だって、侑ちゃんスクールアイドルにならないんだもん……
高咲侑、スクールアイドルになれ
既に夕日が落ち、夜の帳が降ろされる寸前の様な時間に部屋で二人きり。
一人が私、桜坂しずく。そしてもう一人が私の幼馴染で大好きな彼。
彼は未だに悩んでいる様な顔でパソコンの画面を難しそうに見つめていた。
そして、私は彼の横顔を見つめていた。
「しずく、どうしたの?」
私の視線に気づいたようで、手を止めて私の方に振り向いた。
「い、いや、ただ外の景色を眺めていただけだよ」
いくら幼馴染とはいえども面と向かって、“あなたの横顔に見惚れていました”というのは些か恥ずかしかった。これがもし演劇の科白なのだとしたら、臆面もなく言えているのだろうけれど。
「外?」と彼は疑問に満ちた声を出し、窓を見た。そして次に時計と窓から見える景色を交互に見比べ、驚いたように目を見開いた。
「やばい!そろそろ帰らないと!しずくも準備しておいて!」
彼はそう言うと、パソコンの電源を消し、手あたり次第鞄に詰め帰り支度を始めた。
最も練習からいくらか時間は経っていたし、着替えも済んでいる。
後は彼の終わるのを待ち、施錠をするだけだった。
「よし、じゃあ帰ろうか」
準備の済んだらしい彼は私にそう呼びかけて、私は彼の隣へと向かった。
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「いやー、今日もがんばった!」
彼はうーんと伸びをした。
身体からはポキポキと小気味のいい音がなっていた。
「今日は確かに疲れちゃったね、ライブも近いし」
私も彼と同じように伸びをする。
「そういえばしずくのダンス練習の時よかったね、全体的にキレがあったよ。みんなも全体的に次に向けての情熱みたいなのがあってよかったけど。」
「本当!?」
彼は急に思い出したみたいに言った。
私は褒められてうれしくなる。ファンの人から可愛いとか良かったよと言われるのも十分にうれしいけれど、彼からのは特別だった。
毎日帰る時に彼は今日の反省点を教えてくれる。よかったところは褒めてくれる。
私だけに。“私だけ”の特別。彼には私だけしか見えていないのだ。
にやけそうな自分を必死に抑える。
「私のお母さんが今日ご飯食べに来てって言ってましたよ。」
「分かった。しずくのお母さんの料理おいしいからなぁ。今日遅くなっちゃったからお腹すいたし」
ここ、東京から私たちの住む鎌倉まで大分時間が掛かる。きっと鎌倉へ帰る頃には夜も更けてきた頃だろう。
「一体誰のせいなのでしょうね」
私が彼を睨むように言うと、彼は居心地が悪そうに笑った。
「いやー、やる事多くてね」
彼は頭を掻きながら誤魔化そうとしているみたいに言った。
「侑先輩がいるじゃん、何か不満とかでもあるの?分担すれば大丈夫だとは思うのだけど」
「いやいや、そんな滅相もない。彼女は素晴らしいよ、僕なんかより全然」
慌てたように言った。
「やっぱりみんなの為にできることは出来るだけやりたいんだ。それは侑さんも一緒のはずだよ、あっちもあっちで色々しているはずだし」
楽しそうに彼は言う。二人とも忙しく動いているのは私も知っている。私やかすみさんなどをはじめとした一年生。そして二年生、三年生の為に。
せつ菜さんとよく演出について楽しそうに話し合っているのはちょっと、ほんのちょっっっとだけ気に食わないが。
私だけの事を考えて私だけの専属になってほしいと思うのは身勝手な願いだとはわかってはいるけれど、私たちは幼馴染。彼の事は私が一番知っているし、過ごしている時間もみんなに比べて私の方が長い。
少しだけなら許しもしよう。
「しずく?なんか目が怖いんだけど」
「ふふふ、なんでもないですよ?」
彼が私から離れることも私が彼から離れることはないだろうから。
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しずくの絡みつく様な視線から逃れながら何とか家に帰れた僕たちは夜ご飯を食べると、風呂に入った後はいつもの様にしずくの部屋で過ごす。
そこでは演劇の方の台本を確認したり、ライブについて確認したり、宿題をしたりと様々だ。
僕は皆のMVを確認の意を込めて見ていた。
コメントも好意的なコメントも多く、僕は自分のように嬉しかった。
「やっぱり愛さん、いいなぁ」
僕はMVを見ながら何気なく思った事を言った。
「でも君、私のファンだもんね」
しずくは顔に焦りの表情を浮かべながら、僕に事実を確認するみたいに言った。僕はちょっと悩んで手で顎を触りながら返した。
この時、僕は彼女の顔を見るべきだったと、後から後悔する。簡単に言うとその返しは失敗だった。
「でも最近、愛さんの方が好きなんだよね。あの元気いっぱいな笑顔溢れるパフォーマンスが堪らなくて良くて。僕まで明るい気持ちになるよ」
僕はパソコンで色んなスクールアイドルの情報を見ながらだったが、反応が返って来ないことに疑問を感じ、この時にしずくの方を見た。
するとしずくは、まるで身近な人に裏切られた様に僕を見ていた。
「しずく?」
そう問いかけても何も反応がない。
「ふふっ、そうですか、これが浮気というものですね。演劇でこの様な題目を演じた事はありますがこんな気持ちだったとは」
何やら小さくブツブツとしずくは呟き始めた。
目からストンを暗闇が落とされていて僕を正しく認識していないようだった。
「いつから彼の好みが分かったのでしょうか。逐一確認は出来ていたはずです。今までの彼の理想の女の子になる努力はなんだったのでしょうか」
僕は薄気味が悪くなって、しずくのお母さんに一言言ってから帰ることにした。
集中すると周りが見えなくなるのはいつもの事だけれど、今回ばかりは何か嫌な予感がしていた。
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「しずくの様子がおかしい?」
部室でいつも様に皆の練習を見ていると、休憩時間にかすみに危機感を持った様に言われた。
「はい、すっごく変わってたんです!!言葉遣いとか立ち振る舞いから全て!」
「どんな感じになっているの?」
「前のしず子の要素が一つもないくらいです!かすみん、びっくりして"なんで?"って聞いたんです」
彼女は、言葉を探すみたいに目を一瞬逸らし一拍置いてから言った。
「"その方が幼馴染が喜ぶから"って」
「僕が喜ぶ」
僕は噛み砕くようにゆっくりと彼女の言葉を繰り返した。けれど意味は無かった。
「おはよー!皆」
聞き慣れた声に聞き慣れない雰囲気。
ドアがガラリと開き、そこに居たのはしずくだった。
髪を金色に染め、服を着崩すようにして、口調も崩し少しギャルの様に。まるで愛さんみたいだった。
「しずく……?」
やっと絞り出す様に僕は呼びかける。
彼女はただにっこりと微笑むだけだった。
「なんでこんなことに……?」
「君が愛さんが好きって言ったんだよ?」
「たしかにそれは言ったけれど、だからってこんな事をする意味が分からないよ」
「意味が分からない?ううん、とっても単純だよ。君が愛さんが好きって言ったから私が愛さんを演じれば君が私の事を好きになってくれるでしょう?」
僕はそれを最初音の羅列にしか聞こえなかった。自分の中で何度か咀嚼、反芻しやっと言語として認識をした。
ふざけているのかと僕は思った。
しかし僕を見つめるドロリと執着心やらが混ざっている様な目が嘘ではないと教えてくれている。
「どう?完璧に演じきれてる?これが貴方の好みでしょう?」
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私は貴方の為なら何だって出来るんです。
貴方の好みが愛さんだったら私は愛さんを演じるだけです。他には好みはなんですか?髪は長いのと短いのどちらがいいですか?
癒し系の子が好きですか?それとも強い子が好きですか?ツンデレがいいですか?それともヤンデレがいいですか?
貴方の好みを全て教えてください、私が完璧に演じきって見せます。その代わり周りの子を見ないでください。私が居れば十分でしょう?
「私、貴方の為ならなんだってしちゃいます…♡」
しずくちゃんなら浮気相手を自分に宿して追い詰めるくらいしそうだなって妄想。小悪魔Love♡って曲が悪いんです。
しずくちゃんが浮気相手とかトレースして主人公を精神的に追い詰めていく小説下さい
どんな風に高咲侑を曇らせたい?
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何かが起こる(事故、自分を庇って怪我)
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環境の変化が起こる(彼女が出来る、転校)
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第三者の影響を受ける(過労、記憶を失う)
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その他 (良ければ感想等に)