【IF】悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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▷アストリッド討伐作戦を行いますか?

 ⇒はい
  
  いいえ


【IF BAD END】眷属[connect memory42]

アストリッドに支配された世界で、俺……いや、もう今は私の方がしっくりくるか。そう、私と辰樹は恋人同士になった。魔族に支配された世界で、私と辰樹は二人三脚で今まで生活をし、水面下でアストリッドを倒すための作戦を練っていた。

 

そして、私達はとうとう、アストリッドの弱点を知ることができた。

その情報を持って、私と辰樹の2人は今、アストリッドの目の前へとやってきていた。

 

勿論、アストリッドの根城にも部下のような存在はいたが、そいつらの相手は来夏達に任せてある。

さあ、ここからが、人間の反逆の始まりだ。

 

「アストリッド、覚悟しろ。今日でお前の命は終わりだ」

 

「辰樹、私があいつの気を引くから、辰樹は後ろから“アレ”をお願い」

 

「わかった。気をつけろよ」

 

「うん」

 

辰樹の言葉に、私の胸は自然と暖かくなる。心配してくれている、そう感じとることができたから。

 

「力を貸して、櫻」

 

私はその手に『桜銘斬』を持ち、アストリッドに対峙する。

ずっと、この日を待ちわびていた。

 

「さて、やるか」

 

アストリッドが、私に向かって飛んでやってくる。

私はアストリッドの攻撃を交わすが、(アストリッド)はその動きすら捕捉し、私が避けた方向に血の刃を出現させる。

 

「っ!」

 

私はかろうじてその血の刃を手に持つ『桜銘斬』で弾き飛ばすが、当然(アストリッド)もそんな私の動きを見逃すことはなく……。

 

「甘いね」

 

「あっ……ぐっ……」

 

無防備になった私の体に、再び血の刃を突き刺した上で、私の首を掴んできた。

 

でも、これでいい。

何とか、(アストリッド)の注意を私に向けることができた。これなら……。

 

「くらえっ!」

 

アストリッドの背中に、辰樹が杭を打ち込む。

これが、アストリッドの弱点。これを打たれて仕舞えば、アストリッドは魔力を扱うことも、人間の数倍もある筋力を発揮することもできない。

 

勝った。ついに、これでアストリッドを倒せる!!

櫻、茜、ユカリ、シロ。仇は………。

 

「いったいなぁ。あぁ。そういえばいたね、もういいよ、君」

 

言った瞬間、辰樹の体に、一本の血の刃が差し込まれる。

 

「がぁああああ!!」

 

「辰………樹……」

 

助けに行きたい。けど、首を絞められていて、それどころじゃない。

 

後ろには、さっきの攻撃で気を失ってしまっている辰樹の姿。

あぁ、これ。

負けだ。

 

苦しい。

 

 

私、死ぬのか……。

 

 

悔しい。

 

 

 

辰樹も、やられた。

 

 

 

嫌だ。嫌だ嫌だ。

 

 

 

 

「ふふっ。いいこと思いついた」

 

ふと、何を思ったのか、アストリッドは私の首から手を放し……。

 

「このままだと、君も辰樹も、私の手によって殺される。けど、殺さなくてもいいかな、なんて思ってるんだよね。君がある条件さえ飲んでくれるのなら」

 

私は、キッと、アストリッドの顔を睨みつける。

心では、負けたくはない。

 

たとえ、何があっても、心だけは屈したくない。

 

こんなやつに。

 

「反抗的な目、いいね。でも、いいのかなぁ? 君がこの条件を断れば、辰樹の命は、ないけど?」

 

そう言ってアストリッドは、辰樹の首根っこを掴み、血で作り出したナイフを、その首に突きつける。

 

「やめて!」

 

「そうか、殺されたくないのなら、条件を飲んでくれないと、ねぇ?」

 

私が死ぬ分にはいい。でも、辰樹だけは………。辰樹だけは、殺されたくはない。

 

「条件って、何?」

 

「クロ、君が欲しい。是非、私のしもべになってくれないかな?」

 

屈辱だ。

こいつの言いなりになるなんて。

でも、それでも。

 

他の人間はどうなったっていい。魔族が人間を支配しようが、どうでもいい。

でも、辰樹だけは……。

 

辰樹だけは、失いたくない。

死んでほしくない。

 

だから……。

 

「わかった。ただし、条件がある」

 

「ほう? 立場がわかってないみたいだね。まあいいよ。君の“人”生もこれで最後なんだ。多少の我儘くらい、許してあげようじゃないか」

 

「今ここで、辰樹を殺すのは、当然やめて欲しいけど、私が貴方のしもべになった後も、辰樹には手を出さないで欲しい。勿論、部下にも手を出させちゃダメ」

 

ここだけは譲れない。

今ここで見逃されても、次ここにきた時に殺されたんじゃ意味がない。辰樹は多分、私のために何度もアストリッドに挑むことになるだろうから。それに、部下にも殺させないようにしないと、『私は殺さないって約束したけど、部下に殺させないとは約束してないよね?』なんて言われたらどうしようもできない。

 

あと、最後にもう少しだけ。

 

「辰樹……」

 

私は、気絶している辰樹の元へ行く。

アストリッドは、そんな私の行動を、咎めることはない。

 

最後だから、多少のわがままは許してくれるんだろう。

 

私は、辰樹の頬に触れ、自身の唇を、彼の唇へと近付ける。

 

長いようで、短い時間。

私と辰樹の唇は重なり合う。

 

彼の意識はないけれど、でも、恋人になってから、何度も口付けしてきた。一瞬だけでも、感覚だけで彼の唇だと判別できるくらいには。

 

私は口付けを終えた後、彼の顔を見る。

 

「ありがとう………辰樹……。愛してるっ! またね」

 

さよならは言わない。またきっと会えるから。

辰樹なら、何度でも私のことを助けにきてくれるだろうから。

 

だから、これは、しばらくのお別れ。

 

きっとまた、会えるから。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

クロを取り返す。

そのために、俺は再び、アストリッドに挑もうと考えていた。

 

最初は、アストリッドを倒そうと考えていた。

けど、もうそれはいい。

 

俺は、クロさえそばにいてくれれば、それでよかった。

櫻達の仇は、取りたくなかったといえば、嘘になるけど……。

 

でも、それに固執しすぎて、大事な人を失うなんてのは、ごめんだ。

だから、多分、今回クロを取り戻すことができたら、俺はもう、アストリッドに挑むことはなくなるだろう。

 

クロを取り返すだけだ。変に戦う必要はない。まずは、アストリッドにバレないよう、奴のアジト内を探索して………。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、辰樹君」

 

は………?

何だここは。

 

俺はさっきまで、全く別の場所にいたはずじゃ……。

 

「いや、中々私の元に来てくれないからね。こちらから呼ばせてもらったよ」

 

「遅かったね、辰樹。私ずーっと待ってたのに」

 

そこにいたのは、吸血鬼アストリッドと、俺の恋人の、クロだった。

クロの容姿は、以前の俺の知るものとは異なっており、背中には漆黒の翼が生え、八重歯は異様に長くなり、その瞳は真っ赤に染まっていた。服装も、ミニスカートに、へその出たお洒落な服を着ていて、耳にはハート模様のピアスがついている。

 

正直、魅力的だと思った。俺は、彼女のことが、大好きだから。

でも、その姿は、彼女の趣味とはかけ離れていて……。

 

アストリッドが何かしたのだろうということは明白だった。

 

「アストリッド……お前、クロに何を……」

 

「クロ、彼の処理は任せるよ。あぁ、一応殺すのはナシね。()()()()()()の君との約束だからさ」

 

「そんな約束、守らなくてもいいのに。私にとって大切なのは、アストリッド様だけだから」

 

そう言って、クロは舌なめずりをしながら、俺の方へと歩いてくる。

本能は、戦わなきゃやられる、そう訴えかけてきている。

だが、俺は……。

 

クロに攻撃なんて、できない……。

 

「何も反撃して来ないんだ。面白くないね。はぁ……人間の頃の私は何でこんな男が好きだったんだろう。あーやっぱり、アストリッド様の魅力に気付けてなかったからかなぁ………。愚かだったなぁ。あの頃は。今思えば、辰樹って頼りないし、惚れる要素どこにもないよね。はぁーあ。馬鹿らしい。まあいいや。抵抗されないなら楽でいいし」

 

クロは、ゴミを見るような目で俺のことを見下している。

違う、クロはそんな目、俺にむけてこなかった。違う……。

そんな、そんなはずは……。

 

「じゃあね、ノロマ」

 

そのまま、俺の意識は暗闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

「アストリッド様ぁ〜♡ ここら辺とか攻めるのどうですかぁ? ここ、私があのゴミ男と一緒に住んでた時期があってぇ。多分また人間が住んでると思うんですけどぉ」

 

「うーん。アリだね。だとしたら、人員は…………」

 

結果として、俺の命が尽きることはなかった。

けど、正直、死んだ方がマシだったと、常々そう思う。

 

俺の体はボロボロの状態で拘束されていて、食料と水は死なない程度に与えられ続ける。

自殺はできないように魔法をかけられていて、それでいて、俺は毎日、かつての恋人が、憎き敵(アストリッド)に媚を売って可愛がってもらっている様子を、延々と見せ続けられている。

 

俺にも見せていなかった、完全に堕ち切った表情を、あんなやつに向けている。

その事実だけで、胸が締め付けられそうで。

 

食べるものも、着るものも。

全てアストリッドの好みになるようにチョイスしているらしいし。

 

それに、ことあるごとにアストリッドと俺を比較しては、俺のことを貶めている。

本当に、辛い。

 

あの時、アストリッドに挑むんじゃなかった。

 

確かに、そこら中に魔族が入り乱れる世界ではある。

だけど、俺は隣にクロがいて、彼女が俺に笑いかけてくれる。それだけで、幸せだった。

 

戻れるなら、戻りたい。あの頃に。

 

もう一度、あの頃に戻って、何気ない日々を、彼女と送りたい。

 

 

 

ああ、嫌だな。

もう、生きる希望もない。

 

死なせてもくれない。

 

俺は、どうすればいいんだろう。

 

なぁ、櫻。教えてくれ。

俺はあの時、どうすればよかったんだ?

 

あーあ……。

 

でも、馬鹿だなぁ。

俺、こんなになっても、まだ、クロのこと、好きだ。

 

本当、どうしようもない。

救いようがないよな、俺。

 

はぁ……。

 

「こ、今夜も、一緒に寝るんですか…?」

 

「寝る? いーや。眠らせないよ?」

 

向こう側で、楽しそうに話すクロ。あぁ。やっぱり、あんな状態になったクロでも、可愛いな。

 

どうしようもないな。本当に。

 

あーあ。

 

「クロ……。愛してる……」

 

俺の寂しい囁きは、彼女に届くことはない。

 

だってもう。

 

彼女の心は、もう、俺には向いていないのだから。

 

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