先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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なんか日間ランキングの一位にゾロアニキ…おったな…
まいどまいど、閲覧や誤字報告やら感想やら閲覧やら、お世話になりましてありがとうございます…

甘い頑張れ!




辛いのは嫌いで酸っぱいのは苦手

 

 

 

っぱ辛ぇわ……

 

 ごろごろり、ベッドに転がる。

 今日のお昼はついにまともな食事だった。

 いよいよおれの退院も近いということか。

 現状、引き取り手決まってないけど、このまま野に放されるとかないよね? 今のままひとり立ちしたらビッパにも負ける自信あるぞ。

 おれ、バトルとか無理だもん。自分の使えるわざ知らないもん。たいあたりで謎のエフェクト出ないもん。見てて後ろではげましてくれるジニア先生とかポピーちゃんとかいないと無理だもん。もう悶々よ!

 

 あれ以降ポピーちゃんぜんっぜん来ねえけど、おれは諦めねぇからよ…!

 

 まともな昼ごはんは、体格に合わせたのか、一口サイズの小さな串刺しのサラダ的なサンドイッチ的な何かだった。なんか横文字でシャレオツな大層な料理名言ってたが、おれの耳には要約された小さいサンドイッチとしか残っちゃいないので、これは小さいサンドイッチなのである。横文字なんざ知らんのだ。かっちょいいけどね。

 で、そん中のBLTサンドみたいなカラーリングのやつが美味そうだったわけですよ。

 トマトだ!とよろこんで齧ったわけですよ。

 

 マトマのみでしたとか、なんの詐欺だよ……

 今なら火炎放射も出来ると思ったね。辛いのは嫌い。甘いのを所望。刺激なんていらんのですよ。

 

 悪いキツネなのに騙されたなんて、きょうだいに顔見せできねぇわ。

 

 辛い辛いと気持ちはじたばた、体力減ってもいないので勢いだけのちたぱた。やや疲れてきたのでねんごろり。おくちのおやすみしていたら、お昼の顔なじみ、ジニア先生の声が扉の向こうから聞こえてきた。

 今日は彼の顔を見る前に心の準備が必要だ。

 

 先日、ジニア先生のスマホロトムをついつい勢い余ってはたきおとしてしまい、割れはないけどキズをつけてしまった件。大変に申し訳なく思っている。

 ロトムのやつめ、めっちゃ流暢に人間語喋るから、おれの言葉を翻訳してジニア先生に伝えて欲しいってまくしたててたら、ロトロト言いながら目を白黒させるばかりで…………

 そこで思い出したが、スマホ落とすと性能一気に落ちるよね。通信速度とか。

 ありゃあたぶん中身やっちゃったんだわ。精密機械がよぉ。白黒画面と鈍器を見習え。

 あのときはジニア先生、いいよ〜って笑って許してくれたけど、はたきおとしたときの顔はマジだったからな。その後も真剣な顔してたし。

 もうめっっっちゃ反省してる。反省した。反省してた。がんばって受付の花瓶のお花くすねてきた。かわいいゾロアパワーと反省してるムービングお花プレゼントでどうにか許してもらおうと画策している。

 

 

 扉が開く。

 

 お花準備、ヨシ!

 足の調子確認、ヨシ!

 扉の開閉方向確認、ヨシ!

 いざ、レッツゴー!

 

「ハロー!ゾロアさ」「きゅぬ!?」

 

 誰ぇ?!

 

 ジニア先生の紫シマシマシャツに飛びかかったつもりが、扉を開けたのは全然別の格好の全くの別の人だった。

 突然飛び込んできたおれに、その人は驚いた顔のまま体勢を整えると、抱えるように優しくキャッチ。膝も使ってのクッションのごとし抱かれ心地。

 判定……此奴、出来る!

 

「ワオ!パッション溢れて元気いっぱい!そんな姿見れて、ワシもハッピーだな!ノウ ウォリィズ!」

 

 ぽふぽふと背中を軽く叩いてくる。何やつ?一人称のクセ強いけど。見上げる。煌めく白い歯。

 

「せっかくだからこのまま自己紹介。

 マイネーム イズ セイジ!マイネームイズセイジだよ!是非是非憶えてちょーだいな、ゾロアさん!」

 

 咥えていた花をおれから持っていって、おれの鼻先に花弁をちょんとつけて、キレイなウインク。

 が、外人だ……震える程の外人だ……

 健康的な色黒、バッキバキのソリコミにキメッキメのスーツにテッカテカのサングラスをあえてポケットにかけるというオシャレポイント二億八千万点加算ぐらいファッショナブルな、横文字使ってくる外人が現れた。しかも振り撒かれる陽の気配。おれの陰気が消し飛ばされる輝く笑顔。

 道端で声掛けられたらキョドっちゃうタイプの人ベスト3に入る……はげしく元気な感じのまばゆいイケメンだった。これはパッション!Mr.パッション!

 

「んー……、ゾロアさん、戸惑っちゃってるな? ソーリー、パルドン、ゴメンなさいね。ほら、ジニア先生もちゃんとおるので、do not worry 、心配しなくて大丈夫よ。このお花さん、for、ジニア先生な? ほな一緒に渡そかね!」

 

 背後のこんにちは〜なんて、手を振るジニア先生を視界に入れてくれる。For You!って、おれの花を渡しながら。

 気遣いのできるタイプの陽の者……!社会人三年目くらいの先輩にいたら嬉しみがありますね。

 

 ……いや、誰ぇ?

 

「セイジ先生は、アカデミーの言語学の先生なんですよお」

「Esatto! そのとおり!」

 

 受け取った花をスマホロトムの横に差しながら、ジニア先生の紹介。ホー……言語学。国語、英語、みたいなの全部括った科目かな?

 だからこの小気味良いルー語? 聞いてて楽しくはあるね。

 

「で、コチラは歴史学のレホール先生ですねえ」

「ああ。こんにちは……、だ」

 

 ……もう一人いた。

 こちらも色黒。扉にやや寄りかかるようにして立っていた、すらっとした女性。これまたメガネが特徴……いやアクセサリーも特徴的だな。フリーザーかそれ。

 んで、扉から覗き込むのはピカチュウ。…………………………………………ピカチュウ?

 ピカチュウ…………ホントにピカチュウ?

 個体差は確かにあるとは思うけど、天下のピカチュウが、あんな引っ込み思案なわけある?教師の連れてるピカチュウが?

 

 ………………別の部屋のお泊まり中とかの子かな? 騒がしくてすまんね。

 

「レホール先生は、今日は見学に来てくれたんですよお。本題は、セイジ先生の方です」

「本題のセイジだよ!」

 

 レホール先生は、結構静かな人なのかな。

 ……いや、あの、陽のセイジ先生から離れて、観察する目で眺める姿、喉の奥だけ鳴らす高等テクに、含み笑い。斜に構えた態度…………陰の者に違いない。あれは中学二年にも患ったのに追加で高校二年生辺りに患うものを大学まで引き摺った上でそのまま大学二年の病も併発した面倒臭い人間の顔だ。毛嫌いするものは毛嫌いするし、好みのものは高みから賞賛するし、大好きなものは語りだしたら止められないほど称賛する系列。

 ……うん。ジニア先生が触れないみたいだから。静かだし、このままそっとしておこう。

 たぶん、下手に絡むと火傷する。黒歴史的な意味で。

 うまく噛み合うと、無二の親友レベルに仲良くなれるタイプでもあるけど………………歴史学て。絶対に厄介ヲタクの気配がする。今のおれ、悪いキツネだからなぁ。

 

 とはいえ振り仰ぎ見ればセイジ先生。笑顔がマブいんじゃあ!

 おれをカーペットに降ろしての膝立ちすしざんまいは、それはもう聖人の像そのものなのよ。聖人のセイジなのよ。

 服装シャレオツパリピだけど。

 

「Today、今日はね、ゾロアさんがどういうコミュニケーションしてるのかなっていうのを、watching! 見せてもらいにワシは来たんだな。

 オヌシ、人とお話してみたいって聞いて、セイジ、ベリベリハッピー!嬉しくなっちゃった。 ポケモンたちにも、そういう子は居ると思ってたのね」

 

 夜の似合う風体のイケメンから、太陽みたいな輝き煌めき振りまく笑顔でジェスチャー交えて軽妙に語られている。

 

 その後の説明を聞いて大体わかったけど、ちょっとわかんないな。

 

 

 おれが、人も、ポケモンの言葉も理解してるって?

 

 HAHAHA ……んなわけあんめぇよ。

 

 おれは、ポケモンの鳴き声は鳴き声としか聞こえない。

 セイジ先生の言い方を真似すると、ミブリム、テブリム。

 ジェスチャーや、鳴き声の高さや、なんとなくの表情で大体を推測して、察することしか出来ない。

 種族とか違っててもあいつら、さも我々会話してますみたいな顔で鳴き合ってたりする。なんでアギャとプルピャで通じてんのよ?言語から違うじゃん。

 だからパパさんときょうだいとの意思疎通、それなりに苦労したのだ。おかげさまでポケモンの表情と、鳴き声のトーンの聞き分けはできるようになったが、あとはもうニュアンスの話でしかない。それっぽいアテレコして、察してみれば五割は当たる。

 

 つまりは、例えばぐうかわ猫動画を見るとする。お座りして尻尾振って、小首かしげてか〜わいいって絵面の、おすまし気取ったあまえんぼさんだのってぇ動画タイトルだとしても、それはそのカメラの反射と撮影者の声がややうぜえんだけど奥の方で飼い主の声が大人しくしてろって言ってるっぽいから我慢してやるか……って顔なのねって話。

 それだって勝手な解釈だし。

 

 でもポケモンってのはみんな案外かしこいもんで、犬猫と違ってかなり色々伝えてくれるから、意外とおれのアテレコも合ってるんじゃないかな。

 先日のジニア先生のラランテスが、キハダ先生達を示した後、(後から分かったけど)学校の方を指して、ムキムキポーズやガッツポーズ、両手を広げ、足を交差して中腰で振り返るポーズ、両手で頭を後ろから前に、しなをつけながら撫で付ける動作などとやってたから、ああ、この動作を真似できるほどしょっちゅうやってるクセ強え人間がいるんだろうなと察せたし。

 事実、だいぶほら……目の前のカガヤキサマとかね?

 

 流石に伝説のピカ様のたった三文字で彼の親友の名前と判るレベルの表情豊かな鳴き声とは会ったことないけど。

 ニャース?彼はもう、たぶんポケモン語学とかあったら博士号の権威なのよ。テレパシーもないのに一から人間の言葉を習得て。頭おかしい(褒め言葉)。

 

 ま、ホントにそうなのかは、こっちはもうわからんのだ。それは人間だっておんなじだから、かわらんかわらん。

 

 

 

 で。

 

「じゃあ、このカード。赤いのをワシにプリーズ!」

 

 ほなダイヤのエースよ。セイジ先生にゃ煌めきのダイヤがお似合いなのよ。

 

「グッド!NEXT……今度は……絵の描いてある物を下さいな!」

 

 ならダイヤのジャックだ。キングって柄では無さそうな。いや、使いっ走りって意味じゃないぞ?

 

「OK、OK……ワンモア!同じものを、ジニア先生に!」

 

 ふむ。色替えていいのか、それとも残り全部か?

 拡げられた束から、スペード、ひっくり返って見えなくなっていた束をずらして、そこからハートとクローバーのジャックを取り出し、引っ張ってきて、ジニア先生の前に。

 見えるところに無いなら、伏せてる方にあるんだよ。マジックじゃなければね。

 この場合、わざわざ二色、二対にするためにハートとクローバーを予め離しといたんだろうけどな。

 

 興味深そうな表情で褒められた。ふふん。それぐらいはわかるのだ。

 向こうでレホール先生も、おもしれー女見た男のスチルみたいな顔してるけど、手前二人の素直な表情見習って?

 

 

 セイジ先生はトランプをパラパラと動かしている。うーん、このベガスのネオンの似合う男。でも中身はハワイアンズ。ちょっとアローラ!って言ってみ?

 ……外連も衒いもなく純粋に現地のイントネーションとテンション再現してくれそうだ。

 そういうところやぞ。

 

 トランプの前にも、色んな形の積み木を選ばされたり、絵本の登場人物ポケモン当てクイズされたり、発声練習きゅあんぬきゅあんぬさせられたり。

 鳴けないわけじゃないのだよ?現状、そんなに鳴く必要がないだけで。

 そんな感じで、人様の言ってる事の理解度を測るなどされている。理解はできますよお。おれだって人だった気がするし。

 これから居場所が変わるから、どれぐらい言う事聞けるかの確認ってところかな?

 

 ………………もしかして、スマホロトムはたき落とし押し倒しの件が原因ですかぁ?

 

 ありゃあホントについうっかりなのだ。ちょうはつと久々の運動でテンション上がってた矢先だったから。スマホロトムくん、きっと衝撃で頭クラクラしてるところに、悪いキツネの片鱗のバークアウトモドキ食らわせちゃったのかなって思ってる。

 いや、ホントにその件はすまんかったって思ってるんですってえ。

 

 わ、悪いキツネだけど、おれ悪いキツネじゃないよ!ぷるぷる!

 

 

――――――――――――

 

 

 ほなまたね!シーユーアゲイン!とぞ、セイジ先生が締めて、ジニア先生一行は帰っていった。長い時間では無かったな。授業の合間に来てくれたんだろうか。

 

 あの物陰メイビーピカチュウ、ずっと居たな。なんかすげえ悲しい顔でこっち見てくるの。

 

 ……ここはポケモンセンターで治しきれない大怪我や病気のポケモンの、治療のための病院。

 おれは治ったけど、………………

 ここでティンと来tいやいやいやないやいない。なんにもおれは気付いてなあい。怖くなーい!全然わかんねぇなぁ!!退院まで何も起きませんよーに!!!

 ……普通に幽霊とか存在する世界だからなぁ。さっさと病院出たいなぁ。

 

 レホール先生は終始無言。無言で含み笑いしてた。それもそれで怖えわ。生きてる人間が一番怖いって、怪談モノのオチで言われるやつじゃん。

 

 ジニア先生はジニア先生で、おれが視線を向けるとへんにゃりにっこりしてくれるけど、視界の端で見てるとき、時折真剣な顔してたし。

 …………あれか。ちゃんと言うことは理解できてるし、スマホロトムの件はマジのうっかりミスだって納得しようとしてくれてたのか。ソウダヨ!

 

 …………そういや謝ってねぇ!

 

 

 

 

 

 

 





オフレコとアテレコ間違えたりキバナさんとキハダさん間違えたりシルシュルーとシュシュプ混同したりしてるのは勘違いと間違いなので容赦無く指摘してもらえたら助かります。
たまに変な言語してるのは仕様の場合が微レ存なので、直してやったのに直ってねぇじゃねえかクソが!ってときはそういう仕様のところかもしれないのかとリズムとノリで大目に見てやってください。

それはそうと、閲覧ありがとうございますー!

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