大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第023話:ジュドーのシグコン・シップ漫遊

 ここは地球圏近傍のワープアウト地点から、地球への帰途なかばである。ちなみにショートレンジ・ワープに入る前に、我々は木星圏を離脱したコロニー群と接触を取った。そしてクラックス・ドゥガチ木星公社総帥とその側近たちを、そちらの病院施設に引き渡してある。

 なお『わたし』は結構なダメージを受けたものの、比較的容易に修復できる範囲であった。そのため『要塞ワンセブン』形態でシグコン・シップの艦橋(ブリッジ)前にはまり込んで、その場で自己修復に励んでいる。

 

 そして今現在、シグコン・シップの艦橋(ブリッジ)で、ジュドー君がラー・カイラムのブライト大佐と話をしていた。主スクリーンには、ブライト大佐が大きく映っている。

 

 

「いや、ほんとありがとうブライトさん。おかげで命拾いしたよ。それに……助けられなかった人も多いけれど、それでも大勢が助かったし」

 

『いや、任務だからな。気にしないでくれ。……ジュドー、言いづらい事を訊くかもしれんが、ルー・ルカは? 彼女は……』

 

「あー、ルーは……。その……」

 

 

 ジュドー君は口ごもる。主スクリーンの中で、ブライト大佐の表情が曇った。もしやガルファ襲撃の、犠牲になった、か?

 

 

『そう、か……』

 

「あー、いや! 勘違いしないでくれよ!? いや、そうじゃなくて!!

 ……今度の件のかなり前に、ちょっとしたケンカで、ぷいっと出て行っちまったんだ。うん。ああ。おう。えっと……。木星圏にあのとき居たかすらも、わからない……。ハァ……」

 

『そ、そう、か……』

 

 

 あー、うん……。それは別な意味で、気まずいな。それも物凄く。うん、周囲で見てたブリッジクルーの面々も、何か不味い物を食べたかの様な、しょっぱい表情になっている。なんとも言えない雰囲気が流れた。

 ブライト大佐は、無理矢理に話を変える。

 

 

『そ、それよりもジュドー。ΖΖガンダムなんだが……』

 

「あー、うん。ワンセブン……さん、だっけ?どうなの?」

 

『『さん』はいらないよ。ΖΖガンダムだがね、ちょっと大幅な改修が必要だな。ざっくり調べてみたんだがね。フレームに歪みが出て、変形不能になっているし。と言うか変形合体機構が複雑すぎて、元から色んな問題を抱えたまま戦っていたんじゃないか?

 『わたし』としては、変形合体機構を全廃して、フレームから造り直したい。と言うか新造フレームに、今のΖΖから主要部分とかを移植する形になるかな。そうでもしないと、難しいよ』

 

 

 この世界の記録において、あの伝説のアストナージですらも通り一遍の整備以外は、『よくわからん』と匙を投げた機体だからなあ。

 

 

「変形合体できなくなるのかあ。ま、今までもここ数年、ほとんどその機能、使ってなかったからね。かまわないさ。サンキュ、ワンセブン」

 

『ではその方針で進めるよ。その間は、予備機のジェダを使ってくれ』

 

 

 よし、新造フレームは、フル・サイコフレームにしてやろう。Ζガンダムに続き、ΖΖも魔改造だ。

 

 

 

*

 

 

 

 シグコン・シップの艦内工場に、組みかけのΖガンダムと分解中のΖΖガンダムが並んでいる。それを眺めて、ジュドー君は感慨深げに言う。

 

 

「こうしてΖとΖΖが並んでるのを見ると、ネェル・アーガマ時代を思い出すなあ。イーノやエル、ビーチャ、モンド、元気でやってるといいんだけど」

 

「やあ、ジュドー」

 

「あ、カミーユさん。元気になったんスね。よかった。

 ファさんもお久しぶり。あのときは色々とご迷惑を」

 

「もう何年前になるのかしらね。懐かしいわ。ずいぶんと成長したみたいね。外見も中身も」

 

「へへへ」

 

 

 まあ、ちょうど良かった。カミーユ君にもΖの進捗について説明しておくとしよう。

 

 

『カミーユ君、Ζの進捗なんだが』

 

「ああ、ワンセブン。見たところ、問題は無さそうですね」

 

「えっ……。ワンセブン、どこにでも居るんだな。艦橋(ブリッジ)だけじゃないんだ」

 

『本体は別にあるとは言え、シグコン・シップ自体が『わたし』の身体の一部分みたいな物だからね。艦内あちこちに『わたし』の意識端末は存在するよ。まあ分離しての行動時には、話は違うんだが。でも集中すれば、分離中でも見えるがね。

 カミーユ君、Ζガンダムだが、1~2日中には最終組み上げ段階まで完了するよ。そうしたら実機テストを頼めるかね?』

 

「わかりました、ワンセブン。おそらくまた戦いはあるでしょうから、その前にどうにか間に合ってくれるだろうっていうのは、有難いですね」

 

 

 フル・サイコフレームのΖガンダムに乗ったカミーユ君に、フル・サイコフレームのΖΖガンダムに乗ったジュドー君か。どれだけになるか、本気で楽しみだよ。

 

 

 

*

 

 

 

 シグコン・シップの食堂に、兜甲児の歌が響き渡る。彼は今、食堂に隣接している厨房で、得意料理を電童チームにご馳走すべく奮闘中だ。

 ちなみに厨房ってのは、『わたし』の前世では別な意味に使われる事が多かったが、本来は台所って意味なんだよな。

 

 そこへジュドー君が顔を出す。匂いにつられて来たか。

 

 

「美味いんだ~♪ でっか~いんだ~♪ おいら~の~コロッケなんだ~♪」

 

「あれ? 兜甲児さん? なんか美味そうな匂いがすると思ったら……。マジンガーZの英雄にして、超一流の研究者である甲児さんが、料理もできたなんてな」

 

『あの伝説の、マジンガー・コロッケか。『わたし』に口や舌、消化器官が無いのが悔しいな。ははは』

 

「おお、ジュドーか。お前も食ってくか? コロッケのタネは、まだ残ってるからな。そしてワンセブン、伝説ってほどじゃねえよ。はっはっは」

 

「いいのかい? んじゃ、ご相伴させてもらおうかな。いやー木星じゃ配給制限とか厳しくてさ。贅沢品やご馳走のたぐいは……」

 

 

 ジュドーは厨房から食堂へと移動する。『わたし』も視線をそちらへと移した。そこでは北斗少年、銀河少年、そしてベガ女史、吉良国、Dr.井上、愛子女史がテーブルに着き、その相手をシロー君がしていた。オマケと言ってはなんだが、シロウもまたテーブルに着いている。

 

 

『シロウ、食堂に居たのか』

 

「ああ、ワンセブン。いや、通り掛かったら、すっげぇ美味そうな匂いがしててよぉ。そしたら甲児さんが、北斗や銀河のついでに食わせてくれるってんで」

 

『そうか。兜甲児のあの伝説の料理だからな』

 

「さっきも言ってたけどよ、ワンセブン? 甲児さんの料理って、そんなに伝説級なのかい?」

 

『ジュドー君、それは料理が出て来てからのお楽しみってやつだ』

 

 

 見遣ると、北斗少年と銀河少年は、見た目では前回の戦いの影響は見受けられない。だが『わたし』は知っている。彼らがこっそり自室で泣いている事も。それをベガ女史や吉良国など、周囲の大人が知っている事も。

 今回甲児がひさしぶりの得意料理を彼らに振る舞うのも、せめて気晴らしにでもなれば、との思いがあるからだろう。シロウが居るのも、偶然ではない。彼は少年たちの事をけっこう気にしており、様子を見に来た結果として、料理のご相伴に預かったという事である。

 

 そしてしばし歓談していると、甲児がワゴンを押して現れる。ワゴンには多数の大皿が載っており、それらの大皿にはまるで男性用サンダルでも揚げたかとでも言う様な、巨大なコロッケが載っていた。コロッケは綺麗にキツネ色に揚がり、とても美味そうだ。本当に、口も舌も消化器官も無いのが悔しい。

 ベガ女史と愛子女史が、引き攣った笑顔を零す。いやベガ女史は顔の上半分が仮面で見えないが。

 

 

「こ、これは凄いわね」

 

「食べきれるかしら……」

 

「まあ、その辺は食べてみてから言ってくれよ。兄貴のマジンガー・コロッケは、男性向けと女性向けになってるから。そっちのは女性向けだからさ」

 

「「そ、そう?」」

 

 

 ベガ女史と愛子女史は、とりあえずと言った風情でフォークを巨大コロッケに突き立てる。すると巨大コロッケから、凄まじい(ハリケーン)が噴出した。香しい匂いが、周辺に満ちる。

 

 

「きゃ!?」

 

「これは……!」

 

「ルストハリケーン!? まさしくマジンガー・コロッケ!」

 

 

 Dr.井上が解説した通り、ベガ女史と愛子女史のコロッケからは凄まじい勢いで香りの嵐が吹き荒れていた。そしてそれが止んだ頃には、そのコロッケは小さく……と言っても十分に大判だが、常識的なサイズに縮んでいた。

 

「ち、小さく……」

 

「小さくなった?」

 

「それなら食べきれるだろ? あったかいウチに食べてくれ」

 

「おおー、す、すげえ……。んじゃ、俺たちの男用コロッケは、どうなってるんだ?」

 

「銀河、まずは食べてみようよ」

 

 

 北斗少年、銀河少年、吉良国、Dr.井上、シロウ、ジュドー君はいっせいにコロッケにフォークを突き立てる。シロー君と甲児は、にやにやしながらその様子を眺めていた。

 

 そしてフォークを突き立てた瞬間、巨大コロッケの前半分が吹き飛び、男連中の口めがけて突っ込んで来たのである。

 

 

「むぐぁっ!? むぐう、むぐむぐ、もぐもぐもぐ……」

 

「ふむぅっ!? むぐ、もぐもぐもぐ……。ごくん! う、美味いですな! これはロケットパンチですか!」

 

「ほうほに、うひゃい! もぐむぐもぐ……」

 

「ふん! ほんほに、おいひぃ! はぐあぐはぐ……」

 

「2人とも! 口にモノ入れながら喋らない!」

 

「「ほめんなはい! ベガはん!」」

 

「だから……」

 

 

 うん、兜甲児のマジンガー・コロッケ。わたしも食べてみたい。ちょっと、いや、かなり悔しい。ああ、美味そうだなあ。大事な事なので、3度言いました。

 

 

 

*

 

 

 

 シロウのヒュッケバインNextと、カミーユ君のサイコΖガンダムが、宇宙空間で凄まじいドッグファイトを繰り広げる。今現在彼らは、改修が終わった自分たちの機体の慣らしとして、実戦さながらの模擬戦を繰り広げていた。

 カミーユ君のサイコΖガンダムは、全てのフレーム構造をサイコフレームに換装した、フル・サイコフレーム仕様機である。これにより、基本的な剛性はもちろんのこと、重量もかなり削減でき、その分機動性、パワーウェイトレシオも劇的な改善を見せている。

 

 一方シロウのヒュッケバインNextは、フレーム自体は超軽量超硬合金製である。この合金は、いちおう『わたし』の体内工場では創れる様にはなっているが、調べたところ人類圏のどの場所に於いても製造されていない。地球連邦軍に於いても、分析不能だった模様だ。

 その超軽量超硬合金のフレームだが、全フレームにサイコフレームと思しきシステムを搭載できる増設スロットが付いていた。そのスロット内には、ダミー部品と思われるパーツが入っていたが、今現在それは全て、新規生産されてそれに合う様に成形されたサイコフレームに交換されている。理屈上から言えば、フル・サイコフレーム機に準ずるか下手をすれば相当する能力を発揮するはずだ。

 

 この増設スロットなんだが、『わたし』としては本来T-LINKシステムを組み付けるためのスロットでは無かったか、との疑いを抱いている。ただし現在の操縦士(パイロット)であるシロウは強化人間であり、念動力者では無いため、搭載するのはサイコフレームで間違ってはいないはずである。

 

 そして2人のドッグファイトに混ざっていた1機のジェダが、フラフラという感じでシグコン・シップへと戻って来る。ジュドー君の機体だ。彼にはΖΖの改修が完了するまでの間、この機体を貸す事になっている。そのため完熟訓練がてら、この模擬戦に参加していたのだが……。

 

 

『ひぃ~、とても駄目だ。機体の差がありすぎて、付いていけねえよ……』

 

【ジュドー君でも無理かね。いちおう元アムロ大尉機のそのジェダは、カリカリにチューンアップした上にバイオセンサーまで搭載した、特別製なんだがね】

 

『ダメダメ。シロウもカミーユさんも、攻撃の意図の『(ライン)』がほとんど『()』えないんだ。とんでもない技量だよ。

 これを『()』ようと思ったら、もっと機体側に補助が要るね。バイオセンサーじゃ、ちょこおっと力不足、かな? サイコフレームって、今まで木星や木星船団に居たから聞いた事なかったけど、凄いらしいな』

 

【君のΖΖも、改修後はフル・サイコフレーム化するつもりだからな】

 

『それはありがたいな』

 

 

 ここでジュドー君が、怪訝そうに問う。

 

 

『ところでワンセブン。なんで今は音声じゃなくて、テキストメッセージなんだ? 俺からすると、その理由がよくわからないんだけど』

 

【いや、音声で喋るのは、ほんとに若干なんだが、『わたし』の頭脳の処理速度を食うんだ。データ量で言っても、テキストの文字列は些少ですむけれど、音声だと声音に感情を乗せたりとか、同じ文章であってもデータ量が桁外れに多いのはわかるだろう?】

 

『あー、うん』

 

【戦闘中でなければ気にもしてないし、戦闘中でもたぶん大丈夫だとは思うんだが。でも咄嗟(とっさ)の反応の時、人間と違って『わたし』の場合は、テキストメッセージの方が速いし処理も軽いからね。

 それに通信記録(ログ)にも残しやすいし。まあ無論、音声が必要なときは戦闘中でも『声』で喋るとも。それと今は模擬戦とは言え、戦闘に準ずると言う事で、テキストメッセージなんだ】

 

『なるほど……』

 

 

 さて、そろそろシロウとカミーユ君も、いい加減に模擬戦を終わらすようだ。何と言うか、勝負は紙一重でカミーユ君に軍配が上がったらしいが。だが本当に紙一重だった模様だ。

 どうもシロウの場合、動きが派手すぎて推進剤を使いすぎ、それで最後の方は回避機動が雑になったらしいな。シロウにはいい経験になったろう。

 

 

 

*

 

 

 

 今、『わたし』たちは主要メンバー全員をシグコン・シップの艦橋(ブリッジ)に集めている。左右2つに分割された主スクリーンの中では、ラー・カイラムの艦橋(ブリッジ)に向こうの機動部隊員全員が集まっているのと、真ドラゴンの操縦室に號、渓、凱の3名が集まっているのが映し出されていた。

 

 映像の中で、ブライト大佐が、深刻な表情で言う。

 

 

『諸君らに集まってもらったのは他でもない。地球との長距離レーザー通信で、我々に命令が下った。ザンスカールと地球連邦政府の交渉なんだが……』

 

「ブライトさん、その顔だともしかして……」

 

『ああ、ジュドー。その通りだ。……ザンスカールの馬鹿者どもめが! 今、何が大事なのか分かっていない!

 地球連邦政府の交渉団が、襲われて人質にされかけた。護衛の者たちが命を捨てて交渉団を逃がしたので、最悪の事態は避けられたが……』

 

 

 その場と映像中の面々の、表情が強張る。

 

 

『現在、交渉団を乗せたスペース・アーク級改修艦トリチゲンⅣが、全力で逃げている。それをザンスカールの艦隊が追跡している状況だ。我々が現状、もっとも早く現場宙域に到達できる位置にいる。

 弁慶少佐、ワンセブン。済まないが今後しばらくの間、正式にわたしの指揮下に入ってもらいたい』

 

『『わたし』は構わない。弁慶?』

 

「俺もかまいませんよ、ブライト大佐」

 

 

 ブライト大佐が、大きく頷く。しかしこうなると、ザンスカール帝国との交渉は完全にポシャったわけだ。ジオン残党軍やジオン共和国とは、どうなっているのかな?

 何にせよ交渉団を救うためには、急がねばなるまい。シグコン・シップ、ラー・カイラム、真ドラゴンは最大戦速で現場宙域へと向かった。




皆さんルー・ルカの去就を心配している様でしたが、ルーはガルファ襲撃の数ヶ月前に、ジュドーのところを飛び出していました。完全な破局とかいうわけではなく、ケンカになったので互いの頭を冷やす必要がある、と思って、どうせだから思いっきり羽を伸ばそうかみたいな感じでした。で、今どこに居るかは全然わかりません。木星圏に居たかどうかすらもわかりません。ジュドーは内心すごく心配してます。

兜甲児のコロッケ。原作漫画版兜甲児の得意料理です。漫画を読んでいたとき、本当に、ほんっとうに、美味そうで美味そうで……。で、そのコロッケのマジンガーっぷりは、漫画原作の通りです、ルストハリケーンにロケットパンチ。当時ご馳走になっていたのは、さやかさんとシロー君でした。

で、ザンスカールとの交渉はザンスカール側の暴挙で潰れました。グシャっと。たぶんジオン共和国やジオン残党軍は、目が点になっているかと思われます。個人的にはまだ、ザンスカールよりかジオン残党軍の方が話が通じそうな気も。まあジオン残党軍はピンからキリまで居ますから、それぞれによって反応はまったく違うんでしょうけど。
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