二人で歩いて日が暮れた頃に試験会場である藤襲山に辿り着いた。疲れてないけどさこれから試験なのにこんなに歩くもんなの?
「すごい……」
「こんなにも藤の花が咲いてるの見たことないね」
アニメ同様に時期じゃないのに凄まじい量の藤の花が咲いてるなんて、感嘆の言葉しか出ないね。周りを見るとそこそこ大勢の人が最終選別に参加しに来ているのが分かるね。この中で私と真菰の同期になるのは何人なんだろうなぁ。私達以外の人は、少し話したり、目を瞑って集中したりしている人がいた。まぁ、私はリラックスしておこうかな。
そんなことを考えていると遠くから声が聞こえて来た。
「皆様。今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます」
そこには白い髪の女性が手に提灯を持って立っていた。そっか、アニメでの説明してくれる人はまだ幼いんだ……。なるほどなるほど。それまでは少し緩んでいた会場の雰囲気が、変わる。
そして最終選別の話が始まった。要約すると、この山、藤襲山での一週間サバイバルをして生き残って下山してきてね。という感じだった。いや、掻い摘んで話すと本当にそんな感じなんですよ。まぁ、山の食料次第かな。そんなことを考えていると、他の人たちが先に進んでいった。
「じゃあ、ここからは別行動だね」
「え!?」
真菰の発言に私は驚く。こう言うのは一緒に行動してもいいじゃん!
「自分が何処までできるか知りたいし、最終選別は自分の力で通らないと意味ないと思うんだ」
「た、確かに……」
うーん、その通りなんだけど。もしもの事を考えると一緒に居たいんだよねぇ。そんな不安な気持ちを察したのか
「大丈夫。これでも、私は舞銀の姉弟子だよ?全集中の呼吸、水の呼吸については舞銀より長く鍛錬を積んでいるんだから」
私の頭を撫でながらにそう言う。そりゃ、そうだけど。それでも心配なのに……。いや、それは真菰に対して不誠実だ。真菰の鍛錬は強さはこの中だったら誰よりも知っているのは私だ。だったら私が真菰を信じないでどうする。全集中・常中をも会得しているのだから。そんじょそこらの鬼にも負けないよね。
「そうか……!分かった!じゃあ、互いに頑張って七日後にまたここで!」
私は先に少し駆け足で進み出す。約束はしたのだから、あとは一週間を山のサバイバルで過ごすだけ。ぶっちゃけ鬼よりもそっちの方が大変そうだと思うのは私だけかな?と思っていると後ろにいる真菰から
「生きてまた会おうね。だから……死なないでね舞銀」
と言われた。私は足だけを止めて
「互いにね。真菰も無理しないでよ?」
そう言い残して藤の花が無いエリアに足を踏み入れる。そして入ってゆっくり歩き出して時間が経つ。もう、変な異臭やら音やらでため息が出そうになるね。落ち着かないよ。来るならさっさと来て欲しいくらいだ。そんなことを思っていると丁度よく
「ケッケッケ!!!久々の人肉だァ!!!」
後ろの木の枝から鬼が奇襲を仕掛けてくる。まぁ、気づいてる以上奇襲は失敗なんですけどね。私は最低限の動きでその奇襲を避けて
「よっと!」
後ろ回し蹴りを鬼の背中に叩き込む。
「ぐぼぁああ!?」
鬼は凄まじい速度で何回もバウンドしながら転がっていく。やっべ、ついカッコつけたくて蹴っちゃった。まぁ、待ってたら来そうだし、日輪刀に手をかけて待ってよ。
「このクソガキぃぃぃぃ!!!」
さっき私が蹴っ飛ばした鬼が必死の形相で襲いかかってきた。私目掛けて飛びかかって爪で仕留めようとしてきたけど。
「遅すぎだよ」
私は刀を抜き迎え撃つつもりで飛び出す。不意をつかれた鬼は驚愕していた。
「こ、こいつ……早すぎる!」
「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!」
そのまま私は鬼の首を切り落とした。そして鬼はそのまま骨も残さず消えていく。うん、なんと言うか、二年前に戦った時よりストレスフリーで良いよね。首落とされたら潔く……って感じに言って欲しいものだよ。
「さて、日当たりが良さそうなとこと、水があるところを探しつつ食料でも集めようかな」
そうして私は木の枝を拾ったり、手頃な石を集めたりしながら、水辺の近くに簡易的な拠点を作ることにした。昼間はそこで休んで、夜は適当に出歩いて、途中鬼に食われたのか持ち主を失った日輪刀を拾ったり、襲ってくる鬼を体術の鍛練相手に殴ったり、水の呼吸で首を落として対処をして過ごしていた。
鬼と対峙するよりも、川魚を探す方が苦労したのはここだけの話である。そんなこんなで数えて4日が過ぎた。5日目の夜になった。私は……
「あー、米とか味噌とか醤油とか持ってくりゃ良かった。唯一途中で買った塩だけじゃあ味に飽きてくるよね」
早くもサバイバルに嫌気がさしていた。話し相手もいないし、昼間は鬼が来ないし。やる事は食料確保と、素振りと仮眠程度。あー、暇です。そんなことを考えていると……異臭と戦闘音が耳に入った。
「うっ……一際嫌な匂いと……戦闘音……そしてこの声……真菰!?」
それに気づいた私は走り出した。全力で踏み込み二本の日輪刀を持ち走る。死なせたくないという思いだけで。
―――――――――――
真菰は今現在、異形の鬼と対峙していた。無数の手で構成された鬼。それに捕まっていた受験者を助けて庇う形で立つ真菰。
「また来たな……俺の可愛い狐が」
「また?どういうこと?」
真菰は警戒しながらその鬼の言葉の意味を聞く。しかし鬼はそんなことお構い無しに
「狐娘、今明治何年だ?」
と質問をした。質問の意図が分からなかった真菰だが
「今は明治41年だよ」
素直に答えた。それを聞いた鬼は
「そうか、あれから5年が経ったのか!そうか!5年も経ったのか!何時まで俺はここにいなければならないんだァァあああ!!!鱗滝め!!!鱗滝め!!!」
突如怒り狂ったように叫び出す鬼。しかし、真菰はそれ以上に鱗滝の名前が出てきたことに驚いていた。
「なんで、鱗滝さんの名前を!?」
「知ってるさ!俺を捉えたのは鱗滝だからなぁ!忘れもしない41年前!江戸時代の頃だ!!!」
「そんな!そんなに生きれるはずがない!」
真菰が助けた人物が言う。ここに居る鬼はせいぜい人間を2~3人食べた鬼しかいない。そしてその鬼も最終選別で切られるか、共食いするかで生き残れないと。
「だが、俺は生きている。そうだなぁ、ざっと40人は食ったなぁガキ共を」
「40人も……!」
後ろにいる人から聞いた人数の10倍から20倍は食べていることになる。さらに異形の鬼は
「九、十、十一、お前で十二人目だ」
異形の鬼は指を折り数えた。そして真菰を指さして十二人目だと言う。真菰は理解出来ずに鬼に
「……何の話?」
と尋ねる。鬼は嗤いながらに答えた。
「くっくっくっ。俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。くっくっくっ、あいつの弟子はみんな殺してやるって決めてるんだ」
「………は?」
その回答に頭が真っ白になった。今まで鱗滝の弟子が帰ってこなかった理由、錆兎と義勇が帰ってきてあんな嬉しくて泣いていた理由、その元凶が目の前にいた。
「その面!目印なんだよ。その狐の面がなぁ。鱗滝が彫った木目を覚えているんだ俺は。アイツの天狗の面と同様の掘り方の面だ!その面をつけてなきゃ、俺に目をつけられることも無かったのに」
尚も鬼は笑いながら続ける。真菰の刀を握る力が強くなる。怒りで震える。
「その面をつけてるヤツは皆俺の腹の中だ。鱗滝が殺したようなもんだ。あいつも馬鹿だよなぁ。自分の彫った面のせいで弟子が死んでるって気づかないんだ。馬鹿だよ、馬鹿」
その時、真菰の中で何かが切れた。そして思い返されるのは鱗滝とのやり取り。自分達より前の兄弟子達が戻らなかった話、自分は教えるのが上手くなく、ただ死なせに行かしているだけでは無いかと心を痛めていた鱗滝の姿が頭にに浮かび。
「―――殺して……やる」
「ああ?」
「貴方だけは……私が今ここで絶対に殺す!!!」
許せなかった。大好きな鱗滝を馬鹿にされたこと、兄弟弟子を食った目の前の鬼を一秒でも早く殺すと真菰は動く。
「はぁあああああ!!!」
真菰は自身の一番の武器である足を使って鬼に挑む。鬼が真菰を捉えようと手を伸ばすが。そのことごとくが切り落とされ、回潜られる。
(――――速い!今までの鱗滝の弟子の中では間違いなく一番速い!)
(――遅い……この程度の相手なら……攻め落とせる!)
さらに真菰は速度を上げて
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い!」
水流の如く流れるような足運びで、鬼の手を掻い潜り、木を蹴り血を蹴り、鬼の首を取らんと攻め立てる。速度を維持したまま、後ろに後ろに回り込む。鬼はこちらに気づいていないと踏んで真菰は突っ込み、鬼の首を落とすべく技を仕掛けようとする。しかし
「来るなぁ!!!」
真菰が助けた人に向かって無数の手が伸びる。
「っ!させない!」
真菰はその人物の守るため伸びる手を切り落とすが、それを狙っていたと言わんばかりに地中から、真菰の背後から、左右から手が伸びてきて真菰は空中で捕まってしまう。
「俺は稀血のガキを食っていてねぇ。普通のガキ40人食うのと訳が違うほどに力が着いているんだ。お前の動きは、確かに今までのどのガキよりも速かったが……こんなやつ助けようとしなかったらなぁ」
真菰は刀を振ろうとするがビクとも動かない。それどころか守っていた人物も捕まっていた。
「お前が助けようとせず俺を仕留めることに専念すればオレを殺せたのになぁ」
そういい、助けた人物を鬼は口に運び噛み砕く。口から血が飛び出し、真菰の顔にかかる。
「あっ……あああ!!!」
真菰はその光景に震える。怒りと自分の不甲斐なさと恐怖で。それと同時にメキメキと嫌な音が耳に入ると同時に激痛が体に走り体の何処かの骨がヒビが入ったのが分かる。
「あっあああああ!!!」
「じっくり可愛がって食ってやるからなぁ。十二人目の狐」
真菰の目からは涙が溢れてきた。もう、錆兎にも義勇にも鱗滝にも会えないと。そして、共に帰ろうと約束した妹弟子である舞銀とも会えないと。死にたくないという思いが溢れる。また、皆と会いたいと言う願いが零れてくる。
「じゃあ、右足と左腕から潰して食べていこうかな」
無慈悲に潰されると分かるほどに、徐々に力が強まってくる。痛みより、悲しみ、死への恐怖。それらが痛みを消していた。そして、そんな中ふと言葉が漏れていた
「―――助けて……舞銀……」
聞こえるはずもないのにと漏れた言葉に自嘲する。
(――――ごめんなさい……鱗滝さん。皆……)
真菰が生きるのを諦めかけたその瞬間。
「水の呼吸 肆の型 ――――」
声が耳に入ってきた。その声は聞き覚えがあった。そしてその声の主は
「――――打ち潮・連撃」
真菰を拘束する腕の尽くを切り落とし、手から解放されて落ちる真菰を抱き抱える。
真菰は理解出来ていなかった。誰が来たかなんて。でも、月明かりがその人物を照らす。首元まで伸びた少し青みがかった銀色の髪に青い瞳。真菰と同じく身長のその少女は真菰に笑いかける。
「――確かに聞こえたよ真菰。助けを呼んでくれてありがと」
真菰はその少女の服を握りしめて
「舞銀……!」
その少女の名を口にした。少女は真菰に笑いかけ、真菰を下ろして言う。
「まだ行ける?行けるなら二人でこの鬼倒すよ?」
二本の日輪刀を向けて不敵に笑って言う。
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