「いや、善逸君も言ってるけどこれは汽車という乗り物だよ?」
真菰は苦笑いを浮かべながら、炭治郎と伊之助に説明を行っていた。炎柱・煉獄杏寿郎と無限列車にて任務を行う。それが今回の任務であった。
そこで汽車を初めて見た炭治郎と伊之助が少し斜めにズレた事を言い出したので善逸が突っ込んでおり、真菰も苦笑いを浮かべながら説明していた。
「猪突猛進!!」
「うわっ!?やめて伊之助君!!」
「やめろ恥ずかしいだろ!!」
この後駅員に注意されたり、帯刀の件で警察に呼ばれそうになるがその場から離れて事なきを得た。
「鬼殺隊は政府非公認だからね。堂々と刀を持っていたら捕まるから気をつけようね」
「そうですよね、鬼がどうのと言っても信じて貰えないですし」
真菰と善逸はため息を着きながら説明をした。善逸がここまで普通に真菰と話せているのは、ひとえに常中の修行が厳しかったと言うのも一因である。炭治郎からしたら珍しいものを見たと言う感想が出るものである。
その後、善逸が切符を買ってくることで乗車でき、無事に煉獄と合流出来たのである。弁当食べてうまいうまいと大声で言っていたので直ぐに分かったのだ。
「今回はよろしくお願いします。炎柱様」
「うむ!錆兎の継子の真菰だな!話は聞いている!錆兎、義勇に勝るとも劣らずの実力があると!頼りにさせて貰うぞ!」
「はい!そう言えば炭治郎が話があるみたいで」
「うむ、竈門少年か!」
そこからヒノカミ神楽について炭治郎は質問し話し込んでいた。真菰は座席に座り、外の景色をゆっくりと眺めていた。
「切符……拝見致します……」
「ありがとうございます」
車掌が切符を拝見しに来る。そして真菰の意識は暗転する。無限列車の夜が始まる。
私は走っていた。無限列車が走り出してから二時間後に無限列車が通るであろう場所目指して。目的は炎柱煉獄杏寿郎の生存とかまぼこ隊、真菰の生存の為に。
「何年か前にも似たように走ってた気がする……!」
ただ言えることは昔より断然速いという事かな。森の中を駆け抜けて行く。猗窩座はヒノカミ神楽を使えるようになった炭治郎と痣を出した義勇で何とか勝ったレベルの強さを持っている。正直に言うと今の煉獄さんと真菰じゃ少し荷が重い。しかもかまぼこ隊を守りながらとなれば尚更だと思う。
「うっわ……我ながら傲慢だなぁ……。ますます、自分が嫌になる……!」
真っ当に努力した人達に私は何も言えない。天与呪縛で得た力がある私はズルをしているのと同義なのだから。有効活用はしてるけど望んで得た力では無い。まぁ、そうだとしてもズルはズルだ。私が胸を張っていい理由は無い。だからその分
「私が居る分の働きはしないとね!!」
更に速度を上げて走る。だけど、殺気を感じ取り私は足を止める。それと同時に木っ端の鬼が襲いかかってくる。
「邪魔!水の呼吸 参ノ型 流流舞い!」
襲いかかって来る鬼を流流舞いでサッと首を落として構え直す。
次々と鬼が襲いかかって来る。木っ端の鬼が幾ら束になっても……!と言うか邪魔しないで!!
「雷の呼吸、参ノ型 聚蚊成雷!!」
群がってくる鬼を大きく囲んで波状攻撃で首を切り落としていく。無駄に数が多い鬼を蹴散らしたその直後異様な気配を感じ取る。そして、それは木々の間からの姿を現した。月光で相手を視認して緊張が走る。
「いや、いや……どんな確率なのかな……よりによって出会うなんて……!」
六つの目を持つ鬼。刀を携え私の前に立ちはだかるのは上弦で最強の鬼。
「お前か、数年前に童磨を狩った鬼狩りの八雲舞銀とは……」
「上弦の壱……!」
黒死牟が私の前に立ちはだかっていた。いやいや!何しに出てきたし!冗談でも出てくるなよ……しかも、こんな時に!
「無惨様がお前を早々に消すようにと命じたのだ。ここより先に通りたくば私を切って進むのだ」
とんでもない威圧感を放ってくる黒死牟。戦うのは避けられない。でも、ここで足止めなんてされている場合じゃない。私は日輪刀を持ち直して構える。
「悪いけど……今忙しいから……!」
できる限り手の内晒さず、ここを突破する。だから、それまで耐えていて皆……!
「炭治郎と伊之助君は鬼の首を!私と善逸君、禰豆子ちゃんで前の四両を守る!炎柱が後方の四両を守ってくれてる!皆しっかりね!」
「はい!」
「任せろ狐面!」
煉獄受けた指示をかまぼこ隊に伝達し、乗客を守るべく真菰達も戦い始める。人を喰らおうとする鬼の肉塊に狙いを絞り
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮!」
的確に切っていく、それだけに留まらず連続で次の型に繋げる。
「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱・泡沫!!」
狭い車両内を縦横無尽に飛び回り、前四両の中駆け抜けて切り込む。その後ろを善逸が霹靂一閃、禰豆子が更に追撃し磐石とする。
(鬼の感じからして複数というより、強いのが列車丸ごと取り込んでいる感じかな?しかも、血鬼術とこの異形……純粋な攻撃的な鬼じゃない分、耐え忍ぶ戦いになりそう……状況によっては私も炭治郎達の方に行くのも……いや、それなら善逸君と禰豆子ちゃんを行かせる方がいいだろうけど……)
真菰は思考を巡らせながら乗客を守り続ける。二人を救援に行かせるか考えられるがこの狭い環境では人が多いほど逆に不利になる事を考えられる。
(任せるしかない!頼んだよ炭治郎!伊之助君!)
任せることを選び、車両の鬼の身体を切り続ける。柱とも勝るとも劣らないと言われるだけはあり、乗客に指一本触れさせずに切り伏せていく。
暫くして車両が大きく跳ねる。
(炭治郎達がやった!?流石炭治郎、ひたむきに努力してきたから繋がった!後は乗客の皆が怪我しないように、横転する衝撃を減らそう!)
瞬時に状況を理解した真菰は日輪刀を上段に構えて
「水の呼吸 捌ノ型 滝壷!!」
横転する衝撃を減らす為に技を放つ。最後まで乗客を守るべく技を振るい。真菰が居た車両は横転することなくとどまった。
「よし、炭治郎達は大丈夫かな」
真菰は乗客の安否を確認した後、外に出て炭治郎達と合流すると煉獄が炭治郎に常中で止血するように指示を出していた。
「真菰……さん!」
「炭治郎大丈夫!?」
「うむ、腹を刺されて居るみたいだが、今止血している。隠も来たら大丈夫だろう。そっちの状況はどうだ?」
煉獄が現状の確認を行う。真菰は答える。
「横転の際の怪我人はいます。ですが、命に関わるような怪我人は居ません」
「聞いた通りだ少年!こっちも怪我人はいるが、命に別状は無い!よくやった!君はもう無理をせず…」
言葉がそこで途切れる。何者かが来た気配を感じ取り、煉獄と真菰は警戒態勢に入る。直後轟音が響き渡る。三人から約20m後方に何かが降り立つ。
煉獄と真菰は日輪刀に手をかけ構える。砂埃が晴れるとそこには死人の様な肌の色に紅梅色の短髪、細身ながらも筋肉質な体格の若者といった外見。顔を含めた全身に藍色の線状の文様が入っており、足と手の指は同じ色で染まっていて、爪に至っては全て髪と同じ色であり、服装は、上は素肌に直接袖のない羽織、下は白のズボン状の道着と両足首に数珠のようなものを着けているだけの軽装の鬼が居た。それだけではなく、左右の瞳には『上弦』そして『弐』の文字が刻まれている。
「ッ!」
真菰が思い出す数年前の記憶。別の上弦の弐と対峙した時の記憶が鮮明になる。思わず顔をしかめるが深く息を吸い込み見据える。次の瞬間その鬼は炭治郎目掛けて拳を振り下ろしていた。
「水の呼吸、肆ノ型 打ち潮!!」
「炎の呼吸、弐ノ型 昇り炎天!!」
真菰と煉獄の技がその拳を切り伏せ炭治郎を守る。その鬼は大きく後退し腕を瞬時に再生させる。
「良い刀だ」
傷の血を舐め楽しげにそうつぶやく上弦の弐。
「何故彼から狙った?」
「近くにいたからな。そいつの次はそっちの奴を殺るつもりだった」
「ッ!?」
笑いながら言う乱入者の言葉に指された炭治郎の背中にゾクリと悪寒が走る。
「何故手負いの彼から狙った?」
「話の邪魔になるかと思ったんだよ、俺とお前達の」
「君と俺が何の話をする?初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ」
「私も鬼と交わす言葉は無いよ」
上弦の鬼の言葉に煉獄と真菰は警戒の視線を向けたまま言い放つ。しかし意に介さず鬼は続ける。
「そうか。俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る」
「俺達と君では物事の価値基準が違うようだ」
「そうか、では素晴らしい提案をしよう」
そう言って上弦の鬼は右手を前に出し
「お前達も鬼にならないか?」
誘う様に煉獄と真菰に向ける。その言葉に煉獄と真菰
「「ならない」」
即答で答える。
「見れば解る、お前達の強さ。柱だな?その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い。お前の方は女にしておくのは勿体ない」
拒否も意に介した様子もなく己の考えのみで煉獄と真菰を見つめ話をしているのだ。
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
「私は水柱の継子、鱗滝真菰」
「俺は猗窩座」
煉獄の名乗りに気をよくした様子で上弦の鬼こと猗窩座は続ける。
「杏寿郎、真菰、何故お前が至高の領域に踏み入れないか教えてやろう」
言いながら猗窩座は獰猛に微笑む。
「人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ」
そう言って再び猗窩座は杏寿郎と真菰に手を差し伸べる。
「鬼になろう杏寿郎、真菰。そうすれば、百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」
「…………」
猗窩座の言葉に煉獄は少し思案する様子を見せるが、変わらないと言わんばかりに
「老いることも死ぬことも、人間と言う儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ、死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ。強さと言うものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」
煉獄は真剣な表情で猗窩座を見つめる。
「この少年は弱くない侮辱するな」
言いながら杏寿郎は日輪刀を握り直す。
「何度でも言おう。君と俺達とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも、鬼にはならない」
「私も永遠なんて欲しくない。いつかは失うと分かっているからこそ、一秒一瞬、一緒に生きたい人と生きる時間が大切だから!」
「そうか」
真菰と煉獄の返答に猗窩座は目を細め
「術式展開 破壊殺・羅針」
低く腰を落としながら右手を開いて伸ばし、左腕を腰に携えるように引き絞る。猗窩座の足元には雪の結晶のようなものが浮かび上がる。
「鬼にならないのなら殺す」
獰猛な笑みで二人と対峙する。その直後、舞銀の鷲が報告を上げる。二人の上を飛び。
『嵐柱 八雲舞銀上弦ノ壱ノ鬼ト交戦!!救援来ルマデ持チ堪エロ』
最悪な報告をするのであった。
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