黒死牟side
私は目の前の女の鬼狩りを殺しに来た。今まで幾度となく鬼狩り、その柱を葬って来た。
だが、
「はぁああああ!!!」
目の前の剣士の強さは異常だった。剣技は縁壱ほど洗練されてはいないが、速度、動きは人間のそれを凌駕していると言っても過言じゃ無い。私が透けて見える世界で対応出来るだけで、速度に関しては私以上だ。……本当に人間か?
それに
「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」
「水の呼吸 捌ノ型 滝壷!!」
私の技を掻い潜り、型を繰り出してくる。私の型の特性を知っているのか紙一重で躱そうとはしない。そもそも奴には間合いは意味を成さない。距離を詰めるのも離すのも奴には一呼吸以内に出来る。木々の間を獣以上の敏捷で私に肉薄し私と切り合う。
私はこれ程までの剣士と死合うのに喜びを感じていた。これ程までに研鑽を積みその域に達している者と競い合うのは愉しいものだ。こうも、私の技についてくるとは。懐かしい感覚に高揚する。
「月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え」
「風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風 !」
私が放った斬撃を今度は風の呼吸の型で相殺、防いでみせた。
私と互角以上に切り結んで、互いに傷すらつかぬ。強者との戦い、この高揚感。何たる幸運、何たる巡り合わせだ。好敵手とは得難い物だ。それ故にお前が人間なのが惜しい。
「月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月」
「雷の呼吸 弐ノ型 稲魂!!」
本当に素晴らしい。ダメージを最小限に抑えながら私にも私の月の呼吸に対して様々な呼吸で対応する対応力と判断力。それに、複数の呼吸を使い分けることが出来る技の練度。まさに、天から与えられた才覚そのモノだ。
「こんの……!バケモノ!!」
本当に惜しい。私との戦いに集中しきれていたら、私と切り結んで生き残った初めての鬼殺の剣士になれたと言うのに。無駄が無く鍛え上げられた肉体、練磨された技、これほどの剣士に拝むのは三百年振りと言うものであったが……精神が未熟であったか。
だが、その時が来るまで存分に愉しませてもらうぞ。八雲舞銀。
舞銀side
本当に厄介で鬱陶しい。
技の範囲、速度、練度、透き通る世界。無傷で突破出来るなんて思ってないけど、厄介で鬱陶しすぎる。一振の斬撃の周りに毎回不規則な細かい刃を振り回して……!しかも大きさなんてバラバラだし!森の中ということもあって、月明かりも差し込まないから視界も悪いし、木々も鬱陶しい。伊達に上弦のトップじゃない。童磨のような呼吸を封じてくる天敵的な理不尽は無いけど……。でも、鬼の力と全集中の呼吸は改めて対峙すると卑怯だと言いたくなる。
「こんの……!バケモノ!!」
構っている暇なんて無い。私を殺したいのなら幾らでも相手になってあげると言いたいけど、今夜に限りは本当に勘弁して欲しい。煉獄さんや真菰の命が掛かってるかもしれないんだ。
だけど、できる限り手の内を晒したくないし。それに、私がここでもしも黒死牟を狩れば、あんの臆病者が私が死ぬまで一生引きこもって出てこない可能性もある。それ以上に、黒死牟も失えば、上弦の最高戦力を失い、その補充にも時間を要する。そうなれば出した尻尾なんて意味が無くなる。
(どうすれば……いいの!?腕や足を切り落としたとしても直ぐに再生する。それじゃあ、意味なんて無いし、ここから離脱する事なんて出来ない!)
私の手に力が入る。もう何度切り合ったか分からない。互いに有効打が無く時間だけが過ぎていく。最悪……。巡る思考は真菰のこと、猗窩座と戦うことになるのは明白。女は殺さないとは言われてても、真菰程の実力者ともなれば関係無く殺されてもおかしくは無い……!第一真菰が誰かを庇う可能性だって……!
「戦いの最中に考え事か?命取りにもなりうるのに余裕だな」
「ッ!」
鋭く、洗練された技が私の命を奪おうと迫り来る。
「月の呼吸 陸ノ型 常世孤月・無間」
無数の斬撃波を乱れ撃ちして私を細切れにせんと技が私を襲う。私は足に力を入れて後方に大きく飛びながら、致命傷になりうる斬撃はたたき落とす。致命的ダメージは避け、身体を欠損させられること無く切り抜けることが出来たが、
「ぐっ……!」
それでもなお、決して浅くなく全身が斬られる。初めて鬼との戦いでここまでの傷を負った。腕から、肩から、足から、首の近くが致命にならないが相応に斬られ出血する。羽織も隊服もところどころ斬られてボロボロになっている。
「ほう、殺す気で放ったがその程度の傷か……。頑丈だな」
死が近い。童磨の時より死が近いけど、私は童磨の時ほど、集中は出来ていない。これほどの相手に注意散漫、心ここに在らずは本当に細切れにされても文句の言い様が無い。
「腰に差している二本目は抜かないのか?それとも予備か?」
無惨に技の詳細を晒したくない……。何て言ってられない。
「……っ!」
間に合わなかったらどうしようとか、最悪な光景が脳裏にチラつく。真菰が皆死ぬ光景が頭に張り付く。一度見た技を初見で見抜かれるならそれを超えれば良い。出し惜しみをして私が死んで、真菰を……煉獄さん達を助けられない。当たり前の事実から目を背けるな……!
私は日輪刀を納刀して柄に手をかけて構えをより前傾姿勢する。そして私が座する柱の名の呼吸を解禁する。
「嵐の呼吸 壱ノ型 野分!!」
縮地と雷の呼吸の歩法で一瞬で飛び込み二本の日輪刀を同時に交差する形で放つ二連撃の抜刀。童磨の氷人形を破壊した嵐の呼吸の抜刀術。
「月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り」
黒死牟も横凪の技で対応しようとするが、私の方が速い。黒死牟が刃を振り切るよりも早く私が黒死牟の両腕と刀を破壊して切り抜ける。
「何……?」
黒死牟は瞬時に両腕を生やして、バカでかい刀も出現させていた。全く、鬼の再生力には頭を抱えそうになる。なら、削り取ってやる。振り返ると同時に飛び込む。
「嵐の呼吸 弐の型 狂嵐豪雨!!」
台風の様に黒死牟を中心に波状攻撃を仕掛ける。狙いは首と腕そして武器。何度でも出すなら何度でも折ってやる。
「小賢しい……!月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦」
ノーモーションからの斬撃。数個の斬撃は肩や脇腹とかを斬り裂くがそこまで深手では無い。肩まで伸びてた髪は斬られた。もう一度武器を破壊し、片腕を奪い、トドメを刺す為に構える。
「嵐の呼吸 肆の型 画竜天晴!!!」
現状の嵐の呼吸の最大威力を誇る技を叩き込もうとする。けど、相手も迎え撃ってきた。
「月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月」
振り下ろされる軌道の複雑かつ無数の斬撃波と辺りの大気すらも一緒に切り上げる二本の極大の斬撃がぶつかり合い、轟音を響かせ烈風を巻き起こし、木々も木っ端微塵に吹き飛ぶ。そして、その衝撃波で私と黒死牟は互いに大きく吹き飛んだ。
何とか受身を取り、納刀して再び走り出す。止血してる時間も惜しいし、今回は痛み分けで格好が着く。ボロボロで出血もかなりの物で少し霞んで周りが見える。だけど、大切な人を失うことに比べたら、そんなもの狗に食わせてしまえばいい。
「はぁ……はぁ……くっ……!無事でいてよ!」
第三者視点。
上弦の弐、猗窩座と対峙している炎柱、煉獄杏寿郎と水柱の継子、鱗滝真菰。戦い始めて相応の時間が経っていた。互いに隙をカバーし合って、ここまで目立つ様な攻撃を受けることなく渡り合うことが出来ていた。
「いいぞ!杏寿郎!真菰!お前達のその剣技!!俺の攻撃に対応できるこの素晴らしい反応速度!!これらが失われて行くのだぞ!!悲しくは無いのか!!」
「誰もがそうだ!!人間なら当然の事だ!!」
「だからこそ!一瞬、刹那の為に生きるの!」
二人を相手取って攻撃を全て弾く猗窩座。炭治郎が何とか援護できないかと動こうとした瞬間。
「動くな!!傷が開いたら致命傷だ!!待機命令!!」
炭治郎に動くなと煉獄は命令を出す。その間の隙は真菰が猗窩座と戦うことで補う。
「破壊殺・乱式!!」
「水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き!!」
猗窩座の近接の乱打を水の呼吸最速の突き技で対応する。真菰は鱗滝一門の中で舞銀を除けば最速であり、乱式の全てを迎え撃つことが出来ていた。だが、
(ッ!一つ一つが重い……!防ぐ度に腕が痺れそうになる……!)
「乱式を防ぐとはな!やはりお前は鬼になるべきだ真菰!人間のままなんて勿体ない!!お前も鬼になれ!!真菰!!」
「記憶力ないの?さっきも言わなかった?鬼には成らないって!!」
猗窩座の拳打に速さで対応する真菰。
「分からない奴だな!脚式・流閃群光!!」
そう言いながら、踏み込んでの連続の蹴り。真菰は刀で受け止めるが突き出された蹴りの威力が凄まじく、さらに横薙ぎに蹴り飛ばされ列車まで飛ばされ激突する。
「ぐっ……ああっ!!」
凄まじい勢いで叩きつけられた真菰の口から血が吐き出される。煉獄は踏み込み猗窩座を斬るべく技を放つ。猗窩座は破壊殺・羅針でそれを察知する。
「炎の呼吸、伍ノ型 炎虎!!」
「破壊殺・乱式!!」
二人の技がぶつかり合う。互いに互いの技を押し切り、煉獄は猗窩座の腕を切り落とし、猗窩座は煉獄の腹部に拳を叩き込んでいた。
「ぐっ……!」
「水の呼吸……弐ノ型 水車!!」
戦線に復帰してきた真菰が猗窩座を切り落とし押し込むのを阻止する。瞬時に猗窩座は腕を再生させるが
「水の呼吸……肆ノ型 打ち潮!」
更に打ち潮に繋げて猗窩座を斬り、距離を取らせる。猗窩座は距離を取りながらも
「破壊殺・空式!!」
空気を殴りつけて拳圧で真菰を攻撃する。その間に煉獄が再び割って入る。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!」
前方を薙ぎ払い拳圧を防ぐ。しかし、防ぎきれなかった拳圧が煉獄と真菰を捉える。それぞれ苦悶の声をもらすが倒れること無く防ぐ為に日輪刀を振るう。
「まだ分からないか杏寿郎!お前が命を削って俺に喰らわせた斬撃は既に完治している!だが、お前や真菰の傷は大きい。先の一撃で確実に肋を砕いている。鬼ならばかすり傷だ」
肩で息をする二人。真菰は小さく笑い話す。
「でも、斬れるという事は、首さえ落とせば私達の勝ちだよね。確かに、私達はボロボロでこのまま続ければ死ぬかもしれない。だけど、人間にあって鬼に無いものがある」
「ほう?」
「それは、他者との繋がり……絆だよ。ここで私達が倒れても、炭治郎や他の皆が貴方の情報を持ち帰り、対応策を各々考える。それは、意志を受け継ぐという事。そうなれば鬼舞辻無惨の首にも刃が届く」
真菰はそう言い構えを取る。その目は覚悟を決めており、煉獄もそれに続くように構える。
「真菰の言う通りだ!俺達は決して独りで戦っている訳では無い!!俺は……俺の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」
「これで……決着をつける!!」
二人の気迫は衰えることなく猗窩座の首を落とすべく技のタメに入る。
「素晴らしい闘気だ……それほどの傷を負いながらもその気迫、精神力素晴らしい!!!やはりお前達は鬼になるべきだ!!!」
猗窩座も迎え撃つべく構える。その時、一陣の風が両者の間を吹き抜け声が聞こえた。
「風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ!」
森の方角から凄まじい竜巻のような何かが猗窩座に襲いかかる。その速度は凄まじく、猗窩座の破壊殺・羅針の反応を持ってしても迎撃しようとした両腕をいとも簡単に両断し、身体に一太刀いれ、更に蹴り飛ばされる。
「ぬぅお!!俺相手に蹴りを放つか!しかし、俺の邪魔をするな!」
猗窩座は着地し瞬時に身体を再生してその襲撃者を見る。真菰達は驚いて言葉が出なかった。猗窩座への襲撃もそうだが、その襲撃した人物が。
「……ごめん、遅くなった」
綺麗な銀髪を自身の血で化粧し、今にも倒れそうな位ボロボロの状態で立っている舞銀である事。
今回の舞銀は嵐の呼吸を使っている時も集中が童磨戦より乱れて、勝負を急いでいるため、本来より威力が低下してます。
嵐の呼吸 弐の型 狂嵐豪雨
荒れ狂う台風の如く、相手に素早く近づき周囲を素早く取り取り囲み、掴み所の無い動きですれ違いざまに何度も切り抜け波状攻撃を放ち無数の斬撃を繰り出す。
参の型:颶風ノ災禍
加速しながら放つ二刀からの回転斬り。捻りつつ360度全てを攻撃範囲にし、日輪刀を一本逆手に持ち、回転しながら敵を両断する。二回に渡って風圧が舞い上がるため仲間が追い風として受けた時には技の威力が底上げされる。