恋愛決闘─マスターデュエル─   作:新動良好

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対戦

 

 初対面から約二週間が経ち、俺は玲那さんと再び合うことになった。今度は2人で食事に行く予定で、その待ち合わせのため駅前で待っているところだ。

 

「こんにちは、悟司さん」

 

 名前を呼ばれ振り返ると、そこには玲那さんがいた。白のブラウスに薄めのジャケットを羽織り、スカートを履いていた。清楚な雰囲気でとても彼女に似合っている。

 

「お久しぶりです!玲那さん」

「はい、お待たせしました」

「いえ、全然待ってないので気にしないで下さい。それじゃあ行きましょうか」

 

 2人並んで歩き始める。目的地のレストランまでは徒歩で10分ほどの距離だが、その間俺達は他愛のない話をしていた。

 

 予約していた店は、駅から近い場所にあるイタリアンのお店で、店内は昼時で満席だ。というか、カップルと女性客が多い。

 こんな雰囲気の店に入るのは初めてなので緊張する……頑張れ俺。案内されたテーブルに向かい合って座り、注文を済ませた。

 

「悟司さんは料理って普段されるんですか?」

「ええまぁ。自炊してるので、基本的に野菜炒めとか簡単なものばっかりですね。玲那さんは?」

「私も似た感じです。仕事が終わって家に帰ってご飯を作って食べて寝るという生活で、同じ事の繰り返しで飽きてきちゃいますよね」

 

 彼女はそう言って、ため息をつく。

 俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。ちくしょう。もっとこう、気の効くようなことを言いたい。

 

 

「ただ、最近は楽しみも出来ましたけど」

 

 

 するとスマートフォンをタッチして、俺にも見覚えのある画面を彼女は見せてくれた。

 

「マスターデュエルじゃないですか!」

「はい、この前悟司さんに教えてもらったので始めてみました。……もしよかったら、料理が来るまで遊びます?」

 

 そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべる。

 ほほー、なるほど。玲那さんの意外な一面にちょっとドキッとしたけれど、そういう顔も悪くない。それは、つまり俺と対戦をするということですね?

 

「いいですよ。やりましょう」

 

 気づけば俺も口角を吊り上げる。

 マスターデュエルで知人とリアルで遊ぶのは初めてだ。年甲斐もなく童心に戻ったようで、俺はワクワクした気持ちになった。

 スマートフォンを取り出し、アプリを起動させ、対戦するためのルームを作る。

 

「よし出来た。それじゃあルームの番号教えるので入ってもらえますか?」

「わかりました」

 

 彼女は素直に従い、俺が作った部屋に入ってくれた。

 

「では──はじめましょうか」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 お互いに挨拶を交わして、対戦が始まった。最初のコイントスは俺が裏、後攻か。5枚のカードを引く。先行を取ったのは彼女だ。

 

 うーむ、微妙な手札。先行を取られたのは痛いなぁ……けど、玲那さんは始めてからまだ二週間くらいの初心者だろう?どんなデッキを使っているかは知らないけれど、そんなに強くはないはず。

 なら、ここは勝つことより、いかにお互い楽しくデュエル出来るかが重要か。自分の実力を出しつつ、彼女に楽しんでもらえるようにプレイしよう。

 

「私は、相剣師-莫邪を召喚」

 

 ん?

 

相剣師(そうけんし)莫邪(バクヤ)

効果モンスター

星4/水属性/幻竜族/攻1700/守1800

このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札の「相剣」カード1枚または幻竜族モンスター1体を相手に見せて発動できる。自分フィールドに「相剣トークン」(幻竜族・チューナー・水・星4・攻/守0)1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したトークンが存在する限り、自分はSモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

②このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

「私は手札の相剣軍師-龍淵を見せて、相剣トークンを特殊召喚。そして、場の二体でシンクロ召喚、相剣大師-赤霄」

 

 んん?

 

相剣大師(そうけんたいし)赤霄(セキショウ)

シンクロ・効果モンスター

星8/光属性/幻竜族/攻2800/守1000

チューナー+チューナー以外の幻竜族モンスター1体以上

このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

①このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「相剣」カード1枚を手札に加えるか除外する。

②自分の手札・墓地から「相剣」カード1枚または幻竜族モンスター1体を除外し、このカード以外のフィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「相剣大師-赤霄の効果を発動。それにチェーンして、墓地へ送られた相剣師-莫邪の効果を発動」

 

 しょ、初心者???

 

「手札誘発はなさそうですね……まずは、相剣師-莫邪の効果でデッキから1枚ドロー。次に、相剣大師-赤霄の効果でデッキから相剣暗転を手札に加えます。そして、手札の相剣軍師-龍淵の効果を発動」

 

相剣軍師(そうけんぐんし)龍淵(リュウエン)

効果モンスター

星6/炎属性/幻竜族/攻1200/守2300

このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

①このカード以外の手札の「相剣」カード1枚または幻竜族モンスター1体を捨てて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、自分フィールドに「相剣トークン」(幻竜族・チューナー・水・星4・攻/守0)1体を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したトークンが存在する限り、自分はSモンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

②このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。相手に1200ダメージを与える。

 

「手札の天威龍-ヴィシュダを捨てることで、このカードを特殊召喚。相剣軍師-龍淵の効果で相剣トークンを特殊召喚。この二体でシンクロ召喚───フルール・ド・バロネス」

 

 ヤバイって。

 

フルール・ド・バロネス

シンクロ・効果モンスター

星10/風属性/戦士族/攻3000/守2400

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①1ターンに1度、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

②このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

③お互いのスタンバイフェイズに、自分の墓地のレベル9以下のモンスター1体を対象として発動できる。このカードを持ち主のEXデッキに戻し、そのモンスターを特殊召喚する。

 

「あ、墓地へ送られた相剣軍師-龍淵の効果で1200ダメージですね」

 

 悟司LP8000→LP6800。

 ぐぅ!おまけの効果で与えていいダメージじゃないぞ!?

 

「最後に、私はカードを一枚セット。ターンエンドです」

 

 ……伏せたカードは十中八九、さっきデッキから持ってきた罠カードの相剣暗転だろうなぁ。

 

「玲那さん?色々言いたいことがあるけど、マスターデュエルより前に遊戯王カードを嗜んでおられたとかは……」

「ないですよ」

 

 うっそだろ。それでデッキが【天威相剣】か。

 相剣カードを中心としたシンクロ召喚デッキ。生成するトークンでチューナーが簡単に用意できるのが強いテーマのデッキだ。モンスターの展開ルートが比較的分かりやすいから初心者が使ってもおかしくない、おかしくないけど……

 

「ちなみにランクって今いくつです?」

「一番上のダイヤ1ですね。悟司さんはどれくらいなんですか?」

「……ダイヤ5、です」

 

 いや、絶対おかしいって。

 マスターデュエルのランク戦は実力を競い合うランダムマッチ。実力の近しい相手と競い合い、上のランクを目指していく。下から順に、ルーキー、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、そして最上位のダイヤだ。遊戯王カードゲーム初心者がなんで、最上位ランク到達してるの?

 

「ははは…ダイヤ1は凄いですね……」

「そうですか?普通に強いテーマのデッキを使えばいけると思いますが」

 

 何でもないかのように言う玲那さんの口ぶりは、まるで当たり前のことをしているだけ。とでも言っているようだ。が、実際はそんな簡単なことではない。

 

「このゲームを始める時に、一通り調べましたから、やっぱり勝てないと面白くないじゃないですか?」

 

 ………マスターデュエルには10000種類を超えるカードの種類がある。その多様なカードを組み合わせて遊ぶのだが、対戦において勝率の高いカードやテーマというものは確かに存在する。

 

 当然、マスターデュエルをプレイしているユーザーの中で、同じ様なデッキが流行するのは当たり前のことだ。だからこそ、ランクを上げるというのは難しい。だが、それでも、玲那さんがダイヤ1まで勝ち進めたということは、彼女の並々ならぬ努力、そしてセンスを感じずにはいられない。

 だけど、なんだ?このデュエルを通して伝わる違和感は?玲那さんの場合それだけじゃない気がする。

 

 

「ゲームくらい勝って愉しみたいですよね」

 

 

 スマートフォンを覗き込む玲那さんは少し寂しげに笑う。……なんというか、彼女はゲームを楽しんでいるようで楽しんでいない気がする。まるで、その姿は───現実逃避しているかのような。

 

 ハッとして、俺は一つの答えにたどり着く。

 

 だが……これを彼女に聞くことはきっと失礼だ。まだ、関係が浅いから、しばらくは目を瞑って、この楽しい関係を続けたい。そんな欲も出てくる。

 こんな素敵な人と一緒に食事をして、一人だった時に比べれば十分幸せじゃないか?言ってしまえば、最悪の場合、彼女との関係が終わる可能性だってあるのに。

 

 

「玲那さんが勝ちたいのは……男の人が怖いことと何か関係があるんですか?」

 

 

 それでも、俺は彼女に対して一歩、踏み込む選択をした。

 

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