我々が現場の宙域に到着した時、スペース・アーク級改修艦トリチゲンⅣは幾つも被弾し、ところどころで小爆発を起こして、今にも撃沈される直前という所だった。ブライト大佐は命を下す。
『全艦、ザンスカール艦艇に対し砲撃開始! 砲撃後、各艦は機動兵器を発進させろ!』
『こちらシグコン・シップ、マクラウド副長! 了解、砲撃開始します!』
『こちら真ドラゴン、號。了解』
各艦は一斉に砲撃を開始する。メガ粒子砲が、ミサイルが、ショックカノンが、ゲッタービームが、次々に撃ち放たれた。これまで逃げ惑うトリチゲンⅣを
そこへ各艦から、次々に機動兵器が発艦する。無論『わたし』も甲板上で『戦闘飛行ワンセブン』形態に変形すると、敵中へと突撃した。持久戦なり、あるいは他の理由でエネルギーを温存する必要がある場合は、『飛行ワンセブン』形態で飛ぶこともあるのだが、現状ではそこまで省エネにする必要は無い。故に戦闘力の高い『戦闘飛行ワンセブン』形態で突撃するのである。
ちなみに電童は、この戦いには出していない。子供ら2人は反発したが、人間相手の戦いは……人間を『殺すかも知れない』戦いは、彼らにはキツ過ぎる。だが、それでも電童を出さざるを得ない場合は、いくらでも想定がつく。ついてしまう。
願わくは、その様な状況にならない様に……。
アマルティア級の艦が、1隻轟沈する。やはり真ドラゴンのゲッタービームは無茶に威力が高い。まあ既にシグコン・シップやラー・カイラムからの砲撃を、何発か受けていたためもあるのだが。
周辺宙域に、一斉に敵の機動兵器が展開する。コンティオ、ゲドラフ、ゾロアットがそれぞれ等分ずつ居るが……。だがその程度で、こちらをどうこうできると思うなよ。
【シュラク隊は、済まないがトリチゲンⅣの直掩にあたってくれ。トリチゲンⅣが戦闘宙域を離脱するまで護って、リガ・ミリティアと地球連邦の協力体制が盤石である事をアピールする狙いもある】
『あいよ。政治は面倒だけど、任された。シュラク隊、行くよ!』
『『『『『応ーーー!!』』』』』
シュラク隊に護られて、交渉団を乗せたトリチゲンⅣが戦闘宙域を離脱して行く。それを追おうとするコンティオ、ゲドラフ、ゾロアットに、『わたし』たちは襲い掛かった。
*
しばし後、戦闘は
【アムロ大尉。シャア大佐が補給を終えて前線に戻る。交代でシグコン・シップに補給に帰ってくれ。……だが、なるべく早く戻って来てくれると有難い】
『こちらアムロ、了解だ!』
こうなれば持久戦だ。交代で機体を艦に戻して補給させながら、なんとか切り抜けるしかない。
……だが、敵の増援がさらに接近中なのが、センサーに映る。どうやら敵は、交渉団を逃がした我々を、何があっても許すつもりは無さそうだ。と言うか、ザンスカールを許せないのはこちら側なんだがな。
しかし、朗報もある。
『ロンド・ベル隊。こちらは第42独立戦隊旗艦、ガーランドⅡ。これより、貴隊を援護する』
『第42独立戦隊、感謝する! 第42ということは、ユウ・カジマ大佐の部隊か!』
ユウ・カジマ大佐か! 原作の歴史では、上層部の命令を無視してアクシズ落下阻止にジェガンに乗って加わったことで、命令違反で予備役に放り込まれて1年後に退役したんだったな。この世界ではちょっと調べたんだが、命令違反を問われたまでは同じだったが、閑職に回される程度で済んで、その後にムバラク大将に拾われて第42独立戦隊の司令になったんだ。
*
……唐突に、悪意を感じた。
『わたし』は全力で、その強圧的な『威』の込められたビームを回避する。先ほど感知していた、更なる敵増援だ。しかし、あまりにも早い。もう少し到着までに時間がかかるかと思っていたのだが。
その『敵』は、オープン回線で叫ぶ。
『おいおい、よけるかよ。他人さまに命中しても、かまわないってかぁ!?』
奴の言う通り『わたし』が
こいつ……。ゾルタン・アッカネン? 『機動戦士ガンダム
そしてその指揮下の部隊と思われる、ギラ・ズールやギラ・ドーガが現れる。それらも一斉に、こちらの部隊へと攻撃を開始した。ブライト大佐の声が聞こえる。
『く! 『袖付き』の残党たちもザンスカールに与すると言うのか!?』
『ざぁんねん。スペースノイドを弾圧してきた連邦と、おんなじスペースノイドのザンスカールとじゃあ、どっちの手を取るか決まりきってる、だろぉ?』
ブライト大佐の方はオープン回線じゃなかったから、向こうに話が通じているわけじゃないんだが。だがそれでも、まるで大佐に答えたかの様に、ゾルタンは嘲笑する様に語る。
そこへほぼ同時に現れた、第42独立戦隊の旗艦カイラム級ガーランドⅡと、僚艦のクラップ級2隻がジェガンを発艦させ、支援砲撃を撃ちまくる。
そしてゾルタンの矛先が、第42独立戦隊へと向いた。まずい。奴はガーランドⅡの
そしてビームが一閃する。
『なんだぁっ!? ち、てめえらあ!!』
『地球連邦軍に告ぐ! 我らネオ・ジオン、ミネバ・ラオ・ザビ派である! これより、貴隊を援護する! ……まあ、当のミネバ様の公認も無い弱小派閥だけどな』
ギラ・ズールやギラ・ドーガがビームを撃ちながら、地球連邦軍の敵味方識別信号を発信しつつ突入して来る。先ほどのビームは、彼らがゾルタンのシナンジュ・スタインへ撃ったビームだったのだ。それをぎりぎり
『この、クッソ裏切り者どもが!』
『それはどちらだ! 地球圏のネオ・ジオン軍の8割は、この度の地球連邦の申し出に従い、外宇宙からの侵略者に立ち向かわんとジオン共和国へ合流する事を決定しているぞ! 我々の派閥だけではないぞ!
それに、知っているぞ! 貴様らが『袖付き』の名前を借りただけの、どこの誰とも知れない勢力の派遣した、偽のネオ・ジオンである事を!』
『ち、なあんだ。知ってやがったのか』
『た、大尉! それは!』
『おいおいおいおい、仕方ないだろぉ? こんなにオープン回線で、おおっぴらにバラされちまっちゃあよ』
ふむ、となると原作のアニメでも、ゾルタン一派は偽『袖付き』一派だったって事か? 後発作品には、視聴してないのも多かったからなあ。いやいや、元から原作アニメ知識には頼らないつもりだっただろう。
*
戦闘は、なおも続いた。そして予想していた、しかしそうなっては欲しくなかった事が起きる。敵の数が多すぎて、味方艦の近場まで攻め込まれてしまい、どうしても避けたかった事態が発生してしまったのだ。……そう、電童の、出撃である。
『ちっくしょう、シグコン・シップをやらせるかあ!!』
『あっちへ行けよ!! ええいっ!!』
子供たち、銀河少年も北斗少年も、できれば人間相手の戦場に出したくは無かった。だがそれでも、艦と共に撃沈されてしまうよりは、百倍マシというもの。
悔し紛れに、そう思ったときの事である。
もう1つ、起きては欲しくなかった事態が起きる。第42独立戦隊の1隻、クラップ級が艦尾から火を噴いたのだ。
『そ、総員退艦!!』
『い、いそげ!』
そして次に、ザンスカールのアマルティア級もまた、艦の腹から爆炎を噴き上げる。
『うわぁっ!!』
『じ、女王マリアに栄光あれ!!』
その時、『わたし』はセンサーで『
セルブースター2番機を操縦する、ベガ女史が悲鳴とも言っていい叫びを上げる。
『
『フハハハハハハ!! 同じ人類同士で殺し合い、潰し合う! やはり人類は宇宙のゴミよ! 我らガルファによって滅ぼされるべき存在よ!!』
『そ、その声は!?』
アニメ原作通りだとするならば、ベガ女史の悲痛な叫びも理解できる。出来る限り、アニメ原作の知識には頼りたくは無かったが……。いや、時間は少しだけある。ベガ女史に確認を入れるぐらいはいいだろう。『わたし』はセルブースター2番機に、テキストメッセージを送る。
【ベガさん。アレは電童と同様の存在に見える。惑星アルクトスの戦力であったアレが、ガルファに鹵獲されて運用されていると考えてもいいのか?】
『……!! え、ええ! ええ! その通りよ!』
【ロンド・ベル隊各機、及び協力部隊全機に告ぐ。あの黒い
幸いにも、交渉団の乗ったスペース・アーク級改修艦トリチゲンⅣは既に戦域を遠く離脱している。今回の作戦目的は達しているのだ。ただザンスカールとゾルタン隊(仮)がこちらを逃がすまいとしているだけで。
ゾルタンが叫ぶ。
『ちぃっ!! 連邦軍だけを相手にしてりゃいいものを!』
『……貴様? ほほう。これはこれは……』
『なっ、何っ!?』
ゾルタンのシナンジュ・スタインから、唐突に虹色の光が分離する。その光は紫の機械で出来た巨大な蝮へと変化する。銀河少年と北斗少年が叫んだ。
『なっ!? データウェポン!?』
『ま、まさかあの凰牙ってやつ!?』
『ファイルセーブ! バイパーウィップ! バイパー・ドライブ・インストール!!』
……『自信』をその属性とするデータウェポン、バイパーウィップ。ゾルタンの戦闘力に対する自信に惹かれて、シナンジュ・スタインに宿っていたか。だがそれも、あの洗脳状態の
『フフフフフフ……。フハハハハハハ!! 手に入れたぞ、データウェポン、バイパーウィップ!!』
『貴様、笑うな……。
ビームサーベルを抜き放ち、躍りかかるシナンジュ・スタインを軽々と
一方で、ザンスカール連中はまず連邦軍とその協力者を叩こうと言うのか、遮二無二こちらへと波状攻撃を仕掛けて来る。ゾルタン隊も、半分は凰牙へ攻撃を仕掛けるが、もう半分はこちらへと攻撃して来ていた。
そして第42独立戦隊の旗艦、ガーランドⅡの
しかしながらその代償として、その指揮官型ギラ・ズールは電磁ワイヤーに絡めとられ、強烈な電撃を浴びた。
『ぐあああぁぁぁっ!! れ、連邦さんよ。無事、か?』
『!! 貴官のおかげで、無事だ! だが、何故……』
『ふ、ふふ……。アクシズ落としの時に……な。皆で、落ちるアクシズを、押したん、だ。そして、俺のギラ・ドーガが吹き飛ばされて、よ。1機のジェガンが、俺の、機体の、腕を掴んでくれ、て。
結局は腕が壊、れて、吹っ飛んだんだが。おかげで、脱出、装置を動か、せる余裕、が。……連邦さん、にゃ、その恩が、あ、る』
『!! 貴官、あのときの!? 生きて、生きていたのか!? 全艦、対空砲火開け! 目標、眼前のゾロアット! あのギラ・ズールを救え! 彼を死なせてはならん!!』
そう言えばアクシズ落としの際に、ユウ・カジマ大佐の乗るジェガンがギラ・ドーガの腕を掴んだって話は聞いた事がある。まさしく『情けは人のためならず』、だ。
無論、『わたし』も見ているだけでは無い。味方艦や味方機に攻撃を浴びせようとする敵機にミサイルパンチや
その凰牙だが、シナンジュ・スタインを振り切ると電童に向かい突進して来る。マジンガーZやグレートマジンガー、イチナナ式がその前に立ちふさがった。しかし……。
『……イリュージョンフラッシュ!!』
『な、何いっ!?』
『幻影だとぉ!?』
『い、いけねえ! 銀河! 北斗!
『『うわあぁっ!?』』
凰牙は電童に突撃し、脚部タービンを高速回転させての回し蹴りを叩き込む。必死で受ける電童だが、受けきれず吹き飛ばされる。
『フン……。弱いな、電童の
さすればガルファ皇帝陛下のご慈悲のもと、貴様らを殺すのは最後の最後にしてやっても良いぞ? 運が良ければ、全宇宙から知的生命体すべてを葬るまで、もしかしたら寿命まで生きて居られるやも知れぬぞ? まあもっとも……』
『『うわあぁっ!?』』
『我のいるかぎり、宇宙から全ての知的生命体を滅ぼすまで、それほどに残り時間があるとも思えぬが、な!!』
左右のワンツーパンチから、強烈な前蹴り。なんとか電童は、最後の一撃だけでも後ろに大きく飛ぶ事でダメージを減少させる。くそ、邪魔だコンティオにゲドラフにゾロアット! 電童の支援に行けないじゃないか! いや、冷静になれ『わたし』。まだ電童は致命的じゃない。真ゲッター2がそのスピードを活かして、凰牙をなんとかしようと向かっている。マジンガーチームも同じく、3方から凰牙を囲んでフクロ叩きにしようとしている。
吹き飛ばされた電童は、必死に態勢を立て直すが、そこに凰牙の追撃が来る。電童はぎりぎりで
『何!?』
『『へ、へへへ』』
『ようやく目が慣れてきた、ね、銀河』
『おめえも良く、俺に合わせられるよ、まったく』
そして電童はその
凰牙はそちらへ突進するが、そう何度も何度も思う通りにはさせない。凰牙が脚のタービンを全力回転させてのかかと落としを繰り出す。だがそれは、周辺のザンスカール機を全機撃破した『わたし』が割って入り、両腕をクロスさせて止めた。
『なんだと!?』
『『ワンセブン!!』』
【大丈夫かね? 北斗君、銀河君。それと、後ろを見て見たまえ】
『『え?』』
少年たちの後ろ、中破してまでユウ・カジマ大佐のカイラム級ガーランドⅡを護り抜いた、あのジオン残党軍……ネオ・ジオン・自称ミネバ派の指揮官型ギラ・ズールが、虹色の輝きを放っていた。その虹色の輝きは、ギラ・ズールから離れると青い馬型ロボに変化する。その額には、長大なドリル型の角が伸びていた。
『これは……』
『で、データウェポン……』
『僕を、僕を見て、いる?』
『おのれ、小僧ども! データウェポンから離れろ!』
おっと。凰牙は『わたし』がブロックする。奴は再度イリュージョンフラッシュを使うが、だったら幻影で誤魔化されても大丈夫なくらい、前方全てにミサイルを乱射するまで。凰牙は慌てた様子で、ミサイルを
北斗少年の声が叫んだ。
『ファイルセーブ、ユニコーンドリル!! ユニコーン・ドライブ・インストール!!』
『し、しまった! おのれ!!』
狼狽する凰牙の
というところで、今回は戦闘中セーブです(笑)。凰牙、ザンスカール+ゾルタン隊(仮)、地球連邦軍+自称ミネバ派の3勢力による三つどもえ戦……なのですが、どうしても地球連邦軍+自称ミネバ派が他2つから集中攻撃を受ける形に。ま、凰牙は単騎ですし。
そしてバイパーウィップはお約束通り凰牙+アルテアオジサンの手に。オジサンってのが
ただ問題は、これで電童を対人戦にも出さないわけにも行かなくなったって事ですね。ガルファが関係なさそうな戦線に於いても、データウェポンが居る可能性がずんどこ出てしまったわけなので。