大鉄人戦記   作:雑草弁士

1 / 64
プロローグ:さらば三郎、さらば愛すべき人々よ

 そのとき、『わたし』は目覚めた。カメラ映像には敵の首魁(しゅかい)であり、『わたし』の創造主でもある巨大電子頭脳『ブレイン』が映っている。そうだ……。今『わたし』は、『ブレイン』との最終決戦に挑んでいた。

 

 この『ブレイン』は、人類を地球環境保全にとって邪魔な存在であると認識し、人類を滅ぼす目的で活動している。だが対人類の破壊活動を行うための、『ブレイン』の分身ロボットとして生み出されたはずの『わたし』は、それに異を唱えた。そして最終的に『わたし』は人類側に立って、『ブレイン』の送り込んで来る巨大ロボットと戦う事になったのである。

 わたしは戦い、勝ち続けた。『ブレイン』が送り込んで来る巨大ロボットたちは強敵ばかりだったが、からくも勝ちを拾う事ができたのだ。そしてついに『わたし』と人類の精鋭たるレッドマフラー隊は、最後の決戦に挑んだのだ。

 

 しかし敵の頭目である『ブレイン』は、半径2km以内のコンピューターを自らの思うままに操る事が可能である。このブレイン・エリアと称されるフィールド内では、人工知能ロボットであるわたしもその操り人形になってしまうのだ。

 しかしながら『わたし』以外の兵器では、その凄まじい超生産能力で自らを兵器として改良強化した『ブレイン』を破壊する事は困難、いや不可能である。そして『わたし』たちは苦肉の策に出た。

 

 

 

*

 

 

 

 その策とは、『わたし』の内部に操縦席を造り付け、『わたし』の友である少年、南三郎を『わたし』の操縦者としての、『ブレイン』への特攻作戦である。

 

 

 

*

 

 

 

 三郎は、『わたし』と共に死ぬ覚悟をしてくれた。そして『わたし』は『ブレイン』に操られないために意識を切り離し(シャットダウン)、彼の操縦に身を任せた。だが『わたし』はその三郎の覚悟を、これから裏切ることになる。

 

 

『サブロー、サヨナラ!!』

 

「ろ、ロボター!? うわぁっ!!」

 

 

 タイマーで自我意識を再起動させた『わたし』の指示に従い、人間大の小型作業ロボットであるロボターが、三郎を操縦席から放り出す。三郎の背には、念のためという事で無理矢理にパラシュートが背負わされていた。ハッチから外へと落ちる三郎だが、こちらの遠隔操作でパラシュートが開く。

 

 そう、『わたし』は最初からこのつもりだった。前途ある少年の三郎を、このような自殺まがいの特攻につきあわせるわけには絶対にいかない。ブレイン・エリア内における『ブレイン』の支配力は、短い時間であれば抵抗する自信があった。

 なぜならば、『わたし』には魂があるからだ。『わたし』は転生者だ。『ブレイン』によりこの機体(からだ)が建造されたとき、それに芽生えた自我意識であった『わたし』には、何処かの世界において平凡に一生を生きて平凡に死んだ人間男性の記憶と心が、そして魂が宿っていた。

 

 そして転生した事を自覚した『わたし』は、この世界がとある特撮番組の世界である事を理解した。当初は苦悩もしたが、結局は『原作』通りに『ブレイン』から離反して、人類を守る立ち位置となった。

 TV番組での展開とは違ったが、三郎と友情を築く事もできた。そして三郎やレッドマフラー隊と共に、『ブレイン』の送り込むロボットと戦った。そんな中で、『原作』で存在した不幸や苦痛を少しでも減らそうと、必死で努力もした。

 その努力は報われた事もあれば、上手くいかなかったことも多い。レッドマフラー隊の中井隊長の殉職は防げなかったが、佐原博士の次女であるルミの誘拐、洗脳は防ぐことができた。しかし『わたし』の弟ロボットであるワンエイトは、結局は『原作』通りに敵ロボットであるハーケンキラーを倒すため、爆死してしまった。

 

 そして今、『わたし』は結局最後の最期(さいご)まで、『原作』通りに物事を進めようとしている。『わたし』はエンジン全開で、眼前の『ブレイン』目掛けて特攻を仕掛ける。同時に戦術核自爆装置を起動。長時間『ブレイン』のブレイン・エリアによる支配に抵抗できる自信は無い。短時間で、一瞬で、全てを終わらせなければ……『ブレイン』を破壊しなければならない。

 

 

「ワンセブーーーン!!」

 

 

 パラシュートで無理矢理に脱出させた三郎の、涙混じりの絶叫が聞こえる。ありがとう三郎。君のおかげで、『わたし』は『自分』を失わずに済んだ。君のおかげで、『わたし』は『人間』であった頃の心を保つことができた。本当に、ありがとう。

 そう、今生のわたしの名は、『大鉄人17(ワンセブン)』。この冷たい機械の身体には、熱い魂が宿っている。人間は、人類は、たしかにクズも多い。ハスラー教授、キャプテンゴメス、チーフキッド、その他諸々の外道ども、クソどももいる。

 だけど、三郎やレッドマフラー隊、佐原博士の様な素晴らしい人々もいる。そういう人々を、十把一絡げに滅ぼしてしまうのは間違いだ。『わたし』はそのためならば、彼らのためならば、この鋼鉄の命を使い尽くす事も(いと)わない。

 

 ……さらばだ三郎。さらば我が友よ。

 

 

 

*

 

 

 

グワッシャアアアァァァン!!

 

カッ!!

 

ドッゴオオオォォォン!!

 

 

 

*

 

 

 

 そして『わたし』の意識は、急速に遠のいて行った。




こうして主人公は、『大鉄人17(ワンセブン)』の世界線にサヨナラするわけです。いえ、死んでません。大丈夫、ご都合主義ですが、死んでません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。