輝かせたくて   作:インスタント脳味噌汁大好き

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第87話 キャラ被り

笹谷さんの復活と同時期に活動を開始した夢道ローナちゃん。活動当初は笹谷さんの復活で話題を持っていかれ、2D3Dとしては珍しいソロデビューだったのにも関わらずスタートダッシュで躓いた子である。

 

それでも独特で可愛らしいイントネーションを武器にし、マイクラを中心にFF14や視聴者参加型のマリカなどでリスナーとの交流も積極的に行っており、チャンネル登録数は15万人と2D3D内では中堅上位の存在。

 

そんな彼女が怒ったきっかけとしては新人のラビュリンスさんのキャラがローナと被っていること。特に独特な口調が被っていることがローナちゃん側はアウトだったようで、運営を通してキャラを変えて欲しいことをラビュリンスさん側に伝えている。

 

しかしこのVtuber飽和時代、キャラ被りは珍しいことじゃないし、そもそもローナちゃんのキャラもローナちゃんにとっての先輩であるモーナちゃんと一部被っている。なのだ口調部分はほぼ同じだし、リスナーとのプロレスの仕方も結構似ているから参考にしていそうだ。

 

一方でラビュリンスさん側は、この先輩からのキャラ変更要請をパワハラだと捉え、ローナちゃんを敵認定したのかローナちゃんの思い出の詰まったヘッダーをトレパクしたり、ローナちゃんが好きな漫画をディスったり、ローナちゃんからのDMを無視し続けた。ここら辺は性格の悪さが滲み出ていて、わりと引いた記憶はある。

 

最終的にはVtuber界の不要悪こと裁鬼(さばき)鳴美(なるみ)さんにディスコード画面をリークしたことで、情報流出したと契約解除に持って行かれる。ただこのディスコード画面でローナちゃんの圧というか、キャラ変更要請が表に出たことでローナちゃん側も炎上。アンチが常に配信画面に湧くようになり、裁判沙汰となる。

 

結果的に、ラビュリンスさんは契約解除されてローナちゃんも長期の活動休止となった。裁判が終わった2022年の年末には若干の復活はあったが、かつてのファンはかなりの割合でいなくなった上に、騒動を後から知った愉快犯にアンチ活動をされ、再度の活動休止となっている。

 

この件がよく燃えた1つの要因として、このキャラ変更要請の妥当性が微妙なところが挙げられる。ぶっちゃけキャラ被りはどうしようもないし、真似たところで顧客を奪えるかと言われれば微妙なところ。似ているからと言って、キャラを変えろと言うことに横暴さを感じる人は一定数存在する。だからこそアンチが湧いたわけだからね。

 

というわけで、ラビュリンスさん側が変なことをしない前にラビュリンスさんとローナちゃんとで焼き肉オフコラボ。始まる前から胃が痛いけどこれをどうにかしないと延々と燃えるからなあ……。

 

「あの……もしかして……」

「お、ラビュリンスさんも来たのじゃ。ほらこっちこっち、ローナちゃんの隣に座るのじゃ」

「っ、帰ります!」

「一切れ3000円のお肉を奢りで食べられる機会じゃから話だけでも聞くのじゃ。というかここで逃げたら間違いなく予言通りに進行するのじゃ」

 

待ち合わせの焼肉店は、少々お高い個室での焼肉です。1人頭5万円から6万円ぐらいにはなりそうかな。ローナちゃんは事前に察知していたようで凄い表情でこの食事会に挑んでいる。2人ともせっかくの可愛い顔が、対面した途端に歪むのか。まあ、ワイワイできそうな雰囲気ではないわな。

 

そしてラビュリンスさん側はローナちゃんを見て即座に帰ろうとしたので、肉の値段で釣るのと同時に発射した予言砲の威力を思い出させる。結果、ラビュリンスは個室に入って席に座ってくれた。少し座布団を横にずらし、ローナちゃんとの距離を開けたのは見逃そう。

 

……にしても現地にまで来て帰りますと言い出す辺り子供っぽさはかなり強いというか、我儘な人っぽいね。さて、無言のまま肉を焼くわけにもいかないし話を始めるか。

 

「……まずは話し合いがなかった場合の未来から話そうかの。あ、ここ防音キッチリしてるし店側が配慮してくれるからVtuberやってること喋っても大丈夫じゃぞ」

「鬼塚先輩の実績は理解しているので、そうなるものだと思って聞きます」

「……私も、聞きたいです」

 

ローナちゃんは全面的に信用している感じだけど、ラビュリンスさんは完全には信用してないのかな。それでも話を聞きたいという辺り、気にはなるのか。

 

「…………という感じで拗れていって、ラビュリンスさんが裁鬼鳴美さんにリークした時点で秘密保持の観点からラビュリンスさんの契約解除は決定的になるのじゃ。また、そのリーク内容がローナちゃんからのキャラ変更要請部分じゃったから、ローナちゃんも炎上してアンチが大量発生し、長期の活動休止に追い込まれるのじゃ」

「何で、私が活動休止に追い込まれるんですか?」

「キャラ被りぐらい容認しろ派が半分ぐらいはいたからじゃな。配信では媚売るシーンが多いのに、裏では後輩に圧をかける姿に幻滅した人も少なくなかったんじゃろ」

 

一通り流れを説明すると、両者納得はしない表情だったけど一応流れは受け入れてもらえたみたいだ。過去の自分の実績、傍から見るとただのやべー人というか完全に未来人だから、こういうことは信用して貰いやすいね。

 

さて、ここからだ。妥協点を作って、大規模な炎上には発展していかないようにはするけど、出来れば2人が仲良くコラボするような状況にまで持って行きたい。……互いに互いを睨み合って、嫌い合っている人達を仲良くさせるのはちょっとどころかかなりハードルが高いけど、今の話を真実だと受け入れて貰えたから私への信用度は高い状態。それなら、可能性はあるかな。


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