「おかえり。おや、傷だらけだね。魔法でドジったのかい?」
身体を見下ろせば、真っ黒な服の裂け目から断続的に白い肌が覗いている。宛ら攻めているソシャゲのダメージ描写の様で、この例えは良くないか。まあ、そんな感じであった。
襲撃されたんだよ。
俺はそう言って玄関に鶴嘴を立てかけてリビングに向かった。そして、ソファに身を沈めて魔法について考え始めると、神様が横に座ってきた。
「誰に?」
分からない。ダンジョンを出たらバベルから視線を感じて、それはギルドに入ったら消えたんだが出ると今度は尾行されていて、返り討ちにしようとダイダロス通りの奥まで誘導したら想定より格上で危なかった。
「今、バベルって言ったかい?」
そうだが。心当たりがあるのか?
「心当たりしかないね」
神様はそう言って親指で顎を摩った。彼女は嫌なことを思い出した時、よくこの動作をする。
「フレイヤだ」
俺はその名前を知っていた。記憶のカードを引き抜く。僕がいた後遺症だ。
フレイヤ:北欧神話に於いて、愛情と豊穣と死を司る美しい女神。
性に奔放で、ヤッている描写がやけに多い
いつも通り、微塵も役に立たないクソコメントだ。
「フレイヤはバベルの最上階に住んでいる。そこから街を見下ろし、見下すのが彼女の趣味だ」
趣味が悪いな。
「もっともな感想だ。だが、君が偶然彼女の目に留まったとして、襲撃される理由が分からないな。中指でも立てたのかい?」
一瞬やろうと思ったけども。多分、ベルと一緒に歩いていたからだと思う。襲撃された時、『ベル・クラネルに関わるな』とか言われたから。
「ベル・クラネル。ランクアップrtaの世界記録保持者か」
神様は唸って、人差し指で宙に曼荼羅を描き始めた。
「彼が何か、否、だがそれでは。ああ、なるほど。多分分かったぞ」
彼女は指を仕舞う。何か分かったらしい。
自己完結してないで教えてくれよ。俺がそう言うと、彼女は足を組み直した。
「あいつの趣味だが、もしかしたら魂を見ていたのかもしれない」
それ神の力では?
神の力は一部の例外を除き地上では使えない事になっている。使ったことが検知された瞬間に強制送還。娯楽を求める神々は指を咥えて見ている事に飽きてこの箱庭に墜ちたのだから、そのようなリスクは決して負わない筈だが。
「否、神の力とは別の権能だ。神が嘘を見抜けるのと同じ特性だ」
神様は俺の胸のあたりを見る。俺は身体を捻って胸を隠した。心臓を見られた気がした。
「天界で何時か言っていた。地上に溢れる魂を見るのは楽しいと。ここに来てからも同じことをしているのなら、今までの事に説明が付く。つまり、前々からベル・クラネルには目をつけていたんだ。恐らく、特別な輝きを放つ魂だったんだろう」
俺はベル・クラネルの善性を思い出した。あれはオラリオでは稀だ。
「そして、今日。お気に入りであるベル・クラネルの隣を歩く君を見つけた。彼女に君の魂がどう見えたかは分からない。しかし、襲撃を仕掛けて彼と関わらないよう要求したのだから、そういう事だろう」
話が見えて来た。魂の色も形も知らないが、一つ思い当たる。発展アビリティ【異常】だ。
「そういう事。碌な見え方をしないだろうね」
俺は情報を整理した。だとすれば、フレイヤは相当面倒な奴だ。自分のファミリアに入ってもいないベル・クラネルに執着し、探索に同行しただけの俺を処分しようとした。最悪の厄介オタクだ。
「処分というのがいただけない。提案を拒否されたら殺すって? こんなことがあっていいのか?」
まあ、別に経験値貰えるし俺は別にいいんだが。
俺はそう言いつつも今までの行動を振り返った。やべ、そういう系で結構殺してる。
「良い訳がないだろう。これを見逃せば襲撃はエスカレートするぞ。私と君だけでなく、君の友人や一般市民を巻き込むことになる。殺人が始動なら、次に何をしてくるか分かった物ではない」
確かに、神様の言うとおりだ。だが、どうする。相手は二大巨塔の片割れ。俺たちのような弱小ファミリアは握りつぶされるぞ。
神様は徐に立ち上がって言った。
「こうなれば直談判だ。解決方法は他に無い」
待て、流石に危険すぎる。
「だからと言って君を連れてはいけない。君がいると交渉に支障が出る」
じゃあ、どうするつもりだ?
「一人で行く」
正気かよ。
彼女はローブを翻して玄関に向かった。俺は急いで立ち上がり、追いかける。
「私には君の魔術がある。君が付いている」
気持ちの問題じゃない。それに、その使い方は攻撃性能がほぼ無い。誰か雇うかした方が――。
「あいつには魅了がある。無条件であいつは味方を敵へ変える事が出来る」
彼女はふざけた力だと言った。
「前々から不満だったんだ。あいつは美の女神ではない。にも拘らず、美の女神のように振る舞い、権能を手に入れた。そうであってはいけない。美の女神ならば心まで美しくあるべきだ。彼女は端から美の女神に向いていない」
神様が振り向く。そのタンザナイトの両瞳が揺れた。
「それに、私の大切な眷属を傷つけたんだ。その代償は支払ってもらう」
神様は一人夜道へ出て行った。
神がバベルを登る。星に照らされてフードから覗く髪が輝く。風が吹いて、涼しさと同時に一抹の不安がよぎった。情景に浸りながら足を動かしていると、何処からかファミリアの団員がやって来て彼女を引き留めた。神はアポを確認するように要求した。神はフレイヤの性格をよく知っていた。だから、彼女が自分を下に見ている事も想像出来た。暫くして警備員が帰ってきた。予想通り、来訪を許可された。嘗められている。神は勝機を見出し、階段を昇って行った。
神が無心で進んでいると、いつの間にか最上階に辿り着いていた。ご存じ、フレイヤのお家だ。神の脳裏に馬鹿と煙は何とやら、という言葉が過る。笑みを秘めて、扉を開いた。
中にいたのは、美しい女だった。無駄に薄い衣装を纏い、テーブルのカップを指でなぞりニコニコと神を見つめている。神はこの時点でストレスが溜まり始めていた。
「久しぶりだね」
神はフレイヤと対象の位置の席に着く。フレイヤは神が席に座る直前、その全身にざっと目を通して手土産がないことを把握した。
「ええ、久しぶりね。それで、どうかしたのかしら」
「とぼけるなよ。私の眷属を襲撃するよう指示したのはお前だろう」
フレイヤは一瞬誰の事を指しているのか困惑したが、直ぐにあの暗闇の目の魂の持ち主だと思い至った。神はその一瞬の間を見逃さなかった。
「何故私がそんなことをしなければならないの?」
「ベル・クラネル。彼の傍にいたのが許せなかったんだろう?」
「何を言っているのかさっぱりだわ。今日は帰って――」
「私はお前が罪を認め、対価を支払うまで動かないぞ」
面倒の二文字がフレイヤの脳でグルグルと回る。あの少年の魂は純粋で透明で掛け替えの無いものだ。何れ英雄となる彼には、あの冒険者は邪魔でしかない。だが、それを言った所で彼女は退かないだろう。それとも彼女の言う「対価」を条件に組み込んで交渉する? いや、彼女はきっとそれを呑まない。思考の果てに、フレイヤは一つの方法に辿り着いた。
フレイヤは神と目を合わせ、己の権能を発動した。魅了。
「帰って欲しいのだけど」
これで終わりだ。交渉でもって解決出来なかった為一種の敗北宣言だが、今は準備で忙しい。彼女には悪いが、これで――。
「断る」
フレイヤは耳を疑った。もう一度目を合わせる。
「帰って?」
「嫌だ」
この女神は処女神ではない。対抗する権能を持つ神でもない。フレイヤは後退った。何故自分の権能が効かないのか。力を失った? ありえない。でも、どうやって。
「そんなに不思議かい? 自分の唯一の取り柄が全く効果を成さないのは」
神は笑ってテーブルの端を見た。フレイヤもつられてそちらを見るが、至って普通のテーブルだ。上にはマグカップ程度しか乗っていない。
「君の魅了は精神干渉の権能だ。それは魅力の底上げではない。美しいからと言ってその命令に従うかと言えば否であるからだ。対象は好意だ。過程を抜かして好感度を上げているか、ルックスが基点なだけでただの精神操作か。何れにせよ、碌な権能じゃない。予防は不可能と言っていいだろう。だが、対策は出来る」
焦点の合わない神の目は何も映してはいなかった。
「何を、言っているの?」
神は賭けに勝った。魅了は上書きが可能だ。代償は重いが、精神を塗り潰すモノに手を出せば凌ぐことが出来る事が今判明した。
神は紙とペンを机に叩きつけた。
「余計な口を叩くなよ二番目。交渉の時間だ」
どうしよう。神様行っちゃったんだけど。俺は取り敢えずフランスパンを取り出して切り分けた。そして、甘いオリーブオイルにつけて食べる。美味しい。パクパクと食べ進め、やがて全て食べ終わり暇になった俺は、再びダンジョンに潜る事にした。
一時間後、俺は新しい魔法をマスターしつつあった。
今回の魔法はショウシャクヨモギよりも出力の自由度が小さい。だから、研究もやりやすかった。
ポーションを一気飲みして、魔力を回復する。では、ロック・ダウンの簡単な説明と行こうか。
短評:ロック・ダウンは小細工から殺意全開の即死攻撃まで自由自在の最強魔法だ。
詠唱式で操作可能な蒼い風を生成し、それに触れた物を実行式で凍らせる。で、コストを食らう。ただそれだけの魔法だが、各工程の自由度が半端ない。先程言ったことと矛盾する気がするかもしれないがそうではない。要は、その出力は凍結か氷結に絞られるが、そこまでの過程の自由度がすごいという事だ。
先ず、蒼い風は生成時にパラメーターの調整が出来る。具体的な数値は出ないが、濃度、速度、量などが自在だ。途中で生成を止めることも出来るようになったし、風自体の動きも操れる。多様な働きが期待できるだろう。
次に、実行式だ。出力は「凍結」と「氷結」があり、前者は純粋に温度を下げて凍らせ、後者はそのものを氷へと変換する。初使用の時とフレイヤファミリアの連中に使ったのはこっちだ。これらは切り替えて使う事が出来る。氷結の方は魔力消費は大きいし、コストも重いが、即死能力が強い。凍結は汎用性がある。
風が触れた物は全てウィンドウに表示され、その中から実行対象を選択する。これらの処理は世界観の切り替えで自動化できる。
そして、最重要項目。コストだ。コストの正体は身体機能にアクセス制限が掛かる事ではない。この魔法のコストは
一応魔力消費にも触れておくか。魔力消費は三段階ある。蒼い風の生成のパラメーターに依存する消費。蒼い風が物体に何かして実行可能状態までもっていく対象物に依存する消費。そして実行による対象に依存する消費。一番大きいのは蒼い風が物体に何かしているときの消費だ。
さて、こんなものか。では、この一時間で幾つか思いついた使用法を試していこう。丁度その辺に一般強耐久同人誌豚ことオークがいるのでそいつで実験だ。
俺は近付いて攻撃を誘発し、オークの振り下ろす棍棒に触れた。先ず用法その一。
瞬く間の永遠を君に。
■ow×■=■s■cce■
詠唱式と実行式を繋げて詠唱することでロスタイムを削減。音と音の隙間で十分作用するレベルの濃度の蒼い風を生成。世界観を変更して処理を自動化し棍棒を対象に取る。ウィンドウが一瞬開き、直ぐに閉じた。次の瞬間、棍棒は氷の塊となり、俺はそれを鶴嘴で砕いた。
よし、成功。モンスター本体を氷へ変えるには時間か魔力どちらかを犠牲にしなければならないから、こういった武器の破壊に使うのがギリギリ効率的だ。どちらかと言えば、対人用だ。
次、用法その二。俺は親指と人差し指を立てて銃に見立てた。そして、詠唱する。
瞬く間の永遠を、君に。
■■■x■=>■■■ce■
これまた即効性を極めた用法だ。例によって詠唱をつなげ、生成するは濃度をかなり上げた蒼い風。操作性と量を犠牲に速度を上げ、現実性を強調して狙いの場所へ打ち出した。発射された蒼い弾丸は目に的中し、その水分を凍結させた。オークは唸って目を片手で覆って俯いた。
これも成功。そして、やはりモンスターを直接凍らせるにはの率的ではないので目を狙うが、目があってそこに水分がある生物が相手の時しか効果を発揮しない。また、少しでも外すと凍結できなくて純粋に魔力を消費した馬鹿になる(6敗)。要するに、どちらかと言えば対人用。
用法その3。俺は目を覆っていない方のオークの腕に手を当て、詠唱した。
瞬く間の永遠を。
魔力が削られる。腕の内側から生成した蒼い風は濃度が普通で量も少ない。布石としての運用を想定した使い方だ。すぐに魔力消費は止まって、準備が完了した。
痛みから立ち直った相手が手を振り上げようとした所で、実行式を唱える。
君に。
p■■x■=>s■■ce■
ウィンドウが二つ現れてすぐに閉じた。実行したのは、筋肉の凍結。相手の腕はだらんと垂れて、動かなくなった。腕を押さえて唸るオーク。痛そう(小並感)。副作用は空中で消費し、隙だらけのところをサクッと穿って討伐完了。俺は腰に十個くらい連なったポーションの内一つを飲み干して用法の評価を始めた。
行動の始まりを潰し、ダメージを与える。生物には効果的だが、一転無機物にはただの冷却にしかならない。即効性にも欠ける。今回は相手が弱かったのですぐに発動できたが、普通ならもう少しかかっただろう。それに、触れられる距離まで近付かなければならない上、発動までにラグがある。戦闘には不向きだ。殴った方が早い。使うとすれば些細なことが致命傷になるような弱い相手、つまり対人用だ。特に暗殺。実行のタイミングを自分で決められるのでバレにくいだろう。
なんか、対人性能だけ無駄に高くない? もしかして対モンスターではなく対人間を想定した作りなのか? 体積がでかい相手には魔力消費と実行までの時間が酷いことになるからやはり対人特化なのか? 費用対効果が一番高いのは人間に使った時だからやっぱり対人用なんじゃないか?
瞬く間の永遠を。
蒼い風を指先に纏う。今思いついた使用法だが、拳に纏わせたところで防御になるわけじゃないし攻撃性能も上がらないし凍結を狙おうとするとすると濃度が必要で魔力消費がエグいことになるし、ただのゴミである。しかしそれは対モンスターの話。対人だと暗殺に有用である。やはり対人用。格下相手は蒼い風ばら撒けば封殺できるからやはり対人用。
今日はこの辺にしておくか。
先ほど対人用とか言っていたので、試してみたくなった。そこで、その辺にいた犯罪者を実験対象にすることにした。引っ張って路地裏の奥に連れ込む。何か言っているが気にしない。とりあえず部位凍結だ。
瞬く間の永遠を。
犯罪者の口に当てた手から、蒼い風が鼻を通って気管に入る。
魔力が削られる。必要量は恐らくオーク以上ミノタウロス未満。これは通常濃度だから、かかる時間は二十秒か。しかし、今回の対象は声帯だ。秒数は大幅に短縮され、一秒になる。
君に。
ぱきりと薄氷が割れた。これで声は出せなくなったはず。一度引っ叩いて確認する。うん。隙間風のような音しか聞こえない。俺は大通りにつながる方に立って逃げ道を塞いだ。では、始めよう。
瞬く間の永遠を、君に。
蒼い風が狭い路地裏に逆巻き、解ける。
それが詠唱だと気付いた犯罪者は距離を詰めて来る。予想通りだ。俺はウィンドウの一つを選択し、彼が隠し持つナイフを氷へ変えた。蒼い風が触れた物はウィンドウに全て表示される為、攻撃と同時に相手の手札をみることが出来て非常に強力。
■■wx■=>■■■c■■
俺が0.2秒の硬直を終える頃には犯罪者が目前まで迫っていた。彼は氷のナイフを素早く取り出して振り下ろす。氷結に驚きもしないか。いいね。俺はそれを殴り砕いた。そして、バックステップで大きく距離を取ると同時に詠唱する。
瞬く間の永遠を、君に。
指を伝って射出された蒼い風が、彼の眼の水分に浸透する。ウィンドウが一つ開き、閉じた。
p■wx■=>s■■■■s
犯罪者は突然の目の痛みに怯み、目を抑えて蹲った。硬直を消化する。仕上げだ。一足で距離を詰め、彼の頭に手を当てて唱えた。
瞬く間の永遠を。
蒼い風が脳内に発生する。犯罪者は謎の痙攣と共に暴れ始めた。十分流し込んだことを確認して、exec。
君に。
p■■x■=>s■c■■■
何かが凍る。犯罪者は静かになった。
何が凍ったんだ? ノールックで凍結させちゃったから分からないわ。暴れなくなったし脳幹とかその辺だろう。知らんけど。俺は死体に手を向けた。
瞬く間の永遠を。
蒼い風が吹き荒れる。風は死体に纏わり付き、その内側に入り込んだ。そして。
君に。
po■x5=>su■c■ss
死体は氷像へと変わった。俺は魔力残量を確認してほくそ笑んだ。やはりそうだ。生きている時と死んでいる時で魔法の効きは変わるのか。答えは、変わる。命の凍結にリソースが奪われているから。
これが意味するのは、死体処理がお手軽になったということ。死体処理がお手軽になったということは、少し多く殺しても問題ないということだ。
するりと鶴嘴を背中から降ろす。掌でくるりと一回転させ、振り下ろした。穿つ音が小さく響いて氷像は胴から二つに割れた。もう一度振り下ろす。顔が砕けて判別不能になる。身体が火照り始める。鶴嘴を振る。片脚が外れる。鶴嘴を振る。胸が十一に分かれる。額の汗を拭う。氷が割れる度、手から伝わる僅かな抵抗が快楽を引き出す。鶴嘴を振る。右腕が砕けて破片が滑る。息が上がる。
鶴嘴を振り下ろせば氷像のどこかしらが砕ける。
それでも俺はそれをまだ人間だと認識できた。
認識できなくなるまでそれを砕けばきっと。
俺の両眼はらんらんとして裏路地に輝く。
湿気を含んだ息は動物的興奮を表す。
快感は氷像のサイズに反比例する。
手が震えて鶴嘴が軽くなっていく。
どうしようもなく止められない。
どうしようもなく気持ちいい。
果てない快感が僕を包む。
僕は無くなった氷を砕く。
そこにはまだあるんだ。
そこにいるんだろう。
汗を散らして振る。
気持ちがいい。
気持ちいい。
キモチイ。
快――。
「何をしてるんだい。私の眷属」
気付けば数メートル先の角から神様がこっちを覗いていた。手汗で滑って鶴嘴を落とす。あ、あれぇ? 何で神様いるの? フレイヤに嬲り殺しにされたんじゃ?
「私の事を何だと思ってるんだ?」
ぬっと神様の背後から暗赤色の触手が伸び、俺の足に巻き付く。なんこれ。
「ほら、帰るぞ」
神様が角の先に消えると同時に触手が縮んで頭を打つ。痛い。そのままずるずると体が引き摺られる。俺が慌てて鶴嘴を掴むと、神様はスピードアップした。そうして、俺はそのまま家まで引き摺られていった。
いや、ね。欲望が抑えられなかったんだよ。
開幕言い訳だった。神様はソファで酒を飲んでいる。
「さて、今度こそムショ行きかな」
待ってくれよ。仕方ないんだ。殺人癖を引いたんだ。
「それは、ショウシャクヨモギによる精神の摩耗でかい?」
そう、精神の摩耗。正気度の過剰減少によるものだ。正直に言うと、かなり限界だ。今までショウシャクヨモギで消耗した正気度は元々の四分の三だ。何回発狂したか憶えていない。今まではスキルで誤魔化していたんだ。だが、限界が来た。
「それは少しおかしい。何故、急に容量があふれたんだ? 君のスキルは死亡確率が上がれば上がるほど補正が乗る。今までに加えて一、二回使った所ではちきれることは無いだろう」
そう、その筈だった。だが、一つの変数が追加された。
「『異常』」
そう。またあいつだ。異常の効果は大体わかった。あれの能力はある程度の異常への異常なくらいの耐性と一線を越えた時の異常な拒絶反応だ。つまり、いつものメリットとデメリットの抱き合わせ商法だ。
「ああ。もうなんとなく分かったわ」
補正の発動にはラグがあるのは知っての通り。計算式に異常の変数を入れ忘れた所為で一瞬精神が無防備になって、このありさまって訳だ。
「あーあ。それで、今発症してるのは何だ?」
解離性同一性障害、殺人癖、幻覚、異食症、特定の物体への性的執着。以上だ。一番ヤバいのは解離性同一性障害だ。これのお蔭、所為でアビリティ:異常の性質が分かった。
「具体的に何がヤバいんだい?」
脳のリソースがすごい勢いで削られている。これは多分、あれだ。
無限増殖してるんだ。
全部改稿しようかな。
ストローベリーはベリーだが、植物学上ベリーではない。
感想、評価の方もよろしくお願いします。モチベが上がります。
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