君たちには突然で悪いのだけれど、僕と侑は結婚した。
特に歩夢と付き合う訳でもなく、それとなく二人とも気持ちを確かめあいシームレスに恋人へと発展した。そして大学生活を一緒に過ごした。恋人となる時も結婚するという時も歩夢は心から祝福をしてくれた。今はとても幸せである。
朝、目覚ましを止めてダブルベットから身を何とか起こす。
リビングへ行くと、キッチンではエプロンをつけた侑が忙しそうに右に左に動いたりしていた。
高校生の時はご飯を作ってくれるのは歩夢だった。しかし、今は侑も立派な美味しいご飯を作ってくれている。僕が大分前にあげた若木の葉っぱのような色の髪ゴムで髪を団子状にして鼻歌を歌いながらキッチンでご機嫌な様子で弁当を作っていた。
僕はそれを愛おしく思いながら後ろ姿を眺めていた。
暫くすると僕の視線に気づいたのか、こちらを振り向いて不思議そうに顔を傾げた。
「ん? 何か私に付いてる?」
「いや、別に何も無いよ。ただ眺めていただけ」
「そっか。お腹すいた? ご飯にしよっか」
パチッと弁当の蓋をしめ袋に入れると、髪をまとめていたゴムを外し腕に着けた。
「コーヒーは準備しておくよ」
僕はコーヒーメーカーからペアルックのマグカップへコーヒーを二人分入れた。
そして、バターが塗られているトーストを一枚とトマトとレタスのサラダを食べコーヒーを飲んだ。
「行ってらっしゃい」
そう言ってキスを交わし僕は家を出た。
僕の仕事はある高校のスクールアイドル部の顧問だ。
虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会のマネージャーとして働いていた時の功績が認められて今このような事が出来ている。
実は侑にも誘いは来ていたのだけれど彼女は今は家で僕を支える立場にいたいと断った。
一緒に働けない事は残念だったけれど、僕にとって侑のサポートはとても有難く、それがなかったらスクールアイドルへのサポートも上手くいかないだろう。正に縁の下の力持ちという訳だ。
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彼を送り出した後、冷めたコーヒーを一口飲んだ。
彼のお世話は慣れたものだ。互いに高校生の時は彼が風邪をひいた時私が看病してあげた。その時彼は何故か急に考え込む事が多くなって心配はしていたのだが。風邪が治った後は忘れたようにいつもの彼に戻っていた。
熱で魘されている時に「曇らせが……」とか何とかと何回も呟いていたけれど、私は分からなかったし治った後彼に聞いても忘れていた。
「なんだったんだろ、あれ」
ぽつりと私は呟いた。でももうその真相は誰も知らないのだから仕方がない。私は思考を切りかえてスーパーをチラシを眺めながら今日の晩御飯の献立の事を考えた。
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学校に着いた僕は、まずは職員室に行き先生方に挨拶をしてから自分の席に座った。
臨時講師としている僕は、先生の急な出張だったり用事でいない時には自習監督だったり授業を受け持つ事もある。臨時講師とは言ってもスクールアイドル部の練習があるから毎日学校には来ているのだけれど。
しかし今日は午後から2時間、授業をしなければならない。担当の先生から聞いた進行状況や本日のやるべき場所等を思い出しながら資料や小テストを作り、その後はスクールアイドル部の練習メニューを考える。
そして必要となる用具や教室の使用申請を出した。
どちらも楽ではない仕事だけれど、高校生の時より出来ることの幅が増えて僕はとても楽しく思っている。
放課後、部室に向かうとすぐに「先生 」と呼びかけられた。
僕は後ろを向くと教え子がおり、手元には何かのチラシが握られていた。
「この大会に出たいと思ってるんです、 でも今のままじゃ入賞所か1回戦突破すら怪しい。なので練習量を増やしたいんです!」
チラシを見ると近くで開かれる大きな大会で、力を示すには丁度いいと思い許可をした。
「それじゃ、練習メニューとかは考えておくよ」
「はい! 先生ありがとうございます!」
お辞儀をして部室に走って戻っていくのに軽く注意をした後、僕は職員室に戻りメニュー作りに取り掛かった。
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メニューを作り、彼女達に渡して練習を眺め、そして終わる頃にはとっくに遅くなっていた。
僕は急いで帰る準備をした。
家に着くとパタパタとスリッパがフローリングを叩く音が聞こえた。
「お帰り、今日は遅かったね」
「今日から大会に向けて頑張っていこうって事になったんだ。やる事がいっぱいでね」
僕はそのまま風呂に入ると、冷蔵庫から缶ビールを一本取り出して一口飲み、侑が用意してくれた晩御飯を食べた。
「これから早く行って遅く帰るってことが続くかもしれない。やることがとても多いんだ」
「そうなんだ、大変だね」
「でもやりがいはあるさ」
僕はそう言って冷蔵庫からもう2本、ビールを取り出しもう一本を侑に渡した。
侑は何処か顔を赤くしながら、一口飲んだ。そして僕にもたれ掛かるように倒れた。僕は彼女を髪を梳く様に撫でた。
「最近、彼方さんの所、子供が2人目が生まれたらしいんだ。だから私たちも…………さ?」
彼女が僕の手に自分の手を重ね強く握る。それが彼女が僕を求めている合図の様なものだった。
でも僕は手を軽く握りしめてから離した。
「ごめんね、明日は早いんだ。また別の日にしよう」
「で、でもそう言って先週もシてないじゃん」
「今何かをするには僕はちょっと眠すぎるんだ」
「そうなんだ……ごめんね」
「僕こそごめんね」
軽く彼女にハグをして、唇にキスをしてから僕は眠ることにした。
侑は何処か寂しそうにしながらクラッカーを齧っていた。僕はとても申し訳ない気持ちを抱きながら寝室に入り眠った。
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僕はそれからというもの早く学校へ向かっては、大会に向けての相手の調査だったり練習をみたりしなければならなく遅く帰ることが多くなった。家に帰りご飯を食べ妻と少し話し後はベットに倒れるように向かい、泥の様に眠った。夢すら見ない深い眠りだった。
そして数時間経つと僕は起き、また学校へ向かった。
だからそれは突然な事だった。急に目の前が激しく揺れ始め真っ暗になる。僕は意識を保とうとするも強く手を引かれる様に倒れ気が付くと病室だった。
「あ! やっと起きた……」
起きて一番最初に見たのは目を赤く腫らした侑の姿だった。僕は彼女へ手を伸ばし目元を軽くぬぐった。
そこから侑のお説教をきいていると扉が開き、そこから僕の担当しているスクールアイドルの子達が見えた。
うつむく様に歩いてきて、絞り出すように呟いた。
「先生、ごめんなさい。先生に頼りっきりになってしまって、挙句の果てにこんな結果に……」
「いいさ、先生だから皆の為ならなんて事はない。これは僕の体調管理が悪かっただけさ。何も君が気に病む必要はない。でしょ? 侑」
僕は侑に目を向けると、肯定するようににっこりと笑った。でも一瞬だけ彼女たちを憎しみをもって睨んでいるように見えた。きっと僕の気のせいかもしれないけれど。
もしかしたら僕は起きたばっかりで色々喋ったし思いのほか疲れているのかもしれない。と思い眠ることにした。
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「おやすみ」と彼が眠った事を私は軽く頭を撫でた後帰ろうとしていた彼女たちを見て声をかけた。
というより気が付いたら声を出していた。
「貴方た! …………何でもない、ごめんね。大会頑張ってね」
本当は貴方達のせいで、我儘で彼が倒れたじゃないか。と言ってやりたかった。
今回は過労という事だったが、これがもし命が危険になっていたら、こいつらを殺してやろうかとも思った。何故ここまで酷使させたんだ。大会に目が向きすぎて周りに目を配れていない。そんなのでは折角の彼が練習に付き合っているのにだめではないか。色々言いたい事は私の腹の中の奥底にドロドロと溜まっていた。
しかし私は彼女達を憎しみを持って睨みつけることしか出来なかった。
何故なら全てそれが自分にも当てはまる事で、私自身もきっと自分の事で頭がいっぱいで彼を止める事が出来なかった。そういう何もかも自分で抱え周りに助けを求めるという事を知らない人だと知っているから。無理やりにでも止めていたら。少しでも休んでと言えていたら。と
自己嫌悪が私を包んでいた。
だからそれが出てこない様に唇をかみ締めながら出ていった彼女達を恨めしく睨みつける事しか出来なかった。
「本当に貴方って他人の為に自己を犠牲にしてでも頑張るよね、それでどれだけ私が心配してると思ってるの」
私の中で抱えているものを知らずに幸せそうに眠っている彼の額を指で軽く弾いた。
そうだ、彼は私がちゃんと見てないときっとまた倒れてしまう。だから私がしっかり彼を管理してければならないのだ。
倒れたと聞いた時私は、過労で特に心配ないと聞いたのにも関わらず激しい悲しみと何処かで感じたような彼がこのまま何処か遠くにいのではないという謎の焦りがあった。
もうこんな気持ちにならないように、復帰はさせられない。
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僕が退院すると変化があった。
「そろそろ仕事に戻りたいんだけど……」
「だめ、そしたらまた君倒れちゃうよ。私がどれだけ心配したと思ってるの?」
「わかった、それじゃコーヒーでも飲もう。入れてくるよ」
「だめだめ、危ないよ。私がやってくるからさ、座ってていいよ」
僕が何もできなくなった。何をするにしても侑が付いて回るのだ。
寝る時も僕に縋りつく様にぎゅっと蔦みたいに絡みつく様に抱きしめ、起きる時も僕が抜け出そうとするとすぐ気づき阻止される。彼女に縛り付けられている様だった。
僕を見る彼女の眼は怖かった。一筋の光もなく僕しか見えていない様な焦りと不安が混ぜられそれが井戸の底みたいな混沌とした深い闇を作り出していた。
彼女はカップを机に置くと、太陽よりも眩しい僕の好きだった笑顔で言った。
「ねえ、私、今とっても幸せなんだ」
曇らせのいい所はあくまで傷つくのはオリ主であり原作キャラではないからヘイトにはならないし、思う存分痛めつけると、勝手に周りのキャラが勝手に曇ってくれることにあるよね!
どんな風に高咲侑を曇らせたい?
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何かが起こる(事故、自分を庇って怪我)
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環境の変化が起こる(彼女が出来る、転校)
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第三者の影響を受ける(過労、記憶を失う)
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その他 (良ければ感想等に)