先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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サトシ〜!!!!お疲れ〜!!!!!!!!

タイムカプセルとかいうシステム久しぶりに見ました



便利なのは好きでも古いのも好き

 

 

 ころりと転がるヒールボール。

 

 ポピーさんの腕の中にいたはずのゾロアはいなくなった。

 

「え、え、ええええ」

 

 不自然に突き出した手が行き場のないまま固まっていたジニア先生だが、ボールの揺れが収まった辺りでようやく動き出し、抱えていた荷物を放り出して転がっているヒールボールに駆け寄る。クラベル校長も、チリさんとハッサクさんも顔を見合わせていた。

 

 ………………もう嫌な予感しかしない。

 

 

「……ゾロアさあん?」

 

 恐る恐ると言った様子で、ヒールボールへとジニア先生が声をかける。ぐらりと一度、ボールが揺れた。

 その場にいた全員が、ジニア先生を見る。大きく首を横に振るのは、自分が捕まえたわけではない、と言いたいんだろうが、その結果、彼に向けられていた視線が自分へとシフト。自然、肩が下がるのを自覚する。

 

「…………確認ですが。このヒールボール、例の『何か』のボールでしょうか?」

「はあい。何かを捕まえたと思われる、アオキさんのヒールボールですねえ……」

「ほーん? ほな、アオキさんが開けたったらええやないの」

「いえ、しかし……」

「もし『なんか』が出てきてしもうても、問題は部屋ん中やって事だけやし?」

 

 困ったように眉を下げて笑うジニア先生。チリさんに力強く背中を叩かれ、仕方なしに転がっていたヒールボールを自分が拾った。ボタン周りが光っている。

 

「…………」

 

 ジニア先生やポピーさんが避けたスペースに軽く放るが、コンと軽い音をたてて弾むだけで、ヒールボールはころりと転がった。

 再度拾い上げ、開閉ボタンを押しても、変わらず反応は無い。

 ぶるりと、手の中でボールが震えた。

 

 顔を上げると、その場の全員の顔色が悪い。

 自分の表情もきっとそうだろう。

 

 

 おかしな調子の、開かないボールに、あのゾロアが吸い込まれてしまった。

 

 

 一番早く再起動したのはやはりチリさん。わなわなと震え、血相変えて叫ぶ。

 

「アカンやん!」

「はぁ、開かないだけに」「言うとる場合か!!」

 

 ヒールボールをそのままチリさんに奪い取られ、別の意味で壊れそうな勢いでボタンを連打しているが、アカンボールはうんともすんともいわない。あわあわと戸惑っているポピーさんと、何か決心したようなハッサクさんがおもむろに取り出したセグレイブの……流石にそれは止めます。

 

「あのボール自体、開閉機能を含めて色々な機能が壊れてるので、中身を移し替えしても良いかを聞きに来たんですがねえ…………いやあ……

 ええ……どうしましょうねえ」

(はな)から壊れとんのかい!!ほな意味ないやないの」

「正確には、内部データの破損でボールの機能が正常に働いてないと言うか……結局壊れてますねえ」

「移し替えでどうにかなるなら、試してみては?」

 

 という訳で、ゾロア内包ヒールボールと空のヒールボールをジニア先生に預ける。同じ種類のボールなのは、念の為合わせた結果。

 機器を操作するジニア先生の後ろで、心配そうにウロウロと手元を覗き込もうとするポピーさんを回収。我々が見ていた所で、何も変わりはしない。

 

「ゾロアさん、大丈夫でしょうかー……心配ですの」

「大丈夫大丈夫。問題ないやろ。古いのが壊れとるんやら、新しいのに取り替えたったらええんやもん」

「ええ、ええ。きっと大丈夫ですよ。

 にしてもいやはや、小生、機械にはそれほどくわしくありませんが、モンスターボールの機能が壊れる、と聞くと、少々投げる力加減に困りますね」

「昔は本当にポケモンを捕獲するだけでしたが、最近はどんどん機能も増えて……、元々生半可な威力では壊れないようにもなってますがね。それでも一応機械ですから」

 

「…………」

 

 心配そうなポピーさんを安心させるように、各々で別の話題にすり替えて行く。……しかし、ボールを受け取ったジニア先生の苦い顔を見る限りでは、あまり良い結果にはなりそうもない。

 中身のデータが破損している以上、それを移した所でその先も正常に作動するかは…………

 

「うん、やっぱり開きませんねえ」

 

 だろうなと。

 

 困った顔で笑うジニア先生の手にしたヒールボールに、薄々勘づいていたクラベル校長が首を振り、誰がついたかため息が。自分もさらに肩が下がった気がする。なで肩待ったナシである。

 

 さて、どうしたものかと改めて皆席に着く。

 

 新しいヒールボールに移されたゾロアも、以前『何か』を捕らえた、今は空のヒールボールも、チリさんやハッサクさん達の手の中で矯めつ眇めつ転がされているが、時折中でゾロアが何かしているのか、動いたり、光ったりするものの、開く気配がない。

 

「データ自体がおかしくなってしまっているのでしょう。一度外に出して、逃がした設定に直せばあるいは……」

「ボックスの方も、ただの空ボール認識なのか反応してくれなかったんですよねえ。今のこのボールを預けた場合、下手したらボールごと取り出せなくなる可能性があるので、試さない方が良いかもしれません」

「逃がすもなんも、そもそも外に出せないのが問題なんやろ?やっぱ、一旦ボール壊すっきゃないんやない?」

「なるほど……」「わかりましたの!」

 

 張り切ってそれぞれアップリューとデカヌチャンのボールを取り出した二人を座らせる。中のゾロアは小さいとはいえ、外からのボールの破壊はあまりにリスクが高い。

 そして中のゾロアのこれまでと普段の……鈍臭……暢気……あまり性格的に機敏でない様子を思い出させると、ああなるほどと二人とも大人しく着席した。もしもの際、避けろという指示を実行できている姿が想像できない。

 怪我をしたり、寝ていたり、気絶している姿が頭に浮かぶのは、やはり初めて目にした姿からだろうか。

 

「ほんなら、どないせいっちゅーねん」

「それは……」

 

 うむむと、大の大人と小さな子供一人とで頭を捻る。元々、正体不明の『何か』が絡んでいるため、何がアウトかわからないのが問題だ。

 

 こういう時、機械には我々リーグ側はそこまで詳しくない為、適当な案を捻り出すぐらいしかできない。幸か不幸か、現場に機械に特に強いジニア先生とクラベル校長が居たのは良いが…………

 

「そもそも問題、なんでこのボールに、ゾロアが入ってしまったんやろ?」

「そこは……まぁ推測でしかありませんが、実体のないデータのみの"捕獲"された『何か』と、データ上では似たような情報のポケモンがいたため…………これはぼくの不注意ですけどお…………弾みで開閉ボタンに触れてしまった際に、そのまま誤作動を起こし、"捕獲"された『何か』の実体とゾロアを誤認したまま、収めた結果かと……あ、そうでしたそうでしたあ」

 

 話で放り出した資料や荷物を思い出したジニア先生が、扉の前に散らばるファイルやら謎の箱やらを拾いに行く。それらの上に乗せて来て、そのまま弾みで転がって、飛び出したボールを掴んだ際にボタンに触れてしまった……ということらしい。

 

「ということは、中にいた『何か』は、ゾロアだったのでしょうか」

「あの時のゴーストタイプのテラスタルしていたゾロアに向けて投げたボールですから、捕まえたものがそうであったと考えるのは自然かと。

 ライムさん曰く、とても強い念だったそうですから、実体のない、念だけを…………捕らえていたことになりますが……」

「中のゾロアちゃん、体がありませんの?……ゴースちゃんみたいですの?」

「……あー」

 

 そっ と、首を傾げたポピーさんの耳を、チリさんが両手で覆った。声を潜めて、眉を顰めて。

 

「…………チリちゃん、オカルトじみた話あんまし詳しくないんやけど……んでこういう事考えたくも無いんやけどね?

 今このゾロア、怨念と一緒のボールに入ってる……ってコトなん?」

 

 生憎と、その話題(オカルト)に詳しい人間はいない。

 しかしなんだ。

 

「…………怨念とおんねん、とでもおっしゃるのかtッ」

 

 つい口から零れた呟きに、耳聰く拾い上げたのか長い足が飛んできた。腰が痛い。

 

「ゾロアの事、心配ちゃうんか!」

「いえ……見た感じ、中のゾロアがそう暴れていない様子なので、居心地は悪くないのかと思いまして」

 

 こちらの言葉に、返事のようにぐらりと動きはするが、それだけだ。中の居心地が悪かったり、『何か』が良くないようであれば、あのゾロアはもっと暴れるはず。

 ボールに捕らえられたことそのものは嫌ではないらしいのが、これまでの態度と比べて腑に落ちないところではある。

 

「あー……あー?確かに……」

「それに、ゾロアへの声かけで返事がありますねえ……ゾロアの意識はしっかりしている……?」

 

 チリさんの持つボールを、荷物を近くの机に置き直したジニア先生がこつりとつつくと、ぷるりと震えた。

 このゾロアは普通のポケモンと違って、時折予期しない行動を取る。出てこないのがこのゾロアの意志だとは思えないが……

 とにかく、あまり深刻に考えなくとも良いような、そんなどこか暢気な気配がボールから漂ってくるのである。まったくもって、鬼気迫った態度では無い。

 案外、腹が減ったら出て来るのでは?という、思考放棄してしまいそうな……外で人間ばかりが騒いでいるのが馬鹿らしくなるような……

 

「ゾロアちゃんゾロアちゃん、出て来れそうですの?」

 

 ポピーさんの質問に、チリさんの手の中でゆらゆらと二度揺れる。流石に、自力で出てこれないらしい。

 

「では、一刻も早く……具体的には、ボールを破壊してでも出たいですか?」

 

 ハッサクさんの言葉にはぐわんぐわんと大きく揺れた。ボールの中で小さくなった視点から見る、ポケモンの攻撃は恐ろしいようだ。

「穏便に出れるなら、一日二日程度の我慢はできますか?」

「それは流石に……いやええんかい」

 

 ゆらりと一度だけ揺れたボール。

 この状態でも、意志の疎通が可能とは、つくづく奇妙な所で器用な個体だ。

 

「……ちなみに、身の安全は大丈夫なんですね?」

 クラベル校長の確認にも、一度大きく揺れて見せる。何かがゾロアを脅かす、というわけでもないらしい。

 誰ともなく、ホッと一息。

 

 

「とはいえ、このボールの機能がおかしいのは今に始まったことじゃありませんからね。このままにしておくわけにもいきません。何か方法を考えねばなりません」

 

 それはそうだ。再度、沈黙が下りる。

 ふと、先程ジニア先生が机に置いた荷物が目に留まった。同じく気になったのか、ハッサクさんが問う。

 

「ああ、それは今度のシンオウ地方出張の話で、寄贈ついでにあちらから色々と資料が届きまして。でも、宛先をぼく宛にし忘れたとのことで、他の先生方の所にバラバラに届いちゃったんですよお。それで、集めて回っ……」

 

 言葉が不自然に途切れる。

 

「ジニア先生?」

「……そうか、アレも届いてるハズですねえ……データがおかしいのであれば、データを伴わないボールであればあるいは…………上手くいく可能性が?」

 

 一人何かに頷くと、そのままスマホロトムに呼び出しを頼み出した。

 なんだなんだとスマホロトムを覗き込む面々の横で、届く予定の品目のチェックリストらしき紙を見る。図鑑のコピー、写真、物品を何点か…………横に先生方の名前が小さくメモされている。これが届いた先だろう。

 チェックの付いていないものの中に、レホール先生の名前が多くあるのは、これは。

 

「あ、レホール先生。お忙しい中すみませえん。今朝の資料の中の、当時の…………いや、それは……レホール先生、今回の資料はアカデミーに寄贈されたもので、私物ではないですからねえ?……はい。そうですそうです…………例のゾロアのボールが……はい、はい。……お願いしますねえ。

 レホール先生が持ってきてくれるそうですー」

 

 通話先からやけにテンションの高い返事が聞こえてきたが、何故レホール先生の所に?

 

「当時の資料のうち、いくつかの使用されていた意匠や記述等に、当時のパルデア周辺の状況に繋がる情報であったり、当時の技術レベルが窺えるとして、歴史の方の資料としても調べさせて欲しい、だそうでしてえ。直ぐに全部には手が回りませんし、お手伝いを頼んでいたんですよお」

 

 こんなのとかです、と渡されたのは、古いセピア色の写真。人の手の入っていない鬱蒼とした森や、平原、川、湿地など、様々な環境で、ポケモン達の様子が捉えられている。

 パルデア地方では見かけないポケモンの写真もあり、先程までゾロアの事でずっと心配そうにしていたポピーさんが楽しそうにしているのでそれはそれでよし。

 

「…………ジニア先生」

「え?はい、なんでしょうか、クラベル先生」

「…………寄贈してもらえる、とまでは聞いておりましたが、既に贈られている……とは、私聞いておりませんが?」

「あれ、そうでしたかあ?……あ、忘…………いや、…………全部届いてるか、確認してから報告しようかと……」

「手続き等あったでしょう!ちゃんと記録してあるのですか?」

「そこは流石に大丈夫ですよお。一応アカデミーには全部来てる……筈ですし」

「それに、他の先生方の所にバラけて届いてしまっている、といった配送事故等の情報も報告しなさい!ジニア先生の元まで持ってきてもらうよう、知らせることも出来たでしょうに」

「そうですねえ……自分で行けば良いかあと……えへ」

 

 手続きなどはきちんとしてほしいですよね、それはまったくもってそう。

 巡り巡って、自分の手に預けられたゾロア入りのボールが、一つ頷くように揺れる。

 

 

――――――――――

 

 

「まったく……順調に進めていた所だったというのに」

「すいませんねえ」

「ほお……四天王方も揃い踏みか。まぁいい。必要なのはこれだろう?」

「はあい。ありがとうございます、レホール先生」

 

 そう時間も経たずやってきたレホール先生が、小さな木箱をジニア先生に手渡した。中身は、見慣れた色のボールではある、が、どこか見慣れない。木目柄……ではなく、本当に植物で出来ているのだろう。

 

「ジニア先生、これは?」

「当時のシンオウ地方……そうですねえ……かつて実際に使用されていた、モンスターボールの原型となった物です。実物がこんなにキレイに、しかも未使用品で残ってるなんて、奇跡的ですよお「しかもだ!発見されたのはシンオウ地方ではあるが、同時に見つかった資料によれば、これは当時持ち込まれた物だとわかる!つまり!! これは当時、他の地方にもあった、いやむしろ、他の地方のものであったのだ!……順当に考えれば有力な来歴はジョウト地方。だが、その技術が未だに残っているのがジョウト地方なのであって、どこが発祥かはまだ断定されていない。ポケモントレーナー……いや、"ポケモン使い"達はパルデアの周辺にもいる……そして、災厄の宝にも見える通り、ポケモン使いの伝承も残っている……!ここに手がかりのひとつの可能性を」あー……」

 

 盛り上がっているレホール先生に圧されているジニア先生を呼び寄せ、ふむふむと真剣に聞いているのか適当に流しているのかイマイチわからないハッサクさんとチリさんにあちらは任せる。

 

「クラベル先生。以前、ネモさんから通信ケーブルを預かっていましたよね?まだありますかあ?」

「ああ、ええ。保管してあります。…………なるほど。規格の合う旧型のボールも必要ですね?」

「まだありましたかあ?」

「保管していた物がいくつか。少々時間を頂きますが……」

 

 クラベル校長がその旧型のボールとやらを取りに行く間、何をしようとしているのか説明してもらうことには。

 この……レホール先生垂涎の当時のボールには、電子的な機構は何も付いていない。開閉に不具合をもたらしているのがデータのバグであるならば、そのデータのバグそのものが関与しないボールに入れ替えてしまえば、不具合など起こりようもないのでは?……ということらしい。

 …………歴史的にも、大変価値が高いものでは?と思えば、そもそも保護機能も登録機能も、何もついていないため壊しさえしなければ再利用が可能、であるはずとの見解が返ってきた。ゾロアを安全に解放するための出口として利用できればいいのだ。

 

 あわよくば、実際にポケモンが捕獲出来ることを確認してみたいそうで。

 レホール先生曰く、赤い石の部分にあるキズなど、保管していただけではつかないようなキズから、これは既に、使われたものでは無いか?という推測だと言う。

 

 しかし、現在のボールとこのボールとを直接繋ぐ方法が無い。ただ、昔使用されていた通信ケーブルや旧型のモンスターボールならば、互換性が……あるのだろうか?

 

「機械部分や塗装等、変わった所もありますが、仕組み自体は、現在も職人によってきのみから作られているボールと、ほとんど同じのようです。中の小さくなった状態のポケモンを、そのままデータを介さずに移動出来ればいいので……」

「……待ってください。職人の作るボールとは、まさか」

 

 きょとと目を瞬かせ、へらりといつもと変わらない笑顔。

 

「はあい。ジョウト地方の、職人さんお手製の一点物のモンスターボールですねえ」

 

 よもやまさか、この専門家達は、成功するかもわからない事に一個ウン十万の値で取引されることもあるレアボールを、使い捨てようとしているのか?

 

 …………壊した方が早い気がしてきた。自分のカラミンゴなら、ピントレンズでも持たせれば行けるんじゃないだろうか。

 

「……」

 

 ガタガタと震え出すボールに、そのまま勢いで出てきてくれないかと願う。なんというか、本当に手間のかかるポケモンである。

 

 

 

 





昔の方がオーバーテクノロジーしてるって話あるますよね


ねっ、オーリム博士!

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