大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第001話:再動の大鉄人

 どれだけ意識を失っていたのだろうか。『わたし』はふと、意識を取り戻した。何故『わたし』は『生きて』いる? ここはどこだろう? あの戦術核の爆発の中で、頭脳中枢が無事に残るなど考え(がた)い。『わたし』は気を失っていた間の自動観測装置のログを参照する。

 ……次元境界線が異様なレベルで歪曲している? この現象が起こったのは、おおよそ7年前、か。『わたし』はどうやら、7年もの間『眠って(シャットダウン)』いたようだ。

 

 つまりは……。次元転移現象、か。『わたし』の中枢部を含めたパーツは、戦術核自爆装置による火球が形成される直前というかほとんど同時、『わたし』が焼き尽くされるぎりぎり前に異世界へと転移した事になるのか。

 次元転移した以上は、ここはおそらく元の地球ではないだろう。戦術核による自爆が時空を歪めでもしたのか? いや、小規模な核爆発程度でそんな現象が発生するものか。だが、そのきっかけ程度にはなり得るか? わからんが、となると元々歪みかけていた次元境界面が、『わたし』と『ブレイン』の爆発で破断したとか。まさかな?

 

 何にせよ、とりあえずはシステムチェックだ。ふむ、残っているのは頭部、胸部、右腕、左肩、か。『わたし』は『ブレイン』の分身として生み出されたため、『ブレイン』が持つ超生産能力も持っている。まあサイズが『ブレイン』より小さいから、生産速度は遅いが。

 この超生産能力を用いて、とりあえず欠損部を再建するか。いや、それと同時に外部の調査も行わないといけないな。チェックしたら体内の指令室に、作業用小型ロボットのロボターが無事で存在しているのがわかる。

 ロボターはシャットダウンしているが、再起動をかけてやり叩き起こす。そしてロボターに命じ、まずは周辺を探査するための探査機(プローブ)を製作させた。

 

 探査機(プローブ)の探査目標は、第一に周辺環境の調査である。センサーで探ったところ、わたしは地下に埋まっている様である。重力は1G環境であるため、おそらくは地球型惑星ではある模様だ。では地表には何があるのか? 人類種族はこの世界にもいるのか? 何はどうあれ、この世界の情報をなんとかして手に入れなくてはならない。

 第二の目標は、資源の探査である。いかに超生産能力があろうとも、できるならば精錬された金属資源や電子部品があった方が効率が良い。それが望めなくとも、せめて金属鉱脈とか無いと、いちいち物質を素粒子レベルまで分解して再構築してやるのは非効率もいいところだ。

 

 ……機体(からだ)が直っても、おそらくは『わたし』は元の世界には戻れないだろう。いや、戻れたとしてもあの世界には、『わたし』の居場所は無い。『ブレイン』が倒れた以上、あの世界に『わたし』の様な戦闘兵器は、いるべきではない。三郎の未来に、『わたし』は存在していてはならないと思う。

 だが『わたし』自身としては、『ブレイン』との戦いに生き残ってしまった以上、生存を諦めるつもりは更々(さらさら)無い。あの世界に置き去りにして来た三郎やレッドマフラー隊、彼らの気高さ、勇敢さに恥じる様な無様はしたくないのだ。

 

 20機ばかりの探査機(プローブ)が完成。『わたし』はそれを遠隔操作し、各種センサー系で300mばかり上に存在するらしい事がわかった地表へ向けて、発進させた。

 

 

 

*

 

 

 

 地下深くで『わたし』が目覚めてから早7年。今は地上の暦で、太陽系暦53年である。そう、わたしが次元境界線歪曲現象により元の地球から強制的に転移させられたこの惑星は、異世界、並行世界とは言えども地球であった事が判明している。

 地形もほぼ同じであり、地上には人類が文明を築いている。そればかりか人類は火星圏や、かろうじてではあるが木星圏にまで生存圏を広げていた。太陽系暦というのは、人類が火星圏に居住しはじめたばかりの頃、それまで使われていた新西暦から切り替わった暦である。

 

 この7年の間、『わたし』は大破した機体(からだ)を修復すると同時に、探査機(プローブ)による調査で得られたこの世界の技術により、強力に改良を施していた。単純に修復するためだけであれば、もっと早く修復完了していただろうが……。

 だがどうせ、『わたし』は300mの地下に埋もれているのだ。そう簡単に地上に出る事は叶わない。更に言えば、地上には人間たちの街がある。うかつに強引に岩盤を掘削(くっさく)して地上に躍り出たら、人間たちに被害が出てしまうだろう。それは『わたし』の望むところでは無い。

 その様なわけで、『わたし』はなんとか安全に地上に出るべく、様々な遠隔操作の土木工事メカを超生産能力で造り出す。そして自身の機体(からだ)の修復改良と並行して、地上への大トンネル工事に着工していた。機体(からだ)の修復改良と、大トンネルの完成は、ほぼ同時になる予定だ。というか、どちらもあとわずかで終わる。

 

 ちなみにこの7年の間、『わたし』は地上の様子も探査機(プローブ)を用いて調査していた。それによって、驚くべきことが判明する。

 ……この世界は、所謂(いわゆる)スーパーロボット大戦の世界であったのだ。

 

 15年前にはDr.ヘルやら恐竜帝国などなど多数の邪悪な勢力が暴れまわり、地上をズタズタにしてくれた。これは民間のスーパーロボットであるマジンガーZやゲッターロボ他のスーパーロボットを主軸にして、地球連邦軍も総力を上げて戦って鎮圧に成功する。

 しかしながらソレを機と見たか、サイド3スペースコロニー国家であるジオン公国が地球連邦政府に宣戦布告して地球にスペースコロニーを落とす。一年戦争の始まりである。

 

 それらの事態がどうにか収拾されたと思ったら、今度はミケーネ帝国やら百鬼帝国などが出現。あげくにジオン残党が蠢動し、デラーズフリートが再度コロニー落としを実行する。更にゲッターロボを開発した早乙女博士が死亡を偽装して地下に潜り、地球連邦政府に対し反乱を画策。地球連邦軍を掌握したジャミトフ・ハイマンが組織したティターンズとその暴走、それに対抗するエゥーゴとの抗争。

 その混乱に乗じて宇宙からはインベーダーやらベガ星連合軍やらが襲って来るし。ティターンズが滅びたと思ったらエゥーゴもズタボロ状態で、そこへジオン残党勢力のアクシズがネオジオンを名乗り攻撃してきたり。

 

 近年では、一度はエゥーゴに身を投じていたシャア・アズナブルがアクシズ勢力を掌握して地球に小惑星アクシズを落下させて人類を粛清しようとしたりもした。更にはラプラス事変も発生し、地球連邦政府や地球連邦軍は屋台骨がぐらつくどころではないほどに、機能不全に陥っている。

 この頃には、既に『わたし』もこの世界に出現していた。ただ大破状態で地下300mに埋まっていたのだが。だからと言って、この事態に何もできなかったのは正直慙愧(ざんき)の念に堪えない。いや、半壊していて修復中の機体(からだ)では、どうせ何もできなかったのだが。

 

 まあ『わたし』にできる事は、そう多く無い。この巨大な鋼の機体(からだ)を使い、ただただ戦う事ぐらいしかできないのだ。だがしかし今は、その単純な『力』が必要とされる時代でもある。

 地上ではかつてDr.ヘルが遺した機械獣製造プラントより生み出された野良機械獣が、無辜の民人に危害を加えている。ジオン残党どもも、スペースノイドのために戦っているとの大義名分を振りかざし、そんな言い分では正当化できないほどのテロ行為を働いている。他にも色々なテロ組織がはびこり、暴虐を繰り広げているのだ。

 それらを叩き潰すだけでは、はっきり言って事態の解決にはならないのは百も承知だ。かつての『ブレイン』との戦いとは違い、何を叩けば平和が訪れるのかは判然としない。だがそれでも、無辜の民人が害されるのを見過ごすのは、それは何か違うと思うのだ。

 

 『わたし』の腹は、既に決まっている。『わたし』である『大鉄人17(ワンセブン)』は、おそらくこの世界に於いても相応な戦力であろう。この力もて、無辜の民人を救う一助にならねばならない。

 ……三郎やレッドマフラー隊の皆に恥じない、『わたし』でいなければならない。それが彼らと共に戦ったあの日々で、『わたし』に刻まれた想いなのだ。

 

 ……さて、機体(からだ)の修復と改良も完了した。地上への大トンネルも完成。『わたし』はゆっくりと、地上への道を進み始めた。

 『わたし』の(センサー)には、助けを求める人々の声が聞こえて来る。先ほども触れた様に、地上ではDr.ヘル事変で残された機械獣製造プラントから生み出された機械獣どもが、気まぐれに破壊活動を繰り広げている。ジオン残党他のテロ組織なども、テロ活動を行ってもいる。

 本来であればそれらに対処するはずの地球連邦軍は、様々な事件によってそのかなりの割合が機能不全を起こしている。まっとうに活動している者達も、手が届く範囲を護るので精一杯だ。

 

 ……行かねば、ならない。この世界の人類も、けっこうな割合でクズどもは混じっている。それは調査できた範囲の、この世界の歴史が証明している。だがそれでも、全ての人を見捨てていいわけでは無い。

 わずかでも、たとえ一握りでも、三郎やレッドマフラー隊、佐原博士の様な人たちがいるのならば。彼らの様な人たちを、断じて死なせてはならないんだ。




このワンセブンの人は、ワンセブンに転生した事で当初は困惑気味でしたが、『ブレイン』との戦いを経て『仲間たちに恥じない自分でありたい』との想いを抱く様になっております。おそらくは精神コマンドに『熱血』もしくは『魂』があるのは確実ですねー。

ちなみにワンセブンの人は、自らをかなり、かーなーりー、強化改良してます。まあ基本のワンセブンでもおそらくはスパロボ世界で通用はするでしょうが。ですが流石に、元の番組中でレーダーの追跡を誤魔化すためにチャフ撒いてるシーンがありましたけど、スパロボ世界のレーダーやセンサー類をチャフで誤魔化すの無理でしょ。
そんなわけで、色々と、色々と、むっちゃ強化版です。このワンセブンの人は。
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