年内だし多分ギリギリセーフ
「ほら、朝だよ?朝ごはん食べないと」
平日の朝、目覚まし時計を静かにさせたと思ったら、それと負けないくらいやかましい幼馴染が来た。
僕は布団に潜り込む事で回避をしようとする。
「起きないと!」
そう言って侑は僕の布団を剥ぎ取った。
「侑、僕は人の布団を剥ぐ様な奴は法律で罰するべきって考えているんだ。特に冬はね」
「今は冬じゃないから大丈夫だね、馬鹿な事言ってないで、早く起きて 」
呆れたような顔をして侑は僕を無理やり起き上がらせた。
仕方ないので僕は服を着替えて下へ向かった。
「おはよう、ご飯出来てるよ」
もう一人の幼馴染、歩夢がテーブルに食器を並べながら言った。僕は顔を洗い歯を磨いた。
「ほら、早く食べよ?」
侑は僕の肩を掴み無理やり座らせると、箸で玉子焼きを掴み僕に差し出す。
「だから僕は赤ちゃんじゃないんだってば」
「いいじゃん、私が作ったんだから一番に食べてもらいたいんだもん、幼馴染なんてそんなものだよ?皆やってるよ」
「そうかなぁ?」
そうだよ。と侑は笑って、僕の口に卵焼きを運んだ。
「おいしい?ねえ、おいしい?」
「うん、美味しい美味しい」
歩夢はそれをにこやかに見つめているだけで助け舟を出してくれなかった。
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「だからくっつくのやめて欲しいんだけれど」
「いいじゃーん、朝寒いって言ってたんだし、幼馴染カイロ」
登校の時になっても侑の様子は変わらず、僕の腕にまるで蝉の様に張り付いている。
「今は寒いというか暑苦しい。しかも歩きづらい」
「中々女の子に抱きついてもらえる時なんてないんだから今のうちだよ。」
すると、目の前から車の音がする。今の道は歩道が狭く僕と侑の二列になっている為僕は前を歩こうとした。
グイッと車道と反対側に引っ張られた。
……普通は反対だと思うが、侑は僕が傷つく事を極端に嫌った。
いつからかは分からないけれど、気がついたらこんな感じの生活になっていた。
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「痛」
授業中、僕はプリントで指を切ってしまった。
なんてことの無い放置してれば勝手に治っている傷。
「ねぇ!どうしたの?血が出てるじゃん!」
「ちょっとプリントで切っただけだよ、すぐ治る」
「ダメだよ、今すぐ保健室行かなきゃ」
彼女はそういうと慌てたように僕の手を掴み保健室へ向かった。
先生は居なかった様で彼女は手際よく消毒液とガーゼ、絆創膏を取り出し、消毒をしてから絆創膏を貼った。
「たかがプリントで切っただけだよ、こんな事する必要ないんだ」
「ダメだよ!きちんとしないとどうなるかわかんないじゃん!」
僕はため息を吐いた。
彼女はいつもこうなのだ。少しばかり離れたかった。
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ある日、僕は少し遠くの街へ行く事にした。
侑には気をつけて荷物を準備して、家を少し早く出た。そして電車に揺られて長い間景色を楽しんだ。
いつも侑が隣に居たから一人で行動するのは久しぶりでとても楽しかった。
誰も僕の行動を制限をする人はいなかった。
だから浮かれていたのだろう、車がこちらに突っ込んできているのに気付くことが出来なかった。
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気がつくとそこは病院の天井だった。
手が動かしずらいと思ったら、包帯でぐるぐる巻きになっていたし、足も同様で何かの器具で釣り上げられていた。
そこで誰かが泣く声が聞こえた。
少しばかり動かしずらい首を横に動かすと涙で泣き腫らしたのだろう。目が赤くなった侑が居た。
それに気づくと僕をぎゅっと抱きしめ、赤ちゃんが母親を確認するみたいにぺたぺたと触った。
「何で一人で出掛けたの!」
「一人で出掛けたくなったんだ、侑に迷惑を掛けたくないんだ。一人でも行けると思って」
「君のためなら何でもするのに」
「それは申し訳ないよ、もっと自分の事をして欲しい」
次は僕の手を掴む。その手は微かに震えていた。
母親を探す子供みたいに。
「私、決めたんだ」
侑は覚悟を決めたような目で僕を見る。
「きっとこのままじゃまた君は同じ目に合うかもしれない。次はもっと酷いかもしれない、違う危ない目に合うかもしれない」
「今回はたまたまなんだ。次からはちゃんと注意するよ」
「私は君がもう危ない目に合うのが嫌なの!!怪我をしたって言うのを聞くだけで身体が張り裂けそうな気持ちになるんだよ?」
侑の手が僕の頬を優しく撫でる。それが僕には薔薇の蔦が首を絞めているように思えた。少しづつ棘がくい込んでいく。
「だから全部君の事は私が管理することにしたんだ。食べる物は全部私が作るから他の人から貰ったものは食べちゃだめだよ?毒が入ってるかもしれないから、行動はずっと私と入ればいいし、近くにいる人……とかは要らないよね、私がいるし、友達がいると君が騙されるかもしれない。そして心を痛めることになるもん。女の子なんてもってのほか。勿論君がどこに居ても分かるようにGPSも入れたよ」
1つずつ指折り数えながら恍惚とした表情を浮かべる侑。
「今からだと大学も決めるよ、勿論私と一緒だし、全部同じ授業取ろうね。あ、今から君も音楽科にしようか。私が隣で教えてあげるよ。大学は遠くだったらさ、一緒のアパートに住もうか。君が何するか分からないもん。」
「僕の道は僕が決めるよ、侑に言われて決めることじゃない」
僕はそういうと言ってる事が分からないという風に首を傾げた。
「何で?ねぇ、何で?全部君の為なの。これから君が傷つかなくて良いんだよ。そのために私が全部決めるんだ。全部君を守る為なんだよ」
侑は僕をまるで割れ物を扱うみたいに優しく抱きしめた。そして耳元で僕に言い聞かせる様に囁いた。
「大丈夫、私が全部守ってあげるから」
以前Xのスペースにお邪魔した際にこれを待ってる方が意外といらっしゃると言うことに気が付きまして、そこで存在を思い出し書いた次第でございます。
アンケートは最初の方に"主人公に"と入れて下さい。文字数の関係で入らなかった。
どんな風に高咲侑を曇らせたい?
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何かが起こる(事故、自分を庇って怪我)
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環境の変化が起こる(彼女が出来る、転校)
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第三者の影響を受ける(過労、記憶を失う)
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その他 (良ければ感想等に)