先行実装転生ゾロアニキ 作:あまも
ポケマスでジニア先生とスーパーサラリーマンが出たので続きました。
なんだあのおじさん、マイペース過ぎひんか?
というわけで難しい話と称してめんどくさい話なので読み飛ばしてもいいような気のするパートです。
閲覧ありがとうございます!
ハーメルンくんの他にもヲタクの憩いの場が軒並み攻撃を受けててなんか怖いなと思いながら読めない期間に書いたものなのでいつも通り誤字脱字その他もろもろしれっと後で直したりすると思います
「すこおし、長い話になるかと思います。わからない時はその都度質問してもらって構いませんが、現状では確定していると言える事柄は多くはないので、推論が多くなる事を先にあやまらせていただきますねえ」
校長室の画面の前。ホワイトボードを引っ張ってきて横に並べた。椅子をいくつか並べて、最近よく入り浸ることになっている臨時の会議室で、授業の、はたまた昔の研究発表会の壇上のような気分で立つ。昔からあまり得意では無かった。最近、教師となって“説明する”事を覚えてからは、ちょっとだけ上手くなれたと思う。
事件後の調査や平定の為、と、ゾロアの経過観察の為の数日間を挟み、改めて件の主要陣に集まってもらった次第。
「ひとりで考えてみたんですが、どうもあちこちに意識が向いてしまって、なかなか上手くまとまらなかったんですよねえ。
なので、今回はお話を聞いてもらう形で、ぼくの思考の整理にお付き合いくださあい」
パチパチと、ゆっくりとした拍手で返事してくれたのはオモダカ理事長。
無表情でひとつ頷いたのか首が疲れたのかわからないアオキさん。
「お願いします、ジニア先生」と促してくれるクラベル校長。
アオキさんの足元で胡乱げに見上げてくるゾロアに笑いかけて、まず結論を挙げる。
「今回の件とこれまでの資料、情報から、ぼく達研究チームはこのゾロア、及びその進化系のゾロアークを『リージョンフォーム(ヒスイのすがた)』として登録することを提案します」
画面に、シンオウ地方ポケモン研究所のコウキくんから送ってもらった資料、深い雪の積もった森で、白い毛と赤い光のゾロアがこちらに振り返る姿を映すと、アオキさんの足元の、白灰色と青い毛のゾロアがピクリと反応した。早速オモダカ理事長が手を挙げる。
「ヒスイとは、確かシンオウ地方の古い呼び名でしたか」
「はい。あの地方に開拓民が集い、町を築き始めた頃まで現地の人々に呼ばれていた名前ですねえ」
「わかりました。失礼、続けて下さい」
「はあい。ライムさんの見立てでも、ぼくたち研究チームでも……
そして過去の博士も、同じ答えとなりましたあ。
当時のヒスイ地方開拓団の特別調査隊、ラベン博士が製作した図鑑ページの復元が、一部ではありますが成功しましてえ、こちら」
『死した魂 ヒスイの地にて 蘇る。 怨嗟は 力となり 頭より 立ち昇り 相手の姿に 変じ 恨み 晴らしたり。』
その文面から、彼らは迫害を避け北の果てへ逃げ、厳しい寒さと縄張り争いに負け命を落とし、その原因となった人やポケモン達を強く怨む念から転生し蘇ったとされるゴーストタイプのポケモンであることがわかる。そう伝わっているだけ、もしくは作り話であったとしても、その根底にはそう考えられるだけのできごとはあった筈。
「現地の人々の伝承と、当時の調査隊の研究から付けられた分類名は“うらみぎつねポケモン”ですねえ」
「うらみ……ですか」
アオキさんの椅子の下のゾロアに自然とみんなの視線が向く。困った様な目がキョロキョロと周囲のヒトの顔を見回して、ボードに出した白いゾロアで止まる。その目はどこかうらみがましくヒトを見ているようにも、見えたのだろうか。
シンオウ地方のコウキくんを始め、なんとか懸命にボロボロのページからゾロア、ゾロアークのページを読める程度まで復元してくれたのだ。他のポケモン達のページだってあるのに、わざわざ優先してくれたのだから頭が下がる。
「このヒスイのゾロアたちですが、現在他の個体が見つかっていない理由を、ほぼ絶滅したからではないか、と。よって、現在では使用されていない古い地名を取って、『ヒスイのすがたのゾロア』、と。
ではなぜ絶滅したと見ているのか、ですが」
ひとつ、そもそも現在のシンオウ地方にはゾロア種が存在しない事。比較的温暖な地域に生息するゾロア達が、冬季には氷点下まで冷え込む土地の多い寒冷地のシンオウ地方で暮らしていくのは難しいのだろう。そしてそれより更に寒い地方に行くというのも、また考え難い。
ふたつ、では何故かつては存在したのか、だが、ゾロアという種族自体が忌み嫌われ、邪険に扱われ迫害されていたポケモンであり、北へ北へと住処を追い立てられ、そこに行き着いてしまったからではないか。
これは資料からの情報。ゾロア種の扱いは読み上げるのも躊躇う程だし、この白いゾロア達はヒスイ時代でさえも個体数が少ない珍しいポケモンだったとされていた。
ゾロアは決して強いポケモンではない。臆病な性質の個体が多く、正体を隠そうと、とくせい故に相手を騙してしまうのがどうも印象に悪いというのもある。それに加えて、ヒスイの地ではその来歴から余所もの、邪悪なもの扱いされてしまった事が多かったのではないか。
「彼らの生まれた理由は、寒冷な気候と当時のひどい迫害、そして野生ポケモンの凶暴性からくる彼らの受けた被害と、それに対してのとっても強お〜い怨み。いわゆる強い念がポケモンとなった、典型的なゴーストタイプの一例ではありますがあ、そうなってくると『そういうもの』と考えるしかなくなってしまうんですよねえ」
カゲボウズやジュペッタなんかの、ぬいぐるみにこもった念であったり、デスマスやデスカーンのそれであったり、ガラルのサニーゴ達のあれであったり。
つまりは
在り方としてはそれこそガラルのサニーゴやサニゴーンが近いとも言えるか。
「現在、“ゾロア”、“ゾロアーク”に向けられる迫害という点は当時から比べれば遥かに少なくなりました。研究も進み、不名誉な迷信も払拭されてまあす。生息地から追い立てられることも基本的にはないでしょう。これはとってもいいことですねえ。
ヒトやポケモンに強い怨みを抱いたまま死んでしまうゾロアが居なくなったから、そこから転じるとされるものもまた生まれる事はなくなった。ならば新しい個体が増えることはなく……よって、『ヒスイのすがたのゾロア』はもう居ない」
と、ここまで説明して、聞いていたみんながゾロアを含めて一様に首を傾げている事に気付いた。クラベル校長が代表して手を挙げる。
「強い怨みから、ヒスイのすがたのゾロアが生まれたとするならば、彼は一体……?」
彼、と示された椅子の下のゾロア。困った様な目としか見えないその目つきは、とてもヒトやポケモンたちにうらみを抱いているようには見えない。
「ええ、そこですねえ。ええ、ええ……そう、そこなんです。
彼が新しく、この時代に生まれたとは考えにくいんです。ならば、ヒスイの時代からやってきた、とするしかない。この場合ふた通りですがあ、ヒスイ時代から現在まで生きているか、ヒスイ時代から何らかの現象で現在まで時と空間を移動したか、です。
前者であった場合、では何故かつてのヒスイ地方、現在のシンオウ地方から遠く離れたこのパルデア地方にやって来たのか……というよりむしろ突如現れたとしか思えない保護の流れでしたし、何よりこのゾロアには老いたポケモンの特徴が見られない、むしろ幼いポケモンに見られる行動が多いです。
なのでぼくとしては後者の説を推しますが、するとどうやって時と空間を移動したのか、という話になりまあす」
先程まで同族は今現在ほぼ居ないだろうという憶測を聞いて落ち込んでいたのに、『幼い』の言葉を聞いてゾロアが何故かビックリした様子で頭を上げ、アオキさんの座る椅子の座面裏に頭をぶつけて悶絶しているが、考えた事がそのまま行動に出るそういうところが幼い行動に見えてしまう。
「暫定ではありますが、やはり原因はあの大嵐なのでは?というのがぼくらの見解です。というのも、ラベン博士のメモに、あの大嵐と似た現象が見つかりまして。そこからあの大嵐を仮に“時空の歪み”と名付けました。
あの大嵐は、当時同じように発生していた時点でのヒスイ地方と時と空間を越えて繋がってしまうのではないかと思われまあす」
「……確か、シンオウ地方には神とも称される、時を司るポケモンと空間を司るポケモンがいる、と聞きますが……」
「ディアルガ、パルキアですねえ。数年前に事件があり、その力の一端は見られたそうですし、彼らの力によるものである可能性はもちろんありますがあ……、実はシンオウ地方にはまだまだ凄いポケモンが沢山居るんです。こころを司るポケモンたちであったり、海の王子や火山の化身であったり。あとは、嵐をもたらす神なんかも伝承があったそうで、興味は尽きませんが、今回はラベン博士の記録から、こちらのポケモンの力によるものではないかと」
コウキくんから、あちらの図鑑作成協力者の図鑑データを借りて来たものを端末に出す。
『1000本の 腕で 宇宙を 作った ポケモンとして 神話に 描かれている。』
「創世の神、とされるポケモン。……
ゴンと、またもや鈍い音と、きゅぬと鳴く声。やっぱり何か知ってるんだろうか。
――――――――
いい加減頭にこぶが出来てしまいそうであり、また不意に誤魔化しがてら逃げ出しそうなゾロアをオモダカ理事長がひざに抱え、困った顔をさらに困らせている彼はさておき話を進める。
「アルセウスは世界のはじまりであり、世界そのものであり、アルセウスが最初に生まれて、それから世界を作った、とされてまあす。いやー、すごい話ですねえ」
「創世神話、ということですか?」
「そうなりますねえ。本当かどうかは、ぼくらには理解の範疇外でしょうから到底わかりませんが、少なくともこの画像の“アルセウス”は端末らしいですねえ」
白いニット帽を被った少女の横に佇む、神々しいまでに白く輝く巨体。その背後の針を背負った金属質な四つ足のポケモンと滑らかな白い二足の大きなポケモンも含めて、彼女の“おともだち”らしいが、神とされるポケモンを引き連れたこの少女、コウキくんの友人にして現シンオウ最強トレーナーで、シンオウ図鑑の完成は彼女の協力によるものらしい。
才能って言葉だけで片付けて良い話ではない。
「端末?」
「ぼくも詳しくはわからないんですがねえ」
曰く。
『アルセウスがこの世界を観測する目で、耳で、手足なんですって。力の一端も持ち合わせているけど、ポケモンとしてつくったから、全部の力が使えるわけではないらしいですよ。
本体?さあ……あ、でもこの世界の他にもいくつか世界ってあるらしいので、それらを外から見られる様なところにいるんじゃないですかね?』
とのこと。
「ドータクンの降らせる雨の仕組みであったり、アローラ地方のUB事件のような、別の世界ってことかと思いましたが、『
ウルトラホールからやってくる、ポケモンのようでポケモンではなく、けれどポケモンでもあるUBと称されたものたち。その存在から、まったくの別の世界があるのは確かでも、それがいくつあるのか、どこにあるのかは我々にはわからない。そんな規模の話だ。
「その先では時間の進み具合が違う世界もあるのかもしれません。今も尚、ポケモンを恐れるヒトと住処を守ろうとするポケモンとで争っている世界があってもおかしくない。神と呼ばれるポケモン達が何の衒いもなく力を奮っている世界があるかもしれない。何か事件が起きて、強大な力を持つポケモン達が暴走してしまった世界があるかもしれない。
彼はそこからやってきたのかもしれないし、それとも真実この世界の過去からやって来たのかもしれない。結局、それを知る方法は、残念ながら今のぼくらにはありません。狙った場所と時間に、時空を越える方法は現状ありませんからねえ」
言っていてなんだが、あの大穴の底にならあるいは、とも思う。まだ見ぬポケモンの力が予想の通りであるならば、と。
なんて与太話。現地の最前線を走る彼女ですら辿り着いていない真実だ。予想だけで物を考えるものじゃない。
「何はともあれ、現状言えることをまとめると、
『あの大嵐は時空の歪みで、想像もつかない遠くと繋がってしまうものであり、発生した際は速やかに範囲から逃げること』、『神とされるポケモンのすることは、我々の理解を超えているらしいこと』、
……そして残念ですが、『このゾロアをもとのおやもとに返す方法が現状は無い、また同族も恐らく存在していない』ということですかねえ」
三者三様、難しそうな顔で眉を顰めるクラベル校長に、なるほどと頷くオモダカ理事長。そして、無表情で手を小さく上げたアオキさん。
「……シンオウの彼女の“ともだち”の、神の端末だというそのアルセウスに頼む、というのは難しいのでしょうか?」
「それは考えましたが、どうもそういった力は与えられていないようです。ただまあ、実際会わせてみる、というのは一つの案かもしれませんねえ」
端末だというならば、力はなくとも繋がった先の本体に尋ねて見ることはできるかもしれない。一番知りたいのは『何故、彼はこの世界のこの時代の、この地方に飛ばされたのか』である。元の世界が危なかったのか、彼の性格にあわせたものだったのか……はたまた、
と、ここでオモダカ理事長が、顔を俯かせているゾロアの背中を撫でていた手を止めて、挙げる。
「――大嵐……いえ、時空の歪みでしたか。それは今後も起こる可能性はあるのでしょうか」
その質問に、少し考える。きっと、パルデア地方をまとめるこの人にとって一番大事なのはそこなのだ。
「――何とも言えません。この間の誘拐騒ぎの一件ですが、あの時黒い大きなテラスタル結晶が発生していました。テラスタルエネルギーが基準値を大きく超えて集まっていたことはわかっていますが、あのエネルギー量に匹敵するエネルギーがまた集まらないとは言い難いので。
元々、結晶どうくつ内部に存在するポケモンは周囲の生息するポケモンとは全く異なる地域に生息するポケモンであったり、明らかにレベルの違う強さであるポケモンがいる事が多く、それの延長上に時空の歪みのような“何処か遠くとの時空の接続”が発生している説すら浮上している今、その規模が大きくなった結果が大嵐のような時空の歪みとして出ている、とも考えられるのでえ……」
測定結果を星の数で公表しているものの、星4つから上は数は少ないが間違いなくほぼ毎日発生しているし、内部のポケモンはジムリーダークラスでようやく戦いになるか?程度の力を持っている。そんなものが、力の弱いポケモンの多く生息するパルデアの南エリアやテーブルシティ周辺にも現れるのでは、規則性も何もあったもんじゃない。
「そうですか……やはり、個々人の警戒を呼びかけていく他ありませんね」
「なるべく早く、結晶の観測を毎時更新できるよう勤めまあす」
その為には機器での観測以上に目視での報告も重要になる。オモダカ理事長ならばわかってくれるだろう。クラベル校長とシステム周りと学生への周知についての話を始め、ぼくのほうも何となく、現状がまとまってきた。
このゾロアが、恐らく、と前置きはあれどどういった存在なのかは見当はついた。
あとは大きな懸念が一つ。
ゾロアをオモダカ理事長から預かったアオキさんが、顔を見上げてくるゾロアに向けて無表情を向けたままぽそと呟いた声が聞こえてしまった。
「……私が、あなたをあの場で回収したのがまずかったのでしょうね」
きゅ、と小さく鳴いたゾロアのその頭をもさもさ撫ぜて顔を隠して、何度聞いたかわからないため息がひとつ。
そうではないと言い切る材料は、残念ながら未だにぼくの手元には無い。
おじさんってばとくせい:マイペースだから曇ってるように見せかけて全然そんなことは無いだろうなと思うますね
閲覧ありがとうございました