天与の少女 刃にて荒事を成す   作:皐月の王

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狐の嫁入り

私は窓から真菰の病室に入る。黒死牟から受けた傷は背中以外は完治した。背中の傷はまだ少し痛む。本当に腹立たしいけど、今はどうでもいい。それよりも……。

 

「無事で良かった、真菰!」

 

真菰が生きていて良かった。でも、今回はそれだけじゃ収まらないのは今の真菰を見れば分かる。

 

「……良かった……じゃないよ……!私を見殺しにしたら……舞銀が背中を切られることも……上弦の鬼を殺す事も出来たはず……なのに……!」

 

私が真菰の立場だったら納得出来ない。自分のせいで人が傷ついて、無事で良かったなんて言われても慰めにも成らないと言うのは。

 

「……それは違うよ。あの時、上弦の壱が来たのは技を出し合った時に相打ちになったのを利用して救援に行くのを強行したからだよ」

 

でも、それ以上、真菰を悲しませる結果を作ったのは私だ。真菰の心中の全ては私は分からないけど、真菰が自分を責めているのと変わらない位に私も自分が許せない。

 

気を失う間際に見た真菰の顔。自分が真っ先に倒れたら誰が皆を生存させて切り抜けるのか、何より自分が半端な気持ちで黒死牟と対峙した事でより危険に晒したことが我慢できない。

 

「それでも……私が、上弦の弐に……あの時……斬り掛からなければ……!!」

 

真菰があの時の事を悔いている。だが、あの判断は間違いじゃなくて……

 

「あの時は絶好の機会だったよ……!私が半端な事さえしていなければ……!あの時、あの鬼の首を真菰は切り落としていた!」

 

そう、真菰がここまで自分を責める原因は私自身だ。……真菰の性格ならこうなる事は考えられた。何より大切に思ってくれているのは伝わっていた。私も真菰の事が大切だからこそ

 

「私のせいなんだよ……真菰が苦しんでいるのは……私の事は自業自得なんだよ……!真菰には何も落ち度は無かったんだよ……」

 

危うく大切な人達を自分の半端な気持ちで取り零す所だった。私の半端な気持ちが皆を危険に晒し、真菰をここまで追い詰めた。その事実がどうしようもなく、私が私を殺したくなる程に赦せない。

 

私がそう思っている時に真菰は大粒の涙を零しながら私の胸ぐらを掴んで叫んだ。

 

「だけど!私が強かったら!舞銀の足を引っ張らないほど強かったら、好きな人を守れるのに……!私は……隣に立って、一緒に戦うだけの力が……実力が無い……どれだけ追いかけても……私じゃ……ダメなんだよ……!!もう……嫌だよ……舞銀だけに戦わせるのも……舞銀が一人で傷つくのも……」

 

真菰は泣いている。ここまで思ってくれていたのに……私は何をやっているのだろうか。知っている誰にも死んで欲しくないと思いながら、大切な人を泣かせて……。取りこぼさずにいるだけで、周りの事なんて気にもしないで……。

 

私は真菰を抱きしめていた。

 

「舞銀……?」

 

「ごめん……本当に……ごめん。私が考え無しのばっかりに真菰を追い詰めて、悲しませて傷つけて……!私だって真菰に傷ついて欲しくない……そう言う資格が無いのは分かってる!」

 

傷ついて欲しくないと言って、私は真菰を傷つけていた。真菰の心の奥底まで見えていなかった。真菰が無事ならそれでいいと思っていた。

 

だけど、今は違う。悲しみにくれ、窶れた真菰を見て、私が追い詰めていた事を知ってそれだけじゃ駄目だと知った。

 

伝えなければ伝わらない。秘めるだけじゃ届かない。だから、私も……。

 

「でも、私も……真菰が大好きだから……!真菰が傷つくのも殺されるなんて冗談じゃない、死ぬのなんて考えたくもない……!」

 

私も真菰を抱きしめる。目から溢れ出る涙が止まらない。感情が抑えきれない。前世ではここまで取り乱す事は無かったとは思うけど、今は止まらない。

 

「真菰は隣に立つ資格は無いって言うけど……足を引っ張るって……言うけど……追いつけないと言うけど……!私がどれだけ真菰に助けられたと思ってるのさ!!」

 

私は叫ぶ。私はこれまで真菰にどれだけ助けられたか、真菰が居たからここまで来れた。皆で楽しくこの日まで迎えられたか。

 

「真菰……真菰はね……この世界で初めての友達で……同じ目的を持つ仲間で……」

 

真菰と目を合わせて言う。

 

「私が……一生かけて傍に居たい人だから……!だから……!私の傍にいてくれますか?」

 

後悔なんてない。私は……真菰の事が好きだ、大好きだ。こんな鬼の出る世界で出会った真菰と笑っていたい。それが私の本心。

 

真菰は私の顔を見ながら未に零れる涙を拭いながら

 

「ズルいよ……!舞銀は……本当に……ズルいよ……」

 

と言う。その言葉に確かにと思いながらも抱きしめる。

 

「私も……舞銀のこと……大好きなんだよ……」

 

真菰を見ると、耳まで赤くなっているのが分かり、言った私まで顔に熱を感じた。答えは出ているけど、聞きたくなったから……。

 

「真菰、答え聞いてもいい?」

 

「うん……私も……舞銀の傍にいたい……!隣に居ていたい……!」

 

真菰は笑顔でそう微笑むとゆっくりと目をつぶった。小さく寝息を立てている所を見るとろくに休めていなかったんだろうと思う。

 

そんなことを考えるより、私の心臓は高鳴っていた。その高鳴りはうるさくも心地よくて、暴れ狂っていた。

 

それと同時に戸が開けられる。そこに居たのは、しのぶちゃんとカナエさんと錆兎と義勇だった。

 

私は別の意味で顔が赤くなり思わず聞いた。

 

「い、今の聞いていた?」

 

しのぶは呆れながらも顔を赤くしながら頷き、カナエは満面の笑みで頷き、錆兎は腕を組み頷き、義勇は微笑んで頷いていた。

 

さ、流石に恥ずかしすぎるんですけど。告白を皆に見られることになるとは思っていなかった。いや、蝶屋敷で何をしているんだという話だから何も言い返せないんですけど……。

 

「良かったわね真菰ちゃん。ようやく思いが伝わって。舞銀ちゃん、もう、真菰ちゃんを泣かせる様なことをしてはダメよ?」

 

カナエさんがそう言ってくる。私は眠る真菰を撫でながら

 

「はい、もう、負けませんから」

 

頷いて答える。カナエさんは頷いて、私の肩に手を置き笑顔で

 

「それはそれとして勝手に病室を抜け出した事や無茶をした事については今からお話をしないと。ね?錆兎君?」

 

「ああ、そうだな。抜け出して探させたんだから色々と話はしないとだな?」

 

二人の柱が私を見ながら何とも言えない笑顔で私に死刑宣告をする。私は二人の後ろにいるしのぶちゃんと義勇に助けを求めるが、

 

「ま、当然ね。姉さんや蝶屋敷の皆を心配させたんだからその位は甘んじて受けなさい」

 

「すまない舞銀。今回は助けになれない」

 

あっさりと見捨てられました。

 

「それじゃあ、真菰ちゃんを起こしたらダメだから、こっちに移動しましょうね」

 

「……はい」

 

そしてこの後、二時間正座させられて二人から説教されました。それどころか三人娘とアオイちゃんからも説教されました。なんと言うかしまらないと言うか格好が付かなかったけど、それでも真菰とより近くで居られると思うと耐えれました。

 

その後、カナエさんの計らいで真菰と一緒の病室に移して貰いました。次の日、私は真菰の寝顔を見ていると真菰が起きて

 

「昨日のこと夢……じゃない?」

 

と聞いてきたので、頬に手を当てながら私は微笑んで言いました。

 

「勿論。これからもよろしくね真菰。いや、私の可愛い恋人さん」

 

心臓バクバクさせながら言いました。真菰は顔を真っ赤にしながら、私の頬を両手で掴み微笑んで

 

「うん、おはよう舞銀」

 

と言いました。私のその後の記憶は無いんですけど鼻血が出たのだけは覚えてました。




ようやく、やりたかった事が出来て個人的には達成感があります。

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ここからの真菰は強いぞぉ(色んな意味で)
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