先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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見てくれてる方多くてびっくらしました
ありがとうございます

口調わからないよセイジ先生……ベリベリしとけば良き?



聞くのは好きで訊くのは苦手

 

 

 バトルコートからの帰り道。それは突然だった。

 すぽんと腕から飛び出したゾロアが、飛んでいるスマホロトムに飛びかかり、きゅぬあんきゅあんぬと激しく吠えたてる。初めてスマホを見た時も、先ほどまでも落ち着いて、いつもと変わらない様子だったのに、本当に突然に。

 

「ゾロア!ロトム!……ウインディ、ゾロアを押さえて下さい」

 

 ウインディに、ゾロアの豊富な首根っこの毛を咥えて引き離して貰う。スマホロトムは……大丈夫。画面も、ケースも割れてない。

 

「ゾロア、どうしたんですかあ?」

 

 ぷらんと、ウインディに吊り下げられ、されるがままに固まっている、困ったような顔のゾロア。よくない事をして止められた事はわかっている様子で、フラフラと不安定に飛び上がったスマホロトムを見て、更に申し訳なさそうに足も尾も畳んで縮こまっている。

 そもそも、あまり鳴かない子のようだったのに今日は随分とよく鳴いていた。何か伝えようとしてくれていたのだろうか。

 

「ゾロア。落ち着いたならば、一度戻りましょう。大丈夫ですかあ?」

「…………」

 

 ああ、また鳴かなくなってしまった。

 靴下を履いたような毛色の前足を手のひらに乗せ、暴れる様子が無いのを確認してから、そっと付け根に手を滑らせる。ウインディが口を離すと、大人しく抱き上げられたまま。

 顔の高さまで持ち上げ、覗き込むように俯いた顔を見る。実に表情豊かなゾロアは、それはもう酷くばつの悪そうな顔で落ち込んでいた。

 

「……スマホロトムに何かあったんでしょうか……」

「……」

 

 これにもだんまり。撫でてみると、耳の先がぴるぴると震える。ウインディも首を傾げ、ロトムはウインディを挟んで様子を見ている。ぼくのポケットに戻ろうにも、ゾロアを抱き上げているため戻れないのだろう。

 足早に病院までの道を急ぐ。歩きながら、考える。

 カメラの音には驚いていたけれど、ロトムには驚いていなかった。そういうポケモンだと理解したんだろう。

 驚いたのも最初だけで、気に留める様子もなかった。

 何がこの子を怒らせて……違うな。

 

「……怒っては、いないんですかあ?」

「……」

 

 無言でも、いつも以上に下がった眉と丸めた尾が語る。むしろ、ぼくが怒っているかどうかを窺っている様子。考えているうちに顔が少し強張っていたか。

 

「大丈夫。だいじょうぶですよお。ロトムにケガはありませんからね」

「……」

 

 笑顔で撫でる。「ホントにぃ?」って言ってそうな、上目遣い。本当に表情豊かな子だ。

 やっぱりロトムが気になるらしい。飛びかかる前、何があっただろう。

 撮影した記録をどこに送るか、という話をしていたのだったか。この子は自分について調査されているのは知っているようだったから、内容は関係ない…………となると?

 

「スマホロトムとぼくが、話をしてたこと、そのもの?」

「!」

 

 耳と、尾と、ついでに襟巻きのような毛までピンと延びた。ビンゴらしい。

 

 自分にこの子が懐いてくれているのは知っている。慣れないところに突然連れてこられた彼が、少しでも安心できる場所を増やすため、見知った顔を増やすため……なるべく顔を見せていたから。人の手は怖いものじゃないし、食べているときに邪魔をする人は居ないと。

 とはいえ最初から、あまり警戒はしてなかったようではあったけど。

 他のポケモンを気にかけるのを、嫉妬する子でも無いだろう。手持ち以外に声をかけても、手持ちを構っても、少し寂しそうにしているだけだった。

 

 それが、スマホロトムと自分が話をしていたところに飛びかかり、人ではなくポケモンの方に、吠えていた。

 ……吠えていた?

 つい先程、わざを見せてもらった時の様子を思い出す。ひと声鳴くのではなくって、小さく、続けた、音の抑揚があった鳴き声。それと同じ鳴き方。いちゃもんをつけるかのような。

 

「……きみは、ぼくと……いえ。ニンゲンとお話したいんですかあ?」

「……きゅぬ」

 

 ゾロアはちゃんと、コクリと小さく頷いた。

 

 ははあ。

 ちょっとだけわかったかもしれない。

 この子は賢くて、ちゃんと周りで何を言っているか、言われているか、言葉をわかっている。頷いたり、首を振ったり、嫌そうにしていたりと、表情豊かに反応してくれる。

 けれど、それで充分。鳴いて返事しても無駄だと思ってしまっている……のかな?

 鳴けないわけじゃないのに。

 

 それは……ちょっと解決の難しい話だ。

 

――――――――――――――

 

「と、いうことがありまして。ポケモンとお話する方法を絶賛募集中です」

 

「………………それはまた、困った話ですね」

 

 クラベル校長が視線を彷徨わせ、眼鏡をかけ直した。校長室……の研究設備を、少し拝借している間、作業ついでに近況報告。

 

「ゾロアが、ちょっと落ち込んじゃってるんですよお。外に行けると知ったら、あんなにはしゃいでいたのに……

 彼はどうやら、人だけでなく他のポケモンの言いたいこともだいたいは理解できるみたいです。でも、彼の言うことは、どうもポケモンには通じてないみたいですねえ。もちろんぼくら人もわかりません。

 そんなの、寂しいじゃあないですか」

「他のポケモンの……ポケモンとポケモンで、意思疎通が出来ない? ……それは」

「鳴き声の調子と、恐らくは……表情とか、仕草でしょうか。とにかく、周りの感情を察する事にはとても優れているのでしょうねえ。でも、言葉で伝えるのは苦手みたいです」

 

 それはあの種のゾロアとしての能力なのか、それともあの個体特有の個性なのか。

 もしもそれがとくせいだとしたら、彼はイリュージョンではなくシンクロやトレースのような、エスパータイプの持つようなとくせいなのかもしれない。

 だとしたら、エスパータイプもありえる?

 関心は尽きない。ディグダとウミディグダが全く違う種だと判明した時にも似た、高揚感。好奇心。

 既知のポケモンとよく似た、その実未知のポケモン。エリアゼロについての資料に似たようなものが居たような?

 研究しがいがある…………けども。

 頭に浮かぶよくない考えを振り払う。資料があるかもしれないなら、その解析を待つべきだ。

 

「それでしたら、我が校に適任がいるではありませんか」

「適任、ですかあ?」

 

 クラベル校長が、授業の予定表を示す。数学、家庭科、美術、……ああなるほど。確かに。

 

 授業終わりに生物室前を通りがかったセイジ先生を引き止め、協力を頼むと、彼は弾ける笑顔で快く引き受けてくれた。

 

「巷で噂のゾロアさん!ワシもベリベリ気になってたので、ここはこのセイジ、一肌脱衣して参ります!大船ライドの気持ちで、任せろちょーだい! 」

「助かります〜」

「早速の相談なのだけど、ものはためしにキッズ用のグッズ使てもモウマンタイ? やってみたいコミュニケーションがあるのです」

「わあ!良いかもしれないですねえ。使っていない貸出のものがあったと思うのでえ、お借りしてみましょおか」

 

 幼児クラス用の知育玩具などもあったはずだ。知能の高いポケモンにも使えるそれらは、ぼくもよく借りていた。

 いっそ文字の表でも持っていこうか。きっと、体ももう動かせるのに閉じ込められているから塞ぎ込みがちになってしまっているに違いない。体の代わりに頭を動かすのは、賢いあの子は好きだろうか。

 

 幼児クラスの備品で、何か使えるものは無いかと用具室を探していると、一緒に探してくれていたセイジ先生の視線に気付いた。

 

「どうしましたかあ?」

「ジニア先生、オヌシ……実に楽しそうな顔してた? 今にも自分で玩具で遊びだしそうな!」

「ええ? ……そうですねえ、興味は尽きませんねえ」

 

 ポケモンとポケモンで、違う種族でも鳴き声は違うのに話をしている様子は、至って普通の光景だ。手持ちのポケモンとピクニックでもしていれば、自然と見られるありふれたもの。

 人間と同じように言葉があるのか、ニュアンスだけで会話しているのか、種族での知能の差は、個体でのかしこさの差は。

 他の地方や他の土地から来たポケモンは、言語が違うのか、言葉が、文化が違うのか。

 あの子が、そもそも普通のポケモンと違うのか。

 

「……図鑑アプリに鳴き声録音機能もつけてみようかなあ」

「なにそれベリベリグッドな予感!」

 

 セイジ先生曰く、動きも欲しいよ!とのこと。色んな人に色んなポケモンの鳴き声や動きを撮って貰えば、比較は出来るかな。でも、資料は既に探せばある?

 パルデアのポケモンの資料は少ない。うん、追加も…………図鑑に検索機能をせっつかれてるの忘れていた。個人ごとの図鑑進行度に合わせて検索かけるの、中々どうして難しいんだけども。

 

――――――――――――――

 

 一通りの用具は用意出来た。貸出帳にも記録した。ではいざ、ゾロアの元へ。

 と、扉を開け、

 

 

「時は来た!」

 

 

 扉を閉めた。何故ここに……

 

 

 しかし無常にもスパンと扉が開き、メガネと瞳をギラつかせたレホール先生が乗り込んでくる。

 

「まぁ待て。そう警戒することは無いさ、ジニア先生」

「いやあ、突然いらっしゃったので、驚いてしまいましたあ。……どうしたんですかあ?レホール先生。なんでここがわかったんですかあ?」

「ハッハッハ……それは愚問だろう。セイジ先生を連れて、教師二人がこの付近を歩くのは中々目に付く、という事だ。

 これから例の絶滅したとされたポケモンの調査……いや、見舞い、だろう?

 ワタシもかの地からの使者の見舞いに行ってみたくてね。声をかけさせて貰ったのだ」

「それは見舞いの顔ではないな、レホール先生……」

 

 セイジ先生でなくてもわかる。何かしら企んでいそうな隠しきれないギラつき……

 あのゾロアは人の表情や言葉でなんとなく人となりを察するのに。いくら人慣れしたあの子でも、この彼女を連れて行っては、流石に怯えてしまわないだろうか。

 

「む?……大義名分が必要か。ならば、良い売り文句がある。

 ワタシはゾロアークを連れている。

 更に、そのゾロアークをゾロアから育て上げたのはこのワタシだ。築いた経験から来る視点での比較は、ジニア先生も興味はあるだろう?……何より、毛色は違えど同族。鳴き声がそう大きくは変わるまい。ゾロアークとの出会いは、そのゾロアの新たな反応を見せるのでは?」

「……なるほどお」

 

 一理ある……あってしまう。彼女のゾロアークは、しっかりと育てられているし彼女の言うこともちゃんと聞く。提案自体は悪くないどころか、こちらから頼みたい、的確な点を突いていた。

 ただ、ひとつふたつ疑問と問題が。

 

 ゾロアと同じゾロア、ゾロアークを会わせてみたいとは常々考えていたものの、些か躊躇って踏み出せないでいた。

 あのゾロアがいくら人にもポケモンにも慣れ、今となってはコロコロとベッドで暇を持て余しているほど場所にも慣れているけれど、他の土地から本人の予期せぬ出来事によって知らない場所に連れてこられ、知らない人間に囲まれている状態なのは事実。

 そして、元の住処や元の仲間を思い出させるような同種との出会いは、あの子に何を思わせるのか。

 何より、最近の彼は元気いっぱいだったが、つい先日からの塞ぎ込み様。上手くいけば、元気になるかもしれない。けれど、上手くいかなかったら。

 

「吉と出るか、凶と出るか。毒か薬か……おみくじ、託宣、フォーチュンクッキー?」

「ですねえ。上手くいくなら、それに越したことはありませんがあ……」

「ふむ……イリュージョンで他のポケモンに化けて会わせて、そのゾロアの鳴き声をゾロアークが理解出来たかの確認では? ピカチュウに成り切るなど容易だろう、ゾロアーク」

「くぁん」

「部屋の中ではポケモンを出さないでくださいねえ」

 

 セイジ先生のアシスタントのピカチュウのことだろう。姿がわからない状態ならば大丈夫?

 

「それはそうと、レホール先生。どこから話聞いてましたあ?」

「フ……人払いはしておいたさ。学生の目はどこにでもある、という事だ」

「それは、ありがとうございますねえ。……ちゃんと訊いて貰えば、わかっていることは答えますから、盗み聞きしないでくださいねえ」

「ああ、善処しよう。だが許せよジニア先生。聞こえてしまったものは、仕方あるまい」

「まあ……聞いてしまったのが先生なら、まだ……いいですが」

 

 盗み聞きしていたのがレホール先生で良かった、とも言える。彼女が居て人払いしてくれていなければ、学生に話を聞かれ、ゾロアの件が広まってしまっていたかもしれない。そこは感謝できるのだけど。

 

「時間は有限だ。決断は早い方が良いだろうな」

 

 授業の空き時間。それほど長い時間ではない。協力してくれる彼らと、時間が合うなら早いうちに済ませた方がいい。

 

「……とりあえず、行きましょうか」

 

――――

 

「そうだ、ジニア先生。セイジ先生も……恐らくだが皆、勘違いをしているだろうから訂正しておきたい」

 

 長い階段を降りながら、先行していたレホール先生が振り向いた。

 

「別にワタシは、そのゾロアに然程、興味は無い」

「嘘だあ」「ダウトゲーム始まってた?」

「まぁ聞け。

 ……そもそも、ワタシは歴史をこよなく愛しているが、特に知りたいのはこの地……パルデアの歴史だ。先人たちの築き上げたこの街も、未だ謎多き大穴も……語られるべきロマンはごまんと遺っている。

 そのパルデアの歴史に、白いゾロアなど存在しない。よって、ワタシが興味を抱いた理由はそこには無いのだ。ここまではいいな?」

「ええまあ……」

 

 階段は長い。進む間聞く分には、踏み外さないで貰えればそれでいいのだけど。

 

「ワタシの興味はそのゾロアが記録に現れた、シンオウの……古い!死蔵された!資料にある!!」

「ああ……」「そっちか……」

 

 突然の大声に、すれ違った宅配のおじさんが驚いて振り返った。ズンズン進む彼女の代わりに、頭を下げる。荷物を落とさなくて良かった。

 

「そもそも……死蔵だと!!!永き歴史の証拠を……ッ!

 …………ッ……いや。ここで怒りをぶり返していても進まんな。

 ジニア先生。あの映像の公開と同時期に、同じ場所で見つかったシンオウの伝承のメモもあっただろう。そちらだ」

 

 そう。死蔵された資料は、雑多に積まれた山の中から偶然見つかったもの。同じ時期の未発見の物がある可能性があるからと、現在調査されているが、元々見つかったのはあの映像だけではない。

 

「かの地、シンオウの伝承。そこには太陽を求めた民の記述があったという。この太陽が、神か、ポケモンか、はたまた人か……資料が少なく、謎に満ちているが、少なくとも、在ったのだろう。在ったと、歴史は語った。

 では太陽の恩恵とは。それを崇め、追った人々とは?追ったとある以上、追う前に居た場所があったはずだ。かつて太陽と称される何かがあり、それは失われた場所が。

 その資料は未だ暗き場に眠るのか……

 それが見つからない限りは、その地がパルデアでない可能性が否定されない!そして、それがこの地だったとしたら!それは他の地方から見たパルデア地方の歴史に他ならない!!」

「ああ、そういう……」

「ロマンをイマジネーションしてたのね……」

 

 丁度階段が降り終わって、広場の中央に差し掛かる。不意に立ち止まったレホール先生が、上、下、そしてぐるりと、ぐるりと……ぐるぐると回り出す。ああもう……

 

「セイジ先生!!」

「ホワッツ?!」

「太陽じゃないか?!」

「えぇーと……何が?」

 

「この広場……太陽では?!」

 

 屋台のお客さんの視線を浴びながら、暴れるレホール先生を回収。いつもはもう少し冷静な人なのに……

 

 

 





レホール先生は隠さないけどジニア先生を隠す人だと思っているフシがあるのでジニア先生の好感度イベントとゾロアくんちゃんの実装が待たれております
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