シグコン・シップ
『フリード星からの来援、感謝いたします。デューク・フリード殿下』
「ありがとうございます、アキラ・キャンベル大将閣下。
うん、デューク・フリードの話によれば、彼はまだ戴冠式を行っていないから、『陛下』ではなく『殿下』なんだ。フリード星の復興がある程度進むまでは、戴冠式は待っているんだそうな。
キャンベル大将が、難しそうな顔をして問い掛ける。
『……車弁慶少佐の報告では、殿下は地球に危機を知らせる目的で来訪なされたとのお話でしたが』
「ええ。地球は狙われています。敵の名は、『ガルファ』。『機械帝国ガルファ』です。あらゆる知的生命体を滅ぼそうとする、宇宙の悪魔どもの1つです」
そしてデューク・フリードは、何故復興途中のフリード星からわざわざ自身が来訪したのかを、ゆっくりと語り始めた。それによると、次のような経緯であったらしい。
ベガ星連合軍を撃破しベガ大王を倒した後、彼はフリード星復興のためにフリード星へと帰還した。そしてベガ星連合の支配下にあった、かつて侵略された星々と連絡を取り合い、宇宙共栄連合を結成、共同歩調を取って復興作業にあたっていたとの事だ。
本当であれば、地球にも宇宙共栄連合の輪に加わって支援と貿易をして欲しかったのだが、いかんせん太陽系には内戦の嵐が吹き荒れていた。そのため残念ながら、最低限の国交のみに留められていたのである。
そしてつい昨年の出来事である。宇宙共栄連合の一角、ウルス星とモール星が、陥落した。どちらの星も、ベガ星連合からの独立を果たして圧政で疲弊した状態からの復興に努力していたのだが。しかしながら、ベガ星崩壊の折に反乱を起こして独立を勝ち取っただけに、軍事力の面では宇宙共栄連合中でも指折りであった。
その軍事力では指折りの星が、あっさりと機械帝国ガルファに敗北したのである。不幸中の幸いと言っては何だが、両星は軍事力こそ指折りであったが、それに慢心はしていなかった。それぞれの星の住人たちは、ガルファから見て後方惑星であるフリード星へと退避する事ができたのだ。それには軍人たちの尊い犠牲あっての事だったが……。
フリード星議会は紛糾する。フリード星はいったんベガ星連合軍により滅ぼされており、完膚なきまでにベガトロン放射能による汚染までくらっていたのだ。幸いにもベガトロン放射能が減少、自然環境が復旧してきたものの、フリード星人の数は戦前には遠く及ばず、必然的に軍事力は心もとない。
間違いなく機械帝国ガルファの次の目標となっているのは、地球である。地球が滅ぼされれば、フリード星までガルファを
地球は護らねばならない。心情的にも、フリード星にとって実利的にも、だ。地球が
そして次期フリード星王にしてベガ大王討伐の英雄であるデューク・フリードの鶴の一声にて、フリード星最大戦力……と言うか、事実上唯一の戦力に近いグレンダイザーの、地球への派遣が決定されたのだ。
キャンベル大将は、眉を
『ガルファ……。それについては、わたしのところには
しかもあらゆる知的生命体を滅ぼすことを目的とする、機械帝国、とは。情報の錯誤もはなはだしい。なんたることだ』
「こちらで調べた、ガルファに関する情報をお渡しします。どうか活用してください」
『感謝いたします、殿下。そう言えば……。Guard Earth and Advanced Reconnaissance……。略称『GEAR』と呼ばれる、なんらかの組織の話を、ガルファに付随して聞いた事があります。早速調査させたく存じます』
その後、キャンベル大将とデューク・フリードは
キャンベル大将は少々渋ったが、グレンダイザーの戦闘能力を遊ばせておくわけにもいかない。それに遊ばせておいたら、フリード星の面目も潰す事にもなる。結局は
……弁慶の胃が、心配である。
*
その弁慶から、ちょっとした質問を受けた。
「よお、ワンセブン。例の機械帝国ガルファ、ってやつらなんだがよ。おまえさんの例の、並行異世界での物語ってやつの中には、無いのか?」
『ある。だがあちらは『物語』として、素晴らしい血沸き肉躍る冒険活劇的な作品にするべく、『作者』の先入観と主観と、そして盛大な脚色が入っている。……参考になるどころか、場合によっては情報の誤差により、大きな取り返しのつかない過ちを犯す危険がある。
だからわたしは、その『物語』を明かすつもりは毛頭無い。それに判断そのものも、この世界で得られた情報だけに頼るつもりだ』
「そうか。いや、今回のINFINITYみたいに、いきなり世界を終わらせる相手じゃないって事だけ知りたかったんだ」
安堵した弁慶に、ついでだからもう1つ言っておこうか。
『……一応言って置く。わたしの知る『物語』の中に、ゲッターロボを操る竜馬、隼人、武蔵、弁慶と言った人物たちの話もある』
「!!」
『だがその『物語』も、色々なパターンの話が同一キャラクターを使った別シリーズという形で多数存在していてな。結末も各々違っている。どれがどれやら、わからん様になっている。早乙女博士が裏切るものも、中にはあるが……。
だがこの世界において、本当に狂気に陥っているのか、はたまたインベーダーにでも取り
「そ、そうか……」
『『物語』を知りたいか?』
弁慶はしばし黙していたが、やがて首を左右に振る。
「やめとくよ。『全てが終わってから』、酒の肴の笑い話としてでも、聞かせてくれ」
『……了解した』
そして弁慶は立ち去る。『わたし』は物陰に隠れていた『男』に声を掛けた。
『満足かな?』
「……おう。……わるかった」
『君も『全てが終わってから』酒の肴、でいいかね?』
「おう」
そしてその『男』、竜馬もまた足早に立ち去って行った。いや、
*
デューク・フリードと艦の面々の関係は、極めて良好だ。どうやらフリード星では王子としての立場上、こうまで気安く接してくれる者は居なかったらしい。……フリード星時代の親友、友人や婚約者は、ベガ大王とその部下たちのせいで全滅状態だしな。
中でもやはり、甲児とは直接の戦友だけあって、親密に会話を交わしている。
「……そんなわけで、マリアも甲児君に久しぶりに会いたいと言っていたんだが。だが僕が地球に来なければならない以上、妹であるマリアはフリード星に残らなくてはならなくてね」
「会えないのは残念だけど、そんな理由なら仕方ないな」
「甲児君……。話に聞く、さやかさんという女性とは、どうなんだい?」
「あ、い、いや。うん。ちょっと俺が煮え切らない事で、少し危なかった事もあったんだが。今回の戦いに出る前に、なんとかなったよ」
「そうか……。マリアには、申し訳ない報告をしなければならない様だな。ふふふ」
ああ、デューク・フリードの妹であるグレース・マリア・フリードは、甲児をはさんで弓さやか女史と三角関係にあったな、色々な設定的には。甲児的にはどっちにせよ煮え切らなかった模様だが。まあフリード星と地球と言う距離の差があれば、仕方あるまい。
しかし、機械帝国ガルファ、か……。GEAR戦士電童が参戦するとは、予想外だった。ハイパー電童デンチ方式で
各地の研究所やら秘密組織やらの情報は、可能な限り探っていたんだが。やっぱり秘密組織であるGEARについては何も掴めなかったんだ。だから、電童については存在しないかと……。
星見町という地名は存在していたが、原作アニメやゲームと違い、GEAR本部となっていた表向き遊戯施設である星見町アミューズメントパークは、存在しなかった。各地でテロや戦乱が続くこのご時世、カムフラージュのためとは言え、アミューズメントパークは難しかったんだろう。
今現在地球連邦軍は、稼働する宇宙望遠鏡や電波天文台をフル稼働させて、深宇宙探査を行っている。ガルファの襲来を、可能な限り早期に発見するためだ。
だが現状稼働するその手の施設は、数少ない。ネオ・ジオンを名乗るジオン残党組織やその他のテロ組織、そしてザンスカール帝国の連中のせいだ。奴らは地球にある宇宙への目を、可能な限り潰し回っているからな。なんて迷惑な。
そして問題のガルファ皇帝……。この世界でもそうなのかは知らないけれど、もともとは惑星アルクトスの生態管理コンピュータだったんだよな。そして計算の末に、『アルクトス人、つまり人間が惑星の環境を破壊する』という結果に。それで全ての知的生命体を滅ぼさねばならないと、そう思い込みやがった。
……おい。
いや、自戒しろ『わたし』。並行異世界間の誤差で、その辺はどう変化するか分からない。参考にするのすらも怖い。弁慶にも言ったばかりじゃないか。
原作アニメの知識は、とりあえず現実の情報と混同しない様に
*
それはともかくとして、だ。今現在我々の最優先目標は、隼人との約束もあるし、早乙女博士と真ドラゴンの捜索だ。『わたし』たちはキャンベル大将の伝手で連邦軍からの通報を受け、今現在月面に向かっている。
竜馬がぶつくさと愚痴をこぼした。
「……本当に、月に早乙女のジジイが居やがるのかよ?」
『そこまでは、分らん。ただし何かしら手掛かりはあると思われる。これを見てくれ』
『わたし』は主スクリーンに映像を映し出す。それは流星の様にも見える。
『これはガルファ来襲に備えて深宇宙探査をしていた、宇宙望遠鏡が偶然捉えた映像だ』
「単なる流星じゃ無い、のか? いや、違うな」
隼人はこの映像のおかしな点に気が付いた様だ。
「流星というのは、基本的に宇宙ゴミが大気圏に突っ込んで、燃え上がる事で発光する現象だ。だがこいつは、宇宙空間で輝いている。一瞬彗星ではとも思ったが、光の尾を引く方向が太陽とは無関係だ。彗星の尾は、太陽風によるものだから完全に太陽の逆方向でなければならん」
『これにフィルターを多重にかけて、映像を処理してみた。結果がこれ、だ。第1段階目』
流星の光度が、若干落ちる。その頭になっている核は、まだはっきりとは見えない。
『第2段階目』
「オイ……」
ぼやけていた核の映像が、若干はっきりする。それは何となく、人型に見えてきていた。
『第3段階目……。第4段階目……。そして第5段階目のフィルターをかけた映像が、これだ』
「!!」
「こ、こいつぁ……」
「……なるほど、な」
ゲッターチームが、それぞれ反応した後、押し黙る。主スクリーンには、多少ボヤけてはいたが量産型ゲッターG……量産型ゲッタードラゴンと思われるロボットが映っていたのだ。
『こいつの軌道要素を計算してみたが、明らかに月へ向かっていた。月に何かがあるのは、間違い無い』
「月の、何処だ?」
『わからん。だが可能性が高いのは、この周辺だ』
「!!」
竜馬の顔が
「……またあそこへ、逆戻りってわけかよ」
*
今『わたし』たちは、連邦軍廃棄基地の傍らにシグコン・シップを停泊させていた。万が一に備え、各員は自分の機体に乗りこんでいる。
アムロ大尉が、首を
『ワンセブン、とりあえずどう調べるつもりだ?』
『なんなら、この基地に詳しい俺が出張るぜ』
竜馬もギラつく目をしながら、語る。仇敵につながる手掛かりがあるかも知れないとなれば、気持ちが
【いや、念には念を入れよう。今、
竜馬、
『了解だ』
【それと同時に、周辺にも
ここで隼人が口を挟んで来る。
『それは月面戦争の
実際にはそれに先立って、月面でインベーダーとの戦いがあった。旧ゲッターロボが量産されたのも、その時期だ。そして月面では、幾多の量産ゲッターロボが撃破され、あるいはゲッタービームをところかまわず撃ちまくり、月面に多量のゲッター線をばら撒いた』
【なるほど。だがそれにしても、ゲッター線指数が高い。何か理由が……】
『……だとすると、竜馬が地球から時間と空間を飛び越えて月の廃棄基地に現れたのが、何かしら影響している可能性もあるな』
『俺のせいかよ』
それはともかくとして、『わたし』たちは月面の廃棄基地および周辺の調査を開始した。この廃棄基地がまったくのハズレだと言う可能性もある。だがこの辺りの異様なゲッター線指数の高さからして、あの量産型ゲッターGの目的地がここだと言うのは、おそらく間違いないはずだ。
……はたして鬼が出るか蛇が出るか。
さて、デューク・フリードが言っていた地球を狙う