プロセカ世界の住民がキズナランクを見れるようになった話 (なおキズナランク30な模様)   作:鳩羽しろ

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第4話 曇りのち曇りのち雨

 今日はボクはひよりと遊びに行く予定がある。

 正直、ボクとしてはあまり積極的ではないけれど、ひよりと約束してしまったのだからしょうがない。

 それに、あの期待に満ちた声で頼まれたら、流石に断るのは気が引けるからねー。

 

 そんなこんながあって、ボクはひよりと会う待ち合わせ場所にいる。

 今日は何となく早く起きてしまったので、待ち合わせ時間よりも少しだけ早く着くことができていた。

 まあ、ひよりはよく寝坊するから待ち合わせ時間に間に合わないこと結構あるけどね。

 

 そもそも今日ひよりと何をするかも決めていないのも中々おかしいと思う。

 そういうところもひよりらしいと言えばそうなんだけれど、遊びに行こうとだけ言われてその後に待ち合わせ場所と時間だけ決めただけだから、ひよりが何を考えているのかは全くわかんない。

 なんだかんだひよりと遊ぶときはノープランだけど、楽しいから全然かまわないけど。

 

「瑞希!! 私はここだよー!」

 

 ……おっと、来たなー。

 結構周りに人がいてそこそこの音量はそこら中から出てるはずなのに、はっきりと誰が言っているのかとどんな内容なのかがわかる。

 相変わらず大胆な方法を使ってくるなーって感心する。

 普通、こんなに周りに人がいるんだったらもう少し人の目を気にするようなものだと思うけど、ひよりにはそんな考えは一切ないらしい。

 前に「ごめん!! 遅刻しちゃった~!」と今日と同じように周りに結構人がいる中、大爆音で言ってきたことがある。

 多分、ひよりに羞恥心はないんじゃないかな?

 あの時にいた何人かがクスッと微笑んでいたのは記憶に新しい。

 

 ……とりあえず、ボクも返事をしないとな。

 

「おーい、ボクもここだよー」

 

 ……多分、ひよりには聞こえなかったかもしれない。

 ボクも結構声出したんだけどな。

 もう一回言ってみる。

 今度はさっきよりも大きな声で……具体的にはさっきのひよりの半分ぐらいの声量で。

 

「おーい……あ、いたいた。ひよりー、こっちだよー!」

 

 ようやくひよりの姿が見えたので、ボクはひよりに自分の場所を伝えてひよりに近づいていく。

 それにしても今日はちょっと人が多いような気がする。

 どこかでライブでもしてるのかな?

 

 ボクが徐々に近づいていくと、ひよりの表情がだんだんとわかっていく。

 いつものような満面な笑顔を見せてくれるとボクは思っていた。

 ……だけど

 

「───ぇ」

 

 ひよりから発された声はさっきとは全く違い、ボクがかなり近づいてようやくほんのちょっとだけ聞こえるぐらいだった。

 そして、ひよりの顔はなぜか、明らかに何かに驚いているような表情をしているのがわかる。

 どうしたんだろう?

 ボクはさらに近づいていき、ひよりの顔を覗き見る。

 

「どうしたの、ひより? 何か驚いた顔してるけど」

 

 そう言ってもひよりからはしばらく返事はなく、呆然としている。

 ひよりの目線はボクの顔を見ているはずだけど……いや、それよりもちょっと上かな?

 でも、ボクの頭の上に何かあるわけでもない。

 ……ひよりは、何を見てるんだろう?

 

「……ううん! 大丈夫、なんでもないよー」

 

 そうは言うけれど、ボクから見たらさっきまでのひよりは大丈夫そうとは見えなかった。

 今ではしっかりと僕の目を見ているし、さっきまでの驚愕の表情はどこにもない。

 正直、納得は一切していないけど、まあひよりがこういってるしいいか。

 

「そうなの? ……まあひよりが大丈夫って言うんだったらいいか! それじゃあ、行こうか」

 

 ボクがそういうと、ひよりはさっきまでの表情が幻だったかのように満面の笑顔に変わっていった。

 そして、ボクの言葉にひよりは勢いよく返事をした。

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 結構遊んだ。

 本当にいろいろなことをして、服を見たり、カラオケに行ったり、ボウリングをしたり……。

 ノープランだった割にはかなり楽しめたと思う。

 これがひよりの力なのか……。

 

 ひよりとの遊びはひと段落したから、今はファミレスでゆっくりとしている。

 本当に今日はひよりとなかなか遊んだ。

 ひよりは別に体力が特別あるわけではないけど、割とアクティブな方だから疲れている様子はなさそうに見える。

 

 ……なんか既視感があると思ったけど、あれだ。

 小学生みたいな体力だなと思った。

 

 そんなどうでもいいことを考えながら、ボクはいつもの山盛りポテトを食べる。

 向かい側ではひよりがハンバーグをかなりおいしそうに食べている。

 ちなみに、いつもポテト分けてるんだからちょっとぐらい頂戴よーと言ったら一辺1㎝くらいの直方体に切られて渡された。

 

「あ~、美味しい」

「ひよりってば本当にそればっかり食べるよねー。……子供舌だなー」

「なに!? そういう瑞希だってポテトばっかり食べるじゃん!」

 

 さっきの仕返しにひよりを煽ってみる。

 ひよりを煽ると基本的にムキになって返してくる。

 その様子はからかわれた子犬みたいでとても面白い。

 

 ……そういえばボクが今日、最初にひよりに会ったときの……あの時の、驚いた表情をしていたひよりはいったい何だったんだろう?

 そして……あの時のひよりはボクの上の方に目線を寄せていた。

 ボクには気づかなかったけれど、何かあったのかな?

 いろいろと思い出してみて、ボクはちょっと気になったから目の前のひよりにさっきの僕の疑問を聞いてみようとした。

 山盛りポテトに向けていた視線をひよりに戻す。

 

「────ぇ」

 

 いつぞやの、さっきまでボクが考えていたひよりが驚いた時に小さく発した声とほとんど同じような声をボクは出した。

 あまりにも驚いてしまった。

 仕方ないと思う。

 誰だってこれを見ればボクのような反応になると思う。

 

「──ひより?」

 

 ボクが見たものは間違いなくひよりだ。

 だけれども、ボクがいつも見ているひよりとは全くと言っていいほど違っていた。

 

 ひよりの表情はほんの少しだけ、本当にちょっとだけ悲しそうな、そして苦しそうな表情をしていた。

 ボクは基本的に、ひよりが笑っているところしか見ていない。

 もちろん、普通に悲しそうな表情をするし、嫌そうな表情をすることだってある。

 

 ──でも、今のひよりは今までとは全く違う何かがあった。

 何かに苦しめられているような、何かにおびえているような表情だった。

 ボクが知っているいつものひよりでは一切なかった。

 

 人は自分の全く知らないものに対して、困惑や戸惑い、そして恐怖が湧き出るというが、僕の場合も例外ではなく、さらには夥しいほどの悲しみの感情すら湧いて出た。

 目の前の存在が苦しんでいるという事実がまざまざとボクの心に刺さってくる。

 ボクは気づいたらひよりのことを何度も呼んでいた。

 

「──ひより! ひより! どうしたの!?」

 

 ボクの手は痙攣しているように震えていて、声も少しおぼつかない。

 それでも僕の声量はひよりを正気にさせるぐらいの効力はあった。

 

「あ──ごめん、ごめん。どうしたの?」

 

 ひよりはそんなボクの心配なんて気づいていないみたいにさっきまでの苦しそうな顔から一変して、きょとんとした顔になっていた。

 

「それはこっちのセリフだよ! いきなり何言っても反応しなくなっちゃってびっくりしたんだよ!」

 

 本当に驚いたし、怖かった。

 やっぱり、今日のひよりは絶対におかしい。

 

「え、そうなの?……ごめん」

「……本当に大丈夫? ひより見てると結構顔色悪いように見えるけど……」

 

 心なしか、ひよりの顔色はいつもよりも悪く見える。

 ボクの錯覚、それとも幻覚なのだろうか?

 いや、そんなはずはない……でも、それだったら幻覚の方がよかったかもしれない。

 

「だ、大丈夫、大丈夫。私のことなんて気にしなくていいよ」

 

 ……ヤバい。

 本当に、泣きたくなってきた。

 さっきまでの苦しそうなひよりは今でも鮮明にボクの頭に残っていて、そのひよりが今の言葉を言っていると思うと……ボクは無力感と悲しさでいっぱいになってしまう。

 

「……ひより、本当に、どうしちゃったの……?」

 

 ボクは半分くらい泣きながら、ひよりに言った。

 どうして……そんなこと言うの?

 ボクが……何か嫌なことしちゃったのかな?

 それとも──

 

「──やっぱり、瑞希はやさしいね」

「──っ!?」

 

 ああ、あぁ。

 もう、ボクの心は壊れそうになっていた。

 そんな表情でそんな言葉を言わないでほしい。

 ひよりには笑っていてほしいけど……ボクが望んでいるのはそんな表情をしているひよりじゃない。

 太陽みたいに笑うひよりが好きなんだ。

 そんな……悲しそうに笑っているひよりは見たくない。

 

 それから、ボクたちはあまり話すことなく、もう解散してしまった。

 でも、解散してからも僕の頭にはあの時のひよりの顔が忘れられない。

 苦しそうにしている顔と、悲しそうに笑う顔。

 どちらも、ボクがひよりと会ってから、一度も見たことがない顔だ。

 

 ひよりは、ほかのニーゴたちとは違って、自分の悩みとかを見せたことがなかった。

 まふゆはそれについて結構いろいろ言っていたことがあるけれど、それでも僕が知っていたのは〝あの時〟と……もうひとつ、()()()()()()()()()()だけだ。

 それ以外は……今のボクじゃあ思い出せそうにない……。

 

 でも……もし、ひよりが何か重大な悩みを抱えてるんだったら、ボクは全力で相談に乗る。

 どんな悩みを抱えていたとしても、ボクは受け入れたい。

 

 ──いや

 よく考えたら……僕にはその資格がないじゃないか。

 信頼しているニーゴのメンバーにも、あまつさえ一番ボクの悩みに真摯に向き合ってくれる絵名にすらも、ボクは悩みを打ち明けれていない。

 ボクには……ひよりを救う資格は──

 

「──ないんだ」

 

 

 

 

 

Now Loading…

 

 

 

 

 

 私こと如月ひよりは今、帰路についている。

 さっきまで私は瑞希と遊んでいたけれど、ファミレスで食べ終わったら解散した。

 どうやら、今日はこれから雨が降ってくるらしい。

 いい時間に切り上げることができたのも、私の計算能力と計画力のおかげだ。絶対にそうだ。

 

 と、いうことで私はのんびりと歩いている。

 空を見ると、昼までのザ・晴れみたいな天気からどんよりとした光がなかなか届かない暗ーい天気に変わっているのがすぐにわかる。

 もうそろそろ降りそうかな?

 

「……早く帰らないとなー」

 

 さっきまでのようにのんびりとしていたら、降られるかもしれない。

 私はさっきよりも足早に帰ろうとした。

 

 その時、ふと私の記憶から一通のメールが来たような感覚がした。

 

「……そういえば、奏は大丈夫なのかな……?」

 

 記憶から届いたメールには、奏が今日も休むんじゃないか?という疑問と、一枚の画像ファイルが添付されていた。

 

「……キズナランク、かー。あれは、幻覚じゃない、何かだとしたら……やっぱりホンモノなの?」

 

 奏と瑞希の頭の上にあったキズナランクの画像が、私の頭に鮮明と映し出された。

 今の私の、悩みの種だ。

 

「もしも……奏がナイトコードに来なかった理由が、私だったら……やっぱり、謝らないとな……」

 

 あり得る話だと思った。

 キズナランク30というのは決して高くはないと思う。

 それは状況証拠でしかないけれど、いくつかの根拠はある……心もとなくはあるけど。

 

 そして、それから推測するに、奏の休みがただの体調不良と片付けていいのかと私の心が語り掛けてくる。

 私のせいだったら、謝らなくちゃいけないって。

 

「────よし!」

 

 私は進むべき道をまるっきり逆さにした。

 その方向の先には……もちろん、奏の家がある。

 

 雨に降られるかもしれないけれど、知ったことじゃあない。

 今の私は無性に奏に謝りたいんだから!

 

「自己満足かもだけど……やらないよりかはましってね!」

 

 それに、奏のことだ。

 本当に体調を崩してナイトコードに来てないだけなのかもしれない。

 私はそこらへんも含めて知りたい。

 そして謝りたい。

 

 もう、小雨が降ってきてしまったが、そんなのは関係ない。

 奏の家からまだかなりの距離があるから、降られるのは確定だろう。

 

「……さてと、急がないとね」

 

 やっぱり、私はこうでなくっちゃいけない。

 くよくよしてる時間を私なんかが過ごしても、どうせ全部無駄になる。

 決めたらすぐ行動。

 それが!

 私こと如月ひよりの生きる道ってね!

 

 

 

 

 

 思ったよりも降られてしまった。

 周りの水たまりを見てみると、勢いのあまりその表面が棘が生えているように見える。

 ここまで降られるのはいくらなんでも予想外だった。

 昼は晴れてたから、そこまで降らんだろと思ってた私がばかだった。

 傘を買うのもなんか空に負けた気がするから嫌だし、全速力……ではないけれど足早に向かっていった。

 

「はぁ、はあ。やっと、ついた」

 

 ここまで結構長かった。

 いつもよりも数倍道が長くなっているような錯覚さえしてくる。

 

 とにかく、私はチャイムを鳴らして奏を呼んだ。

 ちゃんと奏は出てくれるかな?

 奏は集中力がえげつないので、前に集中しすぎて、私が来ても十分くらいチャイムを無視されたことがある。

 

 しばらく待っていると、どたばたとこちらに近づいてくる音が聞こえてくる。

 あ、来たな。

 私は再度、心を整えて奏に会う準備をする。

 一息深呼吸をすると、ドアが勢いよく開いた。

 

「──ひより! どうしたの!?」

 

 開幕早々、焦った表情を見せた奏が顔を見せた。

 まあ、奏に行くとも言っていないし、何よりこんな雨の日に家に訪ねられれば誰だってこんな反応をするだろう。

 私は落ち着かせるために、できるだけ穏やかに笑って言葉を紡いだ。

 

「いやあ、ごめんね、奏。どうしても伝えたいことがあって」

「だからって、こんな雨の日に……。服も、びしょびしょだよ……?」

 

 そう言われてふと服を見ると本当にかなり濡れているのがわかり、肌にぴっちりと張り付いている。

 必死になりすぎて気が付かなかったけれど、なかなか気持ちが悪い。

 

「とりあえず、タオル持ってくる……!」

「あ、ありがとう!」

 

 やっぱり奏は優しすぎる!

 それは本当に仏様を彷彿とさせるほどに。

 

 どたばたとまた奏が走っていき、私は一人取り残される。

 私は奏が向こうに行ったことを確認すると、玄関に座り込む。

 正直、これ以上足が動く気がしない。

 なんでだ?

 遊びすぎてもう体力が尽きちゃったとかか?

 

 なにやら、本当に幻覚を見そうなほど視界がぐらつく。

 本当に、どうしたんだ? 私の身体。

 

「──私、こんなに……()()だったっけ?」

 

 私の気力や元気が、シャワーのような雨によって洗い流されているようなイメージが湧いた。

 そのイメージを最後、私の意識は途絶えた。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

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