天与の少女 刃にて荒事を成す   作:皐月の王

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あけましておめでとうございます


天与の少女は鬼と対峙する

あれから四年が経ち、私も10歳になりました。道場で鍛えられ続けて五年を迎えています。筋がいいからとか、才能があるからと言って、成長期なのに鍛えられましたね。身長伸びなかったら恨むしかないですよ。

 

そして、今日も今日とて門下生の人と一緒に鍛錬する日々ですよ。年上の男性との鍛錬。普通では体格差で力負けするけど、私は例外的に大人の人とも力で競って勝つことも出来る。けど、私は速さを活かした剣が好きなので、速さを活かして攻め立てる。

 

「は、速いな!くっ、くそ!」

 

「はい、これで……終わり!」

 

私は相手の木刀をはじき飛ばして、喉元に木刀の先を突きつける。

 

「そこまで!」

 

師範である父から止めの声がかかる。私は木刀を下ろして

 

「ありがとうございました」

 

一礼して下がる。汗もかかず、息も切れることなく手合わせが出来るようになってしまいました。周りからは天才とか、神童とか、師範の娘は伊達じゃないとか、好き勝手言ってくれるけど、鍛錬はしんどいし、期待は重いしでいい事がない。でも、縮地とか抜き足について教えてもらいました。

 

「息を切らしてない所を見るに余裕そうだな?なら、山を駆け上って駆け下りてこい!往復10だ!その後素振り1000だ!!!」

 

「えぇ!?」

 

「つべこべ言わずに行けっ!」

 

「はいぃ!」

 

私は師範である父に言われた通りに山道を走る。駆け足で……。ことある事に山に登らされて、駆け足で降りてこい、と……。うん、しんどいよ!?まだ、私10歳よ!?10歳にどんなキツイ鍛錬させているのさ!?

 

私はそんな事を思いながら、諦めて今日も走るのでした……。

 

父side

 

俺の末っ子の娘は……剣に愛された者だ。この時代では大成するとは言い難い剣の才能だ。しかも、異様に身体能力が高い。齢10で大の大人に勝てるほどの膂力を持ち合わせているし、足に関しても私の全力で走るよりも速い。まさに、武の神に愛されていると言っても過言じゃない。もしも、あの才能が存分に使われる時、今以上に開花する時が来たら……。そう思うと武芸者として"楽しみ"だと思う心と"そんな日が来ない事"を願う俺が居る。

 

「…ふぅ!終わりました師範!」

 

入口から私を呼ぶ娘……舞銀の声が聞こえる。多少の汗と呼吸を整え終わったことを伝えた娘だ。その手には木刀が握られており、言いつけた素振りを終えたのだと言うのが分かる。毎度のことだが驚かされる。無理難題を言いつけているが、それを乗り越えてきているのだ、八つと言う歳で。兄が二人、姉が一人それぞれ道場で軽く鍛えているが、末っ子の娘はそんなレベルをとうに超えている。俺が小さい時と比べるべくも無く、今の私ですら打ち合えば負けてしまうだろう。我ながら、娘の才能に嫉妬してしまう。俺は自嘲気味に笑う。

 

「師範?」

 

「いや、何でもない。本日の稽古はここまでだ。明日は休みとする。しっかり身体の疲れを取るように」

 

『はい!!!』

 

他の門下生に本日の稽古終了を伝える。皆、疲れ果てた様に座り込む。それは、息子達、娘達も例外じゃない。皆疲れ果てているのが分かる。そんな中、舞銀は掃除の準備をする。

 

「ほら、座り込んでいたら帰れないぞ。すぐに着替えて来なさい。着替えたものから、道場拭き掃除1往復だ」

 

『はい!!』

 

全員が返事をして、井戸に水を汲みに行き、雑巾で床を掃除する。俺も道場を使う者として掃除は欠かせない。掃除が終わり、門下生が帰り、子供たちが残るだけとなった。

 

「よし、今日もよく頑張った。家に帰ろうか」

 

「もう、クタクタだよ~」

 

「早く風呂に入りたい」

 

「兄ちゃん!俺も一緒に入りたい!」

 

「湯が溢れるだろう?一人一人だ」

 

「えー」

 

「私も一人がいいー」

 

「たまにはお姉ちゃんと入りましょうよ?」

 

子供たちの仲がいい事に思わず笑みが溢れる。しかし、末っ子の娘は少し大人びていると感じている。4歳の時に熱を出して生死をさ迷ってから変わった。まず、周りの風景を、生活を信じられないと言った目で見ていた。日付を突然聞いて乾いた笑いをした日もあった。俺だけが違和感を抱いた。だが、それと同時に、異様な身体能力と精神が前よりも合致したように見えた。今までは、想像以上に力を出していて、転んだり、少しの跳躍で木まで届いて落ちて怪我をする事が多かった。だが、今ではそんなことも無く、体の使い方を理解したという感じだ。だからこそ、違和感を感じたのだ、数回何かを確認して適応した自分の娘に……。だが、所詮は気の所為だったと割り切った。今目の前の光景だけでそれを考える必要があるかと聞かれたら無いと答えられるほどに、些事だ。

 

「風呂の前に夕飯だ。食べて風呂に入って、休むんだぞ」

 

『はーい』

 

こんな日々が続けばいいな。俺はらしくない事を考える。ふと、見上げた月が不気味に感じた。こう言うのは良くない。何か良くない時が起こる時は、そう予感させる物がある……。

 

父side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、私です。夕飯を食べ、お風呂に入り汗を流してあとは寝るだけとなりました。でも、中々寝付ける気がしないので、縁側で月を見ていました。

 

「今日の月は不気味だなぁ……」

 

ふと言葉に出るほどに、今日の月は嫌な感じがしました。良くない事が起こる時の前触れとでも言うのかな?それはそれで嫌すぎるんだけど、そんな事ないよね。漫画、アニメの見すぎだったかな?

 

「うーん、早く寝よう。起きていても何も無いし。いや、本当何も無いよね……」

 

娯楽の少なさに私は思うところがあった。偶に町に行くと、コマで遊んでいる子供たちや、鬼ごっこをしている子供達がいる。だけど、私には同年代の友達なんて居やしません。ボッチですよ。

 

「考えるだけなんか惨めになる……もう寝るんだから無駄なことなんて考えないでおこ」

 

私は無理やり目を瞑る。……けど、母の部屋に異様な存在が近づいているのを感じ取った。異臭、異音、そして異質な気配。こんな気配は感じたことはなかった。それ故に私は直ぐに動いた。木刀を手に持ち、襖を蹴破って最短距離で母親の部屋にたどり着く。

 

「何事!?」

 

母親は驚いて音のする方私の方を見るが、私は無視して母親に迫っている異様な存在に向かって、躊躇無く木刀を振り抜いた。

 

その存在は私が来たことに驚いていた様子だったが、私は母親を守ると言う大義で異形を殴り飛ばす。異形は殴られた事により、勢いよく外に続く襖を突き破って飛んでいく。それと同時に木刀がへし折れる。結構硬いはずなんだけどな!?

 

「何事ですか!?こんな時間に!しかも、今のは盗っ人ですか!?」

 

「お母さん!逃げて!あれは……盗っ人じゃない……!」

 

私は警戒を高める。ただの盗人程度なら、母親が負ける事は無いと知ってるからだ。だけど、相手が人じゃないなら勝てない。私が本能で思った。

 

「なんの音だ!?」

 

「お母様無事ですか!?」

 

「何してるのこんな時間に?」

 

父さんや1番上の兄や姉が騒ぎを聞きつけて慌ててくる。私は父さんと兄さんに

 

「事情は後で説明するから……刀持ってきて!じゃないと…!皆殺られる!」

 

刀を取ってくるように言う。廃刀令の時代だが、この家には刀はある。家宝として置いてあるものだけど、命に関わるのだから、この際身を守る為に役に立って欲しいものだ。

 

「どういう事だ!?説明を!」

 

「いいから!お兄ちゃんとお姉ちゃんはお母さんをお願い!!」

 

「待て!説明しろ!」

 

私は二人に指示を出して庭に出る。お父さんから説明するように叫ばれるが、そんな時間は無い。初めて対面するけど、そいつのことは知っている。そういう世界だと認識したから、いつか来るかもしれないと思っていた。

 

吹き飛ばされた異形の前に立つ私。自分の心臓がうるさく感じるほど脈打つ。緊張で呼吸が浅くなる。けど、見据える。

 

「ってて……!いきなり殴り飛ばすなんて酷いなぁお前……!んだぁ?美味そうなガキじゃねぇか!」

 

細い手足の半裸の男性。だが、それを人間と言うには異形であり、角のような突起物が頭にあった。それは……。

 

「やっぱり、鬼なんだ。道理で、嫌な匂いで、不快に感じる音だと思ったよ」

 

私は不快感を出して言う。遂にこの時が来てしまったのかと拳を握り込む。幾ら天与呪縛があるからと言って、10歳で女の子で、日輪刀も全集中の呼吸も無い状態で鬼に勝てるかと言われれば不可能だ。勝てないし殺されて食われるのが関の山だ。けど、勝てないという事実は変わらない。

 

「んじゃあ、いただきまぁす!!!」

 

鬼は私目掛けて腕を伸ばしてくる。その腕は一瞬で私の首に迫る。そう一瞬だった

 

「速い!」

 

「避けて!」

 

「あれは間に合わない!」

 

家族が絶望し、私の死を受け入れるしかないと思ったかもしれない。けど、只人では無い私はそれを

 

「よっ!」

 

「なっ!」

 

なんて無いようにしゃがんで避ける。

 

「運が良い奴め!」

 

鬼はもう一本の腕を伸ばしてくる。それをしゃがんでいる状態で身体を捻って避ける。

 

(今のも避けるだと!?完全にしゃがんでただろ!?)

 

「ふぅ」

 

上手く避けることが出来た。まぁ、見えていたから避けるのは難しくはないけど、いざ鬼と対面すると緊張するし、あの被弾一発で死に繋がると思うとヒヤリとする。けど、

 

「私を殺せるものなら殺してご覧よ!」

 

生前では感じることの出来なかった、スリルと生の実感が私を狂わせる。ああ、なんと異様か。なまじ力があるばかり、私はこんな危機にも嗤ってしまう。昂ったまま一息で距離を詰める。

 

「なっ!(なんだ!?この人間のガキ!!動きが見えなかったぞ!?)」

 

そしてそのまま私は掌底を全力で鬼の顎目掛けて打ち込む。

 

「せいっ!」

 

「うぐっ!?」

 

鬼の顎はそのまま上がる。全力で打ち込んだのに顎が上がる程度なのは私がまだ幼いからなのかな?でも、全力で殴ってこれだけ効果があるならいいや。もっと翻弄して殴ろう!

 

(なんだこのガキの力は!?見た目と中身が合わねぇ!?なんだよこの動き!?違う、このガキの動きと力は!?人のそれじゃねぇ!)

 

私は足を使って、鬼を中心に打撃を与える。決定打にこそならないけど、鬼の心をへし折るには十分だ。私は出来る限りの打撃を与える。殴り、蹴り、手刀、足刀、様々連携で、攻撃の隙を与えず責め立てる。

 

「こ……こんな、ガキに……!!!」

 

「お前はノロマだからなぁ」

 

第三者の声が聞こえた。その瞬間……

 

視界の端で、父の肩が何かに貫かれるのを見た。うそ!?ここに来て二体目!?

 

「ぐっ……あああ!!!」

 

「父さん!?」

 

姿を表したのは、もう一体の鬼。風景に紛れるように身を潜めていたのか!父の肩は鋭利に伸びた爪に貫かれていた。

 

「俺のことは気にするな!雅志!お前は刀を取ってこい!素手じゃ限界が来る!相手ができるのはあの娘だけだろう!緋咲は寝ている雅人を起こして、あの人の所まで走れ!」

 

「「分かった!」」

 

そういうとお兄ちゃんとお姉ちゃんは走り出した。私はそれと同時に父さんの肩を刺している鬼に飛びかかる。

 

「父さんから離れろ!!!」

 

鬼はそれを待っていたと言わんばかりに、空いている手を私に向けてニヤリと笑う。

 

「こういう奴はこの手に限る」

 

その言葉と同時に鋭い爪を私の方に伸ばす。私を串刺しにするために放たれた爪は私の心臓目掛けて伸びてくる。私はまだ手に持っていた木刀を身代わりにする。

 

「はぁ?んだぁ?その動き!?」

 

「離れろって言ってんのよ!!!」

 

鬼はその動きが理解出来ていないのか一瞬の隙ができた。私は着地して、一歩で前に飛び、鬼の顔面にドロップキックを入れる。

 

「がっ!?」

 

鬼はその一撃を受けて後方に数メートル吹っ飛ぶ。その勢いで、父に刺さっていた鬼の爪が鬼手から折れる。

 

「がっあああ!」

 

「お父さん!」

 

「あなた!今治療を!」

 

「だ、大丈夫だ。下手に抜きさえしなければ出血で死ぬ事は無い……!しかし、アレは…いや、あれが…鬼か」

 

父がなるほどと納得したように言う。

 

「鬼ってあのおとぎ話の?」

 

母が父に聞く。父はなんとも言えない顔をしながら

 

「人の血肉を喰らう化け物。知り合いから話には聞いていたが……まさか実在するとはな。だが、それ以上に」

 

父が私の方を見て

 

「その化け物と渡り合って押している娘が何とも頼もしいものか。娘贔屓かもしれんが武の神に愛されているだけはあるな……。一番幼い娘に頼るのは情けないが、任せてもいいか?」

 

私はまた別の意味で心が高鳴った。誰かに頼られる、父に期待される。最初は重荷に感じていたけど、今はそれに応えたいと思えた。私は父と母に背を向けて

 

「任された!」

 

それと同時に

 

「持ってきました!」

 

1番上の兄さんが刀を持って戻ってきた。

 

「舞銀!受け取れ!」

 

そのまま私向けて刀を受け取り鬼と対峙する。

 

「ありがとう雅志お兄ちゃん!」

 

ここからは体力勝負。緋咲姉さんが誰を迎えに行ってるか分かんないけど。

 

「さぁ、さぁ!ここからは舞銀の大立ち回りご刮目ください!!」

 

私は構えて仰々しく挑発する。その挑発に乗るのは二人の鬼。

 

「調子にのんなコンガキがぁ!!!」

 

「串刺しにしてやるからよぉ!!!」

 

鞭のようにしなやかに伸びる腕を操る鬼と、槍のように鋭く突き出される爪を操る鬼。その鬼二人に挑むのは、天から与えられた呪縛で身体能力が異常に高い私。

 

先に仕掛けたのは腕を伸ばす鬼。私目掛けて両腕を伸ばしてくる。その腕に対して私は抜刀術で伸びてくる腕を切り落とす。

 

「がっああ!だが無駄だ!鬼は再生する!!!そして!」

 

「お前の相手はあいつだけじゃねぇんだァ!」

 

爪で攻撃仕掛けてくる鬼が距離を詰めて攻撃をしてきた。私は体を捻ったり、刀で受け流したりして後ろに飛んで距離をとる。

 

「そら!忘れんなよ!!!」

 

着地に合わせて私を殺すべく腕が伸びてくる。

 

「舞銀!!!横よ!避けて!」

 

母さんの声が悲鳴が聞こえる。私は鞘で腕を叩き落として、その勢いで体勢を変えて、たたき落とした腕を踏みつけ、そのまま縮地を使って急接近して

 

「まず、一つ!」

 

その言葉と共に首を切り落とす。

 

「あんなガキに首を落とされるなんてなぁ、なさけねぇなぁ!」

 

「それはあんたもだけどね!」

 

「はぁ?」

 

私は切り落としたのと同時にもう一人の鬼との距離を詰めて、首めがけて刀を振るっていた。飛んだ首と目が合う。私は最大限嫌な笑みを浮かべて嗤ってやった。だが、鬼はこれじゃあ死なない。

 

体が首を回収して復活する。

 

「鬼殺隊の刀じゃねぇなら死なねぇんだよ!」

 

「そうなんだよなぁ」

 

「うそ!首を落としたのに!」

 

「舞銀!」

 

雅志兄さんと母さんが悲鳴をあげるが、私は刀を構えて

 

「……なるほど。これじゃあ死なないか。ならば、死ぬまで落としてあげる!」

 

そう言い再び鬼と戦いを始める。それから何度も何度も首を落としたり、腕を落としたりして消耗はさせている。そしてそんな時、庭に天狗の面をつけた人物が降り立つ。あの人はもしかして!それを見た父さんが

 

「来てくれたか!鱗滝殿!」

 

「お前の娘と息子に怪物が出たと聞いてな。その娘、よく耐えた!あとはワシに任せろ」

 

鱗滝さんが私の頭を撫でて鬼と対峙する。

 

「老いぼれが増えた所でなぁ!」

 

爪の鬼が鱗滝さんに襲いかかるが、

 

「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!」

 

流れる水のような綺麗な動きで鬼の首を切って落とした。

 

「この爺!鬼殺隊!」

 

腕を伸ばす鬼は分が悪いと判断して逃げようとする。

 

「逃がすわけないでしょ!」

 

進行方向に立ち塞がり、抜刀術で両足を切り落とす。そのまま後ろに倒れそうになった鬼に

 

「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」

 

鱗滝さんがトドメを指した。そうして、家にきた鬼を仕留めきり事は終わった。その後は父の治療と、私が壊した襖の修繕を日が昇ってからした。

 

そして

 

「それでは、娘を頼みます!」

 

「分かった。立派な剣士に育ててみよう」

 

「それじゃあ行ってきます!」

 

私は鱗滝さんに弟子入りしました。鬼を狩る為に。




天与呪縛・フィジカルギフデッドについてですが伏黒甚爾レベルを想定してます。
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