輝かせたくて   作:インスタント脳味噌汁大好き

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エピローグ

引退ライブを終えた後、打ち上げを途中で抜け出した自分は自宅に帰るとすぐに眠ってしまった。するとすぐに、夢の中に自分がいることを自覚した。まあたまにあるよね。「あ、これ夢だ」ってなること。大抵はその後すぐに起きるんだけど、今日は中々起きられない。

 

何もない真っ暗闇の空間に自分が立っている感覚はあるんだけど、自分の身体が見れない状態だし不思議な感覚だ。あれもしかして自分死んだ?と思っていると、目の前には2人の人間が現れた。片方は前世の俺で、もう片方はVtuberの鬼塚あみだな。

 

……これ引退ライブしていて良かった奴じゃないか?何となくこうなる予感はしていたけど、自分が鬼塚あみ、の中の人である小野塚美穂の身体を操作できるのはこの日までだったか。いや、選択権はあるのかな?

 

選べと言われているような気がするので、当然前世の自分を選択。やっぱりおちんちんが無い生活は辛かった。幾ら食欲や睡眠欲、金銭欲や物欲を満たしても性欲がね……。

 

そして目を覚ますと、俺は前世の自分の部屋にいた。……うわ、そう言えばオナニーしてすぐに寝たから部屋が酷い惨状になってるな。片づけないと。

 

パンイチの恰好で部屋の片づけを開始すると、鬼塚あみ関連のグッズが多い多い。前世は少なかったけど、鬼塚あみが超有名ライバーになったからグッズは超多い。そして当然のように引退ライブのグッズも大量にある。これらはちゃんと、受け取って貰えていたんだな。

 

片づけと掃除が終わると、インターフォンが鳴る。このタイミングで来るとしたらあの荷物かな?そう思ってドアを開けると、高校の時の同級生でずっと付き合いのある友人が1日遅れで誕生日を祝いに来てくれた。アポなしで。こいつはいつもこうだな。

 

「直接会うのはひっさしぶりやな。ん?涙目やけど昨日はあみちゃんの引退ライブを泣きながら観たんか?あ、もしかして現地行ったんか?」

「現地にはいたな。グッズも大量に買ってる」

「相変わらずやな。まあええ、上がらせてもらうわ。

お?宅配便か?」

 

軽く二言三言交わした後、上がろうとする友人の後ろに宅配便のトラックが止まり、荷物を持った兄ちゃんが荷物を渡して来る。流石は日本の物流。昨日出した荷物が今日の朝に届くか。

 

「差出人鬼塚あみ……?あ、引退ライブの参加者全員プレゼントの色紙か!?」

「ちげえよ。まあ、中身は秘密だ」

「えー、そう言われると教えて欲しいわ。

教えてくれたらこれあげるで」

「元々渡す気だっただろお前……。

まあ良いか。中身はこれだ」

 

友人がぐいぐいと迫って来るので、仕方なく封を開ける。こいつが金持ちじゃなかったら絶対に見せてなかったな。4000万円分の金が入ってるし。

 

「……金塊?」

「年800万、合計4000万ぐらいなら労働の対価として貰って良いだろ。という判断で4000万円分の金を貰った」

「5年……?あ、あみちゃんの裏方でもやってたんか!?くそー、本当は素顔知ってるんやろ!?

というか本当にあみちゃん大金持ちなんやな。わいでも4000万をポンと払うのはちょっと考えるで」

「5年分の対価だからなあ。まあ活動最初期から推しを、輝かせるために色々と頑張ったんだ」

 

年末ライブの時にかなり散財した上、4000万円ほど支払ったが、小野塚美穂の総財産の0.01%程度だしこれぐらいならバチは当たらないだろう。

 

ネット上で改めて検索すると、鬼塚あみの引退を惜しむ声や怨嗟の声もあるけど、それを上回る量の感謝やらありがとうの言葉がある。前世で惜しまれることなく引退した鬼塚あみを思い返して考えると、やっぱりこれで良かったんだと思う。

 

……いやまあ俺が何で小野塚美穂の身体に入ったのかとかは分からないけど、華山さんが悪魔と契約して過去に戻ったという体験談を聞いて1つだけ仮説がある。誰かが悪魔やら超常の存在に願ったんだろう。鬼塚あみを人気ライバーにしてくれ、みたいな。

 

これ、たぶん本人が契約したんだろうなあ。結果、身体から追い出されて鬼塚あみがひたすら人気になるところを外から見るだけだったとかわりと悲惨な状況になっていたことが想像できる。

 

前にガチ霊能者のイナちゃんと直接会った時「先輩ヤバいっすよ。生霊みたいなのがずっと『かえして……かえして……』って先輩の後ろで言ってます」と言われたし、俺には見えなかったがずっと小野塚美穂本体が傍にいたのかもしれない。まあでも結果的に身体を返したから許して欲しい。超がつくお金持ちになったわけだし。

 

……ただ地震を予言したり、コロナを予言したり、ロシアとの戦争を予言したり、仮想通貨や株で大儲けしたり、ヤバイ信者が大量にいる中で引退したからこの後の立ち回り次第では酷い状況に陥る可能性は大いにある。

 

まあ鬼塚あみがこうして伝説となったのだから、個人的にはもうそれで良いや。俺が推していたのは鬼塚あみであって、中の人の小野塚美穂にはこれっぽっちも興味がなかった。

 

凡人がよくここまでやったと思う。これから先、鬼塚あみはずっと未来のVtuberと比較されるような存在となるだろうし、Vtuberファンにとって、ずっと記憶に残る存在となっただろう。推しがそうなったのだから、個人的には大満足だ。




これにて「輝かせたくて」は完結です。これまでたくさんのお気に入り登録や評価、感想をありがとうございました。完結後の後書きですら使いまわしをする面倒くさがり屋がこの小説を完結させられたのは読者の皆様のおかげです。

このあと番外編として小話などを投稿するかもしれませんが、前に完結後のあとがきで同じようなことを書いて結局書いていないので、今後この作品が更新されるかは不明です。

今は少し疲れたので、ちょっとだけお休みして新作を書くか、投げっ放しにしている小説の続編を書こうと思います。次回作のアンケート等をやっているのでよろしければTwitterのフォローお願いします。⇒https://twitter.com/instantnoumiso

改めて読者の皆様、ここまでの読了お疲れさまでした。最後に評価を付けて下さると非常に嬉しいです。また次回作や他の場で会えることを楽しみにしています。これまでありがとうございました。

次回作
https://kakuyomu.jp/works/16818093074303916494

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