブ。自分のものだ。

 

「確かに、通常のテラスタルエネルギーと混ざって、微力ですが別のエネルギーが検知されましたあ。似ている反応は……アローラや……ホウエン、シンオウで観測された記録と……うーん、まぁ、これは要検証ですけどー……

 そもそもナッペ山からここまで、大気に混ざって散ってしまうはずのエネルギーが残っていた事すらも疑問なんですがー……」

「こちらはオーリム博士にもデータをお送りしても?」

「はい。お願いします」

 

 例の結晶洞くつで、テラスタルでとどめを……と考えていたものの、あんな最後だった為にその出番は無かった。

 何かの手掛かりになるかと、テラスタルエネルギーを集めるだけ集めて、ポケモンに投げずに保持したままのテラスタルオーブを持ってきたが、そう長時間保たないはずの結晶が、ギリギリ残っていたのである。

 あの洞くつで採れたテラピース・ゴーストとあわせて、テラスタルについて詳しい彼らに渡したが、彼らですら首を傾げることになった。

 テラスタルについて、誰よりも詳しいオーリム博士の見解を聞けるなら、それに越したことはない。

 

「スマホロトムが起動してくれなかったので、手動になりますが、チリさんが撮影していた動画も後程お送りします」

「動画があるんですかあ!? わあ、検証が捗りますー!」

 

 彼女のジャケットのポケットからの撮影だ。ひどい画角とブレで見れたものではないが、時折何かしらが映っているのは確認できる。

 特性:ねつこうかんのセグレイブにやけどを負わせたあの炎。受けた治りにくい火傷はやけどなおしで治らず、なんでもなおしでようやく効果があった。状態異常ではあったが、やけどでは無い。ではどくだった?はがねタイプのデカヌチャンも同じ症状だったはず。こおりタイプがこおりつくことはないし、まひや、ほかの何かだったのだろうか。

 そもそも攻撃が通じず、わざわざ きもったまのカラミンゴと かたやぶりのポピーさんのデカヌチャンに頑張らせたが、特性はしぜんかいふく らしいネモさんのパーモットの、ノーマルタイプの技、ねこだましが効果があったのはどういうことか。

 かたやぶりで本体にダメージが入ったあの時点で、もうゴーストタイプではなかったのか、そもそも何か別の理由があったのか……

 

 念の為に、やはりあれも渡しておくべきか。

 

「それと……これを調べてみて欲しいのですが」

 

 鞄から取り出した物。自分の手のひらに収まるそれを、二人とも研究者の目つきで眼鏡をかけ直しながらまじまじと見つめる。

 

「…………ヒールボールですかあ?」

「中にポケモンはいないようですが……」

 

 見た目は彼らの言う通り、ただの空のボール。自分が持つには似つかわしくない、薄い桃色のデザインのヒールボールだ。

 

「テラスタルしていたゾロアの、抜け殻のように残っていた結晶に向けて投げたボールです。何も入ってはいませんが、"何か"が入っています」

 

『普通のテラレイドのポケモン、倒したら捕獲の隙があるやん? 試してみぃひん?』

 

 とは、チリさんの悪ふざけなのか本気なのか分かりかねるトーンの発言。

 同じくチリさんが宙に浮いていた結晶の欠片の方に向けて投げたハイパーボールは、狙い目が分からず何も当たらないまま床に落ちたが、こちらのヒールボールは結晶に当たった後、確かに一度開き、"何か"が入ったような光と、動作を見せた。

 通常のような、中のポケモンの抵抗で揺れる事も無く、登録データもない。

 いったい、自分は何を捕まえたのか。

 

「一度、開いた……? お借りしますねえ」

「どうぞ」

 

 ジニア先生が慎重に自分の手からヒールボールを持っていき、それを何かの機器にセット。カタカタピコポコと、クラベル校長と二人で画面を覗いてあーではこーでは言っている。

 ここら辺は自分にはわからない。さっさと諸々終わらせて、食事に行きたい。

 

 ……ああ、考えてしまった。意識してしまうとダメだ。途端に疲れがどっと来た。

 自分はちゃんと、気を張っていたらしい。もうダメだが。

 

 腹が減っている。

 体がエネルギーを求めている。

 そういえば、空の上でトロピウスが心配そうに渡してきたフルーツぐらいしか食べていない。美味かったが、あれだけでは自分には足りない。

 ふご と情けない寝息に横を見ると、ぐーすかと、安心しきっているのか、喉を晒して腹も仰向けで、ベッドからはみ出ているゾロアが羨ましくなってきた。苦労したのはわかっているが、お前の野生はどこに行った。

 まったく……なんだって、こんな面倒事に。

 

 

――――――――

 

 

「確かに捕獲記録がありますねえ。でも、何もいないように見えますし、実際の数値でも、何もいません」

「"何か"はいるんですか?」

「ですから、何もいません。何かを捕まえた、という記録だけが残っているんです。う〜ん……どういうことでしょうかー…………ロトム、このデータを……いえ、やめておきましょうかあ。変なデータが伝染るとよくない。

 クラベル先生、廃棄の端末ありましたっけ?」

「ひとつ前の世代になりますが、そこの棚にありますよ。情報が見られれば良いのですね」

「お願いしまあす。こっちの調整はしときますねえ」

 

 ぱたぱたと、二人とも機器の間を行ったり来たり、手持ち無沙汰な自分は、と見ていると、コテと厚手の手袋を装備したクラベル校長がこちらに気付いた。

 

「少し、中を見てみますが、このボールが不具合を起こしている可能性もあります。可能であればボールの入れ替えで改善するかもしれませんので、アオキさんの空きボールを一つ貸していただけますか?」

「了解しました。……モンスターボールで良いですか?」

「捕獲率は変わりませんがー、一応同じヒールボールでお願いしまあす」

「……わかりました」

 

 棚からロトム用のモーターの入っていない端末を持ってきたジニア先生に渡す。丁度、タイミング悪くそこで腹が小さく鳴ってしまった。こんな時に。

 

「そういえば、アオキさん休憩されてませんよねえ? こちらで調べてる間時間ありますからあ……街で何か食べてきては?」

「……しかし……」

「では、よければついでにまいど・さんどのアボカドサンドを一つ……お願いできますか?」

「あ!ならぼくはジャムサンドでお願いしまあす」

 

 断る間もなく、現金とLPがそれぞれから送られてしまった。

 気遣われている……

 

「…………わかりました、では一度、休憩をとらせていただきます。何かあればすぐ、ご連絡ください」

「はあーい、いってらっしゃいです」

「……ぎゅぬー……」

「ふっ……ごゆっくり」

 

 にこりとした笑顔と、野生味のない寝息と朗らかな声に後押しされ、校長室を出る。

 

 とはいえ言葉通りにごゆっくりする訳にも行くまい。余計な道草食わぬよう、アカデミーを出るまでに目的地を定めねば。

 テーブルシティは西側、東側にそれぞれ複数店舗、まいど・さんどがある。さらにそれぞれの側に、飲食店があるが……まず西にするか、東にするか、上か、下か。それによってあの階段を下まで降りるか、降りないかが決まる。

 いつもなら、少し歩いて標的を見つけるが……スマホロトムにテーブルシティの飲食店を表示してもらう。

 軽食ならば降りてすぐの喫茶室なぎさで良いのだろうが、このカロリー消費量ではポテトやケサディーヤでは済まない。まいど・さんどでまとめて自分の分も買えばいい?いやいや、それは自分の腹と相談済みだ。今、パンは求めていないらしい。

 

 雪山で作業していたせいか、あたたかさを感じる物が欲しい。温かいもの、暖かい……むしろ暑いくらいの。そして塩。甘さじゃない。

 もっとガッツリ……そうだ、米だ。米がいい。

 途端にカラフシティの海の味やら、宝食堂のボリューム満点なメニューが浮かぶ。だからと言ってチャンプルタウンにとんぼがえりは、あまりに道草が過ぎるだろう。

 ならば二択。バル・キバルかバラト。

 アカデミーを出て階段に差し掛かる。決めねば。

 アカデミーから近いのは……バラトか。すぐそこだ。イチオシメニューはカレーライス……米だ。がっつりスパイスだ。テーブルシティの店舗は、学生向けで量も多い。まいど・さんども近くにある。

 ならばそれでいいか…………否!

 

 足早に降りた階段、更に広場への段も降りる。

 海産物だ。スマホロトムの表示したメニューの、パエジャ=パルデアの黄色に惹かれた。写真から漂うシーフードの香りとうまみ。学生達の仲の良さそうな自撮り写真とカレーライスも悪くないが、甘い可愛さは今求めていない。ガツンと利いたガーリックが欲しい。

 決まってしまった。腹もそうだそれだと言っている。

 まいど・さんども近い。完璧だ。

 

 

 ………………辿り着いた先で、マリナードからの直送を謳う鮮度一番!のシーフードパスタの本日の出来栄えがココ最近で1番という話を聞いてしまい、また迷う事になるのだが。

 

 

 

――――――――

 

 

 まいど・さんどでアボカドサンドとジャムサンドとスパイシーサンドを購入し、アカデミーに戻る。未だに作業中だった。

 

「いえ、移し替えてはみたのですが、やはり中は何もないんです。もう少し詳しく見てみたいので、こちらのボールも合わせて、もうしばらくお借りしていてもよろしいですか?」

「それは、ええ、お願いします」

 

 疲れた脳に糖分を補給してか、幸せそうにジャムサンドを頬張っていたジニア先生が、「そうでした」とジャムサンドを置いた。

 

「クラベル先生とお話してたんですがあ、ゾロアさんが目覚めたら、少し訊ねてみた方がいいんじゃないかなあってことがありましてー……」

 

 ころりと、見た目では分からない何かのヒールボールと普通のヒールボールとが転がる。

 

 

「やっぱり、一度捕まえておいたほうが、いいのかもしれない……っていう」

「…………はぁ」

 

 

 まぁ、そうなるだろう。

 

 





この妄想全開ゾロアニキのお話はハッキリとしたオチがあるわけではないのでふわふわエンドでも許して下さいと予防線を張っておきます

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