先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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オモダカさんのリボンタイかわいい




人は好きでポケモンも好き

 

 

 おれが病院で目が覚めてからかれこれ三日目。

 アオキさんはあれから毎日様子を見にきてくれる。

 くたびれ顔の覇気のない姿だけど、存外フットワークが軽いのか、ようけこの病院に寄ってくれている。……営業のついで、らしいけど。無表情だからどんな感情なのかわかりにくいのなんの。

 昼に来るのはジニア先生。「元気ですかあ?いい子にしてましたかあ?」と、ごはんのタイミングでやって来ては、おれの頭を撫でていく。ぽかぽかの手が気持ちええんじゃ。

 

 そんで本日はアオキさんに連れられて、カツカツと、革靴鳴らして現れたモンジャラ……スーツの着こなしと毛量のすんごい人。

 

「こんにちは、ゾロア。私はオモダカ。このパルデアのポケモンリーグ委員長を勤めています」

 

 にこ…とオモダカさんが目を細めるが、近寄りがたいオーラがすごい。リーグ委員長……偉い人だな? これが……権力か……。

 やっぱアオキさんの親近感とジニア先生の懐っこさがよかですたい。

 この人もかわいいこのゾロアを見てもかわいいって思わないタイプっぽいじゃん?ゾロアちゃんを愛でろよな。スレンダーだけど、オモダカさん声的に女性だろ?

 ……かわいさならジニア先生のが勝ってない?かわりにかっこよさはオモダカさんのがあるね。アオキさん?…………親近感があるよ、うん。

 

「はわあ! ちいちゃくって、かわいいポケモンさんなのです! おじちゃんのお写真で見た時より元気になってるみたいで、よかったですねぇ。

 ポピーはポピーです!こんにちはゾロアちゃん」

 

 んで、幼女。素直にかわいさが認められて嬉しい限りである。

 

 律儀に二人ともおれに自己紹介してくれてるが、これはジニア先生の案。

 

『この子はきちんと人の話を聞ける子ですねえ。ポケモンへの興味より、人の違いを気にしてる様子がありましたあ。「自分はこういう人ですよお」って、教えてあげると安心するんじゃないかなあ』

 

 とのこと。まあね、確かにラッキーより人の顔のが見分けがつく。匂いを嗅がせてもらうと、ちゃんと個々で違うもんだが、それでも病院のラッキーはみんな似てるんだよ。あと個体の名前ないのって、やっぱりちょっと不便だ。呼びかける時とかな。

 

「あなたの様子を聞いて、みなさん興味がある、とのことでした」

「でも、ほんとのほんとにかわいいですよ!白くって、ふわふわで!」

「ええ、白とグレーの毛並みが美しいですね。……本当に珍しい」

 

 いやオモダカさんの目つきが怖えのよ。

 

 だいぶ動けるくらいには傷はマシになった。まだくっついてはいないんだけど、頭とかはぶちめくらいなもんになってね。包帯も取れたのだ。

 だいぶドロドロに汚れてたおれを、ちょっとでも清潔に、といくらかは温タオルで拭き取られても、ゴワゴワとこびりついてた汚れまでは取れてなかった。それが昨日、ついに洗ってもらえることになったのである。

 傷口を防水テープで止めたあと、全身こざっぱりと洗われたのだが、すると周りの人らがみんなしてざわざわして、ジニア先生が大慌てで駆けつけパシャリ。

 

『ああ、やっぱりでしたかあ。すこおしだけ見えてる毛の色が白かったので、そうじゃないかなあって、研究仲間のみんなと話してたんですよお。わあー、ホントに白いんですねえ』

 

 らしい。色違いゾロアがそんなに珍しいのだろうか。いやそりゃ珍しいか。おれは見たことないもんな。

 台に乗ったポピーちゃんの大きな目に覗き込まれ、しげしげと眺められている。ここ数日でちゃんと起き上がれるまで回復したので、上体を起こす。鼻先を近付けてみせると、きゃー なんて、高い歓声をあげてポピーちゃんもぺっとりとでこをガラスに押し付けて来た。

 なんだぁ?かわいいじゃねえか……

 ポピーちゃんの無邪気な様子のうしろで、アオキさんとオモダカさんが何やら喋っている。心なしかアオキさんの肩がいつもより下がっているが、あんまり良い雰囲気ではなさげ。

 

 ふーん、なるほどね? ここでティンときちゃったねぇ。おれってば悪いキツネだから、こういう昼ドラの気配を勘繰ってしまうのだ。

 片や、くたびれたうだつのあがらない、あんまり営業成績よろしくなさそうな、不器用かつ人に愛想ふりまけない系サラリーマン。

 片や、バリバリのキャリアウーマン臭のする出来る女。withめちゃんこ可愛い幼女……がなんらかの繋がりを持っている。

 なお男性と女性の仲は良くないものであり、この名前のある人物は髪型が独特なポケモン世界で三人とも髪色が黒、とする場合、導き出される答えは一つ――

 

 ――オモダカさんはアオキさんの、元嫁……ってことだな……!

 そしてポピーちゃんは親権取られた愛娘……!

 これがアンサー!

 

 だとすると、このポピーちゃんにかわいいおれを見せてやろうと呼び出して、ポケモンで釣るとか恥を知れとオモダカさんに怒られてるんかな?

 やだ、アオキさんかわいそう……

 てかパパじゃなくて、おじちゃん呼びなの?知り合いのオッサン扱いなの?

 やだ、アオキさんかわいそう……

 

「アオキ。この子の治療の目処は?」

「あと一週間ほどで退院は出来るかと。ただ、野生に戻すには経過を見てから、というのが医師とジニア先生の見解です」

「でしたら!ぜひぜひ、ポピーがお預かりしたいです!」

「それは……今後、検査や確認の為、たくさん動いてもらう事になるこの子のお世話は大変でしょうから、あなたが四天王をやりながらこの子の面倒を見るのは難しいでしょう」

「むむ〜……ポピー、ちゃんとお世話出来ますのに……では、おじちゃんにお任せするんですの?」

「…………」

「個人での移動だけならアオキが一番速いですし、どうやらゾロアも彼に懐いているらしいですからね。

 何より、拾ったのは彼です」

「…………ええ、責任もって面倒見させていただきますよ」

 

 めっちゃ不本意極まりないって返事と顔(無表情)じゃんアオキさん……。

 てかポピーちゃん、今何て?キミ、四天王?

 それってリーグのある地方において上位五人の中に入ってるってコト?めっちゃ強いってコト?

 こんなにかわいくて、強いのか……

 

 野生生活は嫌だし、もしパパさんやきょうだいの元に戻れないってなったら、放流されるくらいなら捕まえられたい。そして一緒に暮らすとなれば、おれはポピーちゃんみたいなかわいい子と一緒に育っていきたい。あわよくばその成長を見守りつつ、悠々自適にぐうたらして生きていきたい。

 でも今の会話、なーんかこのくたびれたおじちゃんに連れていかれそうなんですけど……

 嫌いじゃないけど……もっと若くてかわいい人が好きっすねぇ……

 だってホラ、おれは悪くてかわいくて、ちょっと珍しいキツネだからね? かわいいものを抱っこすべきは、かわいいであるべきって考えなんだわ。

 それに、できれば苦労と痛い目にあいたくないおれなので、バトルとかは別のポケモンを使ってくれるとうれしい。既に四天王って言われてるポピーちゃんは、手持ちが完成されてるんだろう。

 優良物件じゃん! おれポピーちゃんちの子になりてぇ!

 

「あらあらあら? ゾロアちゃん、頭かゆかゆですか?」

「…………ポピーさんに撫でてほしいのでは?」

「まぁまぁ! でも、ポピー、おててがゾロアちゃんに届きませんの……」

「……失礼します」

 

 ガラスに頭を押し付けて、おれはポピーちゃんがお気に入りですよアッピルを試みる。気を利かせたのか(オモダカさんに視線を送られたからか)アオキさんがおれの傷にさわらないよう、優しくそっと抱き上げ、ポピーちゃんの前に下ろしてくれた。すぐさま、わざわざ手袋を外し、小さな、熱いくらい温かい手がおれの頭をもさもさと撫でてくる。

 うーん…? 思ったより手つきが豪快!

 

「はわわぁ……!ふわっふわですの!」

「ポピー、ゾロアは頭を打ってもいますから、もう少し優しく撫でてあげるといいかもしれませんね」

「あら、そうでしたわ!ポピーのポケモンちゃんたちとおんなじではないのですよね……どうですか?これくらい?」

 

 オモダカさんに言われて、ポピーちゃんの手つきが触ってるか触ってないかわからないくらい、そっ と、したものになる。うむむ、もうちょい強くても良いんだが。

 顔を上げると、こちらを見ていたアオキさんと目が合った。

 

「ゾロア、満足しましたか?」

「……」

 

 ふむ。

 ……うむ、ポピーちゃんとの交流はこんなもんで大丈夫だろう。怪我がもう少し治った頃にまた来てくれた時、もっとアピールしていけばいいか。

 ……そうか、幼女に怪我を考慮した上で「撫でてー!」って行ったら、遠慮しちゃうよな。確かに。

 

「……失礼します」

「またポピーとあそびましょうね」

 

 アオキさんに抱えられ、まんまる足先をポピーちゃんににぎにぎ握手されて、また保育器みたいな……治療器らしい……に戻された。やっぱポピーちゃん、ちょっと力加減が……なんか幼女にしては…………強くない?

 

「……おつかれさまです」

 

 ふわ、と。大きな手が背中を撫でていった。ふむ。悪くない。

 ………………おお?今の手、アオキさん?

 

「では、今日は帰ります。また後日会いましょう」

「ゾロアちゃん、またお会いしましょう!ですの!」

「……失礼します」

 

 元気にぴょこぴょこと飛びながら手を振るポピーちゃん以下三人が退室。結局、オモダカさんは一度もおれに触れなかったな。そもそも近寄ることもしなかった。

 あの人、おれみたいなかわいいキツネちゃんが苦手なのか?それとも、仕事熱心?

 

 ……しかし………………デカい手で撫でられるの、悪くなかったな……

 

――――――――――

 

 さてその日の昼。

 固形物食べてみる?と出された、オレンのみの小さくカットされたやつ。おみかん的な見た目で判断してたが、存外硬めのそれをかりぽりとしていたら、からりと開く病室の扉。

 おお、ジニア先生。と、おまけが二人。

 

「こんにちはあ。今日は、おともだちを連れてきましたがあ……大丈夫ですかねえ?」

「……」

 

 ジニア先生が、にっこり笑いかけながら、ゆっくりと指を伸ばして鼻先にくれる。うむ、ジニア先生だ。よかろうもん。

 

「ホンマに白いんやなぁ。灰色んトコも、結構白っぽく見えとるし……おお、自己紹介しとくんがええんやったか。

まいど! チリちゃんやで〜」

 

 夜の森の木ノ葉みたいな緑の髪がひょんと尾っぽみたいに伸びている。おれでもわかる、タレ目つり眉の笑って可愛いイケメン。ジョウトの方の方言で、黒手袋と三角アクセサリーがアクセント。

 は?イケメンで陽の者とか……そんなんもう、好きじゃん。

 ジニア先生に倣ってか、ついと差し出された手を嗅がせてもらうが、ほのかに雨の日の森の匂い。ええやん。

 

「お、チリちゃんに興味あるん? こら確かに人懐っこいやっちゃな」

「……」

 

 快活そうな見た目に反して、頭を押し当てた手は細く、薄く、そしてちょうどいい具合に撫でてくれる。少しだけ冷たい手。心があったかいってことですか?!

 細い指に耳裏顎下こしょこしょくすぐられるとこそばいのだが、悪くないぞ!

 

「なんや、ポピーが言うとった通り、ホンマにかわいいえー子やないの。なるほどなぁ」

「確かに、不思議な程人慣れしているようですね」

 

 チリちゃんの手が離れる。おっと、もう一人いたのだったか。………………でっ

 

「小生はハッサク。アカデミーでは美術を担当する教職についているのですよ」

 

 でっ、けえ……、今まで見た人の中で一番デカいな。でも教師です!って感じはある。

 ジニア先生と、ハッサク先生と一緒に来た、ビジネスカジュアルな気のいいチリちゃん。

 なるほど、先生だな? 

 

 ……子供の初恋奪っちゃう系先生じゃん!

 

 ひらめいた!

 

 チリちゃん先生に、地理教わっちゃう……って?

 

「なんやろ。今猛烈に何か言わなアカン気ぃした」

「……」

 

 ね。サムくなっちゃったね。ごめんなさい。

 ハッサク先生は自分の大きさを判ってる様で、おれを怖がらせない様にか、わざわざしゃがんで、手袋を外し、挨拶してくれた。ツンとくる嗅ぎ慣れない匂い。たぶん、美術で使う画材の何かかな?

 

「……男性でも怖がる様子はないですねえ」

「せやな。ポケモンはあんまし見せてへんのやったっけ」

「ええ。とりあえず許可はもらってるのでえ、ウパーからお願いしてもいいですかあ?」

「ヨシ来た。任せたりぃ」

 

 ジニア先生とチリちゃん先生、何の話?ハッサク先生が、大きな手で頭をぽんぽんと。強くもなく、弱いくらい。ポケモンの触り方慣れてる人達だな。流石に先生ともなると、ポケモンと接する機会も多いんだろう。

 お? ハッサク先生の大きな手で掬い上げる様に持ち上げられ、ジニア先生の胸に預けられた。

 両脇に片手を入れて、上半身を。同時にもう片方の手でお尻をしっかり支えられ、紫のシャツにぺっそりと抱えられる。ド安定する。

 

「いいですかあ?今から、チリさんとハッサク先生におともだちを呼んでもらいまあす。ちゃあんとおふたりがおさえてくれますし、もしもの時もぼくが守りますからあ……怖かったら、言ってくださいねえ」

 

 えへらと笑ってそんなん言われたら、もう、ねぇ?

 あれかな。いろんな人とのお話は試したから、今度はポケモンとはどうかな?と試したいって事なんだろう。野生に返すにしても、しばらく人と過ごすにしても、ポケモンと出会わないのは難しいもんな。

 よっしゃどんと来い!

 

「ほな行くでぇ〜。ウパー」

「ウパッ」

 

 一番手はチリちゃんのウパー。でもおれの知ってるウパーと違う。なんか茶色だ。

 ジニア先生がしゃがみ、茶色のウパーのそばににじり寄っていく。

 

「ウパ」

 

 おう、こんにちは、だ。あんころもちみたいだなきみ。

「ウパパ」

 そう言うきみはろうそく立てたケーキみたいだって?さては食べたコトあるな?

「ウーパー」

 甘かったか、そうかそうか。可愛がられてるみたいでなにより。

 

「どうですか? ……大丈夫そうですね」

「ほな、ドオーも大丈夫やな」

「えー?あわわ」

 

 ウパーの横にボールが投げられ、ジニア先生がサンダル鳴らして後退り。

 現れたのは、ヌオーのような顔をしたアザラシみたいな茶色の丸いの。大きいが、威圧感はない。とんがってるパーツが無いし、気の抜ける顔だからかな?

 

「ドオぉん」

 間延びした鳴き声。はいこんにちは。ドオーってのな。

「ンドオ」「ウパパ」

 へえ、いや、おれもドオーさんは見かけないや。パルデアはおれの知らない場所だと思うんだよねえ。

「ドオ」

 パパとはぐれちゃったのかって?そうそう。あときょうだいともはぐれてさぁ。

 

「大丈夫そうですね。では、次は私から。キバゴ、お願いします」

 

「キッバ!」

 

 ハッサク先生のボールから、大きな牙のポケモン。床に着地。よちよち歩いてドオーたちの横に並び、大きな目でキュルンと見てくる。

 爪や牙、怖くないか、って?大丈夫大丈夫。

「キャッブ」

 もっと大きくても大丈夫かって、大丈夫だけども、部屋狭くない?

 

「では……この子はどうですかね」

「あ」

 

 陽の光が遮られた。ジニア先生が窓を向き、胸に抱かれたおれも必然そっちを向く。窓を背に立つハッサク先生の背後。窓の外に、大きな翼のポケモン。

 

「こちらは、オンバーンです」

 

 羽ばたく翼はとても大きく、力強い。コウモリみたいなポケモンだ。

「ギィ……」

 あ、これはこれはご丁寧に……大きい声は攻撃になっちゃうんだ?ちょうおんぱとか出せそうだもん。

 

 小さくてかわいいのから、大きくて爪のあるものまで。色々なポケモンを見せられたが、みんな丁寧なやつらでおれを心配するようなことを言ってくれるので、怖いとかは無かった。チリちゃん先生とハッサク先生が、それぞれのポケモンをボールに戻す。

 おれもジニア先生の胸から降ろされた。

 

「よくがんばりましたねえ。おともだち、怖くなかったですかあ?」

「……」

 全然大丈夫、の意を込めて頷いて見せると、ジニア先生はにこにこで撫でてくれた。

 

「ふむふむ。数にも大きさにも、ぜんぜん怖がりませんねえ。人の言うことを聞いているポケモンのことを判ってるようです」

「人間のことを……我々の事を信頼してくれているのですかね?」

「そら、いよいよ野生とは思われへんなぁ。……誰かが逃したポケモンなんやない?」

「ああ!それは、案外あり得るかもしれませんねえ」

「色違いを逃がすって、あんま考えられへんけど」

 

 人が三人、首を捻っている。

 なんかおれのせいで人に色々考えてもらっちゃってるみたいで悪い気がするなぁ。

 

 ……………………そういやおれ、悪いキツネだったわ!

 

 






アオキさんのよくわからないけど一応セットしてあるらしい髪かわいいっす
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