ダンジョンに潜る上で名前は必要ない(旧)   作:イクラ系鮭

24 / 25
 今回は早い……早いよな?


第二十二話

 背中の筋肉に銛の()()()が食い込んで落下が止まる。次の瞬間、凄まじい負荷と共に俺の身体は急上昇を始めた。銛には紐がついていた。誰かが俺を釣り上げたのだ。間もなく、俺は十三階層まで戻って来た。浮遊感の後、地面に叩きつけられる。上体を逸らすと、俺を釣り上げた誰かと目が合った。

「間に合わないかと思ったよ。でも、これで貸し借りはチャラだね」

 エリナベラ。彼女は腹から血を垂れ流しながら俺に微笑んだ。俺も血を吐きながら笑う。お前死にかけじゃねえか。

「ああ、これかい? ちょっとロープのイメージが湧きにくくてね。仕方なくってやつ」

 紐の部分をよく見ると、エリナベラの腹に繋がっている。ショウシャクヨモギの素材に腸を使ったのか。何でそこまで。

「おっと、勘違いは止めてね。こんなの軽傷だよ」

 意味が分からない。ポーションに再生能力は無い。ショウシャクヨモギで再生成するにも、自分の体内の具体的なイメージなんて出来る筈がない。もし少しでも不備があれば死に直結するのだ。それでも、彼女は笑っていた。その余裕があった。何故だ?

「あれ、神様から聞いてると思ったんだけどな。私が魔導書に何を望んだのか」

 エリナベラは刀を振って腸と紐の境を切断した。解けろと呟いて血に還す。そして、腹の中にポーションを振りかけた。

時は凪ぎ、その傷痍は反転する

 詠唱。俺は目を見開いた。

「ウィロウ・ポーション」

 ページを捲る音がうるさいくらいに響き、煌めく無数の黄緑色の帯が彼女の背中から現出する。それは翼のような形を取って、俺の右腕と腹部、彼女の腹部に帯を射出した。帯は巻き付いて、あっという間に宙に解けた。俺が驚いている内に、体が嫌な音を立てながら修復され始める。無くなった右手を見ると、断面から黄緑の光を吹き出しながらみるみる元の形に戻っていく。服をまくって腹を見ると、こちらも綺麗に塞がっている。

「再生魔法だよ」

 いつの間にか、彼女の腹も元通りになっていた。色々とツッコミたいが、そんな暇もなさそうだ。彼女は俺に手を差し伸べた。

「戦える?」

 勿論。

 俺はその手を取って立ち上がる。鶴嘴を取って、あ。鶴嘴がない。暗赤色の結晶よ。細かい傷から吹き出した血が、螺旋を描いて凝固する。俺は即席で新しい鶴嘴を作った。ダンジョンの壁が次々に割れ、そこからモンスターが溢れ出す。エリナベラと俺は互いに背中を預けて隙をカバーした。第二ラウンドだ。

 迫りくるモンスターに鶴嘴を振る。先端が貫通してモンスターは即死した。マイナスの補正はもう無い。あのメガトン落下で死んだと勘違いしたのか、あるいは落ちるところまでしかストーリーを練っていなかったのか、スキルは正常に作動している。ならば、今度こそあれが出来る。その前に念のため素振りをしておこう。

 暗赤色の――。

 あ、行けそう。確信を持った俺は『鎖』を握って敏捷の補正を高めた。右手で義手をパージし、断面を曝け出す。

 暗赤色の結晶よ。

 生成するは刀の柄。俺は短く息を吐いて、技名を呟いた。

 

 ブラッド・ドロウ。

 

 名は体を表す。固有名詞はそれをただの攻撃から、完成された技へと昇華させる。

 俺は左腕の断面に生えたそれを掴み、引き抜くように、宛ら居合のように振り抜いた。飛散した血が次々とパズルのピースの様に結合し、高速で刃を形成する。欠片から塊、流体から剛体への変化により、ほんの一瞬だが、鞭のような刃が生まれる。その瞬きほどの時間を、俺は莫大な補正値にて強引に噛み合わせた。

 

 一閃。深紅が半径十メートルの空間を切り裂いた。

 

 エリナベラが振り向く。

「え、今の何? 後で私にも撃ってよ」

 予備動作がデカすぎて当たらんわ。それに――。

 切り伏せたモンスターの奥から更にモンスターが湧いて来る。そう、ダンジョンだと壁が邪魔で射程が短くなっちゃうんだよね。

 だが、先ほどの一撃で大半は処理できたから後は消化試合だ。 使い終わった刀を血に戻した俺は、鶴嘴を担いでモンスターの中に飛び込んで行った。

 

 確かな手応えと共に鶴嘴がクソ犬の頭蓋骨を貫通する。俺はそれが塵と魔石になるのを見届けて、深いため息を吐いた。やっと終わった。

「中々多かったね。私はこれ以外に二回モンスターパレードに遭ったことがあるけど、こんなに多いのは初めてだよ」

 彼女は刀を鞘に納めて、魔石を拾い始めた。俺もそれに倣って魔石をかき集める。

「それにしても、君は運がいいね。私が釈放されたのは今日なんだよ?」

 いやおかしいだろ。少なくとも一か月は出てこられないって話だったのに。一体どんな手を使ったんだ?

「司法取引」

 麻薬の取引先のリストと引き換えだと彼女は首を振った。それを使って金を揺すろうとしていた彼女にとっては、そこそこの痛手となったらしい。こいつマジ終わってる。

 で、なんでダンジョンに来た訳? 助かったけど。

「君を驚かせようと思って神様の所に行ったら、君は新しいパーティを組んでダンジョンに潜っているというじゃないか。何か楽しそうだから混ざろうと思って追いかけたんだよ」

 理由が弱過ぎる。

「そうしたら、道中怪我人を背負って全力でダッシュしてるタケミカヅチファミリアと鉢合わせて、そいつらが君にパスパレードをしたとか言い始めたから助けに来てあげたんだよ」

 なるほど。下手人はタケミカヅチの連中か。奴らには後でお礼参りに行くとして、ベル達には会わなかったのか?

「ベルって、あのベル・クラネル? 少なくとも十三階に下りてからは誰にも会っていないけど」

 ……そのタケミカヅチファミリアとかいうのは俺の場所を言ったのか?

「言ったよ。じゃなきゃ間に合わなかった」

 だとすると、やはりエリナベラは最短距離でここまで来ている。同じく最短ルートで出口へ向かったベル達と鉢合わせていないのは不自然だ。ベルがルートを間違えたのか? いや、そんなヘマはしない。他に考えられるのは――。

 ここに来るまでに床が崩落している場所はあったか?

「あー、いつもより穴が多いと思ったけど崩落してたのか。もしかして、ベル・クラネル一行は穴に落ちて……」

 その可能性もある。その場合はどれくらいの確率で生きてるんだ?

 エリナベラは少し考えて言った。

「50〜70%。穴の深さはまちまちで、深いと落下死の危険もあるくらいだから。でも、そこまで深いのは滅多になくて、大体は一つか二つ下の階層まで。慣れていない階層に突き落とされて混乱しているという可能性も考慮してこのくらいかな」

 まあ、何とかなるだろう。それにまだ落ちていない可能性もあるし。仮に落ちていたとしても、モンスターは俺が全部受け持っていたからそこまで消耗していない、と思う。

「全部じゃないね」

 は?

「君が相手をしていた物とは他に、もう一つそこそこの規模のモンスターの群を見かけた。一応全部処理して来たけど。ともかく、君は全てのモンスターを抑えていた訳じゃない」

 エリナベラの言葉に、止まっていた脳が動き出す。

 タケミカヅチファミリアがパスパレードをした時、そっちに逸れて行ったモンスターはいなかった。ベル達は最短ルートで帰った。俺がダウンしてから復帰するまでに俺を抜いて行ったモンスターはそこまで多くない。その状況で、こことは別の場所にモンスターの群がある。とすれば、群れは何処からか移動してきたのではなく、発生したのだ。

 何故発生したのか。それは、これがベル・クラネルのシナリオであると仮定すると説明が付く。今回、ベルはピンチになる必要があった。ベルと一緒にいる時にスキルがおかしかったのもその所為だ。そうに違いない。

 そう考えると、なんだか生きていそうな気がしてくる。シナリオの主人公が簡単に死ぬ訳ないし。うん、きっと生きてるよ。平気平気。

「よし、よく分からないけど取り敢えず帰ろう」

 せやな。

 

 家のドアを開けて中に入る。俺はコートをエリナベラに返して、さっさと新しい服に着替えた。今日の分の魔石はもう集まっている。リビングのソファでゴロゴロしながら神様が帰ってくるのを待つことにした俺は、軽食を作るためにキッチンに立った。火を使って洗い物を増やすのは面倒なので、包丁だけで作れるものにしよう。

 作り方は簡単。トマトを好きなだけ洗う。トマトをスライスする。スライスしたトマトに塩をかける。はい完成。

 こんなのでも美味しいのだ。俺はそれをリビングまで運んで、ロック・ダウンを発動させながらつまみ始めた。

オラリオの野菜は美味い。厳密には、デメテルファミリアの作った野菜が美味いのだが、オラリオで流通しているのはほとんどそこの物だから間違ってはいない。恐ろしいことに、品種改良を重ねた現代の野菜と同等かそれ以上の品質を誇っているのだ。一体どんな手を使っているのだろう。デメテルしか知らない特殊な組み合わせの肥料を使っているのだろうか。とても気になる。もし家庭菜園でも使用できるとすれば革命が起きる。まあ、そう簡単に秘密は洩らさないだろうけど。

 俺はロック・ダウンで凍結したトマトを口に運ぶ。うん。シャーベットみたいで美味しい。俺が舌鼓を打っていると、横からぬっと伸びた箸がトマトをかっさらって行った。あのこれ俺の飯なんですけど。

「いいじゃん別にこれくらい」

 エリナベラである。本当に何で居るの?

 俺は自分の料理を抱え込んだ。

 良くない。早く返せ。もしくは帰れ。

「返せないし帰らないよ。ここがホームだからね」

 何時眷属に……そう言えば魔法を発現させるときにステイタス更新してたな。戦闘に関しては信頼できるしまあいいか。神様も魔法の才があるから採用したいとか言ってたし。そう、魔法と言えば。

 あの魔法おかしくないか? 何だよ再生魔法って。

「自分でもおかしい自覚はあるけど」

 イヤミか貴様。ほら、ちょっと後ろ向いて。

「何で?」

 いいからいいから。

 エリナベラは渋々俺に背中を向けた。俺はエリナベラの服を捲った。

()()()()事するなら先に言ってよ」

 そういう事でない。俺は別にやましいことをしている訳ではなく、ステイタスを確認しているのだ。目当ての項目を見つけた俺は、その部分を網膜に焼き付けた。

 

【ウィロウ・ポーション】

・再生魔法

・詠唱式【時は凪ぎ、その傷痍は反転する】

 

 相も変わらず簡潔な記述だ。全く分からない。

 先ずは魔法名から分析しよう。ウィロウは柳、ポーションは水薬か部分の意味を持つ。恐らく、柳の水薬という意味の魔法だろう。では柳の水薬とは何なのか。これが分からない。

 次にその効果だ。エリナベラ、魔法の研究は終わっているか?

「まだだけど、大体の説明はできる。詠唱を終えると、輝く帯の翼が生える。この翼が魔法の核。翼からは帯を伸ばせて、当たった箇所を再生させられる。伸ばすタイミングは任意。伸ばす帯は手動で角度を調整する必要がある。帯は直進しかできない。伸ばせる範囲は最大で約5メートル。帯は同時に何本でも伸ばせるけど、その分魔力を食う。一度伸ばすと、その時点で魔法は終了して翼も消える。魔力の消費は三つある。翼を出す時に単発消費、翼を出している間に継続消費、帯を伸ばして翼が消失した時に単発消費」 

 なるほど。それで、代償は? 寿命が縮むとか?

「魔力の消費が多い」

 後は?

「……無い」

 無い。無い? 何でコストないの? 俺は使い過ぎると発狂するし、失血死もするショウシャクヨモギと、ワンチャン思考ごと凍結するロック・ダウンしかないのに。デカ過ぎるリスクとデカ過ぎるリターンでなんとかプラマイゼロみたいな構成なのに。世界観の問題か? 俺だけ別ゲーしてるからこうなるのか? よし、俺もそっち行くわ。

「可哀想」

 こいつ滅茶苦茶ムカつく。まあ、とんでもない厄ネタだし、それで実質プラマイゼロか。

 ご存知の通り、ポーションは欠損部位を生やせない。治療系のファミリアでもそういった損傷の回復に成功したという事例は聞かないから、恐らく欠損箇所の再生というのは唯一無二で莫大な価値のある魔法だ。飼い殺しにされてもおかしくない。

 その魔法に欠点はないのか?

「再生中に新しく傷ができると、再生能力がそっちに移っちゃうことかな。そうすると、新しい方の傷を治した時点で再生を終えたという判定になって再生能力が失効する」

 じゃあ、再生中に傷ができると本命の方の傷は二度と再生できないのか?

「いや、魔力がある限り何度でも使えるね」

 あー強すぎて草。語彙が全部消失するくらい強い。いや、まだ諦めるには早い。

「君は何と戦ってるんだ……」

 見えたぞ。多分欠損してから時間が経って、その状態がデフォルトになっているなら再生はできないんだろう。

「その周辺の肉を削ぎ落とせば全部生やせるね」

 おかしいですこの人。絶対チート使ってます。チーターです運営さん早くBANしてください。

 俺は自らの不運を嘆きながら、義手に目を移した。

 聞いていて思ったんだが、もしかして俺の左腕も生やせるのか?

「そういうことだね。治そうか?」

 エリナベラの碧い瞳がロウソクの火を反射する。そっと目を逸らした俺は、トマトの種を嚙み潰した。

 ……まあ、別に治さなくてもいいかな。

 義手を外して、その断面を眺める。あるべき物がそこに無いというのに、さも当然のように肌はその切り口を覆い隠していた。

 あの時は痛かったけど、もう思い出のひとつだ。だから、残しておく。

「そっか。まあ、私も治す気はないけど」

 それはなぜ?

「秘密」

 彼女はそう言って笑った。

 

 なんとなく鶴嘴の整備をしようとソファの裏に手を伸ばす。俺の手は空を切った。あ、そうだ。今鶴嘴ねえじゃん。

「今更すぎる……」

 記憶が定かではないが、多分地面が崩れた時に落ちたんだろう。とても拙い。左腕を素材にしてそこそこの正気度を詰め込んだもう二度と作れない逸品なので、触媒としての価値や不壊属性など唯一無二の性能をしている。失くすのはとんでもない損失だ。

 今すぐ回収に行こう。

「無理だよ。自覚はないかもしれないけど、今の君はかなり消耗している」

 エリナベラは俺の肩を押してソファに押し倒した。

「ほら、この程度の力にも抵抗出来てない」

 不意打ち気味だったが、確かに抵抗できなかった。神様が来るまでこのまま寝てようかな。

「じゃあこのトマトは私が貰うから」

 俺の飯だって言ってんだろ!?

 その時、玄関の扉が開く音が響いた。神様が帰ってきたのだ。神様はリビングに入って、ソファで揉み合う俺たちを一瞥した後自分の部屋から紙と針を持って来た。

「さあ、ステイタス更新の時間だ」

 どうした急に。

「いつもより帰るのが早い。鶴嘴がない。エリナベラがいる。ということは、修羅場を潜って来たんだろう?」

 そういう神様の顔は、心なしか楽しそうだった。俺はソファから降り、服を捲って背中を曝け出した。

 エリナベラもいるけどいいのか?

「いいさ。普通の人間はヒエログリフが読めない」

 神様の血が背中を濡らす。ファルナの光が部屋を満たした。神様が何か操作をして、数値を書き写す音が暫く続く。1分も経たない内に光が収まり、肩を叩かれた。更新が終わった合図だ。

「えぐいね。耐久が200近く伸びている」

 見ると、それ以外の項目もそこそこの伸び方をしている。絶対あの戦闘の所為だ。俺は右手を握りしめた。

 あの時の感覚。鎖を掴んだ時のあの手応えはまだ脳に残っている。今なら行けるのか? 俺は瞼の天秤に手を伸ばして、スカッた。知ってた。明らかに別の空間の中継映像だし。死亡確率が操作できたらもうなんでもアリだからな。

「で、何があったんだい?」

 神様はフォークを取り出してトマトを強奪した。なんで皆俺のご飯盗るの? でもまあ、仕方ないから話してあげるよ。

「うわ。話したさそうでウザい」

 お前が訊いたんだろうが。

 俺は事の顛末を至極丁寧に説明してあげた。その間、神様は目を瞑って聞いているのか聞いていないのか分からない相槌を打ち続けた。

「なるほど。それで、君はこれからどうするんだい」

 鶴嘴を回収しに行く。

 俺は即答した。

 ベル達は生きているか分からない。傷の回復は終わっている。そして、鶴嘴が誰かに回収される可能性がある。ともすれば、当然最優先事項だ。

「多分、明日の朝早くから行くんだろう。だが、まだ寝るには早い」

 神様は言葉を切って、懐から一枚の紙を取り出した。その内容に、俺は目を見開く。

「よって、今からエリナベラ・ソルベルのスキル、衝突別離について理解を深める会を開く」

 掲げられた紙には、エリナベラのステイタスが書かれていた。

 

 

衝突出離(コライド・スライド)

・任意で攻撃判定を複製、射出する。

 

 

 衝突出離。コライド・スライド。あの判定飛ばしのタネである。コライドは衝突、スライドは滑る事を意味する。ぶつかって滑る。要は物理演算だ。そして、出離は解脱――煩悩や束縛からの解放――を意味する。即ち、判定を物理から解放するスキルである。

「そこまで大層なものだとは考えてなかったかな」

 エリナベラはそう言うが、結構というかかなりヤバいスキルである。恐らく、このオラリオで彼女に対人戦で勝てる者は数える程しかいないだろう。しかし、理解が甘いと神様は考えている。彼女はこのスキルを使いこなしてはいないと。

 そう言う訳で、放置されている廃屋で実際の挙動を確認しながら疑問をぶつけあうことになった。先ずは俺からである。

 ずっと気になってたんだが、攻撃の始点と終点が同じになるようにぐるっと回転したら、その判定はどの方向に飛ぶんだ?

「360°どこでも」

 実際にやられても分からないので次の質問へ。次は神様である。

「一回の動作で複数の判定は出せるのか?」

「無理です」

「こう、カクカクした動きで動作を止める箇所を作れば出来るのではないか?」

「無理です。複数の武器を同時に持てば出来ます」

 エリナベラは木の棒を数回瞬間的に止めながら振り下ろした。何段階かある一つの判定になった。神様が三本持ってやれと命令し、エリナベラはその通りにした。斬撃は三つ出た。

 一度飛ばした判定は曲げられる?

「曲げられない」

 エリナベラが棒を振る。正面の草が払われた。

「判定の飛ぶ方向はどうやって決まる?」

「表現が難しいですけど、武器を振った時の向きの平均に飛びます」

 俺は手を挙げた。それは違うよ!

「何が違うの?」

 だって、もしそうなら振り下ろしで出来た判定は斜め下に飛ぶ筈じゃないか。

「確かに」

 では、なぜ前方に飛んでいるのか。俺が首をかしげると、それは簡単だと神様は言った。

「スキルの説明を読んでみろ。複製し、射出だ。攻撃判定をそのまま飛ばしている訳ではない。そう錯覚する程の速度でコピペしているだけだ。恐らく、無意識で」

 そして、複製された判定はその時点では方向性が無い。俺は神様の言葉の後を継いだ。

 つまり、射出方向は自由自在。そういうことだな、エリナベラ。

「うーん。ちょっと違う気がする」

 棒を振りながら、方向性は初期段階で存在していると彼女は言った。

「だけど、どうやって決まるかは説明できない。無意識か、あるいは自動で決まってると思う」

 初期設定のまま飛ばしているのか?

「違う。初期設定のままだとあらぬ方向に吹っ飛ぶから、私が調整している。その時に少し抵抗みたいな物を感じる」

 何れにしろ、射出方向は変更出来るって事だな。

 そうなると、本当に戦闘の幅が広がる。だが、それを確かにするにはもう一つ質問しなければならない。

「射出速度はどのようにして決まる?」

 ナイス神様。さあ、この返答次第だ。

「具体的な変数は分からないが、武器を振る速度に比例する」

 上限は?

「多分ない」

 あー強すぎ。強すぎて草。

「君のも大概だけどね」

 神様はそう言って立ち上がった。何か話したいことがあるらしい。

「さて、情報は揃った」

 まだ原理とか色々分かってないんですが。

「いや、今回の目的はスキルの全容を白日の下に晒すことではない。スキルの特色を確認し、武器の再考を行う為だ。今ならまだ、エリナベラに注文できる」

 そして、彼女なら明日の朝までには仕上げられる。それが狙いか。

 神様は何処からかエリナベラの刀を取り出した。

「スキルを最大限生かすには、武器の形状を変更する必要がある。刀もそこそこの適性があるが、もっと上が存在する」

 俺は今までの情報を整理し、なんとなく神様の言う「形状」を理解した。なるほど、多分その武器は――。

 

 




 最初の方の話をリメイクしたい。

 逆柱は家鳴や火事を起こすと言われているが、日光東照宮では魔除けの意味で一本だけ逆柱になっている。

 モチベーション等の理由より、感想や評価を募集しています。

752b3330366120752b33303862

  • 736f756b61
  • 736f756b61
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。