天与の少女 刃にて荒事を成す   作:皐月の王

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上弦の鬼と花柱と水の狐

遂に来てしまったとしか言えない。心臓が早鐘を鳴らす。急いで駆けつけないと行けないと私は即座に動き出す。柱の首を掴んで駆けつけるのが確実であるのは分かっている。数的有利をとるのは定石だし。

 

だけど、そんな事をしている暇は無い、余裕も無い。柱を探し回る時間があるなら、後に合流することに賭けて駆けつける方が幾分かマシだ。それにこうして考えている時間の間にも

 

「間に合うか怪しくなるだろうが!!」

 

私は救援を呼んでいる烏を跳躍で鷲掴みで捕まえる『グェー』と鳴くが知ったことじゃない。そして私はその烏に言う。

 

「オレが走る!方角を教えろ!!」

 

余裕無く、前世の一人称が出てしまう。手鬼の時より熱が抜けていくような気がしたが、そんなの気にしている余裕は無い。鬼気迫る声に烏は翼で方角を指して答えてくれた。

 

「ム、向コウダ…!速ク救援!」

 

烏から手を離して解放し、羽織に腕を通し、地面を踏み砕く勢いで足に力を入れ、音を立て踏み出して地面を蹴り全速力で走り出す。

 

良くない事が頭をよぎる。考えないようにしないとと思うほどに思考がそっちに行ってしまう。死んで欲しくない。カナエさんが死んでしまうとしのぶちゃんや実弥さんが……多くの人が悲しむ。真菰が死んだから……、なんて考えたくも無い。

 

「間に合え……!間に合え……間に合ってくれ!!」

 

月も隠れる夜を駆けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者視点

 

花柱 胡蝶カナエと鱗滝真菰は今現在、小さな町にて鬼と遭遇していた。二人は怪しげな宗教を調べる任務を言い渡され、調査を行っていたその折に

 

「やあ、君達かな?最近嗅ぎ回っているは?何か面白い事が知れたかな?」

 

優しそうな声で質問をしてくる。それはこちらの意図を理解しての事だろう。そして、なんて無い風に自己紹介をする。

 

「初めまして俺は童磨、よろしくね」

 

気安く名乗る。目には上弦 弐と書かれていた。それが意味する事は

 

「カナエさん……!」

 

「ええ、上弦の鬼よ……!」

 

上弦の鬼ということである。十二鬼月の上位の鬼。しかも弐である。

 

「あれれぇ?名乗ったのにそっちは名前を教えてくれないの?」

 

童磨は首を傾げながら楽しそうに二人を見る。二人は臨戦態勢を取るしか道は無い。死ぬかもしれないという思いと、生き残るためには戦うしかないと。

 

「そんなに怖がらなくても良いよ。君達は信者じゃない。だけど、俺は怯えた人を見過ごすなんてそんなことは出来ないからね。救済してあげるよ!」

 

満面の笑みで芝居がかったように童磨は言う。二人は臨戦態勢を解くことなく質問する。

 

「救済?」

 

「どういうこと?」

 

童磨は両手を広げて説明をする。その時月明かりが怪しくも童磨を照らし出す。

 

「俺は万世極楽教の教祖でね。俺が喰った人は皆救われているんだ。もう苦しくない、つらくもない。俺の体の一部になれて幸せだよ」

 

その話を聞いた瞬間、真菰の脳は理解を拒んだ。何を言っているんだと。不快感、嫌悪感、これ以上話をする必要なんてどこにも無いと。この鬼は、今まで出会ってきたどの鬼よりも醜悪だと。真菰は日輪刀を抜く

 

「貴方の言っていることは何一つ理解できない。でも、分かることはある」

 

「えー?何かなぁ?教えてくれる?」

 

神経を逆撫でするように童磨は真菰に尋ねる。真菰は精一杯、嫌悪感を表情に出しながらに言う。

 

「貴方の言葉に耳を貸す必要性が何一つないということが」

 

「そうね、人を食べる事を救済と言う方の言葉を気にしちゃダメよ……」

 

カナエは鬼も救いたいと言う考えを持つ鬼殺隊でも稀有な考えを持つ人物だ。それは目の前にいる醜悪の権化のような上弦の弐の童磨とてその気持ちは変わらず。カナエがカナエたらしめる気持ちと正義を持って日輪刀を構え

 

「哀れな鬼、童磨。私、『花柱』胡蝶カナエが救って見せます!」

 

高らかに宣言する。童磨は嬉しそうにニヤニヤと笑いながらに言ったかと思うと

 

「へぇー、カナエちゃんと真菰ちゃんかぁ。うんうん、二人とも可愛くていいねぇ、でもカナエちゃんの気持ちは嬉しい、真菰ちゃんの冷たい言葉には傷ついたけどー。俺を救うのも殺すのも……無理じゃないかな?」

 

瞬時に二人は後ろから殺気に似た寒気を感じ取り、カナエはかがみ込み、真菰は跳躍をする。そして直後、カナエの首のあった所と、真菰の胴体があったところを無慈悲に扇が通っていた。瞬間的に後ろを取られたことに驚きこそすれ、それで崩れる二人では無い。

 

「花の呼吸…陸ノ型…!」

 

「水の呼吸…捌ノ型…!」

 

カナエは下から、真菰は上からの挟撃。互いに即興の連携だが、互いに上下から息を合わせたと思うほどに綺麗な連携攻撃が童磨を襲う

 

「渦桃!!」

 

「滝壷!!」

 

だが、

 

「すごいすごい!今のを避けただけじゃなくて、2人同時に反撃してくるなんて!今のは予想外だったなー」

 

童磨は二つの鉄扇でその攻撃を防いでいた。童磨の薄ら笑いは消えること無い。童磨は二人を鉄扇で押し返すと

 

「それじゃあ、次は俺から行くよ、血鬼術 枯園垂り」

 

冷気をまとった二つの扇を連続で振る。その一撃一撃が命を脅かす。空中に居る真菰は迎撃が困難。

 

「花の呼吸 弐ノ型 御影梅!」

 

真菰と自身に迫る連撃を連撃を以て受け流す。

だが、徐々にカナエに鉄扇が迫る。

 

「水の呼吸 弐ノ型 水車!」

 

体勢を立て直した真菰がすぐ様、その間に入るように水車で童磨の意識を向けさせる。結果、互いに距離を置くことになる。

 

「距離をとると俺の首を切れなくなるよ?血鬼術・蔓蓮華」

 

蓮を模した氷の蔓を四方八方から伸ばし二人を捉えようとする。迫り来る蔓を真菰は

 

「水の呼吸…陸ノ型 ねじれ渦流々!」

 

参ノ型 流流舞いの歩法を用いたねじれ渦を持って迎撃をする。

 

(この冷気、絶対吸っちゃダメだ……!アイツの周りでは呼吸が制限されてしまう!それはカナエさんも気づいているはず……!)

 

真菰は蔓を切り伏せながら思考を巡らせる。少しの攻防で分かったことは、相手が冷気の血鬼術を扱うこと。しかも、その冷気は感じ取るだけでも凍えるものであり、もしもまともに吸い込んでしまえば鬼殺隊員の生命線とも言える全集中の呼吸をする肺はやられる。二人は距離を置き

 

「わかってるわよね?真菰ちゃん」

 

「アイツの冷気を吸わないように、アイツのだす氷の近くでは呼吸をしない」

 

「ええ、行ける?」

 

カナエは真菰に確かめる。真菰は今一度息を吸い込み。覚悟を決める。勿論死ぬ覚悟では無い。

 

「勿論です、切り抜けて帰りましょう……、みんなの所に」

 

何が何でも勝つ覚悟、生きる覚悟である。自分のなすべきことを見定めて日輪刀を持つ手に力を込める。振りが鈍くならない程度に力を入れる。その集中力は極限まで研ぎ澄まされていた。それはカナエすら驚くレベルである。カナエも集中力を高める。

 

「へぇー。凄い集中力だね。それで何処まで行けるかな?」

 

瞬間、童磨は二人の視界から姿を消し、

 

「こっちだよー」

 

瞬時に後ろを取り、二人の首を刎ねる為に両の手の扇を横に薙ぎ払うように振るう。それを

 

「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!」

 

「花の呼吸 陸ノ型 渦桃!」

 

それぞれ全方位に対応した型で対応して見せた。

 

「さっきより速く動いたんだけどなぁ」

 

開幕での攻撃より童磨は気持ち少し速度を上げて攻撃したが二人は対応して見せた。そして、真菰は一度距離を取り

 

「水の呼吸、玖ノ型 水流飛沫・乱!」

 

鋭く素早い動きで童磨に切りつける。

 

「おお、真菰ちゃん中々に速いね。久々かなこんなに速い剣士と戦うのは。ううん、真菰ちゃんはその中でも5本の指には確実に入るよ」

 

「うるさい――!」

 

新たに現れる氷の刃を斬り捌きながら、童磨の首を狙う。童磨の体を切りつけることができるが、再生出来る鬼には致命打に成らない。しかし、

 

「でも、それだけじゃーその刀は届かないよ」

 

「ッ―――!」

 

氷の刃が真菰の体を掠め血霞が巻き上がる。顔を顰めこそすれど怯むことなく、童磨が放つ氷の刃や蔓を切り防ぐ。砕けた氷の影を縫うように最高戦力の柱の一人、胡蝶カナエが刃を振るう。

 

「花呼吸 伍ノ型 徒の芍薬!」

 

高速の九連続の斬撃を放つ。上下左右から取り囲む様に放たれるこの型を回避するのは困難だが。

 

「七、八、九連撃か!凄いね!俺が戦って来た柱の中でもかなり強いよ!」

 

童磨は手に持つ扇でその九連撃を難なく弾き返される。そこで生まれた隙を童磨はそのまま扇を振るい仕留めようとする。カナエは体を捻り避けようとするが一手遅かった。

 

「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!」

 

しかし、真菰の打ち潮がその扇とカナエの間に割り込み、軌道を逸らす。二人は飛び退き距離をとる。だが、は

 

「もっと動かないと寒いでしょ?血鬼術 寒烈の白姫」

 

二体の女性の像を作り出し、その像から広範囲を凍結させる吐息が放たれる。二人は急いで冷気から逃げるように距離をとる。そして逃げた先には

 

『冬さざれ氷柱』

 

二人の頭上から無数の鋭く尖った巨大なつららを落下させる。二人は辛うじて横に飛び転がることで交わすことが出来た。

 

「よく避けたね凄いよ!ここまで二人とも中々に凄い連携だよ。何回か仕留めたかなぁと思ったんだけどね。けど、そんなに距離を置いたら俺の首を落とすなんて無理だよ」

 

童磨は一切態度を変える事無く朗らかに二人とも対峙している。まるで、余興に遊んでいるような感覚である。

 

(クソ……!)

 

真菰は内心悪態を付く。カナエも状況が芳しくないと内心焦っていた。今まで対峙してきた鬼が赤子の様に感じる。圧倒的格の違い。戦闘力は言わずもがな、1番の脅威は童磨の血鬼術。氷と冷気の血鬼術は冷気で体力を奪うだけではなく、身体ごと凍らされる危険と冷気を吸い込む事での鬼殺隊員の全集中の呼吸に必要不可欠の肺にダメージを与える…だけなら良いが、肺が凍りつき壊死するのは明白だろう。

 

しかも、

 

(まだ……まだ…!でも、呼吸が……!)

 

冷気で奪われる体温と体力、一瞬の隙すら命の保証が無い。無数の傷と出血が二人の動きを鈍らせる。だが、まだ二人が致命的な傷を負わないのは二人がそれを為せる程の剣士としての証明と童磨が本気を出さずに遊んでいるという事である。

 

(長くは……動けない、ここで決めるしかないわね)

 

カナエは真菰を見る。真菰もカナエと同じ考えの様子で構える。

 

「真菰ちゃん……、動けるわよね?」

 

「勿論……、動けます」

 

満身創痍。傷だらけで、身体の至る所が凍りついている。だが、二人は諦めない。次で仕留めようと神経を研ぎ澄ませていた。

 

「水の呼吸……拾ノ型 生生流転!」

 

「花の呼吸……!」

 

二人は全霊の技を放つため息を吸い込み童磨に肉薄する。距離が空いていたため真菰の生生流転は十分に威力を保つことが出来る。見た童磨は。

 

「素晴らしいね!勝てないと分かっていても命をかけるなんて!だけど、そろそろ閉幕として君達を救済するとしよう!血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩」

 

巨大な氷の仏像を作り出す。その巨大さは家屋を優に超える大きさで顕現する。放つ冷気は今までのはお遊びと言わんばかりに群を抜いていた。その質量を以て腕を振り下ろすだけでも人を殺すには十分である。

 

「まだ……!」

 

「ッ…弐ノ型 御影梅…!」

 

二人は振り下ろされる腕に真菰は生生流転の一撃、カナエは御影梅で受け流しをはかる。その甲斐あって二人は直撃は免れるが、衝撃は凄まじく二人を吹き飛ばす。何度も地面を転がり、真菰は家屋の壁に背中を激しく打ち付け全集中の呼吸が解けるだけではなく、血を吐き出す。さらに

 

(い、息が―――!刀が折れて……腕も…足も…動かない……!)

 

「ま、真菰ちゃん……逃げて……!!」

 

カナエも吹き飛ばされ家屋を数件突き破り倒れている。しかし、立ち上がろうにも足に力が入らない。数メートル離れた真菰が今まさに殺されそうとしていたが、足が動かず見ているだけしかできない。

 

「よく頑張ったね。真菰ちゃん、今、救済してあげるから」

 

真菰の耳に入るのは童磨の声。自身の死が確定する。強烈な冷気を感じる為、菩薩に潰されるのか、童磨に食われるかは認識できないが。死ぬと思うと涙が溢れてくる。まだやりたいこと、大変だったこと。色んなことが頭に浮かんできたが、1番に浮かんだのは

 

『真菰!』

 

銀髪の少女だった。何時もは何を考えているか分からない程に明るく、百面相の少女。だけど、誰よりも前に進むことに真っ直ぐで、危なっかしいところがある少女。一緒に過ごし、最終選別では命を助けてくれた恩人でもある。そんな少女との思い出が走馬灯のように思い出し

 

「―――舞銀」

 

呟くように、その少女の名を呼ぶ。

 

直後、轟音が辺りに響き渡る。皆が驚く中

 

「うそぉ!?」

 

童磨が驚きの声を上げる。それもそのはず、氷の菩薩が砕かれたのだから。その光景を見ていた童磨に次の瞬間。

 

「えっ!?うわっ!?」

 

背中から強烈な衝撃が走る。それとほぼ同時に両腕を落とされるのを認識する。童磨は家屋を何件も何件も貫通し地面を転がっていく。

 

そして刀が鞘に収まる音とがしたと思うと羽織を肩に掛けられ、抱き抱えられる。月明かりはその人物を照らし出す。

 

「待たせてごめん……!」

 

「舞銀……!!」

 

天与呪縛の少女が参戦する。




次回、舞銀と童磨の戦い
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