天与の少女 刃にて荒事を成す   作:皐月の王

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曙の雨過天晴

私は何とか間に合った事にほっとしながらも、上弦の弐として君臨している猗窩座と対峙する。

 

「ほう……女で、もう満身創痍でありながらその闘気。杏寿郎や真菰より勝るとも劣らないモノだな。どうだ、お前も……」

 

私は猗窩座が勧誘するより前に斬り掛かる。一瞬で距離を詰め腕を切り落とす。その次の瞬間には拳が顔の横を通り過ぎる。破壊殺・羅針と鍛えられた猗窩座の反応は私の動きにも着いてくるのか……。

 

「話の途中に斬りかかってくるとは余裕が無いな?」

 

「そう言う貴方こそ、手負いの女に情けなくない?」

 

「俺は女は殺さない。だが、お前みたいな強者にそれは失礼だな。名前はなんと言うのだ?」

 

「さぁ?私の名前を当ててみなよ鬼さん?」

 

そう言って煽った直後に至近距離の乱打が私に放たれる。私はその全てを弾き落としながら、距離を置き叫ぶ。

 

「煉獄さん!真菰は炭治郎の居るところまで下がって!!それなりに重症なんでしょ!!」

 

普段の二人より常中は維持できているけど、普段より呼吸が浅いのと死を覚悟していた二人を見て叫ぶ。

 

「何っ!?君とて重症では無いか!柱が二人と真菰が入れば如何に上弦の弐と言えど倒せるのでは無いのか!」

 

「そうだよ!炎柱の言う通りだよ!舞銀だって血だらけでボロボロ……!」

 

「そうか、舞銀と言うのか!!心ゆくまで楽しもう!!」

 

真菰が私の名を叫んだ事で名前バレちゃった。それ以上言う前に私は猗窩座に斬り掛かる。

 

「破壊殺・流閃群光!!」

 

「水の呼吸 参ノ型 流流舞い!!」

 

私は猗窩座の連続の蹴りを流流舞い歩法で躱しながら猗窩座を斬る。できる限り、ここで殺るつもりで斬り掛かる。だけど……

 

「……っ!」

 

猗窩座の蹴りを日輪刀で受け流す。普段なら避けれるのに。……黒死牟との戦いで血を流しすぎた。致命傷は避けたから、他を無視してたけど出血が無視出来ない位になってきた。一度休めば、呼吸と天与呪縛の影響で短時間で戦線に復帰できるけど、今回は休みなくの連戦。疲労感は無いけど、出血による脱力と眩暈、反応速度と技の切れが嫌でも鈍っているのが分かる。

 

「その出血、その怪我で闘気を萎えることなく戦っているのは褒めてやる。だが、お前の体は急速に死に近づいて居るぞ!お前の強さが失われるのだぞ舞銀!!」

 

「はっ!言ってなよ!その死に損ないすら仕留められない癖に!!」

 

それでも私は自分を奮い立たせる。鈍くなっているのなら叩き起こせ、致命的な攻撃だけ避け続け、削り続ければ、真菰達が隙を突くはず……。そうなれば私達の勝ちだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者視点

 

真菰、煉獄、炭治郎達はその場から動けていなかった。一段階上がった戦い。本来の真菰、煉獄ならば入る事は容易く、連携も問題無く行える。しかし、死を覚悟して技を放とうとしたくらいには、余裕が無い状態の今では行くだけ足手まといになる可能性があると煉獄が判断した。

 

しかし

 

「行ける隙があれば何時でも行けるようにするんだぞ真菰!」

 

「はい……!」

 

ただ見てるだけじゃない。絶対的な隙を狙い感覚を研ぎ澄ませていた。真菰はより鋭く感覚を研ぎ澄ませ、深く集中していた。それでこそ、現代で言うところのゾーンに近い領域で。

 

炭治郎達は舞銀と猗窩座の戦いを見て驚いていた。死に体一歩手前の舞銀が二人がかりでも倒せなかった猗窩座相手に優勢に立ち回っているのだから。

 

「す、すげぇ……!あんなにボロボロなのに!あの二人も異次元だったが、そんな次元じゃねぇ……!」

 

「八雲さん……!」

 

炭治郎は舞銀を見ていた。鱗滝一門の中で皆から言われる一番強いと言われる人物。様子を見に来た際には料理を振舞ってくれたり、真菰同様に助言をしてくれる優しい人物としての印象が強かった。だが、初めて彼女が戦う姿が、満身創痍での姿、不安が募る一方である。

 

しかし、そんな不安を他所に舞銀は猗窩座に斬撃を入れ、攻撃は全部受け流している。そして

 

「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷!」

 

雷の呼吸を使ったり、

 

「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!!」

 

水の呼吸を使ったり、

 

「風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬り!!」

 

風の呼吸を使ったりと複数の呼吸を使い分け攻め続けている。

 

「いいぞ!今まで戦った鬼狩りに複数の呼吸を使う奴はいなかった!!そして、ここまで俺の技を見事に掻い潜った鬼狩りもだ!!だが、時間も無い、楽しい時間というものは直ぐに過ぎるものだ!決着を着けるぞ!!」

 

猗窩座が低く構える。地面に片膝をつき、両腕を大きく後ろに引いた姿勢を取る。それを迎え撃つかのように舞銀も構える。肩で息をしながらに苦い表情を浮かべていた。

 

「破壊殺・滅式!!」

 

「嵐の呼吸 壱ノ型 野分!!」

 

二つの技がぶつかり合う。凄まじい衝撃波と砂埃が巻き上がる。砂埃が晴れると、

 

「くっ……あああ!!」

 

「ぉぉおお!!」

 

猗窩座の滅式の腕は舞銀の脇腹に命中はしたが、貫く前に腕を切り落とされていた。致命傷には至らないが、舞銀の肋が折れる。そして、舞銀の刃は首より下に刃が通り、猗窩座が手で刃の進行を止めていた。

 

それを見た真菰は猗窩座の首を落とすべく技を繰り出す。千載一遇の好機を逃さない為に。その場に居る誰よりも速く駆け出していた。

 

「水の呼吸 拾ノ型 生生流転!!」

 

水の呼吸の最強の技を以て猗窩座の首を落とそうとする。決まれば猗窩座の首が落ちるのは必定。舞銀も勝ちを確信した。

 

 

 

その時、天与呪縛で強化された感覚が危険信号を鳴らした。それは対峙した事のある鬼の気配と殺気。

 

「ッ!真菰!!」

 

舞銀は猗窩座を斬り掛けていた日輪刀から手を離し、猗窩座に蹴りを入れてから、真菰に向かって飛び込み、真菰を勢い良く突き飛ばした。その直後、地獄の底から死神が来たかのような声が耳に入る。

 

「月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え」

 

真菰は技の途中で突き飛ばされ、大きく体勢を崩しながら転がり、痛みに堪えて起き上がり、舞銀を見る。

 

「痛っ……舞銀……なに……を?」

 

それ以上声が続かなかった。目の前に広がる光景に真菰は時がゆっくり進んでいるように見えた。

 

舞銀が第三者の乱入と思わしき人物の斬撃を受けて、背中から血飛沫を上げてゆっくりと崩れ落ちる光景が見えた。

 

「舞銀……?」

 

手を伸ばすが届かず。

 

「鬼狩り二人まとめてと思ったが……やはり、侮れないな、八雲舞銀」

 

紫色の上着に黒い袴、長髪を一つに束ねて額や首元から頰にかけて炎のような痣があり、金色の瞳の赤い六つ目を持つ鬼が猗窩座の隣に立っていた。

 

他のメンバーも彼を見た瞬間、猗窩座とは比べ物にならない事を察知する。重厚な重圧が場を支配する。ただ、真菰は目の前で崩れ落ちた舞銀を見ることしか出来なかった。

 

「黒死牟……!なんのつもりだ!俺の戦いに水を差して」

 

「私も奴との戦いの最中だった、あの鬼狩りの始末を言い渡されていた。だが、奴は他者を優先していた。追跡したらお前と戦っていた……それだけの事だ」

 

猗窩座は気に入らないと黒死牟を睨みながらに言う。猗窩座からしても戦いの最中にこの加勢は望んではいないし、共闘するつもりも無い。

 

「では、首を撥ねて確実に……いや、どうやらここまでの様だ」

 

黒死牟が言うと山の方の空が白み始めていた。夜明けである。

 

「引くとしよう」

 

「っ……夜明けか!鬼狩り、次会う時を楽しみにしているぞ、杏寿郎!真菰!」

 

そう言うと上弦の鬼達は去った。去った後、真菰はゆらゆらと立ち上がり、舞銀に歩み寄りしゃがみ込む。

 

「舞銀……」

 

呼びかけても返事は無い。真菰は舞銀を抱き起こして、その手に着いた血を、動かない舞銀を見て家族を失った時のことが蘇り、震える。

 

「だっ……だめだよ……舞銀!!」

 

猗窩座との戦いの実質的な敗北。心の底から大切に思う相手のボロボロの姿、そして自身を庇って倒れる。鱗滝真菰の精神は限界を迎えていた。

 

「ましっ……舞銀!!!」

 

空が白んで朝日が昇る中、真菰の慟哭が空に響いた。




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