ダンガンロンパ(仮)-よみがえり-   作:冷凍かに缶

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学級裁判編 迷宮編

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜか、俺は暗闇の奥底で揺蕩っていた。

 

 どうして、こんなところで一人取り残されているんだ?

 

 

 

 早く……早く目を覚まさなければ……。

 

 

 重い瞼をなんとか動かそうとする。

 

 ようやく瞬きができた時、俺の肩は大きな手に抱きかかえられていたことに気づいた。

 

 

 

「……! 気がついたか……」

「……あ、あれ? 黒生寺……?」

 

 五回目の裁判場は近未来的なテーマとマナクマが言っていたことを思い出す。

 見回すと、やはり機械的で異質な空間が広がっている。

 そうだ、俺たちは裁判を……。

 

 

 

 …………あれ? なんで記憶が飛んでいるんだ?

 

 

 

「七島……! よかった……大丈夫? 私たちのことわかる?」

「もうやばかったのだ! なんか色々と!!」

 

 眉根を寄せた紅や、瞳孔を見開いた大豊が中腰で目線を合わせている。

 ……大丈夫? わかる? やばかった? 

 

 いまは、話し合いをしていたんだよな?

 萩野と錦織を殺した犯人を見つけるために……

 それなのに……どうして、こんなにも記憶がおぼろげなんだ。

 どうして俺の背中にはぐっしょりと不快な汗しか残っていないんだ?

 

 そもそも、なぜ、膝立ちの黒生寺に抱きかかえられているんだ?

 

 

 

 

「ムッシュ。君は、さっきまで思い出していたんだよ。本当の自分を」

 

 

 俺の困惑に答えを告げたのはランティーユだった。

 片眼鏡を珍しく外していて目元もほのかに赤く腫れているようだ。

 

 

 

「あ、あの……さっきから、なにを言っているんだ……?」

 

 

 状況が追いついていないまま、俺は思わず天馬に視線を投げかけた。

 彼女は普段通りの面持ちで、「ねえ」と呼びかける。

 

「七島くん、錦織さんを殺した犯人は誰だと思う?」

「えっ……? いや、そんなことまだ……話し合ってな……あ、あれ?」

 

 まったくと言っていいほど記憶が抜け落ちていた。

 たしか錦織のメモの筆跡がおかしいって言う話になって……その時、俺は……。

 …………あれ? なにを、言ったんだっけ?

 

 いったい、どうなっているんだ……?

 

 

 

「どうやら、君はぼくたちのクラスの一員だったけど……いつも保健室で過ごしていたらしいんだ。だから、"本当の記憶の君"は、ぼくらのことをほとんど知らないって。……さっき、そう、君自身が言っていた」

 

 

 ランティーユの言葉についていけなかった。

 

 本当の記憶の俺? 保健室で過ごしていた?

 みんなのことを知らないって?

 

 ……いったい、なんの話をしているんだよ?

 思わず胸を押さえつけるが、心臓の音は当たり前のように鳴り終わることはない。

 

 

 

 だけど、俺は「なにを言っているんだ」と怒鳴ることができなかった。

 

 

 

「……そんな感じはした」

「へけっ!? ほ、ほんとに!?」

 

 

 ……残念なことに、心当たりはあったから。

 これは今まで目を逸らし続けていた結果なのだろうか。

 

 

「いつからだったか……自分がもう一人いるような感覚に見舞われることが増えたんだ。記憶が飛んだり、俺の意志に反して、あることないこと話し始めたり……自分とは違う誰かが囁くことが何度かあって……そう、あの時だって、筆跡が違うのはわかっていたのに……言えなくて……」

「なるほど……やはり気が触れていたんじゃなくて、本当の記憶を思い出していたってことで間違いないんだな……」

「それじゃあ、今の俺は……」

「"ノアの箱庭で生活していたときの人格"……それが今の七島くんなんだろうね」

 

 もし、喩えるなら、かつての粗暴でならずものだった頃の性格がそのまま反映された“仮の世界で生きた人格”の黒生寺。

 そして、角によって更生された保安官のガンマンとして生活した“本当の記憶の人格”の黒生寺。

 

 仮の世界は、バラバラのクラスで構成された“バーチャル世界での生活”

 その“記憶”が、今の俺たちが持っているもの。

 

 だけど、それは偽物で、実際の俺たちは、“16人全員がクラスメイトとして過ごしていた”

 そして“全員が同じクラスの一員だった記憶”は抜け落ちている。

 いいや、封じ込められた状態とも言えるのだろうか。

 

 

 だけど、ランティーユはこう言っていたよな……?

 

 

 

「俺は一緒のクラスで過ごしていなかった?」

 

 

 にわかには信じがたい。

 いいや、信じたくない話だった。

 それは俺だけじゃないようで……彼らの顔立ちが物語っていた。

 

 

「ウィ。君自身はそう言っていた。ムッシュ萩野、マダム錦織、マダム天馬しか知り合いがいなかったって……ぼくたちに対して劣等感に似た思いを抱えていたようだった」

「自分が犯人なんだって、めちゃくちゃなこと言ってたのだ!」

「すごく怖かったわ……でも、いつもの七島がちゃんと戻って来てよかった」

 

 みんなの言葉によると、かなりひどい様子だったようだ。

 彼らは安心したように言っているが、このようにボロクソに言われているのは、結局、自分のことだと思うと言いようもないものがこみ上げる。

 

 

「深く考えるな……過去なんてどうだっていい……今のお前のほうがまともなのは確かだからな……」

 

 

 黒生寺はいつもより低い声で、耳元で窘めるように言ってくれた。

 

 

 …………それでも。

 

 

「で、でもさ。この記憶や性格は、やっぱり作られたものには変わりないんだよな? も、もしも……現実世界の“本当の記憶”を……“みんなが同じクラスにいた時代”を……俺が保健室登校”だったときを完全に思い出したら……っ! い、いまの俺は……」

「深く考えるなと言っただろう……!」

 

 なにかを察したのか、今度は咎める語気で俺の言葉を、黒生寺は無理矢理止めた。

 俺の肩に辛辣な痛みが混ざった。

 考えるなとは言うけれど、いつかは……いいや、今すぐにでも直面せざるを得ない問題に思えた。

 

 事実、俺の“真実の記憶”は殻を半分破っているような状態だ。

 もし、完全に“真実の記憶の俺”が戻ってしまったら。

 

 そうなったら辺見と同じじゃないか?

 みんなとの繋がりを失った人間になってしまう。

 

 

 そして、今の俺は、どこにも…………。

 

 

「それでも、"本当の記憶の七島くん"は、過去に過ぎないんだよ」

 

 

 鬱屈した思いを引き止めたのは涼やかな声だった。

 天馬はゆっくりと俺に向かって歩み寄る。

 

 

 

「今は、今ここにいる七島くんで生きなきゃ。……まずは、この事件の真実を確かめないと」

 

 

 天馬が静かにそう言って、手を差し伸べてくれた。

 

 恐る恐る犬のお手のように俺は手をのせた……彼女の手は不自然なほどに生暖かかった。

 冷静を保っているようだったが、彼女も必死に熱弁していたのだろうか。

 彼女の手を頼りに立とうとしたが、ふらりと足がもつれてしまい倒れそうになる。背後の黒生寺と紅に背中を支えられた。

 

「七島、無理しちゃダメよ」

「そもそも、裁判が長時間立ちっぱなしなのよくないのだ!」

「それにはぼくも賛成だよ、マドモアゼル!」

「どうせアイツに言っても無駄だろうがな……」

 

 黒生寺は咎めるように玉座のマナクマを見遣った。

 マナクマは我関せずの様子で鼻提灯を膨らませている。

 みんなに支えられながらも、もう一回、俺は証言台に立った。

 

 

 ……なにもかもが信じられないことばかりだけど、それでも。

 

 

 

 

 

 

 

 大丈夫、"まだ、俺は生きている"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" 学級裁判 再開 "

 

 

 

 

 

 

 俺たちは遺影に見守られながら証言台に立つ。

 再び、裁判はコーヒーカップのようにぐるぐると転回を始めようとしていた。

 

 

「改めて……錦織さんが残してくれた資料を確認しよう」

「それは、どこで見つけたの?」

「情報処理室のパソコンに置かれてあったんだ……錦織さんが、オルゴールに文字をつけてくれたおかげで分かったんだ」

 

 そう言って、彼女はオルゴールの底の部分を示した。 

 PC 2 13……か? かなり細かい文字だな。

 遠目だと、ただのひっかき傷にしか見えない。

 

「ぼくには、ただのキズにも見えるけど……」

「私も判別に困ったけど、PCって書かれていたのはわかったから、Personal computer……パソコンといえば情報処理室……だからそこに行って確認してみたんだ。パソコン室は平行に2列になって、パソコンが並んでいるよね。扉から入って、手前が1列目。奥が2列目だとしたら……って考えて、2列目のレーンの13番目のパソコンを確認してみたんだ」

「なるほど! それで、その紙があったんだね!」

 

 錦織のメッセージもなかなかのものだが、それを解読する天馬にも舌を巻いてしまった。

 元々、着眼点が鋭いとは思っていたけど……。

 それとも天馬と錦織の信頼関係あってこそだからだろうか?

 

 

「このことを調べたってことは、ぼくの話を聞いたから、だよね? そうなるとマダム錦織の……遺書ともいえるのかな」

「私と錦織さんの情報を信じられるかどうかは……みんなに任せるね」

 

 

 天馬は彼女が残したという"メモ"を見せてくれた。

 

 

 

 

 

『カリモノ』

 

 物理実験室で作られたクローン技術、あるいはホムンクルスに酷似した『ヒトガタの容れ物』

 臓器も肉体と同等に等しく、心臓型のパーツも人体と同じ動きを伴う禁忌の人形。

 人間の意志や人格をコピーして真似するAI『マナ』(■■■■財閥企業が開発)が搭載されている。

 

 本学園の『カリモノ』は95期生16人の生徒を模している。

 培養液で保管されたカリモノを使用するには、指紋の認証を必要とする。

 だが、完全な意志を持った個の人間としてカリモノを動かすには条件が必要。

 

 

 培養ドームと、生物実験室の棺は連動しており、

 人間としての肉体や脳を動かすためには、オリジナルの人間が死亡していなければならない。

 

 

 

 

 信憑性が高いか、低いかと言われたら極めて低い。

 俺たちはその光景を見ていない。

 なにしろ、こんなことってあり得るのか?

 

 科学の道に通じていた円居でも、こんな人間に等しい生命体を生み出すことはできるのか?

 

 

「ランティーユ。この情報をもとに改めて聞かせてもらうわね。あなたが見た『カリモノ』と呼ばれる人間の形をしたものは私たちの姿で、全員いたのね?」

「ウィ……ぼくが見た時は死んだ人たちも……みんないた……」

『もしカリモノが使われても裁判が終わるたびに新しく生成されるんだ! 科学の力ってすげーの!』

「ふん……否定しないんだな……」

 

 ……本当ということでいいんだな?

 

 確かめるように俺はマナクマを見遣ったが、アイツは右手をあげて固まったまま動かない。

 動揺する素振りすらも見せない。

 

 これは口を滑らせたパターンなのか?

 それとも、またいつもの気まぐれか?

 

「で、でもでも! どうして、ランティーユは、その部屋に入れたの? というより、なんでドアが開いてたの?」

「え、えっと、先に言っておくけど、マスターキーは持っていないからね?」

「そうだね、ランティーユくんは犯人じゃないよ」

「ウーララ!? 言いきっちゃうのかい? 逆にちょっとそれはそれでびっくりだよ……」

 

 天馬の言葉に、ランティーユは顔を引きつらせる。

 確かに、ここまで言い切れるなんて……。

 

 

 

 

 

「そもそも、今、裁判場にいる人たちの中に、犯人はいないと思うんだ」

 

 

 

 

 ……え?

 

 

 遠心力に任せて回っていたはずのコーヒーカップがいきなり止まったように。

 ぴたりと、彼女の言葉によって裁判の空気は静止したようだった。

 

 

「天馬? なにを言ってるんだ……? 犯人がこの中にいないなんて……」

「私たちの中で、被害者の2人を殺すのは難しいんだ。……信じられないかもしれないけど。でもね、もし“カリモノ”の情報が事件に関係するなら、私たちの中に真犯人はいないという可能性が高いんだよ」

「じゃ、じゃあ、だれが犯人だっていうんだ?」

「絞れる範囲では2人」

 

 天馬は淡々と告げた。

 意識が戻ってきたというのに、天馬は相変わらず度胆を抜くようなことを言うのか。

 

 

「"自分の指紋でなければカリモノは使えない"。そして"生きた人間としてカリモノを動かすには、元の人間が死んでいなければならない"……それで考えられる一つの可能性があるんだ」

 

 

 天馬は一息吐いた後に、一つの言葉で俺たちを突いた。

 

 

 

 

 

「真犯人は自分のカリモノを殺した。そして事件も自分のことも隠ぺいをして、今も生きているとも考えられないかな」

 

 

 

 脊椎が鈍器で殴られたような衝撃。

 また崩れ落ちそうになってしまい、思わず証言台に手をついて床を踏みしめる。

 

 

「そ、それって萩野か、錦織……どちらかが生きているって言いたいのか……!?」

「そう、どちらかが被害者の一人」

 

 なんてふざけた裁判だと罵りたかった。

 だけど、これがもし本当だったら、その犯人に俺は同じ言葉を言えるだろうか?

 

 

 

 

 

「そして、もう一人が……この事件の真犯人だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 油断してしまうと、また意識を飛ばしてしまいそうだ。

 証言台に寄りかからないと体全体に迸る動揺の波を抑えきれそうにない。

 

 自分の呼吸音に気が散りそうになる。

 一旦、その息の根を止めるように苦い唾を飲みこんだ。

 

 

「その、天馬。2人に絞れるっていうけど……あり得るのか?」

「それが本当だとしても……本当の真犯人は"拘束されて殺された萩野"か、"殴られて殺された錦織"か……そもそもカリモノを見分けることはできるの?」

「そ、そうだ! マナクマはさっき、裁判が終わったらカリモノ……ってやつをほじゅーするって言ってたよね!? まだ裁判は終わってないから、リンゴのマークのお部屋を見に行ってもらおうよ!」

『行くわけないだろ! だいたい、ボクの宝物のカギがなくなってんのにムチャ言わないでよ! いいから返せよな!!』

 

 マナクマはぷんすかと口にしながら、立腹しているようだった。

 まだマスターキーに執着しているのか……。

 

 

「なあ、"マスターキー"を持っていたのも犯人なのか?」

「私は、そう思っているよ」

「やっぱり犯人が"マスターキー"を……正直、ぼくは図書館からマダム錦織が気づいて手に入れたものだと思っていたけど……」

「図書室にあったの? それは初耳だわ」

「ウィ。それはムッシュ七島と、ムッシュ萩野が一緒だったから分かるよね?」

「ああ。職員室の金庫にあった2つのマスターキー……1つは角が持っていたけどマナクマが回収した。もう一つは角が白河に渡して、アイツが図書室に隠したみたいなんだけど、なくなってしまったんだ」

「だが、"マスターキー"を持ってなになるんだ……?」

「物理実験室に入るためだよ。それと、ランティーユくんを混乱させるため」

「……うん!?」

 

 自分の名前が出るとは思わなかったのか。

 ランティーユは喉に物が詰まったように素っ頓狂な声を上げた。

 

 

「きっと、犯人にはランティーユくんの挙動も分かっていた……とも考えられるんだ」

「なんてこった! 犯人は読心術を持っているって言うのかい?!」

「…………もしかしたら、そうなのかもしれないね」

 

 そこは「そうかも」で、ぼかしてしまうのか……。

 天馬はまた一息を吐いて、ランティーユに向き直った。

 

 

 

「ねえ、ランティーユくん。白河くんが図書室に鍵を隠したのは、いつだと思う?」

「え? ……えっと、多分だけど、"マダム角が殺人鬼に依頼したとき"だよね? つまり、辺見じゃなくて殺人鬼の白河海里の人格の時に隠した。辺見がマスターキーをぼくたちのため残すなんて考えられないから」

「そうだね、じゃあ、そのうえで聞きたいことがあるんだけど……ランティーユくんたちは、第4の事件の時、辺見くんを植物園に放り出した後、なにをしていたの?」

 

 

 確認作業のように、散らばったパーツを丁寧に切れ目を見て組み合わせていくような……。

 丹念で、ある意味では、執念深い鷹のように天馬の瞳が鋭くなった。

 

 ……前回の事件のことを聞いたところでどうするんだ?

 

 ランティーユも困ったように眉を潜めている。

 

 

 

 

 

「もしかして、捜査をサボったと思われてるのかい? ……とにかく、辺見を植物園に送り込んだ後だよね? マダム錦織と、ぼくは美術室でマップを作っていたんだよ。もちろん、マダム角は植物園で亡くなっていたことはみんなも知っているよね……あとは…………」

 

 

 

 

 

 一時の、熟慮の後に飛び出したのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 このタイミングで聞きたくなかった。

 それは野球バットで足を挫かれたような疑問詞だった。

 

 

 

 

 

 

「ま……まさか……ウソだろ、そんな…………っ?!」

 

 

 

 

 

 

 いやだ。やめてくれ。

 ランティーユ、お願いだから嘘だと言ってくれ。

 

 

「待て。待ってくれ、ランティーユ」

「そ、そうだ…………あ、あのとき、彼は……学園内の資料があるかもしれないって……図書室に行ってくるって……」

「やめろっ!! 待てってば!!!」

 

 思わず、手のひらを広げて証言台をばんと叩いた。

 滲む痛みに顔をしかめそうになるが、頭を軽く揺らしてそれを振り解く。

 

 

「な、なにを言って………!? それだけでアイツが犯人だなんて……ふざけないでくれ!」

「ちょ、ちょっと、まずは落ち着いて。まだそうだとは決まっていないわ」

「そ、そうだよ、ムッシュ! ぼくだって信じたくない……! こんなのありえるはずが」

「それだけじゃ根拠にならないことは知っているよ。だから、まだ言わせて」

 

 矢継ぎ早に飛ぶ言葉を前にしても、天馬は落ち着いてそれを翻すように言った。

 

 どうして、こんなにも立ち向かえる勇気があるんだ?

 視線で尋ねても、彼女から答えは得られなかった。

 返ってきたのは弓矢のように鋭利でありながら、冷たい美しさを保った視線だけだった。

 

 

「音楽室の"コントラバスケース"の中に卒業証書を入れるような"黒い筒"があったよね? その中には、なにが入ってたのかな?」

「たしか……"木の破片"っぽいものが入ってたわ。あの木の破片は折ったような痕もあったわね……あれって、なんだったのかしら?」

「元々、なにかを折って……"卒業証書の筒"に入れて隠していた……そして、詩音に奇襲をかけたのか……?」

「そ、その折ったものがなんなのかってことなのだ!」

 

 折ったものがなにかなんて……

 ちらりと、確認するように天馬の立ち姿を見遣る。

 

 

 ……ああ、やっぱり彼女は、分かっているようだ。 

 

 俺は心臓を掻き出すようにYシャツ越しに胸を掴んだ。

 

 

「あれは、"模擬刀"だったんじゃないのかな」

「"模擬刀"? それって購買部のガチャマシーンで手に入れられるはずよね。……でも、どうして模擬刀なんて言えるの?」

「それはランティーユくんが手に入れた証拠にあると思う」

 

 ランティーユはおっかな驚いたように目を見開いたが、すぐに考え込むような仕草に戻る。

 ええと、とモノクルの縁をなぞりながら視線を泳がせる。

 

 

 

「ぼくが手に入れた証拠? そんなものが……………あっ!!」

 

 

 しばらく、口うるさく考えていたランティーユだったが閃いたようだ。

 目を大きく見開き、青くなった小さな唇を触っている。

 

「ま、まさか、"髪の毛"かい?」

「へけ? かみのけ?」

「ウィ……コントラバスケースの中に残っていた"髪の毛"には、なにかキラキラしたものが付着していたんだよ」

「………! そう言えば、あの景品の"模擬刀"は表面が金箔だったわね。柄の部分は金箔じゃなかったけれど……それじゃあ、あの黒い筒が濡れていたってことは、"洗い流した"から……?」

「きっと"氷"を入れて溶かして洗ったんだろうね。それで金箔を流し落としたんだよ」

「髪を剃ったのも、マスクを装着するためもあるが……金箔がばれないようにするためだったのか……!?」

 

 ただでさえ、"模擬刀"という単語で、落ち着きが失われているというのに。

 俺は腕組をしたまま、黙ることしかできなかった。

 こうでもして、手持無沙汰をなくさないと……また崩れ落ちてしまいそうだった。

 

 

 

「……私、"金箔の模擬刀"は、以前に見たことがあるわ」

「ウィ……ぼくも、たまたまっていうか、偶然にも思い当たる節がある」

 

 

 それは、紅や、ランティーユだけじゃない。

 俺だって、見覚えはあったのは知っている。

 

 俺だって知っているけど。

 知らないと言ったら、嘘になるけれど。

 

 

 

 

 


 

 

「そうだった! じゃあ、棒はこれな!」

 ■■がスイカを置いて取り出してきたのは……金色の棒状のものだった。

 

「……これって、“模擬刀”か?」

「うわ、金箔ヤッバ!? 高級な和菓子みたいじゃん!?」

「購買部のガチャでちょうどいいのがあったからな! そんじゃ、七島から」

 

 ■■から模擬刀を受け取る。柄の部分は金箔ではないから、汚れる心配はなさそうかな。

 

 


 

 

 

 

 

「金箔の模擬刀は、第2の事件。井伏の遺体が発見される前。スイカ割りのときに使われていたのよ。それを持ってきていたのは…………」

 

 

 

 

 俺の脳裏に焼きついて離れない屈託のない笑顔。

 

 でも、いやだ。

 そんなの認めたくない。

 デタラメじゃないか。

 

 出来損ないの言葉が浮かびあがっては消えていく。

 

 

 

「い、いい加減にしてくれ。それは証拠には」

「それだけじゃないよ。それに、もう一つ、奇妙なことがあるんだ」

 

 俺の言葉を被せるように天馬は言い放つ。

 

「犯人だってわかりそうなこと……"オルゴール"のことなんだけどね」

「"オルゴール"って……あなたの話では、壊れたから錦織が修理するために持っていたって聞いたけど……」

「うん。でも、これっておかしくないかな。たぶんだけど、頑張って直したんだろうね。"錦織さんのメモ"に……オルゴール、直す……なんて書かれているから……犯人は。きっと」

 

 天馬はさりげなく言ったけど、たしかに聞こえた。

 倒置法ではあるが、オルゴールを修理した人物を言った。

 

「え!? 犯人がオルゴールを直したのかい?!」

「……そうだと思うんだ。でもね、その犯人がマスターキーを持っていても、工具セットは手に入らないんだよ。普通だったら男の子の部屋に行くところだけど、それが犯人にはできなかった。白河くんの工具セットはランティーユくんが保管していたんだよね。円居くんと井伏くんは持っていない。だって、あの工具セットが配布されたのは第2の事件の後だからね。……あとは、今いる男の子だけど……さすがに、寝ている人の部屋に入ることはしないと思う。そこでバレたら計画が台無しになっちゃうから」

「あのタヌキも……ヒールが高い女が持っていたせいで、焼け焦げて使いものにならないからな……」

「真田っちが持っていたんだ……で、でも、それでわかることってあるの!?」

 

 工具セット……天馬は一人だけ、わざとらしくその人の名前だけを言わなかった。

 

 黒生寺が保管している、“彼”の工具セットのことを。

 真犯人を……いいや、俺のことも追いつめるかのように。

 

 

「犯人は、錦織さんが"生きている"って思わせたかったんだよ。もしも錦織さんが犯人だったら……そんなオルゴールをわざわざ私の部屋に置いたら怪しいよね。自分が生きているっていう証拠になってしまう。それは自分を追い込むことになるから」

「ふ、ふざけてやがんのか……その犯人は……!」

「ううん、ふざけてなんかないよ。その犯人は大真面目にやったんだよ。だから、こんな事件が起きてしまったんだ」

 

 ……天馬は、なにを言っているのだろう?

 さっきから、ありえない話じゃないか。

 

 

「な、なあ、天馬……やっぱりお前の言っていることはおかしくないか……?」

「…………私、おかしなこと言ってるかな」

「い……っ、言ってるぞ……!! カリモノとか、マスターキーとか、なにもかもが馬鹿げているじゃないか!! だれも実物を見ていないのに!」

「ぼくのことも信用できないのかい!? と……言いたいところだけど、ぼくもそう思うからお互い様だね……」

「こらーっ! ランティーユはネガティブ禁止なのだ!!」

 

 

 そうだ、なにもかもがおかしいじゃないか。

 こんなことがありえるわけがない。全部憶測じゃないか。

 みんな、どうかしているんじゃないのか?

 

 

「……バカげているのかな? でも、七島くんが超高校級の罪人に会ったっていうのも、不思議な話だと思うんだ」

「そ、それは……疑われても仕方ないかもしれないけど……」

 

 ま、また、これまた嫌なところを突いてきたな。

 これに関しては俺も記憶が曖昧だから、思わず弱みを見せてしまった。

 それでも、俺が見たことが真実なのは変わりない。

 

 

 

 

 俺は……いいや、俺が、この事件の真実を見つけなければいけないんだ。

 

 

 

 

「……それじゃあ、もう一度、七島くんが見た影について話そうか?」

 

 

 

 俺は、だれと戦っているんだろう。

 どうして、天馬を睨みつけているのだろう。

 

 

 

 ――真実のため?

 

 

 ――俺のため?

 

 

 ――みんなのため?

 

 

 答えは浮かびあがらなかった。

 天馬は物静かな少女の顔立ちで、俺のことを見据えていた。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、聞かせて。七島くんが保健室で寝ている時に来た"早刃宮ジャンヌ"を名乗った人物のことを」

 

 

 

 

 

 裁判は再度加速する。

 冗談だろうという引き攣り笑いも置き去るぐらい。

 それは目まぐるしく……置いていかれないように、俺はゆっくりと息を吸った。

 

 

「早刃宮ジャンヌ……いったい、なにものなのだ!?」

 

「そもそも今回の事件に関係あるのかい?」

 

「七島くん、覚えている範囲で教えてくれないかな?」

 

「ああ……でも、保健室で"寝たまま見た"んだけど、ぼんやりしていて……顔も思い出せないんだ」

 

「できるだけでいいよ。詳しいことを覚えていたら、聞かせてもらってもいいかな」

 

「ぼんやりしたものを、むやみに引きずりだすのもどうかと思うけど……七島、あなたはどこまで覚えている?」

 

 できるだけと言われても。

 ここで詰まってしまっていたら怪しまれるだけか?

 覚えている範囲で答えてみよう。真実であることは変わりないのだから。

 

 

 

「ええっと……"匂い"は特にしなかったかな。後、"身長"も少し高かった……それに少し"声"も低めだった。“髪の色”は……明るめに見えたかもしれない。短髪だった気がするよ」

 

「それだけじゃ分からねえ……だいたい、本当に早刃宮ジャンヌなのか……?」

 

「それもわからないんだ。早刃宮って相手が名乗ってただけだしな。そいつは俺と会ったことあるって言ってたけど、俺が会ったのは初めてだったから……」

 

 これでいいはずだ。

 これが、俺自身の真実の答えだ。

 だから、誰にも指摘されることなんて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めが甘いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の言葉を止めたのは、たった一つの言葉だった。

 息切れを起こす前のように、ひゅっ、と喉が鳴ってしまう。

 

 

 ……違うだって? いいや、違わない。

 

 俺が正しいことを言っているってことは、俺が知っているんだ。

 前髪をかきあげながら、彼女を微かに睨みつけてしまった。

 

 だが、彼女は迷いなく、こちらを見つめ返している。

 

 

 

「天馬、今の話はどこも間違ってないはずだぞ」

「ううん、それでもおかしいんだよ」

「おかしいって……どこがだ? 早刃宮を見たことは俺しか知らないんだ。天馬が知るわけがない」

「そうだね。その人物が誰だったかを知ることができるのは、七島くんだけだから。……でもね、私は七島くんのことを知っているよ」

「いったい、なにが言いたいって」

 

 天馬の底知れぬ瞳に吸い込まれそうになる。

 ダメだ。惑わされるな。相手が天馬とはいえ怯んではいけない。

 

 

 俺の"答え"を、喉が枯れても、身が千切れても言わなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって、私は、七島くんの"体勢"を知っているから」

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 答え、を………………。

 

 

 

 ………………あ、あれ?

 

 

 

 

 

「七島くんは言ってたよね。寝たままぼんやりと人が立っている姿が見えたって……でも、それだとしたらおかしいんだよ」

 

 

 

 

「…………あ、」

 

 

 

 

 ……………わかってるよ。

 

 

 

 その違和感がわからなかった、っていうのは嘘になるよ。

 

 

 

 でも、俺は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝ていたはずの七島くんが、どうして、その現れた人が"自分より身長が高い"って、咄嗟に分かったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――それでも、"俺"は。

 

 

 

 巨大な"影"によって、背後から包み込まれる。

 視界に蜘蛛の巣のような亀裂が入った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 被せられていた、“偽りの記憶の殻”が破けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 萩野が死んだ。

 

 

 俺が扉を開けると、炎の中で椅子に座って眠っていた。

 サイレンが聞こえたと共に鎮火されるや否や、俺は彼に駆け寄った。

 

 

 

 なあ、萩野、と呼び掛けても。

 

  

 

 『よう、七島。どうしたよ、そんなシケた顔して』

 

 

 ……なんて。返って来ることは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、七島。どうしたよ、そんなシケた顔して」

 

 

 ――――そんなことは、二度と訪れなかった。

 そのとき、背後からは聞き慣れた声が飛んできたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺は、ずっと"嘘をついていた"んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 …………お前は、早刃宮ジャンヌじゃないんだろう。

 

 ベッドの真横で、俺を見降ろしている"アイツ"に視線で応じた。

 バレたかと言わんばかり、"アイツ"は大きく肩を竦めていた。

 だけど、なにもかもが予想通りのように、“アイツ”は落ち着きを払っていた。

 

 

 

『お前のこと、知っているぞ』

 

 俺がそう言うと、"アイツ"は困ったように、それでいてどこか恥ずかしそうに頭をかいた。

 

 だって、お前のことは誰よりも知っているから。

 その声も、その体格も。その顔も…………なにもかもを。

 

 

 

 

 

 "そうだ。オレは、嘘をついた"

 

 

 

 知っている。

 お前は、自分が死んだことを偽ったんだ。

 

 

 

 

 "すべてはオマエのため。オレは錦織を殺ってしまったよ"

 

 

 

 なんで、俺のために?

 どうしてお前が嘘をついて、錦織を殺す必要があるんだろう。

 嘘にまみれた、なにもない俺のために……何故?

 だけど“アイツ”は答える素振り一つ見せてくれなかった。

 

 

 

 

 

 "だから、オマエは騙されてはいけない。必ず真実を見つけるんだ"

 

 

 

 

 

 "そして……オレを見つけ出した暁には、オレの目の前で絶望してほしい"

 

 

 

 

 

 ……ああ、そうか。わかったよ。

 ……………いいや、わかっているんだ。

 お前が嘘を吐いた、それが真実ならば……俺は、お前のために嘘をつけばいいだけだ。

 

 俺がいてお前がいる。そしてお前がいて俺がいる。

 お前がいないと、俺は生きていけないのだから。逆も然りだ。

 

 

 俺には、なにもない。

 才能も名前も肉体もなにもかもが仮初の偽物。

 元々、俺は、そういう人間として生まれてしまった。

 だから、なにもない弱い俺は強いお前に頼るしかないんだ。

 

 

 

 

 

 "わかっているじゃないか"

 

 

 

 

 そう言って、そっと、お前は俺の髪を撫でてくれた。

 俺の熱を測るような仕草。

 こつん、と人差し指で額を押されると同時に顔が覗き込まれた。

 見慣れた影がゆっくりと俺を包み込んだようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――その顔は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その、希望という名の絶望的な微笑みは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………あ、」

 

 

 

 そいつは、笑っていた。

 

 

 俺の、知っている笑顔で。

 俺の知っている、"あの彼"が。

 

 

 

 

 

 

 

 裁判場に意識が戻った俺に訪れたもの。

 嫌悪。憎悪。吐き気。頭痛。眩暈……拒否反応で体が暴れてバラバラに壊れそうだった。

 体液はおろか、脳みそも心臓も吐瀉してしまいそうになる。

 ボロボロと音を立てて崩れ、そして足元も掬われて落ちていく希望が絶たれた、この状況に名前をつけるならば、それは、きっと…………。

 

 

 

 

「い、いやだ……こ、こんなのいやだ……っいやだ、いやだっ! なにもかも間違ってる! 馬鹿げた作り話だっ!!」

 

 

 だけど、だれも賛同してくれなかった。

 

 ならば俺が代わりに真実を言わなければダメだ。

 こんなことは間違っていると。

 

「厶、ムッシュ……ぼくだって、こんなの信じたくないよ……でも、これが、真実ならハッキリさせないと」

「そんなの知らないっ! 俺は信じないっ!」

「信じたくないのは同感だ! でも、わかっただろう?! これが真実なんだよ!」

「信じたくないなら信じないって答えでいいだろ!? そもそも、ありえないことばかりじゃないか! 仮の記憶、真実の記憶、カリモノ、マスターキー……どれもこれもが非現実的すぎて、なんだか映画を見ている気分だよ。実際に、俺は映画を見ているだけなのかもしれないな。くだらないB級シネマだ。つまらないと思いながら、ぼんやりと眺めているんだ。だから……! 早くエンドロールを流してくれよ! 陽気な音楽を流して、ENDの文字で締めてくれ! 期待外れだったな、って隣から声をかけられて……そ、そうだ、俺は約束をしているんだ。アイツと映画を見ることを約束していたんだよ! どうしてこんな大切なことを忘れていたんだろう!?」

 

 次々と支離滅裂な言葉が口から飛び出していた。

 ……いったい、なにを言っているんだろう。

 

 俺は、なにがしたいんだ?

 

 忌々しく顔を歪めて舌打ちしたのはランティーユだった。

 いかれていると言わんばかりに、彼はこめかみをとんとんと人差し指で叩く。

 

 

「もう、いい! 君が現実逃避するぐらいなら、ぼくがハッキリさせてやるから……!」

「ダメだよ、ランティーユくん」

「なんだい、マダム!? この事件の真相を明らかにさせないと、ぼくたちは!!」

「ダメなんだよ、これは七島くんにやってもらわないと……あの人は、認めない。きっと、七島くんの言葉でない限り…………ねえ。そうなんだよね、マナクマ」

 

 先ほどから天馬は切羽詰っているような口調だった。

 この判決を急いているような眼差しでマナクマを睨みつけた。

 

 

『はにゃ? なにを言っているの?』

「あなたは、マナクマとして監視していたんじゃないのかな。この裁判を、いいや、動機の時点からずっと。みんなを弄んでいる。そうなんだよね」

『えー、意味わかんなーい! 意味わかんなすぎー! たけのこー! まつたけー!』

「マスターキーを持っていたのは、あなただったんじゃないのかな。だから、今、あなたは、マナクマを操作している」

『どいつのことだよ! インド人か!』

「元々の操縦者から入れ替わった。あるいは、元の操縦者が乗っ取られた……だから、あのとき、操縦者不在のマナクマは体育館で倒れていたんじゃないかな」

 

 元々の操縦者?

 ……それって、なんだよ?

 

 

「今までのマナクマを操作していた人がなにかあって、それで、マナクマは動かなかった。今までと違って個別に動機を渡したのも、私たちと一緒に生活をしながらも裏でマナクマを操っていたからじゃないかな……それに、ずっとマスターキーがなくて怒っているみたいだけど、本当はマスターキーを持っているはずだよ。もしも、私たちの中に犯人がいたら、物理実験室に入るときにマスターキーを使うんだから、その時点であなたはマスターキーを取り上げられるよね。それなのに……どうして、マスターキーを持っていないって怒っているの? それもウソなのかな?」

 

 マナクマは黙っていた。

 ……追いつめられていると言うのか?

 

 まさかマナクマが……いや、犯人はマナクマとして俺たちを観察していた?

 じゃあ、元々マナクマを動かしていたヤツは、どこにいったんだ?

 

 それとも今回の犯人こそが、このコロシアイの黒幕なのか?

 

 

「体育館で動かなかったマナクマは、操作できる人間がいなかったから……だから、あの中に、あの時、生きていた人たちの中に、新たにマナクマの主導権を握っていた人がいるんだ」

『いみわかんないなー、オマエのほうがラリってるんだよなー。ムムーーンンササイイドドへへ』

「私たちの中に犯人はいないよ。早く姿を見せて」

『バーカ! バーカ! そんなハッタリ通用しませーん! オマエラの中に犯人はいるんだよ!』

 

 いや、追いつめられているのは天馬のほうなのか?

 根拠は言い切れないのか、少し唇を微かに歪めていていたが、ついに天馬は黙ってしまった。

 ……彼女もここまでなのか。

 

 

 

 

『……まっ。とにかく、七島くんに決めてもらおうか』

 

 

 

 ……………は? どういうことだ?

 俺の疑念が飛び出す前に、マナクマは、「もう」と軽い呆れを吐き出す。

 

 

『やだなー、いつものように決めてもらわないと! 天馬さんを信じるか? それとも自分を信じるか? ファイナルアンサー!』

「それは、質問になってないよ」

 

 

 天馬はきっぱりとマナクマの言葉を跳ねのけた。

 

 

 

「どちらの答えでも、それは"真実"になるんだから」

 

 

 天馬は、俺になにを求めているというんだ。

 いや、マナクマも……この裁判……紅も、黒生寺も、大豊も……自分がはっきりさせると躍起になっていたランティーユまでも。

 どこか不安げに、それでも俺の言葉を待っているように視線を注いでいた。

 

 

 まさか、俺に決めろって言うのか?

 

 

 

「……七島くんはもう知っているんだよね」

 

 

 彼女も感情を抑えるような、不自然なほどに静かな声で言った。

 いつも自然体に見える彼女でも、こんなに緊張することがあるのだろうか。

 

 

 

「私たちはなにも知らない。でも、七島くんは知っているはずだよ。この事件の真実を」

 

 

 

 ……天馬の言う"真実"

 ……俺のさっき思い出したこと。

 "アイツ"が生きていることを知っている……この真実のことか……。

 

 

 でも、これは、本当に"真実"なのか?

 

 信じるな。言ってはダメだと先ほどから耳奥底から誰かが叫んでいる。

 

 

 

 "真実"は重い。かつてこんなことを言っていたのは錦織だ。

 誰かのための"真実"なんていらない、と彼女は言った。

 そんな彼女のような強さを俺は持っていない。

 

 

「あの人じゃなくて、自分自身のことを信じて。七島くんはそれをしてきたよ。……戦おう、七島くん」

「戦うって言ったって、そ、そんな……俺はそんな大層な人間じゃないのに……」

「"今の七島くん"が望む結末は、みんなの死? それとも犯人の人生?」

 

 

 みんな……それは天馬。紅、黒生寺、大豊、ランティーユ。

 そして、俺のことだろう。

 

 そして、犯人は……そんな選択を、俺にどうして求めるんだ?

 俺だからこそ、求めらているのか?

 

 

「……犯人は、なにがしたいんだ?」

「それは私にも分からない。それを知るためには……きっと、七島くん自身で、真実を明らかにしなきゃダメなんだ」

 

 

 澄み渡った未来の目は、俺の邪な隠し事を照らそうとしていた。

 犯人がしたかったことを知るためには、俺が真実を白日に曝さなければならないのだろう。

 

 

 

 

 

 でも、俺の知っていることは、本当に真実なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は…………真実を………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やめろっ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 大豊が咄嗟に耳を塞いだ。

 それだけじゃない、ランティーユも、紅も、黒生寺も、天馬も目を丸くさせている。

 

 

『ふざけるな……これが真実だって? 冗談じゃない……! ちがう、ちがう……っ! ちがうんだっ!! 犯人は俺なんだっ!! 萩野が犯人なワケがないだろっ!!』

「なっ、七島っち? え? ちょ、ちょっと」

 

 

 俺の声……いいや、これは『過去の俺』の悲鳴だ。

 口を咄嗟に塞ごうとしたが、体が思うように動かない。

 

 

 

『俺のクセして、親友を捨てるなんて気でも狂ったんじゃないか……っ! 犯人は俺だ! この事件の犯人は俺なんだよ!!』

 

 

 

 ダメだ、このままだと自分が飲み込まれてしまう!

 だけど、止めることができない。

 今は自分の声を集中して聞かなければならないようだ。

 

 …………きっと、突破口はあるはずだ。

 それに賭けて、待ち望むしかない…………!

 

 

 

 

 

 

 

『あんな見ず知らずのヤツらの言うことを信じて親友を捨てる気なのか!? お前が信じるべきは彼だけだ!!』

 

 

 

 いいや、見ず知らずなんかじゃない。

 彼らは俺の大切な仲間なんだ。

 紅も、黒生寺も、大豊も、ランティーユも、天馬も……!

 

 

 

『俺にはなにもない……だれよりも弱くて、望みも未来もない。ガラクタだ……! 俺は彼無しでは生きていけない! だから死ぬんだ。みんなで死のう。そして、こんな人生、終わらせてしまいたいんだ』

 

 

 それは違う。

 ……いいや、間違ってはいないのかもしれない。

 たしかに俺は弱くて、才能も天運で手にいれたも同然だ。

 

 だけど、今の俺は死を望んでいない。

 心半ばにして命を散らした彼らの姿を思い出す。

 仲間たちの死を無駄にして、こんなことで俺が命を放り出すわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

『仲間、仲間だなんて……たかが数週間だろう? そんな一時の感情で信じていいのか? 振り回されていいのか!? そんな、短い期間の仲間……いいや、他人なんか信じたら……後悔するぞ。

 せっかく信じたのに飽きられ、見放され、裏切られる。そして最後はいつものように嘆くんだ。やっぱりそうだった。なにも変わらないままだ。結局、俺はなにもできない……俺には……なんにもなかったんだ、って……』

 

 

 

 ……過去の俺は泣いていたようだった。

 

 自分の見知らぬ言葉と思いに身が張り裂けそうだった。

 同じ自分から生産された劣等感が、こんなにも認めがたいのに身に覚えがある。

 

 

 本当に……俺は、なにもできないのか?

 

 

 

 

 

 

『そうだよ……俺は、なんにもない……! だから……俺は、弱いままでいい。見て見ぬふりをすればいい。知らんぷりをすればいい、黙っていればいい! だって、アイツも言っていただろう!?

 

 

 そうして、いつものように……"なにもできない俺のまま"でいればいいんだよ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………止めが甘いぞ」

 

 

 

 

 

 “過去の俺”の言葉を止めたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今回だけじゃない。真実を突き出した時は、いつも後悔していた」

 

 

 

 “今の俺の声”は小刻みに震えていた。

 今と過去の声を混ぜ合わせるように、溜まっていた唾をゆっくりと呑みこむ。

 

 

 

 

 

 

 

「それでも……真実を探し出すんだ。みんなのために、自分のためにも」

 

 

 

 

 

 いつか、錦織に言った言葉を繰り返していた。

 彼女はそんな俺の言葉を切り捨てた。

 人としての情けを捨てろ、誰かのための真実などいらないと。

 

 

 …………でも、やっぱり俺にはそんなことはできなかった。

 

 

 渋い顔をしていたが、やがて決心したように頷く黒生寺。

 祈るように指を組んで未来を見据えている紅。

 武者震いのように震えながら、自身を勇気づけるように握り拳を作る大豊。

 モノクルをかけ直して真実を見極めようとするランティーユ。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 ――七島くんを一人にはしない。

 

 

 時に俺の手を引いて、どんなときも、そして今も。

 

 俺の進もうとする道を見守ってくれた天馬。

 

 

 

 ここまで一緒に戦ってきた彼らを裏切れない。

 みんなを裏切って、これ以上、ウソを振りかざしたくない。

 

 

 

 

「言われなくてもわかってるんだ。俺は臆病だってこと。弱いってこと。……苦しくて、辛くて、いつも逃げたいって思ってしまう。時にウソもつく。それでも真実を見つけようとしてしまうのはやめられないんだ。情けなくても、突き進んでしまう……これは正義とか希望とか大層な信念とかじゃない。

 

 …………きっと、俺が弱いからだ。弱いからこそ、なんとかしたいと立ち向かってしまう。俺の性分なんだろう。それは……これからもずっと変わらないと思う」

 

 

 

 ……それで、いいんだよ。

 天馬がそう言うように穏やかな顔で頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、ずっと答えを知っていたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 ――『今の俺』は、本当にバカだ。

 

 

 

 ――本当に。いつまで経っても。

 

 

 

 

 ――くだらない、弱虫のカラッポの“俺”だ。

 

 

 

 

 

 

 『過去の俺』が脳裏で、ぽつりと呟いた。

 何度でも言え。『今の俺』は、過去にもウソにも逃げることはしない。

 

 ……………さあ、覚悟は決まった。

 

 

 

 

 

 

 ――後悔するぞ。

 

 

 

 

 

 

 呪いのような捨て台詞と同時に、過去の声が終息した。

 高鳴る心臓を前に大きく深呼吸をする。

 

 

 

 

 

 

 

「真相を明らかにしよう。この事件の……すべてを……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" クライマックス推理 "

 

 

◆Act1

 

 この事件は、犯人が音楽室に錦織を呼び出したことから始まった、なにを話そうとしたのか……それは俺には分からない。

 やって来た錦織に、犯人は後頭部を"金箔の模擬刀"で殴りつけたんだろう。

 事前に、折っておいたものを隠して襲い掛かったのかもしれない。

 錦織も抵抗はしたのだろうけど力の差は歴然だった。

 そのまま何度も顔を殴られて……錦織は絶命した。

 そのせいで錦織の頭部、"髪の毛"には模擬刀の"金箔"が付着してしまった。

 だから犯人は錦織の髪を切って、金箔の跡を残さないように処理したんだ。そして、金箔の模擬刀の金箔を取るために、"氷"を"動機の筒"に入れて、"模擬刀の一部分"を入れて金箔を落としたんだろう。

 これで証拠の隠蔽はできた……と犯人は思い込んだんだろう。

 だけど、ランティーユが見つけたコントラバスケースの中に落ちていた、"髪の毛"のおかげで凶器の正体を知ることができたんだ。

 

 

◆Act2

 

 犯人は錦織の死体を隠す際に、彼女の衣服などを確認したんだろう。

 その際に、見つけたのが"メモ用紙"と"オルゴール"だったのかもしれない。

 七時までに天馬のドアの前に置くという約束を破ってしまえば、錦織になにか起こってしまったということがバレるのを犯人は恐れたのだろう。

 だけど、錦織自身は誰にも"工具セット"を借りることもなく、犯人も"工具セット"を持っていなかったんだろう。オルゴールを直す術がなかった……だから、取ってつけたように技術室の接着剤で直したんだろう。

 

 犯人は、カモフラージュも兼ねて錦織の服を脱がして、代わりに"四月一日の制服"を着せた。でも、四月一日の服は、血に汚れてたから……犯人はナイフで錦織の腹を刺したんだろう。そう……彼女が死んだ状態で……だから錦織の服は綺麗なままだったんだ。

 犯人は血のりに濡れた顔の汚れを落とすために、氷をはさませたまま"マスク"をつけたんだろう。そして、彼女の遺体を"コントラバスケース"の中に隠した……だから"コントラバスケース"に"水"が残ってしまったんだ。

 

 

◆Act3

 

 そして犯人は次の準備に取り掛かった。

 

 ……にわかには、信じがたいことだ。

 犯人は事前に手に入れた"マスターキー"を使って、5階の鍵が開かないリンゴが描かれた扉に忍び込んだんだ。

 

 カリモノ……俺たちに瓜二つの生命に似たモノが保管された部屋だ。

 犯人は自らのカリモノを学園長室まで持ち運んで、偽装の準備に取り掛かった。カリモノを椅子に座らせると手首を手錠にかけて、わざとトロフィーで"後頭部"を殴りつけたんだ。自分が襲われて死んだということを偽るために……

 腕時計は6時にセットして自分で壊したんだろう。死亡推定時刻と一緒だ。

 そして、犯人は学園長室に火を放ち、部屋を後にしたんだ。

 

 

 

◆Act4

 

 犯人は最後に冷凍庫の中で爆弾をセットした。

 時間は6時……"冷凍庫"は核シェルターさながらの耐久性を持っていたから、犯人はそれを利用したんだ。きっと生物実験室にあった"冷凍庫"の張り紙で知ることができたんだろう。

 そして、早朝に壊れた"オルゴール"を天馬の部屋の前に置いてインターフォンを鳴らした。扉を開けてオルゴールを拾いあげた彼女を犯人は気絶させて……錦織の衣服と一緒にロッカーに閉じ込めた。

 

 

 

 まもなくして、犯人は俺の部屋に来て、あることを言ったんだ。

 ……犯人がなんて言ったか? ……今なら言えるよ。

 

 

 アイツは言ったんだ。

 

 

 

 

『学園長室へ、すぐに来てくれ……オマエの親友のために』って。

 

 

 

 ……この時点で、俺は分かっていたんだ。

 

 本当は顔だって見えていたんだ。

 わかっていたけど、わかりたくなかったんだ。

 俺にとっても、この事件は、なにもかも茶番だったんだ。

 

 

 そして、俺が影を追って五階に辿り着いた瞬間。爆弾が作動した。

 だけどそれは"冷凍庫"の中の話。

 それでも、俺がドアを開けると学園長室は火の海だったんだ……

 俺は狂ったフリをした、彼が死んだって思いこむことにしていた。

 そして、黒生寺に運ばれている間に、犯人は錦織の死体を"コントラバスケース"の中から取り出して死体を出現させる。

 

 

 ……後は、どこでもいい。人数も少ない俺たちに見つからないように身を潜めるだけだ。

 

 

 

 

 

 俺は、すべてを知っていたんだ。

 

 アイツが残してくれた言葉。その意味を知るためにも。

 最悪で最低なふざけた裁判を終わりにするためにも。

 

 

 

 俺自身が歪めてしまった真実を直すためにも。

 

 

 

 

 

 

 

◆Act???

 

 

 裁判が始まるアナウンスが鳴って、天馬に続いて"アイツ"の部屋から出ようとしたとき。

 

 

 一つの手が、背後から伸びてきた。

 そして俺のドアノブにかけた手を掴み取った。

 …………いいや、違う。

 

 

 あの手は、一緒にドアノブを回してくれた。

 大きく熱い手を重ね合わせながら扉を開けてくれたんだ。

 

 

 

 

 

 "裁判で待っている。オレはずっとオマエを見守っているから"

 

 

 

 

 "彼"は平然と言いきった。

 俺が見知った手と顔立ちで。

 

 

 

 

 

 

"さあ、走れ。走るんだ"

 

 

 

 

 甘い知恵の実を差し出す蛇のような声色で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"オレは、オマエのことを信じているよ。……七島"

 

 

 

 

 急き立てられるように、俺はその言葉通りに走っていた。

 闇雲になにもかもを、今までの自分も見失うぐらいに。

 現実の時間を奪われた囚人のように。

 俺は、我を忘れて、走っていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はお前のことを守りたい一心でウソをついた。

 だけど、それは間違っていたんだ。

 でも、お前もそうなんだろう?

 本当は俺がここまで辿り着くことも見越していたんだろう?

 

 

 

 ……だから、終わりにしよう。この茶番のような裁判を。

 

 

 

 これが俺が知っている真実のすべてだ。 

 だから、今度はお前が答える番だろう。

 

 

 

 

 

 俺たちの知らない真実を……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えてくれ!! 萩野っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程から耳の奥で轟々と音が渦巻いている。

 疲労による幻聴かと思ったが、音はどんどんと大きくなっていく。

 周りの皆も不安げに辺りを見回し始めていた。

 

 音の方向は、エレベーターだった。

 エレベーターの上部につけられた針がガタガタと壊れたように何度も震えていた。

 

 

 

 

 やがて。

 

 

 

 

 チーン、という小気味良い音が鳴った。

 開け放たれた扉からスモークが溢れ出し、俺たちは慌てて顔を伏せる。

 

 

 だけど、現れた影は構わずに疾走していた。

 すべてを切り殴るように。

 走り、走り、駆け抜け――それは、“そこ”に着地した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信じていた。オレは、腹の底から信じていたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 スモークが晴れて、俺たちが顔を上げた時。

 玉座に座ってたクマは抱きかかえられていた。

 俺たちがいつも見ていたものと異なる……赤い瞳のクマのぬいぐるみ。

 

 赤い瞳のクマを抱きかかえたその男は、俺をじっと食い入るように見つめていた。

 玉座で足を組み、男はクリーム色のジャケットを着て、黒と赤のネクタイを呼吸と共にゆらゆらと揺らしている……あのクマと同じ配色だった。

 

 

 

 

「まあ御託はいいか。さっさと始めよう」

 

 

  

 玉座から弾き飛ぶように、ヤツは俺たちと同じ裁判場へと降り立った。

 偽物の遺影は蹴り飛ばされる。

 腰に手を当てた無敗の王者の如く、雄々しい立ち姿が裁判の一員として加えられた。

 

 

 

 

 

『だれもが血反吐をまき散らす絶望の真実を! お話してさしあげましょう!』

 

 

 

 

 屈強な腕に抱えられた"赤い目のクマ"はケタケタと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにもかも知っていたよ。オマエはいつも期待通りのことしかしないってこと。

 

 

 ありがとうな。オレの約束を守ってくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤い目のクマの主人……"超高校級のボクサー 萩野健"は微かに口元を緩ませていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" 学級裁判 中断 ?"

 

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