マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿…。
フロル「すまんな、クロウ、クルス。エルフの里に寄ってドラゴンオーブを安置しなければならないから」
クロウ「それはかまわんが、俺達を連れていかないのか?」
フロル「エルフの里だからね。あんまり、人間を入れたくないんだ」
クルス「そうですね。いつ戻りますか?」
フロル「2時間もかからないと思う。それじゃ」
フロルはルーラを唱え、エルフの里ミーミルに向かった。ミーミルは浮島でもあるので、空を飛ばないかぎり、行くことは不可能。
エルフの里ミーミルの中央にある神殿の入口前…。そこに、フロルが現れた。神殿に入ろうとすると…。
オルハ「フロル様」
オルハが現れた。
フロル「やあオルハ。2つ目のドラゴンオーブを手に入れたよ」
オルハ「それはホントですか!?」
フロル「さっそくなんだけど、ドラゴンオーブを安置したい」
オルハ「はい」
オルハはフロルを神殿内に案内。フロルからドラゴンオーブを受け取り、祭壇の場所にドラゴンオーブを安置。同時にフロルは、4つに分散された竜の騎士の力のひとつが元に戻り、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を扱えるようになった。
ドラゴンオーブが設置された後、ドラゴンオーブは光り輝き始めた。ドラゴンオーブから放出される魔力が龍脈に流れ始めた。これにより、龍脈は安定し始める。
フロル「2つあるだけで龍脈が安定するとは…。この力を知れば悪用できるかもしれないね」
オルハ「はい。だからこそ、厳重に管理しなければなりません。フロル様、お時間ありますか?」
フロル「少しなら」
オルハ「では、わたし達の家に来てください」
その後、2人はオルハの家に行く。家に入ると、リーファがいる。2つ目のドラゴンオーブを手に入れ、神殿に安置したことを話した。
リーファ「そうなのですね。フロルさん、ありがとうございます」
フロル「どういたしまして」
リーファ「なにかお礼をしてあげたいのですが…」
フロル「いえいえ…。単なる恩返しと義理人情ですから」
リーファ「いいえ…。お礼しないとわたしの気が収まりません。そうですね…。わたしの体でどうでしょうか?」
フロル「はい?」
リーファは嬉しそうに赤らめ始める。
オルハ「いいえ。お礼として、わたしの純潔をあなたに捧げます。そして、竜の騎士の血筋を持つ子どもをわたしに産ませてください」
オルハの場合は時めいた表情になる。
フロル「それは勘弁を…恋人がいるので」
リーファ「恋人ですって!?」
オルハ「どこのクソ女ですか!?」
リーファとオルハは過剰に反応する。
それから時間が経過して落ち着いた頃…。雑談し始める。
フロル「とはいえ、魔王軍が襲撃してドラゴンオーブを奪う可能性も否定できませんね」
リーファ「わたしはそれを危惧しています。それにしても、魔王ゼーゲルを超える四大魔王…」
フロル「魔界にも色んな国がありますからね」
オルハ「不安です」
リーファとオルハは不安を抱いている。魔王軍がドラゴンオーブを奪いにくるんじゃないかと…。
?「へぇー、ここにいたのか」
1人の女性が現れた。
フロル「アンジェラ姉さん!?」
リーファ&オルハ「アンジェラ様!?」
3人「え?」
猟兵団シュテルネンリヒト副団長アンジェラ・プロフェットである。
だけど、フロルとリーファとオルハはお互いに驚いた。アンジェラの知り合いだとは思わなかったのである。
それからしばらく…。
リーファ「アンジェラ様は時の魔女で、時おりわたし達のことを案じて、様子を見に来られてきたのです。最後に来たのは15年前ですね」
フロル「なるほど…」
アンジェラ「忙しくなってね。大丈夫かと思って、ヴァルレシアに来なくなったんだよ」
フロル「姉さん、どうやって地球からここに?」
アンジェラ「わたしの故郷エリンシアの里を経由してヴァルレシアに来たんだ。まあ、今はとある方法でヴァルレシアを行き来できるんだけど、随分とヴァルレシアを充実してんじゃないの」
フロル「ヴァルレシアからドラゴンオーブを失って…。今は2つ見つけたところだけど…。ヴァルレシアに脅威を与える魔王軍なんだけど、今はメギドラが指揮している」
アンジェラ「メギドラだって!?なんであいつが魔王軍を…」
フロル「わからない。ゼーゲルが死んだのは確かだけど…。幹部が言っていたんだ」
アンジェラ「メギドラだったらやりかねないわね…」
アンジェラは頭を抱える。
フロル「中東地域はどうなっているの?」
アンジェラ「スレイマ共和国を完全平定し、ユーロピア連邦軍とシュテルネンリヒトとセキレイと一緒にサラビア諸国連合に侵攻している」
フロル「くっ…俺も早く帰らないと…」
アンジェラ「別にのんびりしていいんじゃないの?」
フロル「良いの?」
アンジェラ「戦況は有利だからね。それにメギドラの存在もある。フロルはわたしになにをしてほしい?」
フロル「ドラゴンオーブを見つけるまでの間、このエルフの里を守ってほしい。幸いにも残り2つのドラゴンオーブのありかを掴んでいる」
アンジェラ「わかったよ」
アンジェラは納得する。
アンジェラ「そういえばフロル、キャシーが心配していたよ」
フロル「そうなんだ。キャシーにはさみしい思いをさせてしまったようだ」
アンジェラ「シズネもね」
フロル「う…」
オルハ「アンジェラ様、そのキャシーさんにお伝えください。フロルはオルハと結婚して幸せに暮らしていると」
アンジェラ「キャシー暴れるわね」
ムッとした表情になるオルハはフロルにくっつく。
フロル「それじゃ俺は地上に戻るよ。3つ目のドラゴンオーブを探さないと…。それじゃ」
オルハ「ムーッ!!」
フロルは家を出て、ルーラでマールバラ王国王都ラージェに向かった。オルハはそれに激怒したとか…。
その頃、魔王城…。
ゼーゲル「むぅ…ここは…」
死んだはずの魔王ゼーゲルが蘇った。
メギドラ「気がついたか」
ゼーゲル「これは、メギドラ様!」
ゼーゲルは慌ててメギドラに跪く。
メギドラ「お前は死んでいたが、せかいじゅの葉で蘇ったのだ」
ゼーゲル「そうだったのですか…」
メギドラ「地球まで来てフロルを始末しようとしたそうだが、無謀だったな。シュテルネンリヒトだけでなくセキレイというトップクラスの猟兵団がいた。しかも狂人の集まりだからな」
ゼーゲル「ヴァルレシアの完全なる支配のために、勇者であるフロルを始末しなければならなかったのです。竜の騎士であることが判明したのですが、それこそ放ってはおけませんでした」
メギドラ「なるほど…。お前が死んでいる間、俺とバルフォアが魔王軍を指揮している。それと、アリゲイルがフロルによって殺された」
ゼーゲル「なんと…アリゲイル…」
メギドラ「武人に恥じぬ戦いぶりだった。幹部達もだ。特にトームスはアンチレベルを使い、フロルの弱体化に成功した」
ゼーゲル「くぅ…惜しい人材を亡くしてしまった…。今すぐ六軍団長に会いたいです」
メギドラ「うむ」
ゼーゲルはメギドラに案内され、広間に向かった。広間には、六軍団長5人とバルフォアがいる。
バルフォア「ゼーゲル、大丈夫か?」
ゼーゲル「ああ…。それより…」
すると、ゼーゲルはみんなの前に土下座した。これにはみんなも驚く。
ゼーゲル「俺の不甲斐なさ故に、我が部下にして友であるアリゲイルを失った。そして、お前達に迷惑をかけた。すまぬ!だが、俺の決意は揺るがない。ヴァルレシアを支配し、我らの第二の故郷にすることを俺は約束する!」
ゼーゲルは謝罪をする。
ダース「お顔をお上げください。わたし達はあなたに忠誠を誓う者。あなたのことを慕っているから、あなたについてきたのです」
サフィール「ええ」
シェイラ「今のわたし達があるのは、あなたのおかげなのです」
ラムパルド「このご恩を返せずにはいられません」
ザイード「荒くれ者で盗賊だったわたしを拾ってくださった恩を返させてください!」
5人の軍団長は改めてゼーゲルに忠誠を誓う。
バルフォア「ゼーゲル、お前はしばらく休み、リハビリして調子を取り戻すのだ。俺は魔軍司令として、魔王軍を再編する」
ゼーゲル「すまぬ。お前にまで苦労をかけて…」
バルフォア「親友である俺を頼れ」
バルフォアはゼーゲルを気遣う。
バルフォア「サフィール、妖魔師団をマールバラ王国から撤退してくれ」
サフィール「え?よろしいのですか?」
バルフォア「我々の目的はフロルの命を奪うこと。フロルさえ始末すれば、ヴァルレシアの支配は容易となる」
サフィール「わかりました」
バルフォア「ダースは引き続き、バーンスタインの残存勢力と戦ってくれ。ラムパルドも引き続き、アルトマイアの残存勢力と戦ってくれ。フロルがいずれ、どちらかの勢力と合流することになるだろう」
シェイラ「わたしの氷炎魔団とザイードの超竜軍団、サフィールの妖魔師団はどうしますか?」
バルフォア「待機だ。戦力を温存する。フロルという餌が釣れるまでな」
バルフォアはそれぞれの軍団長に指示を出す。
ゼーゲル「さすがメギドラ様の側近にして参謀だな」
メギドラ「大したやつだろ?」
バルフォア「ふふっ」
嬉しそうに微笑むバルフォアであった。
それから時間が経過。夜、マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿・謁見の間…。
エレーナ「妖魔師団がマールバラ王国から姿を消したですって?」
兵士「はい。本拠地を探ったのですが、間違いありません」
エレーナ「どういうことでしょうか?」
エレーナは疑問を抱く。
エレーナ「フロルをここに呼んでください」
兵士「はっ」
エレーナは兵士にフロルを呼ぶよう兵士に命じた。兵士はこの場を後にする。
それからしばらくして、フロルが現れた。
エレーナ「フロル、妖魔師団がマールバラ王国からいなくなりました。これについて、どう思われますか?」
フロル「恐らくですが、撤退して魔王軍の本拠地に帰ったのでしょう。俺が魔王軍のトップなら、戦力を温存して部隊を再編成するでしょう。また、各個撃破のためにどこかの勢力や国を滅ぼすためとか…。俺の考えが正しいなら、危ないですね」
エレーナ「なるほど…。危ないといえば、バーンスタイン王国とアルトマイア王国の残存勢力ですね。この2つの勢力は今でも魔王軍と交戦しています」
フロル「確かに…。アルトマイア王国はわかるとして、バーンスタイン王国はなぜ魔王軍によって滅ぼされたのでしょうか?俺が聞いた話しによれば、ヴァルレシア五大国の中でも軍事大国であるとのことですが」
エレーナ「はい。その強大な軍事力を持って、魔王軍の攻撃を尽く退けたとされています」
フロル「そういうことですか…。上層部の腐敗…」
エレーナ「詳しくはわかりませんが、わたしもそう思っています。バーンスタイン王国はもともと、大臣や役人や軍上層部などの腐敗が有名でした。バーンスタイン王は聡明な方ですが、王妃様も腐敗した上層部の1人でもありました。バーンスタインが完全に弱体化し切ったところで、魔王軍は総力を持って侵攻。王都シュタルクを陥落させ、バーンスタイン王国は滅亡しました。今はバーンスタイン王国第2王女アイシス姫が残存勢力をまとめて、魔王軍と戦っています」
フロル「なるほど…。腐敗が原因で衰退するのは、地球の国家でもよくあることです」
エレーナ「だからこそ、汚職などをやる者に容赦はしません」
エレーナは決意した目でそう話す。
フロル「今後の方針が決まりました。バーンスタイン王国に行きます。幸いにもあっちのほうにドラゴンオーブがあるという情報ですので」
エレーナ「わかりました。だけど、ちょうど良かったです」
フロル「?」
エレーナ「実は3日後に、バーンスタインに向けて大量の物資を送る予定があるのですが、途中で魔王軍に襲われないかと不安を抱いていたのです。よければ、護衛も兼ねて、一緒に同行してもらいたいのですが、大丈夫でしょうか?」
フロル「それは問題ありません。むしろ、同行させてくださいと言いたいところです」
エレーナ「ありがとうございます」
フロルはエレーナの要望を受け入れた。
フロル(まあ、こっちも色々と準備があるしね)
と、フロルは話す。
翌日の朝、フロルとクロウとクルスは、武器屋に寄っている。武器を購入するためなのだが…。
フロル「太刀がない…」
フロルが好んで使う得物の太刀が売っていない。
店主「へぇー、客人はそういう武器を使うのか?変わった武器だな」
フロル「そうだね。だけど、研げばピカピカになるし。店主、工房貸してもらえるかな?」
店主「ああ、いいぜ」
話しはまとまった。
フロル「というわけだ」
クルス「了解です。その間に僕達は色々な店を回ってみます」
クロウ「おう」
フロル「すまんね」
フロル達パーティーは一時的に解散。
フロルはここで自らの太刀を研ぎ始める。フロルの太刀は刃こぼれし始め、ボロボロになっていた。ここで研いで切れ味を蘇られると同時に耐久性を高める。
そしてクロウとクルスは買い出し。ここで新しい武器を購入し、道具屋を回るなどしている。
3日後には、アイーダと一緒にバーンスタイン王国行きの船に乗り、バーンスタインの残存勢力を指揮しているアイシスに大量の補給物資を送るという。もちろん、フロルはクロウとクルスに話し、了解を得ている。
それからしばらくして、フロルの太刀が仕上がった。前と違って、できたてホヤホヤな感じとなり、切れ味も回復した。
フロルは武器屋を出て王都を出歩く。すると、こういった話しが聞こえた。
女性住民「都市オービエンスが解放されたそうだけど、姫様の結婚の話しはどうなったの?活躍すれば姫様と結婚できるという話しだけど」
男性住民「なかったことになったそうだ。なんでも、マールバラ王国に訪れた勇者様一行が解決したとか」
男性住民「15年前に魔王軍の襲撃で亡くなられたはずのアルトマイア王国の王子様が実は生きて、獣王軍団を壊滅させてエリヴァン王国を救ったそうだよ」
女性住民「魔王もすでに倒されたと聞いたんだけど、まだ幹部が残っているって話しよ」
勇者についての話題である。というよりフロルの話題である。
フロル「どこまで話題が広がっているのだろうか…。新聞でもあれば良いんだけど…」
ヴァルレシアに新聞があるのかさえ疑問だ。
フロル(マールバラ王国にまだ問題があるようだ。都市オービエンスの一件で人間も多く関わっている。そもそも、どういう経緯で人間はブギーマ達と関わっていたのだろうか?)
ふと、フロルは疑問を抱いた。
フロル「調べてみるか」
フロルは都市オービエンスを支配していたブギーマに関わったと思われる人間について調べ始めた。貴族や商人を中心に少し調査しただけで、色々な情報が出てきた。
ブギーマと取引して、都市オービエンスで奴隷市場を開拓させていたのは、伯爵という爵位を持つマールバラ貴族であることが判明。しかも、別のところで奴隷市場を開拓しているという。
だけど、それだけならよかった。一味だった盗賊の連中を締めている。
フロル「クーデターだと?」
盗賊「ゴーラム伯爵は前々から魔王軍と繋がって、魔王軍の力を借りてクーデターを起こすつもりだ」
フロル「目的は?」
盗賊「わからんが、女王様と姫様のお体、マールバラ王家が持つ利権を奪うことだと思う」
フロル「そういうお前もゴーラム伯爵に不満を抱いているな?」
盗賊「ああ。全然報酬を支払ってくれないからな」
フロル「1000ゴールドで情報を買ってやる」
盗賊「え?ホントに?」
フロル「現在、どこで奴隷市場が行われているのだ?」
盗賊「東にあるワグナー遺跡さ。ゴーラム伯爵が私兵達を集めている場所でもある」
フロル「間違いないな?」
盗賊「最新の情報だ」
フロル「ありがとう。1000ゴールドだ」
盗賊「確かに…」
盗賊は行ってしまった。
アイーダ「こんなところでなにしているの?」
アイーダが現れた。
フロル「ああ姫。実は」
フロルはゴーラム伯爵がクーデターを起こそうとしていることを話す。
アイーダ「なるほどね。わたしもそれを思って探りを入れたんだけど…。証拠が欲しいわね」
フロル「現行犯逮捕できたらいい」
と、話していると…。
クロウ「おっ、姫さんじゃないか」
クロウとクルスが現れる。2人にゴーラム伯爵について話すと…。
クルス「そうですね。背後の憂いを排除しないと」
クロウ「だな」
2人は同意する。
アイーダ「動かせる部隊を連れてくるわ」
アイーダは一度離れる。
クロウ「万が一、伯爵がワグナー遺跡にいなかったらどうする?」
フロル「いないだろうね。連中は部隊を分散させて、守りが薄い状態のマールバラ宮殿に強襲を仕掛ける可能性もある」
クルス「僕もそう思っています。ワグナー遺跡にゴーラム伯爵がいれば幸い。そうではないなら、宮殿か王都のどこかに潜んでいるとみて間違いないでしょう。加えて、情報が簡単に入り過ぎます」
フロル「だからこそ、この罠に引っかかってみようと思う」
クロウ「だな」
作戦が決まった。その後、アイーダがマールバラ軍魔法師団の部隊を引き連れてきた。
アイーダ「ええ。罠に引っかかってみましょう」
アイーダは同意する。
クルス「フロルさん、宮殿に残ってもらえないでしょうか?」
クルスは提案する。
フロル「俺もそれを考えていたんだが、俺がいなくても大丈夫かい?」
クロウ「問題ないさ」
クルス「ええ」
アイーダ「わたし達だけでもやれるわ」
フロル「OK」
フロルは一時的にここを離れる。
そして、フロルを除くみんなはワグナー遺跡に向かう。
それから時間が経過。
アイーダ「大人しくしろ、外道どもが!!」
クロウ「今日がお前達の命日だ!」
クルス「最後の人生を楽しんでください!」
アイーダ達はワグナー遺跡に乗り込んだ。
男「マールバラ軍だ!!」
男「なぜここが!?」
ワグナー遺跡では、奴隷市場が開催されていた。情報通りである。
アイーダ「制圧せよ!」
アイーダは魔法師団の部隊に制圧を命じた。
それから間もまく、ワグナー遺跡は完全に制圧され、奴隷となった者達は解放された。
ここを取り仕切る支配人の男は捕縛。男はこう話す。
支配人「ゴーラム伯爵は自らの私兵達を率いて、宮殿を制圧するだろう」
アイーダ「ゴーラム伯爵の目的はなんなの?」
支配人「マールバラ王国の王になることだ。王になって魔王軍と同盟を結び、このヴァルレシアを支配することが、ゴーラム伯爵の望みなのだ」
アイーダ「その望みはかなわないわ」
クロウ「俺らパーティーの最高戦力が宮殿に残っている」
クルス「フロルさんと言って、その人は勇者でありますから」
支配人「そ…そんなバカな…」
支配人は、アイーダ達の中にフロルがいないことを知った。
クロウ「フロルは読んでいたぜ。だから俺達はお前達の罠に敢えて引っかかったんだ」
アイーダ「あんたは生かしてはおけない。ここで死になさい」
支配人「がはっ!!」
アイーダは持っていた剣で支配人の体を突き刺した。支配人はここで息絶えた。
クロウ「いつまでもここにいられない」
アイーダ「ええ。あなた達、ここを頼むわ」
魔法師団の団員「はっ」
アイーダは魔法師団に命じた。そして、アイーダとクロウとクルスはワグナー遺跡の外に出る。そして、アイーダはルーラを唱えて、マールバラ宮殿に戻っていった。
その頃、フロルはというと、マールバラ宮殿の謁見の間にて、ゴーラム伯爵率いる私兵達と対峙している。
フロル「ここにいれば、来ると思っていたけど、本当に来たね」
謁見の間にある玉座の傍に、女王エリーナがいる。他にも、第1王女アメリアと第2王女ジーナというアイーダの姉がいる。エリーナの娘にしてアイーダの姉ということもあって、非常に美しい。
フロル「どのような理由でクーデターを起こす?」
ゴーラム「決まっている。わたしがマールバラ王国の王になるためだ。マールバラ王になって魔王軍と同盟を結び、その力を持ってヴァルレシアを支配する」
フロル「なんのために?」
ゴーラム「それ以上の理由はないだろう」
フロル「本音を言えば、富と権力を自分のほうに集中するためだろう?そんな人間を俺は何万も見てきたんだ」
ゴーラム「だまれ!エルフの血を引く者がマールバラ王族であること自体が間違いなのだ!女王達を我が奴隷にする!かかれ!!」
ゴーラムは私兵に突撃を命じた。フロルは鞘から太刀を抜いて、太刀を振るった。気がついたときには、私兵達が倒れている。
フロル「さて…次に切られたいのは誰だい…?」
ゴーラム「くっ…」
フロル「ついでに言うが、俺は地球という異世界の人間なんだけど、地球の国家のひとつ、ヴェルナ聖王国という大国がある。ヴェルナ聖王国の現女王は、ハーフエルフだ」
ゴーラム「な…なんだと…!?」
フロル「国民は女王様がハーフエルフであることを知っているけど、何の不満もない。統治者として優れており、国民の生活を第一としている」
フロルは地球の大国ヴェルナ聖王国について話すと、ゴーラムは驚愕する。
フロル「エリーナ女王様の場合、国民の支持を得て、現在に至る。あんたはどうだろうか?」
ゴーラム「くっ…」
フロルは指摘すると、ゴーラムはなにも言い返せなかった。
ゴーラム「だ、だまれ!女王さえ排除すれば、わたしはマールバラ王になれるのだ!」
フロル「……………」
するとフロルはゴーラムに向かって闘気を放つと、ゴーラムの周りの私兵達がプレッシャーによって倒れ、気絶した。
ゴーラム「そ…そんな…」
フロル「うん。アンチレベルによって封じられた闘気も戻ってきたね」
ゴーラム「お、お前は何者だ!?」
フロル「俺はフロル。みんなは俺のこと勇者と呼んでいるんだけどね」
ゴーラム「勇者!?」
フロル「とりあえず、顔面陥没してくれ」
ゴーラム「ぶはあああ!!!」
フロルの強烈な右ストレートパンチを受けたゴーラムは倒れ、顔面陥没状態になったという。
それから、アイーダ達が合流。合流する頃には、宮殿内の騒動は終わっている。フロルがほとんど1人で収めたという。
そして落ち着いた頃、マールバラ宮殿の謁見の間…。
エリーナ「あなた達のおかげで、わたし達とマールバラは救われました。特にフロル、本当にありがとうございます」
フロル「いえ、そんな…。背後の憂いを取り除いただけに過ぎません」
エリーナ「だけど、マールバラ王国とわたし達を救ってくれたのは事実です。お礼に、わたしか娘との結婚はどうでしょうか?」
フロル「え?」
フロルは王女達を見た。アイーダは嬉しそうだが、その姉である第1王女アメリアと第2王女ジーナは満更ではなかった。むしろ、嬉しそうな感じである。
フロル「いえその…お礼は良いです。それに、クロウ達といたほうが楽しいですし」
エリーナ「そっち系でしたか?」
フロル「なわけないでしょ!?」
フロルはエリーナにツッコミを入れるが…。
クロウ「フロル、お前そんなに俺のことが…」
フロル「真に受けないで!」
クロウにツッコミを入れるフロルであった。
クロウ「まあとにかく、俺達はメイド達と遊びたい。フロル、アルトマイア王国の王族として、女王様達を喜ばせてやれ」
フロル「その親指、折り曲げていい?」
クルス「これも一種の交流です。僕は手に入れたお宝を見ながらムフフッと楽しみます」
フロル「まあ、2人がそう言うなら…」
エリーナ「決まりですね♪」
話しがまとまった。
アイーダ「では、フロルはわたしの部屋で」
アメリア「ここは姉に譲りなさいな」
ジーナ「そうよ。勇者様の奉仕はわたしがするんだから」
アイーダ「いくらお姉様でも譲れませんわ」
3姉妹「ぐぬぬ…」
3姉妹睨み合う中…。
それから落ち着いた頃、みんなは解散。バーンスタイン王国に向けた船の出発は2日後となる。